災害時の備えとして、近年注目を集めている蓄電池。いざという時に役立つのは分かっているけど、どれくらい使えるのか、発電機との違いは何なのか、疑問も多いですよね。
この記事では、災害時の蓄電池の使い方や発電機との比較、使える電化製品や時間、さらに太陽光発電との連動や補助金についても詳しく解説します。事前に知識を身につけて、災害に備えましょう!
災害時に蓄電池が果たすべき重要な役割
災害が発生すると、しばしば停電が発生し、それに伴って電化製品が使用できなくなります。電気が不足する状況が続くと、身体的、精神的に大きな負担がかかることがあります。蓄電池は、このような状況で生命維持に必要な役割を果たします。この章では、停電の影響や原因について探ってみましょう。
大規模停電がもたらす命の危険
大規模停電は災害時に生じる最も深刻な問題の一つです。停電が発生すると、生活に必要な電力が供給されなくなり、様々な危険が生じます。医療機器の停止やエレベーターの動作停止など、命にかかわる事態が発生する可能性があります。
体力の弱い乳幼児や高齢者は、冷暖房が利かない状況下での過ごし方によって健康を害する可能性があります。食料品の保存も困難となり、停電は生活の不便さだけでなく、直接的な健康リスクも伴う状況となります。
一般的な停電の原因とその平均時間
停電の原因はさまざまですが、自然災害や設備の故障、人為的な要因などが主な要因です。平均的な停電時間は、数時間から数日に及ぶことがあります。これは、復旧作業には時間がかかるためであり、従来の電力供給システムでは即座に解決できない場合が多いです。
日本では、一般的な停電の頻度は年間0.05回から0.33回であり、年間平均停電時間は10分から20分です。これは、停電の回数が比較的少ない一方で、平均停電時間が10分から20分となることから、地域によっては数時間から数日にわたる大規模停電が発生していることがあります。
停電の原因は、主に自然災害の台風や地震、落雷などです。また、事故による電柱の破損や火災などの人為的な要因によっても停電が発生することがあります。
蓄電池を利用した災害時の電力供給
災害時に蓄電池を有効活用するには、使用可能な電化製品についての知識を深めることが不可欠です。通常は順調に動作する電化製品でも、非常時には異なる状況が生じることがあります。緊急時に適切な判断ができるように、蓄電池で動作する電化製品に関する情報を整理しましょう。
蓄電池の容量と出力について
蓄電池の性能を決定する主要な要素には、容量と出力があります。容量は蓄電池が保持できる電力量を示し、「kWh」で表されます。一方、出力は一度に供給できる電力の量を指し、大きな容量の蓄電池は通常、より高い出力を持ち、同時に使用できる電化製品の数を増やすことができます。
災害時の使用を考慮する場合、蓄電池の容量は4kWh以上が望ましいとされます。停電時の1日の平均消費電力は約4kWhと推定されており、容量4kWh以上の蓄電池ならば少なくとも1日分の電力を提供できるでしょう。
蓄電池で使用できる電化製品とその出力W
蓄電池を選ぶ際には、容量だけでなく出力も考慮しましょう。出力は使用する電化製品の消費電力の限界値を示しており、出力が低いと同時に大きな電化製品を使用できない可能性があります。一般的な電化製品の消費電力は次の通りです。
- エアコン:300W〜3,000W
- IHクッキングヒーター:1,400W〜3,000W
- 電子オーブンレンジ:1,000W〜1,400W
- 食器洗い機:1,100W〜1,300W
- 洗濯機:200W〜400W
- 冷蔵庫:100W〜300W
- ファンヒーター:10W〜450W
- デスクトップパソコン:100W〜300W
- 液晶テレビ:300W〜500W
これらを同時に使用する場合、最大で6,800Wの出力が必要です。蓄電池でカバーできる範囲ではありますが、同時に使用する際には注意が必要です。
注意すべき電化製品:IHやエアコンの電圧について
電圧は電力の強さを示す指標であり、V(ボルト)で表されます。日本の電圧は一般的に100Vであり、通常の電化製品はこの電圧に対応しています。しかし、IHクッキングヒーターやエアコンなど一部の機器は200V仕様のものもあり、これらを使用する際には注意が必要です。
高電力を必要とする一部の電化製品は、蓄電池の出力に影響を及ぼす可能性があります。特にIHクッキングヒーターやエアコンなどは高い電力を必要とするため、蓄電池の仕様に留意することが重要です。
