支援制度のグリーン投資減税は、省エネや脱炭素・再生可能エネルギー関連の設備投資に関してサポートしてくれるのが特長です。しかし国や自治体のHPだけでは、どのような内容で何年補助してくれるのかわかりにくいと感じる方も多いかと思います。
そこで今回は、グリーン投資減税の特徴や適用期間、注意点について詳しくご紹介します。環境経営に活用可能な支援制度を調べている方やグリーン投資減税を2022年も利用できるのか気になっている方などは、参考にしてみてください。
グリーン投資減税とは何?
グリーン投資減税とは、平成23年に創設された、太陽光発電などの再生可能エネルギー設備や高効率な省エネ・脱炭素設備への投資を支援する税制優遇制度です。
正式名称は「エネルギー環境負荷低減推進税制」と言い、地球温暖化対策のためのCO2削減や再生可能エネルギーの普及拡大を目的に創設されました。どのような税制優遇制度なのかを詳しく解説していきます。
指定の設備を導入する法人や個人を支援
グリーン投資減税は、青色申告をしている個人や法人が支援の対象です。青色申告をしている個人や法人が、グリーン投資減税で指定された太陽光発電設備などの新エネルギー設備や二酸化炭素排出抑制設備などを導入し、さらに1年以内に事業の用に供した場合に税制優遇を受けることができます。
減価償却資産の特別償却や税額控除を受けられる
設備などを導入した場合、通常はそのための費用を法定耐用年数に基づき減価償却として処理する必要があります。
しかしグリーン投資減税では、青色申告をしている個人や法人が指定されている設備を導入し、1年以内に事業の用に供した場合、普通償却に合わせて設備取得価格の30%を特別償却できるのが特長です。
青色申告をしている中小企業者等に限り、設備取得価格の7%相当額の税額控除、もしくは30%特別償却を選択することが可能です。また、太陽光設備については平成27年までは即時償却を受けることができ、全額損金として処理できます。
対象の期間は2016年までで既に終了
平成23年に創設されたグリーン投資減税については、対象の期間が2016年3月31日までとなっており、既に終了しています。
グリーン投資減税に代わる中小企業経営強化税制
既に終了しているグリーン投資減税に代わる制度として、太陽光発電などの再生可能エネルギーの設備投資に対して活用できる「中小企業経営強化税制」があります。
「中小企業経営強化税制」は本来2019年度で終了予定でしたが、中小企業の経営を強化するための積極的な設備投資をサポートするため、指定期限が2023年3月31日まで延長されています。
「中小企業経営強化税制」はどのような税制優遇となっているのかなど、詳しく解説します。
設備投資に対して即時償却もしくは税額控除を適用
中小企業経営強化税制では、中小企業が対象となる設備を導入する場合に、即時償却もしくは税額控除のどちらかを選択し適用することができます。税額控除の場合、対象となる設備の導入にかかった費用の税額を控除することが可能です。
資本金が3,000万円未満の企業の場合は10%、資本金3,000万円以上1億円以下の企業については7%の控除を受けられます。
ただし控除が受けられる上限は、その年度の法人税額・所得額の20%までと定められています。
即時償却を選んだ場合には、対象の設備取得額を減価償却ではなくその年度に全額を経費計上することができるため、初年度に大幅な節税ができます。
対象者は中小企業であること
中小企業経営強化税制では、指定期間以内に中小企業等経営強化法の認定を受けた中小企業者が、税制措置・金融支援・法的支援を受けることができます。
中小企業者とは、下記の事業者のことをいいます。
- 従業員数が1,000人以下の個人、個人事業主
- 法人で、なおかつ資本金もしくは出資金額が1億円以下
