スネイルトレイルは、太陽光パネル表面の微小クラックで起こる不具合のことで、発生後すぐに故障につながらないものの、注意すべき事象です。そこで今回は、スネイルトレイルの特徴や発生原因、対策などについて詳しくご紹介します。メガソーラーのクラックに気付いた方や中・大規模の太陽光発電を運用し始めた個人の方で、スネイルトレイルについて詳しく知りたい方などは、参考にしてみてください。
スネイルトレイルとは?
まずは、スネイルトレイルの意味や特徴について確認していきましょう。
太陽光パネル表面の微小なクラック(ひび)を原因とする不具合
スネイルトレイル(Snail Trail/Snail Track)とは、太陽光パネル表面に発生した小さなクラック(ひび)を原因とした化学反応および不具合のことです。かたつむり(スネイル)の這った跡(トレイル)のように見えることから、このように名付けられました。
太陽光パネルは、複数の太陽電池と接続線、パネルを支えるバックカバーと強化ガラスによる受光面などで構成されています。
スネイルトレイル現象は、太陽光パネルに搭載されている太陽電池で起こります。不具合の一種ですが、発生後すぐに大幅な発電量低下や故障などにつながりにくい現象でもあります。そのため、多くの太陽光パネルメーカーでは保証対象外となっています。
しかし、発電量が少しずつ低下していく事例もあることから、放置できない問題なのです。
温度や湿度などによる負荷が原因
スネイルトレイルが起こる主な原因は、微小なクラックと太陽光パネル設置後の温度や湿度の変化、通電や衝撃による負荷などとされています。
早いケースでは、太陽光パネル設置後3ヵ月など1年以内に起こることがあり、クラックの跡に沿って黒色の模様が現れたのち、少しずつ白色に変化していきます。
たとえば、輸送中の衝撃でパネル表面に小さなヒビが入ってしまった場合などは、スネイルトレイルにつながる可能性があります。
特に大量の太陽光パネルを設置するメガソーラーを導入した方は、スネイルトレイル現象の発生状況を定期的に確認することをおすすめします。
スネイルトレイルのメカニズム
スネイルトレイル現象は、クラックと水蒸気によって引き起こされます。
スネイルトレイルの原因といえる微小なクラックは、外部からの強い衝撃や落雷、温度変化などで発生します。クラックは細かなひび割れなので、ここからホコリや水分などが浸透するおそれがあります。
また、水蒸気は封止材やバックシート(パネルを保護するシート)などを経由してパネル内に浸透していく傾向があるため、マイクロクラックが発生してしまうと、各部材のすき間から水分や不純物も入り込む可能性があります。
水分が透過してしまうと、太陽電池のフィンガー電極に含まれる銀と反応することによって、銀イオンの生成につながります。封止材に銀イオンが広がったのちに太陽光を受光すると、化学反応によりスネイルトレイル現象が起こる仕組みです。
スネイルトレイル現象を抑えるには、マイクロクラックの早期発見と水蒸気の透過防止策を考える必要があります。
スネイルトレイルは太陽光パネルメーカーの保証外?
前半でも触れましたが、スネイルトレイル現象は太陽光パネルメーカーの保証対象外とみなされています。
なぜなら、スネイルトレイルは一般的な太陽光パネルメーカーにとっては不良品ではなく、変色といった見解だからです。そのため、パネル交換や修理補償などのサービスを受けることはできません。
スネイルトレイルの発生後、発電量の低下や故障が発生した場合には補償される可能性もあるものの、現実的には証明するのが難しい現象ともいえます。
スネイルトレイルの対策方法はある?
