カーボンニュートラルは、脱炭素化に関する取り組みを示す用語です。経済産業省では、環境問題解決に向けてカーボンニュートラルの促進につながる税制の創設を行いました。これから太陽光発電事業を展開するにあたって税制を利用したい場合は、事前に詳細を把握しておくのが大切です。
そこで今回は、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制について分かりやすくご紹介します。太陽光発電事業へ取り組むにあたって負担を抑えたい方やSDGsやカーボンニュートラル関連の税制について知りたい方などは、参考にしてみてください。
令和3年度の税制改正によって環境関連の制度が創設
「いつからカーボンニュートラルに関する税制がスタートしているの?」など、そもそも優遇措置について分からなかった方も多いのではないでしょうか。
国では、令和3年度(2021年度)に脱炭素やカーボンニュートラルといった環境関連の税制改正を行いました。環境関連の税制改正は、脱炭素化やカーボンニュートラルにつながる設備導入や運用に対する費用の補助、税負担の削減といった内容です。
これから太陽光発電事業に取り組む事業者にとってはメリットの多い内容なので、確認しておくのが大切です。そこでまずは、令和3年度の税制改正によって創設された制度について確認していきます。
カーボンニュートラル投資促進税制
令和3年度の税制改正によって創設されたカーボンニュートラル投資促進税制は、脱炭素化につながる設備を導入する企業を対象にした、税の優遇制度です。国では、2050年までにカーボンニュートラル達成を目標としてかかげています。
脱炭素化に貢献できなおかつ国の目標達成につながる設備を導入した場合は、特別償却50%もしくは税額控除のいずれか優遇措置を選択できる仕組みです。
項目 | 内容 |
---|---|
特別償却 | 投資額の50%を特別償却 |
税額控除 | 5%の税額控除 温室効果ガスの削減に貢献できる設備であれば税額控除10% |
カーボンニュートラル投資促進税制の実施時期は、2024年3月31日までの予定です。太陽光発電や蓄電池の設置を行う企業は、特別償却や税額控除によって設備にかかる負担を削減することが可能です。
DX投資促進税制
令和3年度の税制改正では、dx投資促進税制という制度も創設されました。DX投資促進税制は、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)を実現するために設備の導入や技術開発を行った企業を対象にした税に関する優遇措置です。
デジタルトランスフォーメーションは、デジタル技術で社会や生活をより良いものへと変革させるという意味が込められています。
たとえば、AIによる太陽光発電の発電量予測や太陽光発電と蓄電池の自動制御システムなどは、脱炭素化に加えてDX化という点でも貢献しています。また、DX投資促進税制の優遇措置を受けられる可能性があります。
具体的には、2種類のうちいずれか1つの要件を満たすことができれば、優遇措置を受けられます。
項目 | 要件 |
---|---|
デジタル要件 | クラウド技術の活用やデータ連携、DX認定の取得など、システムや機器類、認定取得といった点が適用されるかどうかの基準 |
企業変革要件 | 生産性向上に見込める内容など、会社全体で取り組んでいることや計画が対象 |
要件を満たした場合の優遇措置は、カーボンニュートラル投資促進税制と同じく特別償却と税額控除のいずれか1種類です。
特別償却は、デジタルトランスフォーメーションに関する技術の活用や企業の変化につながる行動にかかった費用の30%を通常の減価償却とは別に計上できます。
税額控除は、デジタルトランスフォーメーションに関する技術や設備の導入などにかかった費用の3%もしくは5%という内容です。
太陽光発電や蓄電池などの設備だけでなく、DX化にも取り組んでいる企業は、DX投資促進税制の申請を検討してみてはいかがでしょうか。DX投資促進税制の実施時期は、2023年3月31日までとされています。
カーボンニュートラル投資促進税制の特徴
続いては、カーボンニュートラル投資促進税制の特徴についてより詳しく紹介していきます。
中長期環境適応計画の認定を受けた法人が対象
カーボンニュートラル投資促進税制の対象者は、青色申告を行っている法人の中でも認定エネルギー利用環境負荷低減事業適応事業者として認められている法人のみです。
そもそも認定エネルギー利用環境負荷低減事業適応事業者は、産業競争力強化法に沿って中長期環境適応計画の申請を行い、認定を受けた事業者を指しています。
より具体的には、産業競争力強化法に定められた認定事業適応事業者として認定を受けた法人の中でも、生産工程の効率化が図られる設備の導入について計画を作成・提出している事業者のみ、カーボンニュートラル投資促進税制の申請を行うことができます。
カーボンニュートラル投資促進税制の優遇措置を受けたい場合は、まず経済産業省のHPから事業適応計画に関する資料と申請書をダウンロードし、申請手続きと認定を受けておく必要があります。
認定を受けたあとは、経済産業省の窓口より相談を行ったり申請資料をダウンロードしたりしながら、カーボンニュートラル投資促進税制の認定手続きを進めます。
対象の設備は2種類
カーボンニュートラル投資促進税制の認定は、指定の要件を満たした設備を導入した場合にかぎり適用されるルールです。
以下に指定の要件を紹介します。
項目 | 内容 |
---|---|
(1)大きな脱炭素化効果を持つ製品の生産設備導入 | 燃料電池など、エネルギーの利用によって環境負荷の低減効果が期待できる製品の生産に用いる機械設備の導入 |
(2)生産工程等の脱炭素化と付加価値向上を両立する設備導入 | 事業所などの二酸化炭素排出量削減を見込める設備の導入 例:太陽光発電など |
「エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画(カーボンニュートラルに向けた投資促進税制)の申請方法・審査のポイント」(経済産業省)を加工して作成
上記いずれか1種類の要件を満たした場合は、カーボンニュートラル投資促進税制の優遇措置を受けられるという仕組みです。
(1)大きな脱炭素化効果を持つ製品の生産設備導入は、主に蓄電池や再生可能エネルギー発電設備などの生産に携わっている企業であれば認定を受けやすい内容です。
一方、(2)生産工程等の脱炭素化と付加価値向上を両立する設備導入は、産業用太陽光発電やメガソーラー、生産設備や機械設備を省エネタイプへ入れ替えるなど、事業所内の二酸化炭素排出量の削減や燃費向上といった状況であれば認定を受けやすい内容です。
大きな脱炭素化効果を持つ製品の生産設備導入による優遇措置
大きな脱炭素化効果を持つ製品の生産設備導入の要件を満たした場合に受けられる優遇措置は、税額控除10%もしくは特別償却50%のいずれか1つです。
税額控除10%は、脱炭素化の効果が見込まれる製品の生産設備に充てた投資額に対する優遇措置で、法人税の20%相当を上限として定められています。また、特別償却50%は、税額控除10%の要件と同じ生産設備の投資額に対する優遇措置です。
生産工程等の脱炭素化と付加価値向上を両立する設備導入による優遇措置
太陽光発電の導入など脱炭素化や付加価値向上につながる設備へ投資した場合は、投資額に対して特別償却50%もしくは税額控除5%、10%の措置を受けられる仕組みです。
なお、優遇措置を受けたい場合は、設備投資の他1年以内に炭素生産性を1%以上向上させる必要があります。
さらに炭素生産性を3年以内に7%もしくは10%向上させる計画を作成し、計画通りの効果を得ることができれば、特別償却もしくは税額控除を受けられます。
税額控除10%の優遇措置を受けるには、炭素生産性の向上計画を10%にし、実際に10%以上向上させることが条件です。
炭素生産性の数値は、付加価値額÷エネルギー起源二酸化炭素排出量で求められます。また、付加価値額は営業利益+人件費+減価償却費という計算で求めることが可能です。
金利最大0.2%の補給制度を受けられる
カーボンニュートラル投資促進では、利子補給制度という金融支援策も設けられています。
利子補給制度は、カーボンニュートラルの実現に向けた設備投資や事業展開を行う企業に対して、金融機関からの融資にかかる利子を最大0.2%負担してくれる制度です。申請期限は2024年度までの予定です。
対象は、CO2削減に関する10年以上の計画を作成、なおかつ産業競争力強化法の事業適応計画の認定を受けた事業者のみとされています。
なお、カーボンニュートラルに関する利子補給制度では、利子の補給だけでなく、経済産業大臣・財務大臣指定の指定金融機関から融資を受ける場合に0.1%の金利引き下げ措置も受けられるのが特長です。
太陽光発電や蓄電池を活用したCO2削減を目指す事業者は、利子補給制度についても注目してみてはいかがでしょうか。
dx投資促進税制と併用可能
カーボンニュートラル投資促進税制はdx投資促進税制と併用できるため、複数の優遇措置を同時に受けられます。
太陽光発電や蓄電池を活用した脱炭素化への取り組み、デジタルトランスフォーメーションに沿った社内のデジタル化やデジタル技術を組み込んだサービスの提供などを行っている企業は、カーボンニュートラル投資促進税制とdx投資促進税制2種類の認定に向けて準備を進めてみるのもおすすめです。
カーボンニュートラル税制に関する注意点
ここからは、カーボンニュートラル投資促進税制の申請や準備の際に押さえておくべき注意点を紹介します。
適用期限がある
カーボンニュートラル投資促進税制は、他の税制優遇措置と同じく適用期限があります。
適用期限は、2024年3月31日までと定められています。具体的には、2024年3月31日までに事業適応計画の認定を受け、なおかつ税制優遇措置の対象設備を導入、さらに必要書類を提出および認定を受ける必要があります。
必要な作業工程が多いので、なるべく早めに事業適応計画の認定と設備の導入を進めておくのも大切です。
税制優遇措置の適用条件が複雑
カーボンニュートラル投資促進税制の適用条件には複雑な内容も含まれていて、分かりにくさを感じる場合もあります。
まず、カーボンニュートラル投資促進税制の申請を行うには、前段階として産業競争力強化法の事業適応計画という計画の策定と認定を受ける必要があります。
さらにカーボンニュートラル投資促進税制の適用要件、生産工程等の脱炭素化と付加価値向上を両立する設備導入は、単に設備を導入すればいいということではありません。設備の導入後は、炭素生産性1%向上を達成し、根拠となる資料の提出を行います。
他にも炭素生産性の向上割合に関する条件が含まれているため、炭素生産性のチェックと計算、資料の整理、提出といった作業を適宜行わなければいけません。
カーボンニュートラル投資促進税制をはじめとした優遇措置を受けたい時は、支援制度に強い税理士法人へ相談し、代行してもらうのも大切です。
カーボンニュートラルの税制で設備費用の負担を抑えられる!
カーボンニュートラル投資促進税制は、国の創設した新たな支援制度です。脱炭素化へ向けた設備の改修、環境へ配慮された製品の生産、太陽光発電や蓄電池などの設備を導入している事業者は、特別償却や税額控除、利子補給といった支援を受けられます。
カーボンニュートラルに向けた取り組みを本格化させたい方や太陽光発電や蓄電池の導入による費用負担を軽減したい方は、今回の記事を参考にカーボンニュートラル投資促進税制などといった各種支援制度について比較検討してみてはいかがでしょうか。
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