気候変動の原因とされている温室効果ガスの多くは、二酸化炭素です。そのため、企業には、二酸化炭素を含む温室効果ガス排出量を実質0にする脱炭素が求められています。しかし、事業が多岐にわたるとどこから手を付けてよいのか、優先順位を付けるのが困難なこともあるでしょう。今回は、二酸化炭素排出の原因や排出量の多い部門をランキング形式で詳しくご紹介します。また記事の後半では二酸化炭素排出量の原因についても解説します。自社の排出量削減計画を立てる参考にしてください。
二酸化炭素排出量の多い部門ランキング
二酸化炭素の排出量は、産業や運輸部門など各部門によって大きく異なります。以下に二酸化炭素排出量の多い部門をランキングで紹介します。
【電気・熱配分前のデータ:総排出量 10億3,700万t(2022年度)】
順位 | 部門 | 比率 | 排出量(百万t) |
---|---|---|---|
1位 | エネルギー・転換部門 | 40.5% | 420 |
2位 | 産業部門 | 24.4% | 253 |
3位 | 運輸部門 | 17.8% | 185 |
4位 | 非エネルギー起源CO2(工業プロセスおよび製品の使用・廃棄物など) | 7.0% | 71.6 |
5位 | 業務その他部門 | 5.5% | 56.8 |
6位 | 家庭部門 | 4.8% | 49.6 |
【電気・熱配分後のデータ:総排出量 10億3,700万t(2022年度)】
順位 | 部門 | 比率 | 排出量 |
---|---|---|---|
1位 | 産業部門 | 34.0% | 352 |
2位 | 運輸部門 | 18.5% | 192 |
3位 | 業務その他部門 | 17.3% | 179 |
4位 | 家庭部門 | 15.3% | 158 |
5位 | エネルギー・転換部門 | 8.0% | 82.4 |
6位 | 非エネルギー起源CO2 | 7.0% | 72.6 |
出典:環境省 2022年度の我が国の温室効果ガス排出・吸収量について「別添2 2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(詳細)」
電気・熱配分前(※後述)を基準にした場合、電力会社やガス会社といったエネルギー生産企業の二酸化炭素排出量が全体の4割を締めています。また、電気・熱配分後で見た場合、産業部門の二酸化炭素排出量が全体の3割以上を占めています。
ガスや電力といったエネルギーの生産部門と製造業をはじめとした産業部門は、とくに二酸化炭素排出削減に向けて対策を進める必要があるといえるでしょう。
なお、電気・熱配分は、電気や熱の生産に伴い発生した二酸化炭素を、生産者・消費者のどちらの事業部門で計上させるかを示したものです。
電気・熱配分前は「生産者から排出された発電や熱」を基準に計上したものを指します。たとえば、火力発電の際に発生した二酸化炭素は、電力会社の電力事業=エネルギー・転換部門に計上される仕組みです。
一方、電気・熱配分後は、二酸化炭素排出量を「電力や熱の消費者」を基準に区分・計上させたものです。火力発電由来の電力を工場で消費した場合、その電力の発電時に発生した二酸化炭素は、エネルギー転換部門ではなく製造業=産業部門に計上されます。
産業部門とは、火力発電や石油製品の製造をはじめとした、エネルギーを使いやすい形に転換させる生産活動のことです。具体的には、熱や電力といったエネルギーを消費している第一次産業や第二次産業などを指しています。
部門別に二酸化炭素排出量を分析する際は、生産者側と消費者側どちらに計上されているのか把握した上で調べていきましょう。
二酸化炭素排出量の多い国
燃料燃焼による二酸化炭素排出量の多い主な国は、総務省統計局の「世界の統計2024」によると中国やアメリカ、インド、ロシア、日本です。ただし、このデータは燃料燃焼による二酸化炭素排出量であるため、自動車
以下に各国の燃料燃焼による二酸化炭素排出量と推移を紹介します。
国 | 二酸化炭素排出量1990年 | 二酸化炭素排出量2010年 | 二酸化炭素排出量2021年 |
---|---|---|---|
中国 | 20億8,890t | 78億3,100t | 106億4,850万t |
アメリカ | 48億0,310万t | 53億5,210万t | 45億4,930万t |
インド | 5億3,010万t | 15億7,210万t | 22億7,900万t |
ロシア | 21億6,350万t | 15億2,920万t | 16億7,760万t |
日本 | 10億5,390万t | 11億3,180万t | 9億9,810万t |
出典:総務省統計局「世界の統計2024 燃料燃焼による二酸化炭素排出量
