太陽光発電の過積載によるピークカットは、発電量(つまり売電量)を増やすことができる手法として、太陽光発電業界では広く知られています。
日照量が比較的少ない地域であっても少ない日照量を有効に活用できることや、売電量の増加によって収入アップも期待できるため、これから太陽光発電を導入しようとお考えの方には、ぜひとも知っておいていただきたい知識です。
当記事では、太陽光発電のピークカットに関する基礎知識と、いわゆる節電のためのピークカットとの違い、そしてピークカットによって得られるメリットや知っておくべきデメリットなどについて解説します。
太陽光発電のピークカットとは
「ピークカット」には、ピークをカットする、つまりピークを抑えるといった意味合いがあります。太陽光発電でのピークカットは発電量を増やすための工夫であり、ピークカットをすることによって発電量(売電量)アップが期待できます。
なぜ、ピークカットをすると発電量が多くなるのでしょうか、最初に基礎知識から解説していきましょう。
「ピークカット」には2つの意味がある
太陽光発電や電力使用には、実は2つの「ピークカット」があります。1つは太陽光パネルの過積載によるピークカットで、これは先ほどから述べているように発電量アップのための手法です。そして、もうひとつのピークカットは電力使用量のピークを抑えるという意味で、こちらは光熱費の削減や節電が目的です。
この2つの「ピークカット」は用いられる業界や概念に似ている部分があるため混同されやすく、実際に「太陽光発電 ピークカット」といったキーワードで検索をしても、節電のピークカットについて解説しているネット記事にたどり着くことも珍しくありません。
最初に誤解のないように述べておくと、当記事は太陽光発電の過積載によるピークカットについて解説します。
太陽光発電のピークカット
太陽光発電のピークカットは、太陽光パネルの過積載をすることによって起きる現象です。太陽光発電システムは、太陽光パネルとパワーコンディショナー、そしてケーブルなど付帯する機器類で構成されています。
パワーコンディショナーは設置している太陽光パネルの出力規模に応じて機器を選びますが、そのパワーコンディショナーが有するキャパシティを超えた出力の太陽光パネルを設置するのが、過積載です。
その仕組みについては後述しますが、「太陽光発電のピークカット」と呼ばれているものは、太陽光発電の発電量を増やすためにコンディショナーの変換能力を超える出力規模の太陽光パネルを設置することだと考えて問題ありません。
節電のためのピークカット
もうひとつの、節電のためのピークカットは、電力使用のピークとなる“山”を低くする工夫のことです。これは知らない方も多いかもしれませんが、電気料金は使えば使うほど高くなる仕組みになっています。
こちらは、関西電力の「従量電灯A」の料金一覧です。
これを見ると、電力使用量が多くなるほど電気料金の単価が高くなっていることが分かります。普通は商品を多く買えば買うほど安くなるものですが、電気料金はその逆です。これは関西電力だけではなく、どの電力会社であっても同じです。
しかもこの電気料金単価は、ピーク時の電力使用量によって決まります。つまり、ピーク時の電力使用用を抑えることで適用される単価が低くなるため、電気料金の削減に効果があるというわけです。
節電のためのピークカットをするとピーク時の電力使用量が抑えられるため、節電だけであなく電気料金の節約にも効果があります。
過積載とピークカットの関係
先ほど、過積載とはパワーコンディショナーの変換能力を超えた出力規模の太陽光パンるを設置することだと述べました。貨物車の過積載と全く同じ語句ですが、意味は全く異なります。
通常は、太陽光パネルの容量に合わせてパワーコンディショナーを選びます。そのため、発電量のピーク時であっても、太陽光パネルから送られてきた電気はすべてパワーコンディショナーによって変換されます。
しかし、過積載の場合はピーク時の発電量がパワーコンディショナーの変換能力を超えることがあります。その時は超過分の電力が捨てられることになりますが、過積載にしているとピーク時以外の発電量も多くなります。
ピーク時以外の発電量についてはパワーコンディショナーの変換能力の範囲内に収まるため、ピーク時以外であっても多くの電力供給が期待できます。
過積載をするともったいなくないの?
