観光業における脱炭素の方法や事例について解説!

観光業における脱炭素の方法や事例について解説!

日本政府が掲げている2050年までのカーボンニュートラルに向けて、観光業界の企業も脱炭素経営へ進み始めています。しかし、観光における脱炭素は幅が広く、どのように取り組むべきかわからない方も多いでしょう。

今回は、観光業における脱炭素の必要性と方法、事例について詳しくご紹介します。観光業の脱炭素について基礎から取り入れたい方などは、参考にしてみてください。

脱炭素が求められている背景

観光業の脱炭素経営を理解するためには、国内で脱炭素が求められている背景を把握しておく必要もあります。それでは、世界的に脱炭素化が求められている背景をわかりやすく解説していきます。

気候変動問題による世界的な脱炭素化の加速

国内の脱炭素に関する流れには、気候変動の問題と世界的な脱炭素化が関係しています。(脱炭素:温室効果ガスのCO2排出量0を目指す取り組みや考え方)

地球の平均気温上昇や大雨、干ばつといった気候変動問題の原因は、二酸化炭素を含む温室効果ガスも関係しているとされています。このまま気候変動を放置した場合、地球の平均気温上昇や海水面の上昇など、社会や生活に大きな影響を与えてしまう恐れがあるとして、パリ協定が定められました。

パリ協定では、温室効果ガスの削減目標や地球の平均気温上昇を抑える目標などが定められており、こうした世界的な脱炭素に向けた流れが、国や企業の脱炭素化を加速させています。

日本政府がカーボンニュートラルを推し進めている

日本政府は世界的な脱炭素化の流れに沿って、カーボンニュートラルに関する政策や規制などを進めています。カーボンニュートラルは、温室効果ガスの吸収や排出削減で排出量実質0を目指す考え方や取り組みを指しています。

2020年、菅元総理大臣は、2050年までの温室効果ガス排出実質0に関するカーボンニュートラル宣言を行い、2021年に2030年の温室効果ガス削減目標も定めました。

しかし、このようなカーボンニュートラルおよび脱炭素に関する目標は、自治体や企業の協力がなければ達成できません。

このため国は補助金制度をはじめとした支援制度、脱炭素に関する規制や法整備を行い、企業の脱炭素化を促しています。

観光にも押し寄せる脱炭素化の波

世界的な脱炭素化の動きは、観光業界にも押し寄せています。観光業界に波及する脱炭素化の動きについて詳しく解説していきます。

海外ではCO2排出量の多い移動手段を避ける動きも

海外では、CO2排出量の多い移動手段を避ける「フライトシェイム」(飛び恥)という運動が行われています。このような動きは、観光業にとって見過ごせない事象です。

ヨーロッパでは、脱炭素をはじめとした環境関連の取り組みが進んでおり、さまざまな場面におけるCO2排出量も注目されています。特に観光関連では、CO2を排出してしまう航空機による移動を避ける動きが出ており、日本においてもこうした動きは無視できません。

インバウンドが増えている中、環境意識の高い海外旅行客も当然増えていきます。国内の観光業界でも、脱炭素・環境負荷軽減に着目した旅行サービスや移動手段などが求められるでしょう。

しかし国内の旅行会社や観光業では、脱炭素に向けた取り組みが進んでいません。CO2排出量の測定データや、企業の環境対策に関する知識・技術・予算などさまざまな点が不足しているからです。

また観光会社向けの脱炭素に関する統一的な手法、データやツールなどが確立していないため、簡単に取り組みを始められない事情もあります。

観光会社は、まずサプライチェーン排出量(自社だけでなく取引先など自社と関連している部分でのCO2排出量を計測する考え方)をベースにCO2排出量のデータを収集し、現状を把握することが大切です。記事の後半でも、観光業界が脱炭素化を推進する方法を紹介しているので参考にしてください。

環境省ではゼロカーボンパークといったアイデアを提示

環境省では、交通会社や観光会社向けにさまざまな脱炭素関連のアイデアを提示しています。

前段で触れたフライトシェイム運動は、新たな航空機の研究開発でしか対応できない問題で、観光会社では対処しきれません。ただし、国内の観光や交通サービスにおけるCO2排出量は、交通会社・観光会社同士の連携や取り組みによって削減できる可能性があります。

たとえば、環境省で提示されているゼロカーボンパークは、観光エリア全体の脱炭素を目指した取り組みで、環境意識の高い観光客を受け入れる方法といえます。

ゼロカーボンパークは国立公園の観光において、EVを活用した移動、観光施設における再生可能エネルギー由来電力の活用、建物のZEB化など、さまざまな方法で環境負荷を抑えた取り組み・サービスを目指した取り組みのことです。こうした部分的な脱炭素化を積み重ね、できるところから取り組むことが大切です。

観光業の脱炭素事例

観光業でも脱炭素は必要な取り組みで、積極的に進めていかなければいけません。しかし、脱炭素経営へ初めて取り組む観光会社にとっては、具体的なイメージが湧きにくい内容でもあります。ここからは観光業の脱炭素事例を5つ紹介していきます。

