こんなにある太陽光パネルの種類!期待の新技術も併せてご紹介

こんなにある太陽光パネルの種類!期待の新技術も併せてご紹介

太陽光発電の導入を検討している人にとって、「何を選べば良いのか」というのは大きな問題です。コストや変換効率(発電能力)、形状、耐久性などさまざまな条件で比較検討してみるものの、結局どれを選べば良いのか分からなくなってしまうことも少なくありません。

そこで当記事では、2024年時点で実用化されている太陽光パネルのさまざまな種類を紹介し、特徴やメリット、デメリットなどを解説していきます。それらを踏まえた上で太陽光パネルの選び方についてもいくつかのポイントで解説していきますので、太陽光発電の導入は決めているものの、太陽光パネルの種類を決めかねている方は、ぜひ参考にしてください。

太陽光パネルの種類|シリコン系

太陽光による発電は、太陽光パネルの表面にあるモジュール内で行われています。このモジュールを材質で分類すると、シリコン系、化合物系、その他に大きく分けられます。

それでは最初に、多くの太陽光パネルで用いられているシリコン系から解説を始めましょう。

シリコン系の太陽光パネルとは

シリコンを化学的な表現にすると、ケイ素です。とても用途の広い素材で、今や世界中の国々が技術力を競い合っている半導体にもシリコンが用いられています。米国のIT企業がひしめく地域のことを「シリコンバレー」というのも、シリコン(=半導体)の産業が多く集積していることに由来しています。

シリコン系の太陽光パネルにも、このシリコンが用いられています。以前は半導体に用いられるシリコンと同等の高価な半導体グレードが使用されていましたが、今ではソーラーグレードといって、コスト面でも優位性の高いものが用いられています。

他の材料と比べるとコストが安いため、最も多くの太陽光パネルで採用されています。

シリコン系太陽光パネルのメリット、デメリット

シリコン系太陽光パネルのメリットは、何といってもコストが安いことです。シリコンの価格が安いことから太陽光パネル自体の価格も安く、大規模なメガソーラーなどを設置する際には低コストであることが大きな意味をもちます。

その一方でシリコンは高温に弱い特性があるため、夏場の暑い日に太陽光パネルの表面が高温になると、発電の出力が低下してしまうことはデメリットといえます。

それでは次に、シリコン系太陽光パネルの中でも4つの種類に細分化して解説を進めていきたいと思います。

単結晶シリコン

単結晶シリコンはシリコン系太陽光パネルの中でも元も歴史が古く、当初は太陽光パネルというと単結晶シリコンのことを指している時期もありました。

発電効率が安定しやすく、また出力が高いことがメリットです。そのため、太陽光パネルを設置する面積が小さい場所であっても設置しやすいということで、家庭用の太陽光発電システムでも多く採用されています。

その一方で単結晶シリコンは高温に弱いというシリコンの弱点が最も顕著で、夏場の暑い日にはどうしても発電効率が落ちてしまいます。

多結晶シリコン

単結晶シリコンはシリコンの配列性に厳格で、きちんと配列が整っているもののみが単結晶と呼ばれます。それに対して多結晶シリコンは配列がそこまで整っていないものを指し、単結晶と比べると価格が安く、太陽光パネルのコストダウンにメリットを発揮しています。

単結晶のようにシリコンの配列が整っていないため、発電効率は多結晶のほうが低めです。価格を取るか、発電効率を取るかの選択肢に置いて、コストを重視する場合は多結晶シリコンの太陽光パネルを選択することになるでしょう。

アモルファスシリコン

上記の単結晶と多結晶はいずれも結晶構造をもつシリコンですが、その一方で結晶構造をもたないシリコンもあります。アモルファスシリコンは、結晶構造をもたないシリコンの中でも発電性能のあるシリコンで、太陽光パネルにも採用されています。

価格が安く、シリコンの膜が薄いため加工しやすく、応用が利きやすいことなどがメリットですが、その一方で発電効率は低めです。小さな面積で本格的な発電量を確保する場合には不向きなので、遊休地や山間部など大規模な発電施設に適しています。

HIT(ヘテロ接合型)