日本やロシアの二酸化炭素排出量は、1990年と比較して減少傾向で推移しています。アメリカは、数億tの単位で増加と減少を繰り返しつつも横ばい傾向です。
二酸化炭素排出の主な原因
日本国内の場合は、主にエネルギー産業や工場、運輸といった部門で多量の二酸化炭素が排出されています。これから脱炭素経営を始める企業は、二酸化炭素の排出原因を把握した上でロードマップを作成していきましょう。
化石燃料をベースとした経済活動
化石燃料をベースとした経済活動が、二酸化炭素を大量に排出している原因の1つです。
日本では石炭や石油・ガスの化石燃料を用いたエネルギー生産や製造などが主流です。また、日常生活を支えるサービスや製品には、化石燃料をベースにしたものも多く、さまざまな場面で二酸化炭素を排出している状況といえます。
火力発電の活用による温室効果ガス排出
日本のベースロード電源やミドル電源、ピーク電源には、火力発電が含まれています。
ベースロード電源とは、発電コストの安い発電設備のうち常時一定の電力を供給可能な電源のことです。一方ミドル電源は、ベースロード電源で電力需要をカバーしきれない場合に活用される、次に安い電源を指しています。
ミドル電源とベースロード電源でも電力が足りない場合は、ピーク電源(コストが高い電源)に区分されている発電設備を稼働させるのです。
日本におけるこの3つの電源には、石炭・LNG・LPガス・石油による火力発電が含まれており、いずれも発電時に二酸化炭素を排出します。現在日本での発電電力量の7割以上を、火力発電が占めています。したがって通常通りに電力会社から電力を買えば、その分間接的に二酸化炭素を排出してしまうのです。
脱炭素経営への転換を図りたい事業者は、再生可能エネルギー発電設備の導入を検討する必要があります。また再エネ由来の電力が含まれた電気料金プランの検討するのもよいでしょう。
森林面積の減少による二酸化炭素吸収量減少
森林面積の減少は、大気中に含まれる二酸化炭素吸収量の減少につながり、気候変動問題の悪化を招きます。
世界の森林面積が減少していく速度は、少しずつ低下しています。しかし、人工林の成長鈍化などの原因により、2022年度における森林などからの二酸化炭素吸収量は約5,020万tで、2021年度より6.4%減少しています。
こうした現状に鑑み、政府はブルーカーボン(海草による二酸化炭素吸収)にも着目しています。
出典:環境省 2022年度の我が国の温室効果ガス排出・吸収量について「2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(概要)」
産業部門の二酸化炭素排出
前半で解説したように二酸化炭素は、産業部門でも大量に排出されています。
産業部門とは、農林水産業や製造業、鉄鋼業、建設業などといった業種のことです。とくに製造業の二酸化炭素排出量は、産業部門で90%以上を占めています。ボイラーや工業炉など燃焼を必要とする設備、電力を大量に消費する設備などを使用しているため、どうしても製造過程で二酸化炭素が排出される量は多くなります。
2013年度以降の二酸化炭素排出量は、製造業が減少傾向、非製造業に関しては横ばいです。製造業の生産量が減少したことも関係していますが、電力消費量当たりの二酸化炭素排出量も改善しているため、脱炭素に向けた取り組みも少しずつ進んでいるといえるでしょう。
たとえば、製造業の二酸化炭素排出量で約40%を占める鉄鋼業は、製品製造の過程で二酸化炭素を大量に排出しないよう、低炭素の鉄鋼開発を進めています。
他にも建設業では、環境に配慮された資材の調達や、施工時の二酸化炭素排出量を削減していくプロジェクトなど、さまざまな方法で環境負荷低減に向けた取り組みを行っている状況です。
出典:環境省 2022年度の我が国の温室効果ガス排出・吸収量について「2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(概要)」
貨物輸送や旅客輸送での排気ガス
運輸部門の貨物輸送や旅客輸送では、車両の排気ガスから二酸化炭素を含む温室効果ガスが排出されています。輸送量がそのまま排出量に直結します。
ただし、運輸部門の二酸化炭素排出量は、2001年度にピークを迎えたのち、減少傾向にあります。コロナ禍で、リモートワークへの切り替えや自粛によって自家用車や公共交通機関の使用率が減少した結果、2019年から2020年にかけては大きく減少しました。現在は旅客輸送量が増えたことで二酸化炭素排出は前年比増となっています。
運輸部門における対策としては、EVやPHEV、燃費の向上したガソリン車への切り替え、物流の整備・効率化などが挙げられます。
企業に求められる二酸化炭素排出削減を行うには?