200Vの機器は専用の蓄電池を必要とします。したがって、蓄電池を選ぶ際には現在使用している電化製品の仕様も確認し、緊急時に使用できるかどうかを確認することが肝要です。
蓄電池のみでの電力供給時間
蓄電池の容量には限界があり、停電時でも無制限に電力を利用することはできません。無計画な使用で残量を使い果たすと、緊急時に必要な電力を確保できないかもしれません。そこで、蓄電池単独で利用できる電力供給時間について考察してみましょう。
「特定負荷型」と「全負荷型」の違い
特定負荷型の蓄電池は、指定されたエリアにのみ電力を供給します。これにより、家庭の必要な機能を長時間維持できる利点があります。たとえば、停電時に必要な照明や通信機器を確保し続けることができます。また、特定負荷型は消費電力を効率的に管理することができるため、より長い時間にわたって機能を提供できます。しかし、特定負荷型の蓄電池は、家庭内の特定のエリアにしか電力を供給できないため、家庭全体の電力需要を満たすことはできません。
一方、全負荷型の蓄電池は、家庭全体に電力を供給することができます。これにより、停電時でも家庭内のすべての機能を維持することが可能です。全負荷型の蓄電池は、家庭内のすべての電化製品に電力を供給できるため、普段通りの生活を維持することができます。特に、200Vに対応した機種が多いため、エアコンやIHクッキングヒーターなどの高電力機器も使用できます。ただし、全負荷型の蓄電池は特定負荷型よりも高価であり、設置スペースが必要です。また、消費電力が高いため、長期間の停電時には効率的な使用が求められます。
以上のように、特定負荷型と全負荷型の蓄電池にはそれぞれ異なる特性があります。特定負荷型は効率的な電力管理が可能であり、安価でコンパクトなサイズが特徴です。一方、全負荷型は家庭全体の電力需要を満たすことができ、普段通りの生活を維持できますが、高価で設置スペースが必要です。
5kWh蓄電池で使える時間
蓄電池を利用することで、一般的な家庭で必要な電力を数時間から数日間供給することができますが、その期間は使用する電化製品や節電の度合いによって異なります。
特定負荷型の蓄電池を使用する場合、冷蔵庫、LED電球照明、テレビ、携帯充電器などの最低限の電化製品を利用した場合、1日の消費電力は約1,702Wであり、5kWhの蓄電池で約3日分の電力をカバーできます。
一方、全負荷型の蓄電池を使用する場合、冷蔵庫、LED電球照明、テレビ、携帯充電器、パソコン、炊飯器、エアコンなどの家庭内のすべての電化製品を普段通りに使用した場合、1日の消費電力は約3,852Wとなり、5kWhの蓄電池で使用できる時間は約1.3日です。
災害時の節電による蓄電池の長時間利用
大規模災害による停電で復旧の見通しが立たず長時間にわたることが予想される場合、電力を節約することが重要です。節電を心掛けることで、蓄電池の利用時間を延ばすことができます。
全負荷型の蓄電池は普段と変わらずに電気を使えるため、さまざまな電化製品を使いたくなるかもしれませんが、消費し過ぎると長期間の停電に対応できません。緊急時には無駄な消費は抑えることがとても重要です。
太陽光発電と蓄電池の連携による安心の電力バックアップ
蓄電池は太陽光発電システムとの相性が抜群であり、両者を連動させることで利便性が向上します。太陽光発電からの余剰電力を蓄電池に貯めることで、電力の無駄な消費を防ぐことができます。また、災害時の備えとしても有用です。以下では、蓄電池と太陽光発電を組み合わせた場合の利点を紹介します。
停電復旧が長引く場合の対策
2018年9月、北海道胆振東部地震により停電北海道全域で停電が発生し、約295万戸が影響を受けました。地域によっては、停電が数日間にわたりました。
2018年9月 台風第24号により中部地方と九州・沖縄地方を中心に、約180万戸が停電に見舞われました。被害は広範囲に及び、復旧には地域によっては1週間を要しました。
2019年9月 房総半島台風により関東地方を中心に、約93万戸で停電被害が発生しました。特に千葉県では、1週間を超えて復旧が進まない地域もありました。
停電が続く場合、太陽光発電と蓄電池のシステム連携によって、持続可能な電力供給が可能です。
太陽光発電の余剰電力を蓄電池で貯めて利用する方法
蓄電池の容量には限界があり、停電が長引くといずれは電力を使い切ってしまいます。太陽光発電は、余剰の電力を蓄電池に貯めることができ、その結果、夜間や雨天時でも安定した電力供給が可能となります。
