CO2削減は、脱炭素経営において重要なポイントです。しかし、対策方法は業界や企業によって異なるため、ホテルに適した方法がわからず悩んでいる経営者や担当者も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ホテルのCO2削減方法や取り組みの重要性について詳しくご紹介します。ホテルのCO2削減策について調べている方などは、ぜひ参考にしてみてください。
ホテル業界でもCO2削減が必要な理由
ホテル業界の場合は、気候変動問題や法規制、消費者からの信頼といった3点の理由からCO2削減に向けた取り組みが必要とされています。それでは、ホテル業界でもCO2削減に向けた対策が必要な理由を詳しく解説します。
気候変動を原因としたマーケットリスク
気候変動を原因としたマーケットリスクが存在するため、ホテル業界でもCO2削減に関する取り組みは必要とされています。
近年、気候変動は世界的に深刻化しており、地球の平均気温上昇のほか、干ばつや台風被害などさまざまなリスクが高まっています。中でもCO2は、気候変動の原因のひとつとされています。
そこで現在各国では、脱炭素・CO2削減に向けた対策や法改正を進めている状況です。(脱炭素:CO2の排出量実質0の状態を指す)
国内でも脱炭素社会に向けた大きな流れがあり、ホテル業界もCO2削減もしくはCO2排出量の少ないサービスへ転換しなければ、コスト増加や規制のあおりを受ける可能性もあります。
法規制の影響を受ける可能性がある
脱炭素に関する法規制や改正が進んでいるため、CO2削減に向けた取り組みを進めなければ営業に支障が出る可能性もあります。
たとえばもし日本で炭素税が導入された場合、CO2排出に伴いコストは増加します。炭素税とは、CO2排出量に応じて課税される制度のことです。海外では、フィンランドやスウェーデン、フランスなどで炭素税が導入されています。
消費者からの信頼性にかかわる
CO2削減を含めた環境対策・脱炭素経営の有無は、消費者からの評価や信頼に影響をおよぼす可能性があります。近年、消費者や投資家などは、気候変動対策についても関心を持ち始めています。
気候変動対策に関心を持つ消費者は、ホテルの比較検討時に省エネ対策やCO2削減実績などを確認する可能性があります。サービスや価格で同じような条件の競合他社と比較されたとき、環境対策が理由となって「選ばれない」可能性もゼロではありません。
事業の成長や売上アップを目指す上でも、ホテル業界もCO2削減に向けた取り組みを進めていくことが大切です。
ホテルのCO2削減方法12個
CO2削減が必要な理由について理解していても、どのように取り組めばいいか悩んでいる事業者も多いのではないでしょうか。ホテルの場合は、厨房設備の改修や照明の入れ替えなど、さまざまな方法でCO2を削減できます。続いては、ホテルのCO2削減方法を12個紹介します。
ボイラの運用改善や見直し
設備投資以外の方法でCO2を削減したい場合は、ボイラの運用改善や見直しを検討してみるのもおすすめです。
ホテルでは、給湯や空調に必要な温水・蒸気をボイラで確保しますが、このボイラの燃焼効率を改善すると、一定量のCO2削減が期待できます。
ボイラは燃焼時間率が低下すると、運用効率が低下するため、給湯時だけすべて運転させ、給湯以外の場面では交互に運転させるなど工夫しましょう。
またボイラの定期点検を実施する際は、燃焼空気比を適正に調整(酸素濃度を5%以上)すると省エネになります。
客室に省エネに関するチラシを貼り協力を呼びかける
すぐに取り組めるCO2削減方法として、省エネを呼びかけるチラシ・カードの作成が挙げられます。ホテルのCO2削減を進めていくためには、宿泊客の協力も重要です。
客室のメッセージカードなどには、節電・節水に関する内容を記載し、省エネへの理解や協力を呼びかけてみるのがおすすめです。「当ホテルは環境問題に取り組んでいます」といった形でホテルの対策を掲げ、宿泊客にも意識してもらいましょう。
また、こうした省エネ対策で一定の成果が得られた場合は、成果を示すチラシをエレベーターや廊下などに貼り付けて、情報や達成感の共有を図るのも大切です。
厨房設備の見直しによるCO2削減
ホテルの厨房設備を見直すことで、CO2を削減できる可能性があります。
