農地は、農業以外の用途に用いることはできません。しかし、農地転用の許可を得ることで、太陽光発電用に造成工事を施したり設備を設置したりできるようになります。
そこで今回は、太陽光発電を設置できるようになる農地転用の意味や特徴、手続きの流れについて詳しくご紹介します。農地を別の用途に活用してみたい方や農地を譲り受けたことで太陽光発電に関心を持ち始めた方は、参考にしてみてください。
農地転用とは?
農地転用とは、農地として定められている土地を農地以外の用途に用いる手続きのことです。農地として定められた土地は、国の農業保護政策によって無許可で農地以外の用途に活用できないよう規制されています。そのため、太陽光発電を農地に設置する場合は、農地転用手続きを済ませておく必要があります。
なお、自身の所有している土地が農地として定義されているかどうか分からない場合は、農業委員会で確認してもらえます。農業委員会は、各市町村に設置されている行政委員会で、農地法を含む農業に関わる法律や手続きに携わっています。
農地法では、農業をしているかどうかではなく、いつでも耕作可能な土地を農地として定められています。耕作放棄地であったとしても耕作可能であれば、農地転用手続きが必要です。
農地転用のために必要な準備
農地転用の意味や太陽光発電の設置に重要な点を把握したあとは、農地転用に必要な準備を確認していきます。農地転用手続きは複雑な内容のため、早い段階で必要書類の準備や流れの確認などを進めておくのが大切です。
本人申請か代理申請か決めておく
農地を太陽光発電の運用に用いる場合は、農地転用手続きの申請者を決めておきます。農地転用手続きでは必要書類をまとめたのち、管轄の市区町村役場へ書類提出する必要があります。提出の際は、自力もしくは行政書士へ代行依頼のいずれかを選択できます。
- 本人申請:農地法第4条の許可を得る必要がある
- 代理申請:農地法第5条の許可を得る必要がある
自力で申請手続きを行う場合は、1万円程度の費用で済ませられます。しかし、複数の書類準備したり必要事項を記入したりする必要があるため、行政手続きに慣れている方以外にとって難易度の高い方法です。
行政書士へ依頼した場合は、合計で20万円程度の費用がかかるものの、各種許可申請にかかる手間を省略できます。特段の理由を除いて農地転用手続きは、行政書士兵ら依頼するのがおすすめです。
農地の区分を把握しておく
農地転用手続きの代理申請を検討している場合は、農地区分について把握せずとも手続きを進められます。しかし、農地区分を把握しておくことは、太陽光発電事業を長期的に続けていく上で大切な知識の1つです。
農地には多種多様な種類があり、農地転用可能なケースと原則不許可のケースに分かれています。
農地 | 概要 | 農地転用可能か |
---|---|---|
農用地区域内農地 | 市町村の策定する農業振興地域整備計画に定められた土地 | 原則認められない |
甲種農地 | 市街化調整区域内土地改良事業等の対象 | 原則認められない |
第1種農地 | 10ha以上の農地、土地改良事業等の対象など、営農地として好条件の土地 | 原則認められない |
第2種農地 | 市街地化が予測される土地や駅から500m以内など、生産性の低い土地 | 周辺に活用可能な土地がない場合は認められる可能性あり |
第3種農地 | 駅から300m以内や市街地化が進んでいる区域の農地 | 原則認められる |
比較的農地転用しやすい農地は、第2種農地と第3種に該当する農地です。第3種農地とは、周辺に住宅や商業施設などが建てられている(市街化)土地のことです。
さらに各農地は、都市計画の市街化調整区域内か市街化区域に区分されているかによって、書類の申請方法が変わります。
- 市街化区域:農地転用の届出のみ、都道府県知事や農林水産大臣の許可不要
- 市街化調整区域:農地転用や建物の建築許可申請、開発許可申請が必要
届出は、指定の書類を提出すると許可不要で農地転用可能な手続きを指します。一方、許可申請は書類の提出後、知事や農林水産大臣の許可を受けなければ、農地転用できません。届出と許可申請は、混同しやすいポイントの1つで注意が必要です。
市街化調整区域は、農業振興地域(青地)と農業振興地域以外(白地)に区分されています。青地に該当している時は、農業振興地域の除外申請を行わなければ農地転用手続きを進められない点に注意が必要です。
第3種農地以外の農地に該当する場合は、例外で許可される場合もあります。ただし、原則認められないこと、例外の条件が複雑なことといった点も多いことから行政書士へ相談するのがおすすめです。また、ソーラーシェアリングを含めた他の方法を検討してみる野が大切です。
農地転用に必要な書類
農地転用に必要な書類は、多数存在します。
農林水産省HPで公開されている資料によると、少なくとも以下の書類を準備しておく必要があります。
- 法人にあっては、定款(寄付行為)及び法人の登記事項証明書
- 申請に係る土地の登記事項証明書
- 申請に係る土地の地番を表示する図面
- 転用候補地の位置及び附近の状況を示す図面(縮尺50,000分1~10,000分の1程度)
- 転用候補地に建設しようとする建物または施設の面積、位置および施設間の距離を表示する図面(縮尺500分1~2,000分の1程度)
- 転用事業を実施するために必要な資力及び信用があることを証する書面
- 所有権以外の権原に基づく申請の場合には、所有者の同意書
- 耕作者がいるときは、耕作者の同意書
- 転用に関連して他法令の許認可等を了している場合には、その旨を証する書面