太陽光発電システムと組み合わせることで、昼間は太陽光発電の電力を利用し、夜間は蓄電池に蓄えた電力を活用することができます。このサイクルを確立することで、日常的な電気の節約だけでなく、1週間から2週間の停電にも対応できます。災害への備えを真剣に考える方は、蓄電池と太陽光発電を同時に導入することが有益です。
悪天候下でのシステムの対応策
太陽光発電はパネルに光が当たることで発電する仕組みなので、悪天候時には発電効率が低下することを覚えておきましょう。晴天時と比較すると、曇天時は4割~6割、雨天時は1割強~2割程度まで発電効率が下がるといわれています。
悪天候下でも太陽光発電と蓄電池のシステムは安定して機能しますが、十分な備えが必要です。必要に応じて予備の電力供給手段を準備することが重要です。
太陽光発電で十分な電力が得られない日は、日中の電気の使用を極力控え、余剰電力を蓄電池に確保して夜間に使用するといった工夫が必要です。
蓄電池が発電機よりも優れている4つの理由
発電機は蓄電池と同様に、緊急時に電力供給を可能にする装置です。非常時に電力を供給できるため、「発電機があれば蓄電池は必要ない」と考える人もいるかもしれません。しかし、蓄電池には発電機にはない利点があります。以下では、代表的な4つの利点について見ていきましょう。
メリット1:燃料が不要である
蓄電池は燃料を必要とせず、電力供給に太陽光や電力網からの充電を利用します。このため、燃料の調達や費用、保管の手間が不要で、環境への負荷も低減されます。また、燃料切れや燃料の備蓄による安全面のリスクもなく、運用上の安全性が高まります。
特に、ガソリンは揮発性が高く、厳重に管理しなければ火災に発展する恐れがあり危険です。また、保存可能な期間が短いガソリンは、長期間の保存ができません。緊急時の備えとして導入するにはあまり適していないといえるでしょう。
蓄電池は太陽光発電や家庭用電源で日常的に電力を蓄えているので、燃料の調達や保管の必要がありません。突然停電してもリスクなく手軽に使えるでしょう。
メリット2:定期的な動作確認が不要である
発電機は日常的に使う機会が少なく、緊急時に起動しても正常に運転しない恐れがあります。いざというときに使用するためには定期的な動作確認が必要で、日頃から手間をかけてメンテナンスしなければなりません。
蓄電池は発電機と比べて、定期的なメンテナンスや動作確認が不要です。一度設置すれば、ほぼ放置しておくだけで適切に機能します。このため、利用者が定期的な点検やメンテナンスを行う必要がなく、管理が容易です。定期点検の手間がかからず、緊急時の運転に不安がない点は、蓄電池のほうが優れています。
メリット3:幅広い電化製品への対応
発電機の場合、宅内で使用する電化製品の電力を全て賄うには相応の容量を備えた機器が必要です。蓄電池は様々な電化製品に対応し、家庭内での使用範囲が広いのが特徴です。家電製品や電子機器の種類に関係なく、安定した電力供給を提供します。これにより、停電時でも生活の中心となる機器の動作を確保できます。また、発電機は燃費が悪く、長期間の停電には対応しにくいのも欠点です。
全負荷型蓄電池の場合、特に意識しなくてもほとんどの機種が宅内の電気使用量を賄えます。特定負荷型でも任意で決めた範囲で特に特別な配線の必要もなく使用が可能です。停電時にも無理なく使用でき、災害への備えとして十分役立つでしょう。
メリット4:静かな運転音
燃料を使う発電機は運転音が大きく、夜間の使用には向いていません。蓄電池は非常に静かに運転されるため、周囲の騒音を最小限に抑えます。発電機が発する騒音がないため、室内や屋外での利用において快適な環境を提供します。特に深夜や静かな環境での使用に適しています。
災害に強い蓄電池選びは専門家のアドバイスを活用しよう
災害時に蓄電池の導入を検討している場合、専門家のアドバイスを受けることが重要です。自身の専門知識が不足している場合、必要以上の大容量蓄電池を購入したり、必要な電力量の見積もりを誤ったりするリスクがあります。
蓄電池の選定に迷った際には、実績豊富な和上ホールディングスにご相談ください。和上ホールディングスは、自宅での蓄電池の効果的な利用方法について豊富な知識を有しており、お客様のニーズに最適な製品を提案いたします。
まとめ
蓄電池は災害時に非常に重要な役割を果たします。日本では災害への備えがますます重要視され、大規模停電の発生が続いていることもあり、蓄電池の需要が高まっています。
ただし、蓄電池の選択肢は多岐にわたり、環境によって最適な製品が異なるため、個人で最適な選択をするのは難しいです。蓄電池の選定に困った場合は、和上ホールディングスにご相談ください。お客様の環境や予算に合わせて、最適な蓄電池を提案いたします。