太陽光発電のピークカットでは、文字通り発電量がピークに達した時の超過分は「カット」されます。つまり、発電しているのに電力は捨てられることになります。
これだともったいないのでは?と思う方も多いと思いますが、過積載によって1日を通した発電量は底上げされるため、捨てられる分よりも多くの発電量アップが期待できるわけです。
ピークシフトとは
ピークカットとよく混同される言葉に、ピークシフトがあります。こちらは太陽光発電との直接の関わりはなく、どちらかというと節電のためのピークカットと混同されることの多い言葉です。
ピークカットは文字通り、ピーク時の電力使用量を抑えることです。節電によってピーク時の電力使用を抑えるため、1日を通じた総使用量も節電分だけ少なくなります。
それに対してピークシフトは、ピーク時の電力使用量をどこか別の時間帯にシフトすることを意味します。
例えば、昼間よりも電気料金の安い夜間に洗濯機を回すというの、ピークシフトの一種です。同様に夜間の電力を利用してお湯を沸かす給湯器もピークシフトのための機器ですし、夜間に充電をして昼間に使用することができる蓄電池も同様です。
ピークシフトの場合、1日の電力使用量の総量は変わっていません。しかし、ピーク時の電力使用量を抑えられるため、電気料金の節約効果があります。
太陽光発電のピークカットで得られるメリット
太陽光発電のピークカットには、実に多くのメリットがあります。ここでは、太陽光発電のピークカットで得られるメリットを1つずつ解説していきましょう。
全体の発電量が多くなる
先ほども述べたように、太陽光パネルの過積載をするとピーク時に一部の電力を捨てることになりますが、その一方で他の時間帯の発電量が全体的に底上げされます。そのため、差し引きすると全体の発電量が多くなります。
全体の発電量が多くなるということは、光熱費の削減効果や売電収入の向上などが期待できます。
設置費用の負担を分散できる
太陽光発電は、太陽光がある時間帯のみ発電をします。一般的に朝に太陽が昇ってから夕方に太陽が沈むまでの時間に発電が行われ、それ以外の時間帯は発電しません。
太陽光パネルで発電が行われていない時はパワーコンディショナーの出番もなく、休んでいることになります。
太陽光発電の導入費用のコストパフォーマンスを考えた時、発電していない時間帯を差し引くと時間当たりの設置単価は高くなりがちです。
しかし、過積載によってピークカットをすれば、発電をしている時間帯の全体的な発電量が底上げされます。さすがに太陽光のない時間帯まで発電することはできませんが、導入費用の負担をピーク以外の時間帯にも分散させることができ、費用対効果が向上します。
低電圧のまま発電量を増やせる
太陽光発電は大きく分けて、「低圧」「高圧」そして「特別高圧」の3つがあります。低圧は50kW未満の規模に適用され、高圧はそれ以上です。
高圧になると高圧電力契約が必要になり、安全管理面や技術面で難易度やコストが高くなります。そのため低圧で太陽光発電を運用するのが最もおすすめです。
過積載であれば仮に太陽光パネルの合計出力が50kWを超えても低圧と見なされるため、有利な低圧での運用が可能です。
買取価格の下落対策になる
ご存じの方は多いと思いますが、太陽光発電による電力の買取価格は年々下落しています。FIT(固定価格買取制度)が適用されても、以前ほど魅力的な買取価格とはいえません。
そのため、売電収入を確保するには限られたスペースを有効活用して発電量(売電量)を増やすしかありません。過積載によるピークカットでは発電量の増加が期待できるため、買取価格の下落対策としても有効です。
太陽光発電のピークカットで知っておくべきデメリット
メリットの次には、太陽光発電のピークカットで知っておくべきデメリットや注意点について解説します。
太陽光パネルの設置量が多くなり、コストが高くなる
太陽光発電のピークカットでは、パワーコンディショナーの変換能力を超えた太陽光パネルを設置します。そのため、パワーコンディショナーの能力に合わせたプランと比較すると太陽光パネルの枚数が多くなるため、設置コストは高くなります。
しかも太陽光パネルから供給される電力の全部が使用されるわけではないため、この部分に違和感やもったいなさを感じるかもしれません。