「HIT」というのは、パナソニック社のブランド名です。一般的に複数のシリコンを組み合わせた太陽光パネルは、「ヘテロ接合型」と呼ばれています。異なる種類のシリコンを組み合わせることで「いいところ取り」をしているため発電効率が高く、高温になっても出力が低下しにくいなど、性能の高さが魅力です。

その一方で製造工程が複雑になることから、どうしてもコストは高くなります。

太陽光パネルの種類|化合物系

シリコン系の次に普及しているのが、化合物系の太陽光パネルです。化合物系には多様な種類があるので、それらの種類も含めて解説していきましょう。

化合物系の太陽光パネルとは

シリコン半導体をモジュールに用いるのが従来の太陽光パネルの常識でしたが、さまざまな物質を化学合成することでシリコン半導体に近い性質の物質を作り出し、それを太陽光パネルに用いたものを化合物系太陽光パネルといいます。

詳しくは後述しますが、CIS(CIGS)やCdTe、III-V族多接合などの種類があります。

化合物系太陽光パネルのメリット、デメリット

シリコンは自然由来の物質ですが、化合物系は地球上に存在するさまざまな物質を化学合成しているため、太陽光発電に特化した物質を作り出しやすいことがそのまま強みとなっています。

例えば、CISやCIGSはシリコン系と比べると圧倒的に低コストなので、大規模な発電施設などに広く普及する可能性があります。

その一方で、自然由来ではないことからモジュールの材料に有害物質が用いられることもあり、種類によっては日本国内で製造されていない太陽光パネルもあります。

CIS、CIGS

CISやCIGSを総称して、CIGS系といいます。このCIGSは銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)という元素記号の頭文字を並べたものです。これらの物質を化学合成することで、シリコン化合物と同等の性能を持たせたのが、CIGS系太陽光パネルです。

日本ではホンダソルテックやソーラーフロンティアが製造している太陽光パネルの種類で、ホンダソルテックの太陽光パネルは、甲子園球場の銀傘に設置された太陽光パネルとしても知られています。

CdTe

上記のCIGSのように、CdTeもカドミウム(Cd)とテルル(Te)を化学合成したモジュールを使用した化合物系太陽光パネルです。コストの安さと発電効率のバランスに優れ、コストパフォーマンスの高さは化合物系ならではなのですが、カドミウムは広く知られている毒物なので、日本ではカドミウムを使ったCdTe太陽光パネルは製造されていません。

とはいえ、コストパフォーマンスを重視する人からの支持は高く、欧米などでは一部で普及している種類です。

III-V族他接合

III族とV族と呼ばれる元素を化学合成した太陽光パネルで、変化効率は40%以上になるという超高性能モジュールです。現在は主に、宇宙空間で使用されていますが、コストの高さという最大の課題を解決できれば、今後大きく普及が進む可能性を秘めています。

太陽光パネルの種類|番外編

シリコン系、化合物系以外にも、太陽光パネルの種類があります。ここでは番外編として、今後開発が進めば実用化されていくかもしれないといわれている、さまざまな太陽光パネルの種類を紹介します。

日本発の技術で開発が進められているものもあるので、期待しつつ今後の進展を見守っていきたいと思います。

ペロブスカイト太陽電池

ペロブスカイトは、桐蔭横浜大学の宮坂教授率いるチームが発明し、開発が進められている日本発の太陽電池技術です。「塗って乾かす」という印刷技術がベースになっており、従来のようにシリコンや化合物を「敷き詰める」のとは全く違った技術的アプローチです。

塗るだけなのでとても構造が薄く、太陽電池そのものを曲げたりすることもできます。また、窓に塗って窓を太陽電池に変身させることもできます。

原料となるヨウ素は、日本国内で調達できるため、海外からの材料輸入に頼る必要性が低く、まさに日本の太陽電池として今後技術的進歩と普及が期待されています。

色素増感太陽電池

色素増感太陽電池は、光を吸収する性質をもつ色素を用いて電力に変換する太陽電池です。電気を通す、特殊なガラスと色素が混合した酸化チタンナノ粒子薄膜と電解質で構成され、この薄膜の色素が太陽光を吸収すると電子を放出します。この電子を酸化チタンが受け取って、電気に変換する仕組みになっています。