- 資本や出資を有していない法人で、なおかつ従業員数が1,000人以下の状態
- 協同組合といった団体
ただし、資本金が1億円以下の法人でも、同一の大規模法人から2分の1以上の出資を受ける法人や、2社以上の大規模法人より3分の2以上の出資を受ける法人、前3事業年度の所得金額の平均額などが15億円を超える法人は対象外となっています。
また、事業内容が中小企業経営強化税制の指定事業であることも条件となります。
中小企業経営強化税制の対象となる指定事業
製造業・建設業・農業・林業・漁業・水産養殖業・鉱業・採石業・砂利採取業・卸売業・道路貨物運送業・倉庫業・港湾運送業・ガス業・小売業・料理店業その他の飲食店業(一定の類型を除き、料亭・バー・ナイトクラブ・キャバレー・その他これらに類する事業を除く)、・一般旅客自動車運送業・海洋運輸業及び沿海運輸業・内航船舶貸渡業・旅行業・こん包業・郵便業・損害保険代理業・不動産業・情報通信業・駐車場業・物品賃貸業・学術研究・専門・技術サービス業・宿泊業・洗濯・理容・美容・浴場業・その他の生活関連サービス業・教育・学習支援業・医療・福祉業・協同組合 ・サービス業
※電気業、熱供給業、水道業、娯楽業(映画業を除く)などは対象外となっていますので注意が必要です。
対象設備や自家消費型と余剰買取型太陽光発電
中小企業経営強化税制の対象設備は、下記のような条件を満たした設備です。
- 機械装置(160万円以上)
- 建物附属設備(60万円以上)
- 器具備品(30万円以上)
- 工具(30万円以上)
- ソフトウェア(70万円以上)
中小企業経営強化税制の対象となる指定事業は幅広い業種が対象となっています。ただし、その中に電気業は入っていません。太陽光発電の設備であっても、中小企業経営強化税制の対象になる設備と除外される設備があります。
対象になる設備
- 太陽光で発電した電力を全て自社で消費する「自家消費型太陽光発電」
- 太陽光で発電した電力の50%以上を自社で消費し、余った電力のみを売電する「余剰売電型」
対象にならない設備
- 太陽光で発電した電力を全て売電する「投資用太陽光発電」
- 太陽光で発電した電力を自社で消費し、余った電力を売電する「余剰売電型」の中でも自家消費率が50%未満のもの
自家消費率が50%未満の太陽光発電設備では、中小企業経営強化税制を活用することはできません。
しかし、類似制度の「中小企業投資促進税制」では自家消費率が指定されていないため、自家消費率50%未満の太陽光発電を検討している場合には「中小企業投資促進税制」を利用できるか検討してみましょう。
A類型とB類型で申請方法が異なる
中小企業経営強化税制では、どのような目的で設備を導入するのかにより類型が4つに分けられています。
- 生産性向上設備:A類型
- 収益力強化設備:B類型
- デジタル化設備:C類型
- 経営資源集約化に繋がる設備:D類型
太陽光発電の設備は、生産性向上設備のA類型、もしくは収益力強化設備のB類型に当てはまります。
A類型設備の条件
- 最新モデルである必要はなく、一定期間内に販売されたモデル
- 生産効率、エネルギー効率、精度など経営力を向上させるための指標が、旧モデルと比較して年に平均1%以上向上している設備
A類型の申請では、上記の要件2つについて工業会などから証明書の取得が必要です。
B類型設備の条件
対象設備のうち、「年平均の投資利益率が5%以上見込まれることについて、経済産業大臣(経済産業局)の確認を受けた投資計画に記載された投資の目的を達成するための必要不可欠な設備」、という要件を満たす必要があります。
B類型にて申請する場合は、公認会計士または税理士との事前確認、経済産業局への事前申請・許可など必要な工程がA類型より多いため注意が必要です。
脱炭素経営に役立つ支援は他にもある!