スネイルトレイルは、発生後すぐに発電量低下といった事象を招くものではありません。しかし、長期的にどのような影響を与えるのかわからないため、発生させないよう対策をとるべきです。
そこでここからは、マイクロクラックとバックシート追加、封止材の3点から、スネイルトレイルの対策方法を確認していきましょう。
マイクロクラック自体は発生してしまう
スネイルトレイルの原因でもあるマイクロクラックは、発生を抑えるのが難しい事象です。
なぜなら、太陽光パネルの製造時や輸送、搬入、架台への固定、稼働後など、あらゆる場面で発生しやすいためです。特に製造時や輸送、搬入、施工時の衝撃などは、オーナー側ではどうすることもできません。
そのため、マイクロクラックの発生を前提として対策を考えるのが、現実的な方法だといえます。
バックシートの追加もあるがコスト面で現実的ではない
バックシートの追加や、水分・水蒸気を透過させにくい樹脂製バックシートを追加する方法は、スネイルトレイルの発生確率を抑える方法として検討できます。
バックシートは太陽電池の背面を保護するためのシートで、どのパネルにも搭載されています。
バックシートを追加すればするほど、背面から水分を透過させにくくすることができます。
ただし、水分の透過を100%抑えることはできませんし、1度透過してしまうと外部に蒸発しにくくなってしまう可能性もあります。さらにバックシートの追加は費用面の負担が大きく、現実的な方法とはいえません。
封止材を活用した化学反応の抑制が現実的な対策
スネイルトレイルの発生確率を抑える現実的な対策は、封止材による化学反応の抑制です。
封止材は、太陽光パネルのガラスとバックシートを接着している素材で、太陽電池の保護といった役割も持っています。
スネイルトレイル対策の施された封止材は、マイクロクラックから透過してきた水分を封止材内部に拡散させない素材で構成されています。仮に水分が太陽光パネルに入ったとしても、太陽電池のフィンガー電極に含まれる銀との化学反応を抑えることが可能です。
スネイルトレイルを早期に対処するには?
既にメガソーラーや低圧太陽光発電を運用している場合は、今すぐスネイルトレイル対策の施された太陽光パネルに交換することが難しい状況です。今できることは、スネイルトレイルの早期発見と補修しかないといえます。
最後は、スネイルトレイルを早期に対処するためのポイントについてわかりやすく紹介します。
目視で太陽光パネルの色や模様を日々チェック
スネイルトレイルを見つけるには、目視などで太陽光パネルの色や模様を毎日確認するのが大切です。マイクロクラックは、製造過程や搬入時など設置時点で既に発生している場合もあります。そのため、スネイルトレイルは設置後1年以内に発生しやすい現象です。
そこで稼働開始時点から定期的に目視、ドローンなどによるチェックを進めていけば、早い段階でマイクロクラックやその他の異常を発見することが可能です。
マイクロクラックを発見したらO&Mや施工販売業者へ連絡
万が一マイクロクラックやスネイルトレイルのような事象を発見した場合は、施工販売業者もしくはO&M業者へ連絡し、早めに点検してもらいましょう。
太陽光パネルや周辺機器の電気・機械的な点検、正確な判断などは、専門的な資格のある太陽光発電専門業者でなければ対応できません。
特にO&M業者は、太陽光発電設備のあらゆる不具合や事象について把握しているプロなので、スネイルトレイルに関する事象や不具合についても分析してもらえます。
また、スネイルトレイルによって発電量が低下したり故障したりした場合は、スネイルトレイル対策をしている太陽光パネルを検討・導入してみるのもおすすめです。
スネイルトレイル対策には日々の目視点検とO&Mサービスの活用が大切!
スネイルトレイルは、太陽光パネルの太陽電池に発生したマイクロクラックが原因で起こる化学反応です。マイクロクラックから入り込んだ水分と太陽電池のフィンガー電極による化学反応で銀イオンが生成され、黒もしくは白色の模様が浮かび上がる仕組みです。
少しずつ発電量が低下していく可能性もあるため、日々の目視チェックや専門業者による定期点検などを実施していくことをおすすめします。
メガソーラーのメンテナンスに関して意識し始めた方や、スネイルトレイルがないかすぐに確認したい方は、今回の記事を参考にしながらO&Mサービスを検討してみてはいかがでしょうか。
とくとくサービスでは、産業用太陽光発電のメンテナンスサービスを提供しています。定期点検メニューでは、太陽光パネルの割れや汚れをはじめとした各部品のチェック、高圧洗浄、敷地内の清掃、遠隔監視、急なトラブルに対する駆けつけサービスなど、さまざまなサポートを受けられるのが特徴です。
また2023年4月25日からは、期間限定の無料ドローン点検を実施しているので、ドローンによる点検サービスを試してみたい方もぜひお気軽にご相談ください。