まだまだ変換効率の低さや寿命の短さなどの課題がありますが、簡単に製造できることや応用しやすいことなどから、これまで太陽光パネルを設置できなかった(しなかった)ような場所で活躍するかもしれません。

有機半導体太陽電池

一般的な太陽電池は、p型とn型の二層構造になっていますが、この有機半導体は半導体そのものに両方の性質があるため、電極を取り付けるだけで太陽電池としての能力を発揮します。

軽量であることやコストが安いことなどメリットは多く、次世代の太陽電池としての普及が期待されています。

量子ドット系太陽光パネル

まだまだ研究段階ですが、量子ドットと呼ばれる物質を用いて太陽光を電気に変換する技術があります。これまでの太陽電池が課題としてきたことを克服できる可能性があり、実用化されれば「夢の太陽光パネル」となるかもしれません。

太陽光パネルの選び方

さまざまな太陽光パネルの種類について紹介してきましたが、ここではそれらの内容を踏まえて、これから太陽光発電を導入しようとお考えの方に向けて、太陽光パネルの選び方について解説します。

定番のシリコン結晶系太陽光パネル

化合物系やそれ以外の太陽電池技術が続々と登場していますが、2024年時点でも依然としてシリコン系太陽光パネルが市場の主役です。高温に弱いことなどの課題が指摘されてきましたが、主流であるシリコン系太陽光パネルは技術的進歩も目覚ましく、今ではこうした問題もかなりのレベルで解決されています。

そうなると、シリコン系太陽光パネルの中でも単結晶や多結晶、アモルファスシリコンなどどれを選ぶべきか?という選択肢になると思いますので、次項からはシリコン系の中でも何を選ぶべきかに話を進めましょう。

コスト重視なら『多結晶シリコン』

シリコン系太陽光パネルの種類を解説している中で、コスト面で最も優位性があるのは、多結晶シリコンであると述べました。その優位性は依然として根強く、コスト重視で太陽光発電を導入するのであれば、多結晶シリコンが適しています。

多結晶シリコンは多くのメーカーが製造しているため、メーカーの選択肢が広いこともメリットです。

出力で選ぶなら『HIT』

より多くの出力(発電量)を望むのであれば、ハイブリッド型(HIT)がおすすめです。単結晶シリコン太陽光パネルよりも発電効率が高く、高温になっても出力が低下しにくいという特性があるため、あらゆる局面でしっかりと発電能力を発揮してくれるでしょう。

全方向から日照がある場合は『両面太陽光パネル』

設置の仕方についても、状況に応じておすすめの種類は異なります。周辺に太陽光を遮るものがなく、全方向からの日照が期待できるのであれば、両面太陽光パネルという選択肢があります。

野立て太陽光発電での有効性が高く、文字通り両面に太陽光パネルを設置することであらゆる方角からの太陽光をしっかりと電力に変換します。

重量の問題で選ぶなら『軽量太陽光パネル』

家庭用太陽光発電では、ほとんどの場合屋根に太陽光パネルを設置します。後付けだと屋根の強度が太陽光パネルを載せることを想定しておらず、雨漏りや強度低下などの問題が発生する恐れがあります。

その場合は、軽量であることを優先して太陽光パネルを選ぶのがよいでしょう。軽量太陽光パネルは各社からさまざまなタイプを開発しており、シリコン系であっても軽量化が進んでいます。

太陽光パネルの重量と屋根の強度との兼ね合いについては、施工店・販売店が専門的な知見を有しています。優良な施工店ほど総合的な提案が期待できるので、重量の問題をどう克服するのかを尋ねてみるのも施工店選びに有効だと思います。

まとめ

ひと口に太陽光パネルといっても、さまざまな種類があることをお伝えしました。それぞれに特性やメリット、デメリットがあるので、施工店の提案も参考にしつつ最適な種類を選ぶようにしてください。

また、本文中ではまだ開発段階の新しい技術についても紹介しました。どれも太陽光発電そのものを大きく変える可能性を秘めているので、今後の開発進展に期待したいところです。

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