世界的に問題となっている地球温暖化を防止するには、CO2の排出量を削減する必要があります。
2050年にカーボンニュートラルを目指している日本も国として目標を達成できるよう、環境省や経済産業省・地方自治体から、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入に活用できる補助金が用意されています。
グリーン投資減税や中小企業経営強化税制などの税制優遇以外にも、脱炭素経営に役立てられる支援が数多くありますのでご紹介します。
ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」とは環境省が行なっている補助金制度です。
自己所有やオンサイトPPAモデル・リースでの自家消費型の太陽光発電設備・蓄電池の導入支援などを通して設備の価格を抑えることを促進し、ストレージパリティの達成・カーボンニュートラル・防災性を高めることを目的に行われています。
ストレージパリティとは、太陽光発電のみを導入するよりも、太陽光発電と蓄電池を併せて導入することがより経済的なメリットがある状態のことです。
そのため、自家消費型太陽光発電システムのみではなく、蓄電池も補助対象となっています。
補助対象 | 法人・個人事業主 |
補助対象設備 | 自家消費型太陽光発電システム・蓄電池 |
補助額 |
太陽光システム(蓄電池あり):PPA・リース5万円/kW・自己所有4万円/kW 太陽光システム(蓄電池なし):4万円/kW 蓄電池(家庭用):5.2万円/kWh 蓄電池(産業用):6.3万円/kWh |
需要家主導による太陽光発電導入促進補助金
「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」とは、経済産業省が行なっている補助金事業です。FIT・FIP制度や自己託送ではなく、再生可能エネルギーの活用を需要家が発電事業者と連携することで行われる太陽光発電の設備の導入に関する費用の一部を補助する制度です。
この制度は、2030年の長期エネルギー供給の見通しや積極的な温室効果ガス削減目標の実現に向けて、再生可能エネルギーの導入拡大を促進することを目的としています。
補助対象 | 民間企業・自治体 |
補助対象 | ①設計費 ②設備導入費(太陽電池モジュール・パワーコンディショナ・モニターシステム ・架台・接続箱・受変電設備・遠隔監視・制御装置・その他の付属機器) ③土地造成費 ④工事費 ⑤接続費 |
補助率 | 民間企業:1/2 自治体:2/3 |
実施期間 | 令和5年3月31日 |
カーボンニュートラル税制
日本が地球温暖化防止対策として目標にしている2050年のカーボンニュートラルの促進につながる税制として「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」が創設されました。
カーボンニュートラルとは、世界的な環境問題となっている温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることで、CO2の排出を実質ゼロにすることを言います。
「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」は、カーボンニュートラルにつながる設備を導入する企業を対象にした税の優遇制度となっています。
企業が太陽光発電や蓄電池の導入を行う際に、特別償却や税額控除の税制優遇により費用負担を削減することができます。
対象 | 青色申告をする、法人認定エネルギー利用環境負荷低減事業適応事業者である法人 |
適用対象資産 | 認定エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画に記載された生産工程効率化等設備等でその製作または建設の後事業の用に供されたことのないもの |
税制優遇 | 投資額の50%を特別償却 |
特別償却 | 令和5年3月31日 |
税額控除 | 5%の税額控除 温室効果ガスの削減に貢献できる設備であれば税額控除10% |
自家消費型太陽光発電関連の補助金制度は公募期間と予算に注意
燃料費の高騰による電気料金の値上がりや、環境対策のCO2削減のため、自家消費型太陽光発電の導入を検討する企業が増えています。自家消費型太陽光発電の導入費用を少しでも低減できるよう、国や都道府県が行なっている補助金制度の活用も併せて検討しましょう。
2022年11月現在、令和4年度の太陽光発電導入のために活用できるほとんどの補助金制度が公募を終えています。
しかし、令和5年度も太陽光発電の導入時に活用できる補助金制度が公募される予定です。
補助金制度を活用するためには、公募期間と予算に注意する必要があるため、早めに情報を収集し補助金の活用の準備をしておくことが大切です。
グリーン投資減税に代わる支援制度で脱炭素経営を始めてみよう!
グリーン投資減税についてはすでに対象期間が終了していましたが、税制優遇の制度や補助金制度など、国や地方自治体が行なっている多くの支援制度があることが分かりました。
自家消費型太陽光発電を導入することで、高騰を続ける電気料金の低減だけでなく、環境対策に向けたCO2削減を行うことができます。
今回の記事を参考に、支援制度を活用した太陽光発電の導入による脱炭素経営を検討してみましょう。
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自家消費型太陽光発電の導入に少しでも興味を持たれた方は、ぜひメールや電話にてお気軽にお問合せください。