奈良交通

乗合バスや貸切バス事業などを展開している奈良交通株式会社では、小型のEV車両を段階的に導入し、運行時のCO2排出量削減を図っています。

また、乗合と貸切車両にデジタルタコグラフ(走行速度・時間・距離などを記録するもの)を導入し、運転状況の見える化を進めました。その結果、急ブレーキや急加速といった運転方法の改善が行われ、燃費の向上を実現しています。

他には飲食事業におけるフードロスの削減運動、チケットレスや乗車券アプリの導入といったペーパーレス化、社員の意識向上を目的としたエコ通勤の推進(環境負荷の少ない交通手段)など、SDGsにつながる脱炭素化の取り組みも行われています。

リーガロイヤルホテルグループ

リーガロイヤルホテルグループは、CO2排出量の削減に向けて可視化ツールの導入やアメニティの切り替えなど、分析から対策まで幅広く取り組んでいます。

具体的には、再生可能プラスチック素材を活用したアメニティの導入、ヘアブラシのリサイクル、レストランで使用されているストローを生分解性へ切り替えるといった内容です。

また、リーガロイヤルホテルでは、食品廃棄物を有機たい肥の製造に活用し、環境保全型農業にも力を入れています。製造された有機たい肥は、従業員食堂向けに提供されているお米の栽培に使用されています。

ホテルモントレ大阪

1986年開業のホテルモントレ大阪では、SDGsの観点から課題を設定し、CO2排出量の可視化ツール導入や脱炭素関連の取り組みを進めています。

モントレグループ全体では、プラスチックの使用量削減やエコ清掃に取り組んでいます。エコ清掃とは、環境保護に配慮された客室清掃を指しています。ベッドリネン類(リネン:麻製品)の交換を行わずにベッドメイキングを行い、クリーニングが必要なものを減らすといった取り組みです。

また非プラスチック製品を使用したアメニティへの移行や、節水効果のあるシャワー設備の設置、再生可能エネルギー電力の活用といった取り組みが行われています。

千里山バス

大阪府摂津市に本社を構えている千里山バスは、CO2排出量可視化ツールの導入・活用、エコドライブやEV車両の導入といった取り組みを行っています。

エコドライブに関する取り組みは、環境省から提唱されているエコドライブ10か条が用いられています。具体的には、燃費の確認、急加速しない、加速や減速を抑えた運転、適切なエアコンの使用など、燃料消費とCO2排出量を抑えた運転方法が提示されています。

またEV車両やFCV車両(燃料電池自動車)を1台ずつ導入したり、事務所の節電を行ったりといった取り組みも進められています。

松井物産

大正10年創業の松井物産は、設備の工夫などで脱炭素化を進めています。

たとえば、食事以外の用途で用いられる水には井戸水を使用することで、浄水時に発生するCO2排出量を削減しています。また調理用油のタンク設置による省力化やごみの削減、節電といったさまざまな観点から脱炭素化が進められているのも参考にできる取り組みです。

さらに、松井物産では脱炭素化を進めている複数の電力会社を試験的に導入し、CO2排出削減効果などを確認しています。

観光の脱炭素を推し進める方法

観光業における脱炭素化は情報が少ないため、どのように取り組めばいいのかわからない担当者や事業者も多いかと思います。そこでここからは、観光業の脱炭素を推し進める方法やポイントについてわかりやすく解説していきます。

交通会社・交通手段はEVやPHEVを導入

交通会社や送迎バスを運用しているホテルの運営会社は、EVやPHEVを検討してみるのがおすすめです。

ガソリンエンジンやディーゼルエンジン車は、走行時に温室効果ガスを含む排気ガスを排出してしまいます。電気で走行するEVバスは走行時に排気ガスを排出しないため、交通手段におけるCO2排出を削減できます。

PHEVはガソリンと電気で走行する車両です。EV車両は充電や充電スタンドの普及率に課題があるため、ガソリンと併用することで、現実的に運用しながら、従来の車両よりもCO2排出量を削減することが可能です。

フードロス削減を目指す

観光物産・ホテルを運営している会社は、フードロス削減について目を向けてみるのも大切です。

フードロスとは、本来食べられる状態にもかかわらず廃棄されている食品を指し、資源の無駄遣いだけでなくCO2排出といった問題も抱えています。なぜなら、食品は可燃ごみとして廃棄するため、ごみ処理場でのCO2排出量の増加を招いてしまうからです。

また食品の生産過程では水や生物資源など、さまざまなエネルギーを消費したりCO2を排出したりしています。生産過程で消費したエネルギーやCO2を無駄にしてしまうという意味でも、大きな問題といえます。

提供する料理の量を調整したり、これまでのフードロスを測定したりすることで、フードロス削減を図り、廃棄や生産過程のCO2排出を抑えることが可能です。

宿泊施設の照明をLED照明へ切り替える

旅館やホテルといった宿泊施設内の脱炭素化を図る際は、LED照明の導入をはじめとした照明に関する対策を進めてみましょう。

電力会社から供給されている電力のほとんどは、火力発電由来とされています。火力発電は、化石燃料の燃焼させるため、CO2を含む温室効果ガスが排出されます。このため火力発電由来の電力を使用すると、CO2の間接的な排出をもたらしてしまいます。

