太陽光発電の中には、メガソーラーと呼ばれるタイプの設備が存在します。メガソーラーは、主に企業が導入・設置している大規模太陽光発電で、MWクラスの非常に大きな発電能力を持っています。
そこで今回は、メガソーラーの特徴や強み、日本で起きている問題点について詳しくご紹介します。メガソーラーの仕組みや発電能力を知りたい方などは、参考にしてみてください。
メガソーラーとは何?
まずは、メガソーラーの意味や仕組みについて分かりやすく解説します。
1MW以上の発電能力を持つ太陽光発電設備
メガソーラーは、出力1MW以上(1,000kW以上)の太陽光発電設備を指します。太陽光発電の出力とは、発電量のことです。1MWの発電量では、一般家庭200世帯以上の電力をまかなえるのが特徴です。
屋根に取り付けるタイプの太陽光発電と比較した場合、約100倍以上の発電能力を持っています。
なお、出力を示すkWは、ある瞬間の最大発電量を示しています。1時間あたりの発電量を確認したい場合は、kWhで示された数値を確認する必要があります。
メガソーラーに必要な太陽光パネルの枚数は、数千枚単位です。たとえば、長野県飯田市に設置されているメガソーラー発電所「メガソーラーいいだ」は、4,704枚もの太陽光パネルを使用しています。
出力5kWの住宅用太陽光発電は太陽光パネル20枚程度の設置枚数なので、一発電能力や設備規模、太陽光パネルの枚数など、あらゆる点で大きく異なることが分かります。
売電収入や維持費用の計算
メガソーラーは、住宅用・産業用太陽光発電と同じくFIT制度の認定を受けることができます。FIT制度の認定を受けたあとは、20年間固定買取価格で売電収入を得られる仕組みです。
固定買取価格は、住宅用・産業用太陽光発電に適用される単価と異なり、入札制度によって定められています。たとえば2020年度の入札では、第6回12円/kWh、第7回11.5円/kWhです。
2021年度の場合は、第8回11円/ kWh、第9回10.75円/ kWh、第10回10.5円/kWh、第11回10.25円/kWhといった入札結果です。
固定買取価格10.25円/kWh、出力1MW、年間発電量約120万kWhと仮定した場合、年間の売電収入は1,230万円前後です。
初期費用1MWにつき2億円前後、維持費用を年間200万円前後とした場合、初期費用回収まで19年程度と予想できます。固定買取期間20年間のうちに初期費用を回収し、黒字化へ向けた事業展開も可能といえます。年間の発電量は立地条件や天候によって変動するため、土地の選定も売電収入に影響します。
メガソーラーに必要な土地面積や条件
メガソーラーを設置するには、出力10kWや100kW、500kWなどの産業用太陽光発電よりも大きな敷地面積が必要です。
具体的には、出力1MWで少なくとも1ha程度の敷地面積を用意しなければいけません。1haの敷地面積は、サッカー場や野球スタジアムなどをイメージすると分かりやすいといえます。
他にも日当たり良好、南向きに設置しやすい用地、障害物の少ない環境など、発電に適した条件であること点も確認するのが大切です。用地の選定や調査などは、太陽光発電施工業者で実施してもらえます。
雑草地や原野、山林などは、メガソーラーの設置予定地として検討しやすいといえます。農地も開発しやすい用地ですが、農地転用など認定申請の手続きに手間と時間がかかります。
メガソーラーの特徴や強み
続いては、メガソーラーの特徴や強みについて確認していきます。
発電量が大きく売電などさまざまな活用方法を検討できる
メガソーラーの発電量は、100万kWh以上の年間発電量を見込めますし、さまざまな活用方法を検討できます。
たとえばメガソーラーで発電した電気は、売電だけでなく自家消費という活用方法も検討できます。メガソーラーの自家消費とは、発電した電気を売電せず、自社の事務所や工場などへ電力供給する運用方式のことです。
電気代は年々値上がり傾向のため、メガソーラーで電気代を削減できるメリットも大きいといえます。
一般的な太陽光発電よりも売電収入が大きい
メガソーラーは数千枚の太陽光パネルを連結しているため、100万kWh以上の年間発電量を見込めます。前述でも軽く触れていますが、200世帯以上の消費電量をカバーできる発電量です。
年間売電収入は1,000万円単位の事業費が見込めるため、事業として成り立たせることも可能といえます。出力10kW未満や10kW、100kWクラスの年間売電収入数万円~数百万円台に対して、数十倍~数千倍という規模です。
広大な土地を必要とするが用地に関する制限は少ない
メガソーラークラスの太陽光発電も、建築基準法の建築物および工作物には該当しません。近年では、自治体によるガイドラインや環境アセスメント法の対象など、設置条件も加わっているものの他の建築物と比較すると設置しやすい設備です。
さらに工場やマンション、オフィスビルなどとは異なり、交通の利便性などといった点を考慮不要です。そのため、都心や駅から離れた山林や雑草地でも、設置できる可能性があります。
他にも現時点で1ha以上の遊休地を所有している場合は、メガソーラーを設置可能です。固定買取期間終了後は、更地へ戻したのち別の用途へ活用できます。
不動産投資と異なり用地に関する制限の少なさは、メガソーラーの強みといえます。
FIT制度によって20年間固定価格で売電可能