- 申請に係る農地が土地改良区の地区内にある場合には、当該土地改良区の意見書
- 転用事業に関連して取水または排水につき、水利権者、漁業権者その他関係権利者の同意を得ている場合には、その旨を証する書面
- その他参考となるべき書類
[PDF]農地転用許可の手続について(農林水産省)
登記事項証明書や地番を示す書類など図面をはじめ、農地転用の申請書類や証明書類などが必要です。各書類を集めるだけでも時間と手間のかかる作業なので、行政書士へ相談してみるのがおすすめです。
農地転用手続きの際に費用を支払う
農地転用手続きの際は、申請費用などいくつかの費用がかかる点にも注目です。
本人申請を選択した場合は、自力で書類の収集や各種書類の発行などで1万円程度かかります。具体的には、各種書類の発行手数料1回につき400円~500円台で、一部書類について1万円程度の負担です。
一方、行政書士へ依頼したり太陽光発電の販売店や施工業者を通じて行政書士へ依頼した利した場合は、10万円~20万円程度の費用がかかります。申請ではなく届出(農地転用を行うことを示す手続き、許可不要なケース)の代理申請であれば、5万円程度で済ませられます。
太陽光発電の設置を検討している時は、造成工事や施工費用に加えて農地転用手続きに伴う発行手数料や相談料なども考慮するのが大切です。
農地転用手続きの流れ
農地転用の準備や費用などを確認できたあとは、農地転用手続きの流れについても確認しておきます。農地転用手続きの流れは、農地の面積に応じて変わります。
4ha以下の農地を転用する場合
市街化区域外の農地面積が4ha以下の場合は、各種審査や書類の確認に県知事や農林水産大臣も加わります。
具体的な流れは以下の通りです。
- 申請書類を準備
- 農業委員会へ申請書類を提出
- 農業委員会が申請書類に意見書を添付し、知事へ提出
- 知事は意見書を含めチェックし、農業会議へ意見を求める
- 知事が内容を精査し、農地転用の許可・不許可を決定
農地面積2haを超え4ha以下の場合、県知事が県農業会議の他、農林水産大臣と協議を行います。農地転用後は、地目変更登記申請手続きも必要です。土地の種類を示す地目は、農地転用で変更されないため、農地転用手続きとは別に進めなければいけません。
さらに農地転用の許可を得られたあとは、農地法第4条や第5条の規定に沿って、太陽光発電設備の設置工事や運用状況などを許可日から3か月後、そして1年ごとに報告しなければいけません。報告先は、管轄の市区町村役場です。
4haを超える農地を転用する場合
市街化区域外の農地面積が4haを超える場合は、申請書類を自治体経由で県知事へ提出します。その後は、以下の流れでチェックおよび農地転用に関する許可・不許可が下されます。
- 申請書類を準備
- 知事へ申請書類を提出
- 知事が農業委員会へ意見を聞く
- 知事が意見書を添付した上で農林水産大臣へ提出
- 農林水産大臣が農地転用の許可・不許可を決定
4ha以下の農地転用手続きとは、許可・不許可までの流れについて異なります。また、農業委員会が、知事の業務を担う場合もあります。申請者側で申請手続きの変更点などはありません。
市街化区域内農地を転用する場合
市街化区域内農地を農地転用する場合は、許可申請など不要です。具体的には、農業委員会へ農地転用の届け出を行います。
あとは、太陽光発電設置のために造成工事を依頼したり、施工業者へ太陽光発電の設置およびFIT申請などの依頼を行ったりしながら運用準備を進めます。
農地転用せず太陽光発電を設置した場合はどうなる?
農地転用せずに造成工事を進めたり太陽光発電などの設備や建物を設置したりした場合は、行政より撤去命令や原状回復工事に関する命令などが行われます。
また、状況によっては、以下の罰則を受ける可能性もあります。
- 3年以下の懲役または300万円以下の罰則
- 1億円以下の罰金(法人の場合)
農地を太陽光発電に活用したい時は、行政書士へ農地転用手続きに関する相談をしてみる野が大切です。
農地転用できない場合はどうすればいい?
農地区分などの関係から農地転用できない場合は、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)を検討してみるのも大切です。ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)は、農地の一時転用許可を受けたのち、農業と並行して太陽光発電の設置運用を進める運営方式を指します。
農地の一時転用許可は原則3年間ですが、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)ついてのみ10年間と規制緩和されました。
なお、一時転用許可手続きを進める際は、多数の書類を用意しておく必要があります。農地転用と同じく、行政書士へ代理申請を含め相談するのがおすすめです。
農地を別の用途に用いるなら農地転用が必要!
農地に太陽光発電を設置したい時は、農地転用手続きを済ませなければいけません。農地転用手続きは農地法によって定められたもので、本人もしくは行政書士による代理申請が認められています。
農地は、農業を行っているかどうかではなく農地として活用可能かどうかで判断されるのが特徴です。また、農地区分によっては、農地転用の許可を得られやすいかどうかという点も変わります。
耕作放棄地を太陽光発電用に利用したい方や農地を太陽光発電に活用してみようか悩んでいる方は、今回の記事を参考に農地転用手続きを検討してみてはいかがでしょうか。
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