脱炭素やCO2削減などが重要視される昨今、海外ではI-RECという再生可能エネルギー関連の制度が積極的に活用されています。これからは、海外に拠点を持つ企業はもちろん、国内を中心に事業を展開している企業もI-RECの詳細を把握した上で脱炭素経営を進めていくのが大切になるかもしれません。しかし、国内で目にする機会の少ない用語・制度でもあるため、なかなか利点や課題について把握できない方も多いかと思います。
そこで今回は、I-RECの意味や目的、類似制度との違いやメリットについて詳しくご紹介します。脱炭素経営へ向けて本格的に準備を進めている方や脱炭素経営に役立つ制度を活用していきたい方などは、参考にしてみてください。
I-RECとは何?
はじめに、I-RECの意味や特徴について1つずつ確認していきましょう。
海外の再エネ電力証書
I-REC(International Renewable Energy Certificate)とは、海外で発行されている再エネ電力証書(再生可能エネルギー電力証書、グリーン電力証書)のことです。
認証や発行を行っているのは、オランダに拠点を置く特定非営利法人「The International REC Standard Foundation」という組織です。
海外で電力事業を行う際、I-RECに対応している企業から電力を調達できれば、環境価値のある再エネ電力を活用できますし、脱炭素経営につながります。
再エネ電力であることを証明できる
再エネ電力証書は、再生可能エネルギー発電システムで発電した電気の環境価値を証書にしたものです。
再生可能エネルギー由来の電力かどうかを知るには、発電所や送配電設備を実際に確認する必要がありますが、現実的にはほぼ不可能といえます。
そこで、第三者が再エネ電力として認定し証書を発行することで、それが再エネ電力だと信頼できるようになるわけです。また、I-RECを発行している再エネ電源であれば、どこで発電された電力なのか、過去にトラブルを引き起こしていないかなどの詳細な情報も得ることができます。
I-RECの対象国は台湾やインドネシアなど
近年、世界中で脱炭素化や環境に配慮された製品の開発、持続可能な社会の構築へ向けた取り組みが行われています。
以下に主なI-REC対象国を紹介します。
- 台湾
- タイ
- シンガポール
- ベトナム
- インドネシア
- 中国
- アルゼンチン
- ブラジル
- ペルー
- メキシコ
新興国を中心にI-RECの普及が進んでいて、対象国での発電事業や電力調達の際に同制度を活用できます。
日本の大手電力会社や電力関連企業では、海外に進出している企業に向けてI-RECの発行や取得に関するサポートを行っています。
一般社団法人ローカルグッド創成支援機構では、2023年1月31日からI-RECの発行申請に関する受付を開始する予定です。今後は、国内でもI-RECの発行や購入を行えるようになるので、太陽光発電事業を展開したい企業や再エネ電力の調達を検討している企業にとっては追い風といえます。
I-RECの設立目的
I-RECを提供しているThe International REC Standard Foundationは、トラッキングシステム(どのような設備で発電されているのか追跡するシステム)のない国で脱炭素化を進められるよう、トラッキングシステムの構築や再エネ証書発行の支援を行っています。
つまり、資金や技術面などの理由により再生可能エネルギー由来の電力を示す証書の発行、再エネ電源であるかどうか証明するための追跡システムを導入できない国が、持続可能な社会や脱炭素化を達成できるようサポートするということです。
日本でI-RECを導入する主な目的は、再エネ電力の活用機会を増やすためです。国ではカーボンニュートラル目標を掲げていて、再生可能エネルギー設備の普及支援や再エネ電力を活用してもらうよう需要家向けのサポートも行っています。
そこで国がI-RECを導入すれば、再エネ電力を調達したい企業や再エネ電力の販売量を増やしたい企業にとってメリットになり、脱炭素社会に近づきます。
I-RECや他の証書との違い
I-RECの意味について把握したあとは、他の再エネ電力証書との違いについて確認していきましょう。
I-RECを構築したThe International REC Standard Foundationは、RECやGOといった制度を参考にしています。
REC
REC(Renewable Energy Certificate)は、RPS(Renewable Portfolio Standard)制度の導入を目的とした、再エネ電源の追跡システムで発行される再エネ電力証書です。
RPS(Renewable Portfolio Standard)制度は、電力関連企業に対して一定の再生可能エネルギー利用を義務付けるもので、イギリスやオーストラリア、韓国、アメリカの一部の州などで導入されています。また、日本でも2003年に電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法で導入されたものの、問題点が多く、2017年から段階的に廃止されているのが現状です。
I-RECとの主な違いは、RPS制度の導入が必要な点と北米で活用されているという点であり、対象国はアメリカとカナダ、プエルトリコです。
GO
GO(Guarantee of Origin)は、EUで設立された再エネ電力証書およびトラッキングシステムに関する制度です。
需要家(消費者)が、どのような発電方法で発電された電気か確認しながら比較検討できるよう設立された制度です。EU加盟国は、制度の導入およびトラッキングシステムの構築を義務付けられています。
I-RECは、対象国に関する義務付けや制限などが示されていません。そのため、EU加盟国でなくとも、I-RECを活用して再エネ電力証書の発行やトラッキングシステムの構築を進めることが可能です。
I-RECの発行メリット
ここからは、I-RECを発行することで得られるメリットについて紹介していきます。
海外拠点を持つ際に役立つ
海外拠点を持ちながら事業を進める際、I-RECを活用することで脱炭素経営へ向けた取り組みを同時並行で行えます。
