太陽光発電の廃棄費用については、これまで努力義務とされていたものの2022年中に義務化へ変更されることが決まりました。しかし、分かりやすくまとめられている情報が少ないことやメディアで注目されていないため、何がどのように変更され、どのような準備をしておくべきか全く分からない太陽光発電投資家も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、太陽光発電の廃棄費用積立義務化の経緯や仕組み、対象の設備や積立期間などについて詳しくご紹介します。太陽光発電の廃棄費用積立について知らない方や太陽光発電の廃棄費用積立を確認した上で売却検討したい方などは、参考にしてみてください。
太陽光発電の廃棄費用積立義務化の経緯について
太陽光パネルやパワーコンディショナ、架台などの廃棄を行うためには、産業廃棄物の処理に対応している業者へ依頼する必要があります。また、廃棄処理に費用がかかるものの、今まで積立義務化されていませんでした。
そこでまずは、廃棄費用積立義務化前の状況や経緯について確認していきます。
これまでの制度は努力義務にとどまっている
2012年のFIT制度開始以降、太陽光発電の廃棄費用に関する取り決めなどは定められていませんでした。しかし、廃棄に関する規制が緩い状況だったため、ずさんな管理や不法投棄を行う業者も出てきます。
太陽光発電の不法投棄は、違法でなおかつ事故や健康被害につながります。太陽光パネルには、鉛などの人体にとって有害物質も含まれています。
そこで政府は太陽光発電の不法投棄やずさんな管理を減らすため、2017年4月にFIT法の改正へ乗り出します。
2017年4月の改正FIT法では、太陽光発電の事業計画認定を申請する際に、廃棄費用を含めた廃棄計画の作成および提出も義務化されます。さらに2018年の法改正では、運転費用の定期報告の項目に廃棄費用も含まれました。
つまり、廃棄計画は義務化されたものの、費用の積立自体は努力義務という状況です。(努力義務:罰則などは設けられていないものの、指定された行動や準備を行わなければいけないこと)
2022年7月1日に義務化スタート
2017年4月の改正FIT法などでは、廃棄費用の積立について盛り込まれていませんでした。しかし、2020年のエネルギー供給強靭化法成立で、太陽光発電の廃棄費用積立原則義務化という内容が決定しました。
廃棄費用積立義務化に関する制度は、廃棄費用の外部費用積立制度と呼ばれていて、2022年7月1日に始まります。
既に太陽光発電事業を行っている方はもちろん、これから太陽光発電の設置を検討している方も制度の開始時期について把握しておくのが大切です。
太陽光発電の廃棄費用積立義務化はどのような内容?
太陽光発電の廃棄費用積立義務化は、事業用太陽光発電を行う方に関係しています。産業用太陽光発電を検討している場合は、廃棄費用の外部積立制度を理解しておく必要があります。
続いては、廃棄費用積立義務化(廃棄費用の外部積立制度)の内容や特徴について紹介しています。
廃棄費用積立の対象設備は全ての産業用太陽光発電
廃棄費用積立の対象設備は、出力10kW以上の太陽光発電です。また、以下のケースも外部積立の対象です。
- 住宅の屋根に取り付けられている出力10kW以上の太陽光発電
- 2022年7月以前にFIT認定を受けた出力10kW以上太陽光発電
- 余剰買取を選択している出力10kW以上の太陽光発電
- 出力10kW以上の野立てだけでなくソーラーシェアリングも対象
野立て太陽光発電やソーラーシェアリング、カーポートなど場所に限らず出力10kW以上であれば、外部積立制度の対象です。
積立は売電開始から10年後にスタート
産業用太陽光発電の固定買取期間は、20年間に設定されています。そして、廃棄費用積立は、固定買取期間10年目から始まります。
たとえば、2022年にFIT認定を受けてなおかつ太陽光発電の売電を始めた場合は、2032年から廃棄費用の積立が行われます。