過積載によってパワーコンディショナーの保証外になる可能性がある
太陽光発電の過積載は、いわば裏技のようなテクニックです。パワーコンディショナーのメーカーによっては想定外のことであり、メーカーによっては過積載の場合は保証外になることがあります。
メーカーによっては過積載を想定していることもあるため、保証の有無については事前に十分確認することをおすすめします。
ピーク時には電力が捨てられてもったいない
あくまでも感覚的な問題ですが、過積載をするとピーク時の電力が一部捨てられることになります。ピークカットというくらいなので当然なのですが、このことにもったいなさを感じる人は多いと思います。
全体の発電量が増加することで十分メリットがあるので、あくまでも感覚的な問題なのですが、それが引っ掛かるという人にはおすすめできないかもしれません。
屋根にダメージが及ぶ恐れがある
貨物車の過積載が規制されているのは、想定以上の重さがかかることによって道路へのダメージが大きくなってしまい、それによって粉じんが舞い上がるなどの悪影響があることも一因です。
これと同様に、太陽光パネルを過積載すると想定以上の過重が屋根にかかるため、それによって屋根にダメージが及ぶ恐れがあります。
いわゆる後付けで太陽光発電を設置する場合は、そもそも家が太陽光パネルを載せることを想定していません。その上さらに過積載によって太陽光パネルを多く設置することには、リスクが伴います。
太陽光発電のピークカットでデメリットを克服する方法
太陽光発電のピークカットによって発電量、売電量を増やしたいとお考えの方に向けて、それらのデメリットを克服する方法を紹介します。
事前のシミュレーションをしっかり行う
裏技的な位置づけである過積載によるピークカットは、事前に入念なシミュレーションを行い、その上でメリットのほうが上回っていることを確認してから着手するようにしましょう。
全体の発電量が増加する一方でピーク時には電力を捨てているため、その差し引きがプラスになっていなければ意味がありません。過積載率を何%にするのか、そもそも過積載にすることでメリットのほうが上回るのかといったことを、施工店にしっかりシミュレーションしてもらい、最適な過積載率の提案を受けるようにしてください。
こうした提案があまり得意ではない施工店の場合、シミュレーションが甘かったばかりに損をしてしまうことも否定できません。そういったことがないよう、施工店選びも入念にするようにしましょう。
事後ではなく、導入に行う
ピークカットを目的とした太陽光パネルの過積載は、「事後」ではなく「事前」に行うことを強くおすすめします。
というのも、FIT認定を得たあとから太陽光パネルの増設をして過積載をすると、ペナルティに該当する恐れがあります。ペナルティを受けると、最悪の場合は固定価格での買い取りが無効になることもあるため、過積載の太陽光システムを構築する場合は最初から過積載にした上で新規FIT認定を受けるようにしてください。
パワーコンディショナーの保証内容をチェックする
先ほど述べたように、パワーコンディショナーのメーカーによっては過積載にすると保証外になることがあります。とはいえ、近年では過積載によるメリットが広く知られるようになっているため、パワーコンディショナーのメーカーによっては過積載を認めていることもあります。
例えば、オムロンは条件付きで過積載を認めており、ピークカットを目的とした過積載の太陽光発電システムであっても保証外にはなりません。新規で太陽光発電システムを構築する際にはパワーコンディショナーのメーカー選びにも余地があるので、過積載にするのであれば過積載OKのメーカーを選ぶようにしましょう。
まとめ
太陽光発電のピークカットについて、意味合いが混同されやすい「節電のためのピークカット」との違いや、語句を混同されやすいピークシフトなどとの違いを交えて解説しました。
メリットとデメリット・注意点についても解説していますので、単純に「売電量を増やしたい」という理由だけで飛びつくのではなく、しっかりデメリットや注意点も理解した上でメリットを最大化するのが理想です。
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