メガソーラーは、固定買取価格で20年間売電することが可能です。つまり20年間の売電収入は見通しが立ちますし、初期費用回収までの期間も計算しやすい状況といえます。
さらに各自治体によっては、メガソーラーを含む太陽光発電設備や自家消費型太陽光発電などに対する補助金や税関係の優遇措置を用意している場合もあります。このような各種制度を利用した場合は、より初期費用を回収しやすいといえますし、余裕を持った事業計画を立てることができます。
メガソーラーの問題点
メガソーラーは、大きな売電収入を見込める一方、いくつかの問題点も存在します。
そこで、ここからはメガソーラーの主な問題点を紹介します。
自然破壊や事故リスク
メガソーラークラスの太陽光発電設備は、状況によって自然破壊につながる点に注意が必要です。
たとえば用地確保のための森林伐採は、風雨によって土砂流出のリスクも考えられます。他にも以下のようなリスクが想定されています。
- 造成工事などによって土ぼこりが近隣住宅へ飛散
- 太陽光パネルから反射した光が周辺住宅などへ届く(光害)
- 太陽光発電設備の稼働音を原因とした騒音被害
- 台風やゲリラ豪雨による土砂災害によって設備も流され、周辺住宅や住民、その他建築物などを巻き込む
- 台風や暴風によって太陽光パネルが飛散
メガソーラーは、土のうの配置や地盤強化の工事、防音壁の設置など、さまざまな事故に対するリスク対策および予算の確保が大切です。
採算を合わせるのが難しい
メガソーラーは、出力10kWや100kWの太陽光発電よりも大きな売電収入を見込める特長があります。しかし、収支バランスの維持は、小規模太陽光発電と同じくシビアに考えるのも大切です。
太陽光発電の初期費用は、年々下落しています。FIT制度の固定買取価格も値下がりの傾向です。
他電柱の増設工事など太陽光発電以外の工事費用やメンテナンス費用、発電環境によって固定買取期間中の初期費用回収が難しい場合もあります。
メガソーラーの導入を検討している事業者は、発電効率の高い設備導入や日当たりのいい用地確保、蓄電池導入といった点対策も重要です。また、中古太陽光発電所の検討もおすすめです。中古太陽光発電所の中には、2012年や2013年など高い固定買取価格でFIT認定を受けた設備も存在します。
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高圧連系の設備コストや手続きの手間がかかる
メガソーラーは、高圧や特別高圧の連系契約手続きやキュービクルなどの設備設置が必要です。電気事業法では、出力50kW~2,000kW未満の高圧設備に、保安規程の提出義務や電気主任技術の配置および所定の書類提出義務、技術基準に適合した設備状況を維持といったさまざまな規制も定められています。
2,000kW以上の特別高圧設備では、設置工事の30日前までに工事計画届出書を届け出る義務などといった規制が定められています。
メガソーラー運用するには、電力会社への協議申請や電気主任技術者の雇用および現場への配置、キュービクルという変圧設備の設置などが必要です。さらにキュービクルの設置には、100万円~の費用がかかります。
メガソーラービジネスの今後
最後にメガソーラー事業の今後について解説します。
卒FIT後に自家消費型などの切り替えが進む可能性
卒FITは、固定買取期間終了後の設備を指します。
メガソーラーを含む太陽光発電の固定買取価格は、年々下落しています。さらに固定買取期間終了後の売電契約に関しては、各電力会社の判断にゆだねられており不透明な部分もあります。
そのため卒FIT後は、自家消費型太陽光発電や太陽光発電所の売却への切り替えといった選択肢も考えられます。自家消費型太陽光発電は、自家消費型への切り替え工事なども必要です。
太陽光発電所売却の際は、物件情報の掲載や売却手続きなどを代行可能な仲介業者へ依頼するのがおすすめです。
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新制度FIPへの移行と期待
国内では、2022年度に市場連動型のFIP制度がスタートします。
太陽光発電の市場価格は、電力需要に合わせて常に変動します。たとえば、電力需要の高い時間帯には、売電価格が上昇します。反対に電力需要の低い時間帯は、低い売電価格で調整されます。
FIP制度では、市場価格に合わせて売電価格が変動するだけでなく、追加の売電収入「プレミアム額」も得られるのが特徴です。FIP制度のプレミアム額とは、FIP制度の基準価格と市場価格の差額を控除した補助収入のことです。
FIT制度とは異なり売電価格が下がることもあります。プレミアム額や電力需要によっては、FIT制度の固定買取価格よりも高い売電収入を見込める場合があります。
今後メガソーラーは、FIT制度だけでなくFIP制度を選択可能です。
メガソーラーは課題もあるが将来性もある
メガソーラーは、出力1MW以上の太陽光発電設備を指す用語です。1ha以上の用地を確保する必要があるのも特徴的です。
初期費用は2億円前後、メンテナンス費用100万円以上かかるものの、年間1,000万円以上の売電収入を見込めます。FIT制度の認定を受けた場合は、20年間の固定買取期間で初期費用を回収することも可能です。
遊休地を活用したい事業者やメガソーラーに関心を持っている事業者などは、今回の記事も参考にメガソーラーや中古太陽光発電も検討してみてはいかがでしょうか。