二酸化炭素の排出量増加は、気候変動の深刻化を招く重大な問題です。どの企業にも、二酸化炭素の排出削減に向けた対策が求められます。
続いては、企業が二酸化炭素排出削減に向けて行うべき対策をわかりやすく紹介します。
自社の二酸化炭素排出量を計測・分析
二酸化炭素の排出削減を始める際は、まず自社でいくら二酸化炭素を排出しているのか計測・分析しましょう。二酸化炭素がどの部門で何t排出されているか分析できれば、削減目標や対策方法を明確にできます。
二酸化炭素排出量の分析として見落としがちなのが、サプライチェーン排出量です。サプライチェーン排出量は、自社の事業活動で排出されている二酸化炭素排出量だけでなく、原材料の調達や輸送、自社製品の使用や廃棄といった一連の流れで発生する二酸化炭素も含まれています。
サプライチェーンまで正確な二酸化炭素排出量や関連データを記録することで、部門ごとの課題や優先的に対策すべき項目を分析することが可能です。また、サプライチェーン排出量の分析が、取引先との脱炭素に関する情報共有や連携を始めるきっかけにつながります。
省エネによって二酸化炭素排出量を抑える
自社で取り組める二酸化炭素の排出削減方法は、やはり省エネです。社内での節電活動やOA機器や設備の切り替えといった対策が挙げられます。
以下に省エネの方法をいくつか紹介します。
- 再生可能エネルギー由来電力を含む電気料金プランの契約
- 使用しない会議室や通路の照明を消灯する
- 空調の設定温度を調整
- 省エネ性能の高い機器へ交換
とくに節電活動はすぐに始められるため、OA機器の電源や照明をこまめに切るだけでも、消費電力量および二酸化炭素の排出量削減につながります。また、再生可能エネルギー由来の電力が含まれている電気料金プランへの切り替えは、省エネ機器の導入などと比較して負担の少ない対策です。
カーボンオフセットを実施
事業活動で排出される二酸化炭素をすべて削減することは、現実的ではありません。そこで検討すべき方法の1つが、カーボンオフセットです。
カーボンオフセットとは、他社で創出された二酸化炭素の削減実績を購入しながら脱炭素を目指す取り組みのことです。
クレジットの売買を行いたい場合は、Jクレジット制度を活用することで二酸化炭素の排出実績を購入することが可能です。
ただし、カーボンオフセットは、実際に二酸化炭素を削減しているわけではありません。同制度に頼り過ぎず、二酸化炭素排出量の削減を目指すうえで、避けられない排出に関してはカーボンオフセットを利用するなどして活用するとよいでしょう。
再生可能エネルギーで自家消費
事業やサービスの大幅な見直しを行わずとも、事業活動に必要な電力にかかわる二酸化炭素を直接削減できるのが、再生可能エネルギーならではの大きなメリットです。
再生可能エネルギーによる発電は、太陽光発電や風力発電といった枯渇しないエネルギーを活用した設備で、発電時に二酸化炭素を排出しません。また、バイオマス発電は、火力発電より二酸化炭素排出量を抑えられます。
再生可能エネルギーによる発電設備を導入し、発電した電力を使用することで買電量(電力会社から供給されている電力の購入量)と二酸化炭素排出量の削減につながります。
企業の脱炭素には太陽光発電がおすすめ
脱炭素経営に向けた第一歩としておすすめの方法は、太陽光発電の導入です。再生可能エネルギーの中でも太陽光発電は初期費用を抑えられるほか、さまざまな場所に太陽光パネルを設置することが可能です。
たとえば、自社のビルや工場、倉庫の屋根や屋上に太陽光パネルを設置できます。また、地上設置はもちろん、水上設置やカーポートの屋根、農地、遠隔地での発電も可能です。
さらに、太陽光発電の場合はエネルギーを確保しやすく、影の少ない環境であれば一定の発電量を見込めます。
二酸化炭素の排出量減少に太陽光発電の効率的な活用が大切!
二酸化炭素の主な排出原因は、化石燃料を活用した産業構造や大量生産・大量消費型社会、森林の伐採などが挙げられます。
すぐに取り組める対策の1つは、社内での節電活動です。しかし、節電の二酸化炭素排出削減効果には限界があるため、再生可能エネルギーの太陽光発電を導入するのもおすすめです。
脱炭素経営の方法に悩んでいる方や未経験者でも導入しやすい再生可能エネルギーを探している方は、今回の記事を参考にしながら非FIT型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
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