どのような発電方法か追跡できない電源を調達した場合、脱炭素経営という点でデメリットにつながり、二酸化炭素の排出量削減効果が伸ばせません。
I-RECの対象国でオフィスや工場を設立するのであれば、I-RECを発行している発電事業者から電源を調達できます。
海外でオフィスや工場、倉庫などを構えたい企業は、I-RECを検討してみてはいかがでしょうか。
非FIT型電力の促進につながる
非FIT型電力を提供している発電事業者は、消費者に対して再エネ電力の価値を知ってもらう機会につながります。
固定買取価格の下落している2023年時点で、再生可能エネルギー設備を活用するには自家消費、もしくはFIT制度を活用せずに電気を販売する必要があります。
しかし消費者にとって、電気の質はどのような発電方法でも変わりません。また、再生可能エネルギー由来の電気かどうかを確認する方法は限られています。
そこでI-RECを発行すれば、再生可能エネルギー由来の電気であることを証明することが可能です。またI-RECを通じて再生可能エネルギーの重要性をアピールしたり、自社の取り組みを伝えたりできます。
CSRにつながる
I-RECの購入や発行は、企業にとってCSR活動につながります。CSR活動とは、企業に求められている社会的責任のことです。企業によってCSRの方針や内容は異なるため、独自で作り上げます。
再エネ発電事業者の場合は、I-RECの発行によって信頼性の高い再生可能エネルギー電力を供給できます。またCSRの観点から、このような取り組みは評価されやすいといえるでしょう。
さらに、I-RECの購入はカーボンオフセットにつながるためCSR活動とも言え、企業価値を向上させることが可能です。
I-RECの発行に必要な要件
I-RECの発行要件は対象国によって異なります。そのため発行地域に合わせて事業体制を見直す必要があります。
日本では、以下2点の要件を定めています。
- FIT非化石価値証書やグリーン電力証書、J-クレジットを発行していない電力
- 非FIT非化石価値証書として認められている電力
1つ目は、FIT非化石価値証書やグリーン電力証書、J-クレジットといった他の再エネ電力証書を発行していない電力というルールです。たとえば、太陽光発電由来の電気でJクレジットを発行したあとにI-RECを追加で発行することはできません。また、同じ発電分でI-RECと他の再エネ電力証書は同時に発行できません。
2つ目の「非FIT非化石価値証書として認められている電力」とは、FIT制度の認定を受けていない非化石燃料で発電された電気のことです。
具体的には、FIT制度の認定を受けていない太陽光発電をはじめ、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電が、非FIT非化石価値証書として認められています。
日本のI-REC発行例
一般社団法人のローカルグッド創成支援機構は、地域新電力インキュベーションプログラム(需給管理の研修など)やローカルグッドエコシステム(空き家再生など)といった、地域の活性化につながるプロジェクトを進めています。
同法人では、2021年2月にThe International REC Standard FoundationからI-REC発行主体に指定されて実証実験を行っていましたが、2023年1月31日より発行申請の受付を始めます。
I-RECを発行できるのは、Jクレジットなど他の再エネ電力証書を発行していない発電分および非FIT型の再エネ電力です。
今後は、ローカルグッド創成支援機構の取り組みを通じて少しずつI-RECの発行が増えていく可能性もあります。
脱炭素経営に向けてI-RECなどの再エネ電力証書を活用するには
I-RECなどの再エネ電力証書に関心を持ち始めた企業の多くは、どうすれば再エネ電力証書を活用できるのか悩んでいるかと思います。最後は、脱炭素経営に向けてI-RECなどの再エネ電力証書を含めた活用方法を紹介していきます。
非FIT型再エネ電力の購入
再エネ電源を導入せずに脱炭素経営を行いたい時は、非FIT型再エネ電力から発行されているI-REC、もしくは他の再エネ電力証書を購入という方法を選択できます
ただし、カーボンオフセット、あくまで二酸化炭素排出量削減の補助的な役割です。大幅な二酸化炭素排出量削減および脱炭素経営をアピールするには、カーボンオフセットに加えて再エネ電力の調達も欠かせません。
再エネ電源を設置せずに電力を調達するには、新電力や大手電力会社から提供されている再生可能エネルギープランを契約する方法もあります。九州電力の再エネECO極(きわみ)という法人向けプランでは、水力発電や地熱発電で発電した非FIT非化石証書付き電力を供給してもらえます。
非FIT型太陽光発電所の導入
自社で再生可能エネルギー設備の導入が可能なら、非FIT型太陽光発電所を導入してみてはいかがでしょうか。
再生可能エネルギーの中でも太陽光発電、低コストで導入できます。また、自社ビルや倉庫・工場の屋根、その他空き地や耕作放棄地などへ設置することが可能です。
FIT認定を受けずに稼働させるメリットは、主に2点です。
・FIT制度の影響を受けない
・電気料金削減と再エネ証書の収入を得られる
FIT制度の固定買取価格は年々下落していて、成長性という点で厳しい運用方法といえます。
一方、非FIT型太陽光発電は、自家消費によって電気料金負担を削減しながら再エネ電力証書の収入を得られますし、FIT制度の規制や変更などの影響を受けません。
I-RECは脱炭素経営に重要な証書の1つ!
I-RECは、オランダの非営利法人「The International REC Standard Foundation」が提供している再エネ電力証書およびトラッキングシステムを指します。また、日本の一般社団法人ローカルグッド創成支援機構が、I-RECの申請受付を2023年1月31日から始める予定で、国内でも導入可能な状況へ変化しつつあります。
脱炭素経営へ向けた取り組みを始めたい方や自社の二酸化炭素排出量を削減したい方は、今回の記事を参考にしながら非FIT型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
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