まずは、換気設備の運転時間を見直してみましょう。換気設備の運転時間を短縮できれば、エネルギー・CO2削減を図ることが可能です。ガス器具を使用していない時間帯は法規制を受けないため、換気量を抑えられます。とはいえ、火気を使用している場所では換気量が定められています。安全のためにも、あくまでも可能な範囲で取り組んでください。
また冷蔵庫・冷凍庫の開閉回数を抑えられるよう、食材の配置を工夫するのも簡単にできる対策です。庫内温度を適正温度の範囲内で調整できれば、CO2削減につながります。
食器洗浄機を使用している場合、なるべくまとめて洗浄し、エネルギー消費量を抑えるのも重要です。
高効率給湯機でエネルギー効率の向上
給湯設備のCO2削減を目指す場合は、高効率給湯機の導入を検討してみましょう。
高効率給湯機は、ヒートポンプ式電気給湯器(エコキュート)や潜熱回収型給湯器(エコジョーズ)のことを指します。
大気中の熱と電気を活用するヒートポンプ式電気給湯器(エコキュート)は、電力使用量に対して約3倍の熱を取り出せるのが特徴です。電気温水器などと比較した場合、CO2排出量を数10%削減できる可能性があります。
都市ガスを活用する潜熱回収型給湯器(エコジョーズ)は、一般的なガス給湯設備と比較して給湯効率を10%以上アップできます。ガスの使用量を抑えられるため、その分CO2も削減することが可能です。
インバータ制御のファンやポンプの導入
ファンやポンプの制御方式にインバータ制御を導入すれば、エネルギー消費量・CO2の削減を期待できます。インバータ制御は、ファンやポンプのモーターを、バルブに応じてスムーズに制御するため、各フロアに必要な流量を効率的に調整することが可能です。
空調設備の設定を見直す
設備投資以外で空調設備のCO2排出量を削減したい場合は、従業員向けの運用ルールと設定温度を見直してみましょう。
たとえば、外気温の低い日に客室を清掃する際は、冷房の代わりに外気を取り込めば空調の使用率を抑えられます。また室内の温度と空調の設定温度は一致しない場合があるため、温度計を確認しながら空調の設定を調整するよう伝えるのも大切です。空調の設定温度を1℃調整するだけで、消費電力量を約10%削減することが可能です。
室外機の環境をチェックする
室外機の管理は空調の効率にかかわります。正しい管理がなされているか、メンテナンスできているか確認しましょう。
たとえばフィルターだけでなく、フィンコイルという部品の洗浄も重要です。フィンコイルが熱交換、この部品に砂やホコリなどが積もってしまうと熱の伝達効率低下につながります。伝達効率が低下すると温度を調節するために必要な電力が増えます。消費電力を抑えるにも、適切な洗浄が重要です。
また、室外機のショートサーキットにも注意しましょう。ショートサーキットとは、ある室外機からの排気を別の室外機で吸い込んでしまう現象のことで、室外機同士の距離が近かったり、向きが適切でなかったりすることで起きます。空調の効率低下を招くため、注意しましょう。
上下に室外機を並べているときは、下段の室外機に排気用のダクトを設置するのも一つの手です。
複層ガラス・遮熱フィルム導入でエネルギー消費量削減
空調設備のCO2・電気使用量を削減したい場合は、複層ガラスや遮熱フィルムの導入を検討してみるのがおすすめです。
客室などに設置されている窓は、ホテルの中でもとくに熱の出入りが多い部分です。西日や直射日光、照り返しなどで室内の温度が上昇しやすく、空調の使用頻度を高めてしまいます。
遮熱フィルムは日射熱(日光によって生じる熱)の多くを遮断してくれるため、室内の温度上昇を抑えられます。遮熱フィルムを貼り付けるのみで、特殊な加工や工事は不要です。
一方、複層ガラスは、ガラス2枚の間に乾燥した空気を封入した特殊なガラスで、室内の熱を外に逃がしにくく、外の熱や冷たい空気を反射してくれます。遮熱フィルムと異なり窓ガラスの取り外し・改修が必要なものの、CO2削減効果が高いです。
節水コマや節水シャワーヘッドの導入
CO2削減を目指す際は、給水設備の改修や節水効果を期待できる部品の導入を検討してみましょう。
水を使用すると、間接的にCO2を排出してしまいます。たとえば、浄水場でのろ過作業、水の供給に必要なポンプを稼働させるには、電気が必要です。また、給湯設備を使用する際は、水だけでなく電気も消費しています。
電力会社から供給されている電気の多くは火力発電由来の電力で、発電時にCO2が排出されています。水を消費すればするほどCO2の排出量を間接的に増加させるため、節水の必要があるのです。
