太陽光発電の中でも特に注目されているのが「自家消費型」と呼ばれるものです。
その名の通り、「太陽光発電で創出した電気を自分で消費する」設計のもので、従来の投資型太陽光発電よりも将来性が高いとして評価され始めています。そして、自家消費型太陽光発電には必ず「自家消費率」という言葉が出てきます。
この「自家消費率」とは何を意味し、どういった数字のことを指すのでしょうか?今回は自家消費型太陽光発電の消費率について詳しくご紹介していきます。ぜひ、最後までご一読下さい。
太陽光発電の「自家消費率」とは?
太陽光発電における「自家消費率」とは、発電した太陽光発電のうちどれだけ建物内で利用したかを割合で示したものです。
自家消費の比率を低くすれば売電収入が増えることになりますが、近年は売電単価が電気料金と変わらない程度にまで下がってきているため、無理に設置容量を増やして余剰分を増やすよりも、建物内で消費して電気代を節約するメリットの方が高くなると考えられています。
全国的な「自家消費率」をチェック
現在日本各地にある太陽光発電システムは、どの程度の自家消費率なのでしょうか?具体的に見ていきましょう。
平均的な自家消費率は約30%
全国に設置されている太陽光発電では、約30%の電力が自家消費されています。ただし、これはあくまでも全国の平均値で、実際には各企業でかなり大きな差があります。
パネル量と電気代によって大きく変わる
この自家消費率は、パネルの枚数や業務で使用する電気代によって大きく変わってきます。少ないパネル量であれば自家消費率は100%になり、売電等に回す余裕はありません。反対にパネル量が多ければ、発電量に余裕ができ、売電や他の用途に使える、ということになります。
自家消費率を高めるためのポイント
自家消費率を高めるには、どこを意識したらいいのでしょうか?詳しくご紹介していきます。
ポイント1.「容量」を考える
近年の売電価格低下により、太陽光発電のパネルが「どの程度必要か」「本当に今の枚数でいいのか」といった見直しは非常に大切だといえます。現在だけではなく、10年後の事業がどうなっているかを考えてみると、どんな選択が適切しているかが見えてくるかもしれません。
自家消費率が極端に低い場合は、本当にそれだけの容量が必要なのかを今一度見直してみましょう。
ポイント2.蓄電池や電気自動車(EV)を買い足す
余剰売電を行う場合、10年を過ぎると契約している電力会社との間で任意の単価を設定することになります。その単価は、現時点で推測するのは難しいものの、少なくとも電気代と比べて安い単価が設定されるのは確実です。つまり、10年目までと10年後以降では収支がほぼ間違いなく逆転します。
その逆転を上手く活用するために、屋根の面積や予算に少し余裕がある場合は少し大きめのシステムを設置して10年後に蓄電池や社用車として電気自動車(EV)を買い足すという方法もあります。
この方法は余裕のある企業向けなので、無理に行うと採算が取れるまで時間がかかり、収支の逆転が遅れる可能性があります。余裕がある場合のみ、検討してみて下さい。
ポイント3.太陽光パネル(モジュール)の向きを再チェック
1日のうちで、太陽光発電の発電量がピークになる時間帯は昼の12時です。太陽光発電1kW当たりで得られる発電量は南側が一番大きくなるのは確実ですが、自家発電量を上げることを考えた場合は南西に設置する方が有効である、という説もあります。
この説は、アメリカのテキサス州で「ピーカンストリートプロジェクト」と呼ばれる太陽光発電の実証実験が元となっています。この実験では、北半球の国は南向きかつ緯度と同じ傾斜をつけての設置が最も発電量が多いと結論づけられていた太陽光発電の向きは、西向きである方が効果的であると結論づけられました。
これは、西向きに設置したパネルが発電する時間帯と、電量消費量の多い時間帯が重なることから、ピークカットと省エネには効率的だというものです。このデータはテキサス州の限られた地域だけで取られたデータですが、どの時間帯に人々が電力を消費しているか、ピークカットはどうしたら実現できるかを考える材料にはなります。
一度、包括的に見直してみると思わぬ結果が出てくるかもしれません。
場合によっては「過積載」も視野に入れる
「過積載」とは、パワーコンディショナーの容量に対してソーラーパネルの容量を大きくすることでパワーコンディショナーの稼働率を最大限にまで生かそうというものです。
太陽光発電に関わる初期費用のうち、パワーコンディショナーが占める割合は10%~15%程度、さらに耐用年数が20年~30年の太陽光発電パネルに比べて、パワーコンディショナーは10年~20年と比較的短く設定されています。
一方でパネルとパワーコンディショナーの容量を合わせたとして、パワーコンディショナーのフルパワーが発揮されているのは、1日のうちほんの数時間。実は容量を持て余していることが多いのです。
この「持て余し」を解消する方法として過積載を使います。ただし、
- パワーコンディショナーの入力電圧の範囲内で行うこと
- 保証範囲で過積載を行うこと
この2つが必須です。過積載を含めて太陽光発電システムそのものを見直す際には、専門家の手を借りるといいでしょう。
2020年は最後の「FIT制度」になるかも…?代わりになるとされる「FIP制度」とは?
現在導入されている「FIT制度(固定価格買取制度)」は、2020年を目安に廃止される可能性が高まっています。そのFIT制度に代わる太陽光発電売電制度として選択肢に挙げられているのがFIP(フィード・イン・プレミアム)制度です。
FIP制度には、以下の2つの特徴があります。
- 発電した電気を市場で販売すること
- 発電量によって割増金を受け取れること
FIP制度は、世界に先駆けて欧米諸国が導入を進め、2014年頃から本格化してきています。ただし、その実態は国ごとにことなり、市場価格に一定の割増金を上乗せする「固定型プレミアムFIP」と市場価格に応じて割増金を増減させる「変動型プレミアムFIP」に分かれています。
経済産業省は、固定型と変動型の中間を取り「投資インセンティブの確保」と「市場を意識した行動」の双方の効果が生じる仕組みにしていくと発表しています。
具体的には、固定型FIPをベースにしつつ、割増金の額を固定にするのではなく一定期間(1ヶ月~1年程度)ごとに見直していく、というものです。
この制度の開始は、2020年度末以降であるとされています。今後もチェックしていく必要がありそうですね。
これからの時代に「得する」太陽光発電システムを導入するには?
太陽光発電システムをお得に利用するなら、この2つのポイントを押さえておく必要があります。
- 自家発電消費率を上げる
- 太陽光発電システムの設置コストを抑える
特に設置にかかる費用は、販売会社によって数十万円、100万円近くの差が出る場合もあります。
相見積もりを取ったり信頼できる販売会社を探したりする等、様々な工夫が必要です。
また、太陽光発電を設置した後でも、使い方の工夫によって自家消費率を上げることは可能です。よりお得に太陽光発電を利用するなら、初期費用を抑えることで負担を軽減することができます。
まとめ
自家消費率を上げて効率的に太陽光発電を活用しよう!
数年前まで、太陽光発電は「投資の一種」として見られていましたが、現在は「電力を作って消費するもの」に変わってきました。電気料金を下げることによって、企業利益を上げるという手段の1つになってきています。
また、今度導入されるであろうFIP制度も見逃せません。自家消費率を上げて効率的に太陽光発電システムを活用することで、いくつものメリットが発生するでしょう。
ぜひ、太陽光発電システムの導入を検討してみて下さい。