蛍光灯をLED照明へ切り替えて電力使用量を削減すれば、電気料金負担の削減だけでなくCO2排出量を削減することが可能です。

リネン類の不要な交換を減らす

リネン類の不要な交換を減らす取り組みは、エネルギー消費量の抑制やCO2排出量の削減につながります。

客室清掃は、室内清掃やリネン類(シーツ、枕カバーなど)の交換が一般的です。しかし、リネン類の交換や洗濯を都度行うと、水や電気の消費量が増加し、洗濯に伴って間接的にCO2が排出されるのです。

リネン類の交換回数を抑えたエコ清掃を取り入れることで、エネルギー消費量の抑制とコスト削減、CO2の排出量削減といった効果を期待できます。

アメニティのサイズや量の調整

宿泊施設で行われている脱炭素化のひとつが、アメニティのサイズや量、素材に関する調整です。

アメニティを過剰に用意してしまうことは、在庫不足を避けられる反面、資源の無駄遣いや間接的なCO2排出量増加を招く原因につながります。アメニティを提供・仕入れる際は、必要な種類と量、素材を見極めることが大切です。

たとえば、シャンプーのボトルサイズを小さくすれば、ボトルの廃棄量を削減できます。再生プラスチックや非プラスチック素材、プラスチックの使用量が削減されたアメニティを仕入れるのもおすすめです。

空調にCO2排出量制御機能を導入

宿泊施設や事務所の設備から脱炭素化を図りたいときは、空調設備の電力で間接的に排出されるCO2に着目してみましょう。

空調の稼働による間接的なCO2排出量を減らすには、無駄な稼働を減らすことが大切です。CO2センサー機能付き空調を導入すれば、室内のCO2濃度を検出し、状況に応じて外気導入量を自動制御してくれます。

たとえば、CO2濃度が一定の基準を超えた場合は、換気風量を自動調整し、外気導入量を増加させてくれます。反対にCO2濃度が一定以下に下がった場合は、外気導入量を抑えながら運転します。こうした機能により、余計なエネルギーの消費を減らすことで、電気代負担とCO2の間接的な排出削減につながります。

カーボンオフセットを行う

節電や空調設備の切り替え、アメニティの見直しやエコ清掃といった対策で脱炭素化を図っていても、事業活動を維持するために削減しきれないCO2は存在してしまいます。そこで覚えておきたい脱炭素化のアイデアが、カーボンオフセットです。

カーボンオフセットは、CO2削減量を数値化させたカーボンクレジット(排出権)を購入することで、自社のCO2排出量を相殺させられる脱炭素化の方法です。無理な節電や設備の改修・更新などを行わなくとも、自社のCO2削減実績を伸ばせるのが大きなメリットといえます。

カーボンクレジットの取引を始めたい場合は、国のJクレジット制度を通して手続きを進められます。Jクレジット制度で提供されている取引方法は、仲介事業者を通じた売買、JクレジットHPに掲載されているクレジット一覧を活用した売買、Jクレジット制度事務局の入札販売の3種類です。

しかし、こうしたカーボンオフセットは本質的な排出量削減ではありません。自社でCO2を削減しているわけではないため、カーボンクレジットに頼り過ぎてしまうと、CO2排出量の増加を招く可能性もあります。

カーボンオフセットは、あくまでも補助的な方法として捉えておきましょう。

太陽光発電による自家消費

太陽光発電による自家消費はCO2排出削減量を伸ばせるほか、節電よりも効率的な方法です。

再生可能エネルギーである太陽光発電は、太陽光パネルから日光を吸収し、光を電気へ変換します。化石燃料を使用しないため、発電にCO2を排出しない点が大きなメリットです。

他の再生可能エネルギーよりも設置場所や設備の規模を調整しやすく、宿泊施設の屋上やカーポートの屋根、その他自社の敷地外、遠隔地など、さまざまな環境に設置できるため、比較的容易に発電を始められます。

太陽光発電設備を使用して発電した電力を、観光施設で使用できれば、電力会社から購入する電力が減り、CO2排出量も減らせます。このように発電した電力を電力会社に売らず、自分で消費する方法を自家消費型・非FIT型といいます。

自家消費型(非FIT型)太陽光発電を活用して、段階的に電気使用量を減らしていきましょう。

観光における脱炭素化のアイデアは複数あり!

観光における脱炭素化は、観光客を増やしたり自社の企業価値を高めたりする上で欠かせない対策です。脱炭素化に関するアイデアは、節電といったシンプルな方法からアメニティの素材や量の見直し、空調設備をはじめとした設備の切り替えなど多岐にわたります。

特に非FIT型太陽光発電は、大幅なCO2削減や電気料金負担削減効果を期待でき、観光業にとっても注目の設備です。脱炭素化の方法として再生可能エネルギーを検討している観光会社などは、今回の記事を参考にしながら非FIT型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。

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