簡単な手段として、節水コマや節水シャワーヘッドの導入がおすすめです。コマは蛇口内部に取り付けられているパッキンで、水の量にかかわる部品でもあります。節水コマは、一般的なコマよりも数リットルもの水を節約できるため、水道料金・CO2の削減においてメリットがあります。
節水シャワーヘッドは高い水圧で水を流すため、少ない水量でも快適に使用でき、シャワーの使用感をそれほど変えずに節水できます。
漏水のチェック
漏水は水道料金の負担を増やすだけでなく、間接的なCO2排出量の増加にもつながります。漏水のリスクを抑えるためには、定期的な点検による早期発見が重要です。簡単にできるため、すぐに実施しましょう。
点検の際は、すべての蛇口を閉め、量水器(水量を計測するメーター)のパイロット(水が流れると回転する部品)が、回転しているかどうかチェックします。もし、パイロットの回転を確認した場合は、漏水の可能性があります。
早めに点検・修理を依頼して漏水を止めれば、間接的なCO2の排出量を抑えられます。
照明をLED設備へ切り替える
白熱電球や蛍光灯などを使用している場合は、LED照明へ切り替えてみるのがおすすめです。
白熱電球・蛍光ランプの誘導灯からLED照明へ切り替えると、80%以上の消費電力削減効果を期待できます。また客室などに設置されているダウンライトや、廊下の蛍光灯をLED照明へ切り替えた場合は、70%以上の消費電力削減効果を見込めます。
LED照明は、白熱電球や蛍光灯などと比較して10倍以上の耐久性があるため、ランニングコストという点でも導入のメリットがあるでしょう。
自家消費型太陽光発電の導入
より効率的にCO2排出量を削減したい場合は、自家消費型太陽光発電の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
太陽光発電とは、日光を太陽光パネルで電気へ変換し、売電(電力会社へ電気を売る)や自家消費(自社の設備で電気を消費する)を行える再生可能エネルギー発電設備のことです。発電時にCO2を排出しないため、環境負荷を軽減できます。
自家消費型太陽光発電を導入すれば、電力会社から電気を購入する代わりに、発電した電気を使用することで間接的なCO2排出量を削減することが可能です。産業用蓄電池を併用すれば、日中に発電した電気を貯めておき、夜間や消費電力量の多い時間帯に自家消費できます。
通常業務を継続しながらCO2排出量を大幅に削減できるため、多くのホテル事業者にとって導入しやすいでしょう。
ホテルのCO2削減へ取り組むメリット
ホテルがCO2排出量削減に取り組むなら、リスク回避・投資・集客の他にも考えられるメリットはいくつかあります。最後は、ホテルのCO2削減へ取り組む主なメリットについて解説します。
人材を確保しやすくなる可能性がある
人材不足に悩んでいる場合は、CO2削減に向けた取り組みを活用してみましょう。CO2の排出量削減に関する取り組みは、脱炭素や環境負荷軽減につながり、自社の価値を向上させます。
企業イメージを向上できれば、より多くの人材が集まり人材不足の解消を図ることも可能です。こうした取り組みを継続的に実施できる企業は「体力」があり、労働者からも「安心できる企業である」という印象を持たれるやすいです。
新しい事業の機会を得られる場合も
CO2の排出量削減に関する取り組みを継続する中で、新たな事業やサービスの創出や発見につながることもあります。
たとえば、脱炭素関連の製品を製造している企業と連携することで、環境負荷の少ないバイオマスアメニティーや竹製の歯ブラシなどを開発すれば、サスティナブル商品の販売にもつながるでしょう。
ホテルのCO2削減は事業の成長や継続に欠かせない!
ホテルのCO2削減は、気候変動問題の解決に必要です。また自社の事業成長や企業価値・信頼性の向上といった点でも、CO2の排出量削減は重要な取り組みといえます。
ホテルにおけるCO2削減方法に悩んでいる方や、ホテルのCO2を大幅に削減する方法を探している方は、今回の記事を参考にしながら自家消費型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
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