一方、中古太陽光発電の設置などにより固定買取期間が短縮されている時は、終了前の10年間から積立期間として定められる流れです。たとえば、固定買取期間残り15年間の中古太陽光発電を2022年から稼働させた場合は、2028年から2038年にかけて廃棄費用の積立が行われます。
太陽光発電を購入する時は、積立期間の開始時期についても確認するのが大切です。
積立金額は複数の要素から計算される
廃棄費用の外部積立制度は、太陽光発電の出力と固定買取価格をベースに算出されます。また、固定買取価格から廃棄費用の単価が定められるため、太陽光発電の設備規模だけでなくFIT認定を受けた年も注目です。
廃棄費用の単価×太陽光発電の設備規模=廃棄費用の総額
廃棄費用の単価は、資源エネルギー庁の廃棄等費用積立ガイドラインという資料で確認できます。たとえば、出力10kW以上50kW未満の太陽光発電を購入し2021年度にFIT認定を受けた時は、1khにつき1.33円の廃棄費用単価が適用されます。
なお、廃棄費用の単価は、設備規模の大きい太陽光発電やFIT認定年の古い設備ほど上がります。
中古太陽光発電や新規太陽光発電を購入する方は、廃棄等費用積立ガイドラインを確認してみるのもおすすめです。
積立方法は源泉徴収
太陽光発電の廃棄費用は、外部積立という源泉徴収方式です。
廃棄費用積立制度開始以降は、毎月の売電収入から差し引かれる仕組みです。そのため、廃棄費用を自主的に積み立てたり積立に関する手続きを進めたりなど、積立や手続きの手間はかかりません。
積立金額は太陽光発電廃棄の際に取り戻せる
廃棄費用の外部積立制度によって毎月積み立てられた費用は、固定買取期間終了後もしくは廃棄処理の際に返金される予定です。
返金を希望している時は、改正再エネ特措法施行規則で定められている申請書類に必要事項を記入し、添付書類を含めて電力広域的運営推進機関へ提出します。あとは審査期間に入り、通過できれば積立金を取り戻せます。(添付書類:印鑑証明書、産業廃棄物管理表の写し、設備の写真など)
一部太陽光発電は内部積立が可能
出力50kW以上の太陽光発電を運用している事業者の中で特定の条件を満たした場合は、内部積立を選択できます。
内部積立とは、太陽光発電事業者で自主的に廃棄費用を積み立てていく方式のことです。内部積立の主な条件は、以下の通りです。
- 外部積立と同額以上の積立
- 毎年の運転費用報告の際、外部積立と同額もしくは同額以上
- 金融機関が内部積立可能なことを確認
- 電気事業法上の発電事業者
出力50kW以上の太陽光発電で売電を行いたい方は、内部積立についても確認しておくのが大切です。
廃棄費用の積立金を取り戻せるケース
ここでは、廃棄費用の積立金を取り戻せるケースについて紹介します。
固定買取期間中
FIT制度の固定買取期間中に太陽光発電事業から撤退したり縮小したりした場合は、廃棄費用の積立金額を撤去費用などへ用いることが可能です。
発電事業の状況 | 概要 |
---|---|
発電事業を終了 | 廃棄費用の積立金を太陽光発電所の解体撤去へ活用可能 |
発電事業を縮小 | 50kW以上の太陽光発電を設置していて、なおかつ出力の15%以上縮小する場合、以下のうち最も小さい金額を積立費用から捻出可能 ・廃棄にかかった費用額 ・返金申請の時点で積み立てた金額 ・廃棄予定の太陽光パネルをもとに算出した金額 |
今後、固定買取期間の適用期間に太陽光発電事業を停止したり縮小したりしたい時は、外部積立制度で解体撤去に伴う費用負担を軽減してみるのが大切です。
固定買取期間終了後
固定買取期間終了後に太陽光発電事業を終了もしくは縮小したりする時は、積立金で廃棄費用を負担できます。
発電事業の状況 | 概要 |
---|---|
発電事業を終了 | 廃棄費用の積立金を太陽光発電所の解体撤去へ活用可能 |
全ての太陽光パネルを交換 | |
発電事業を縮小 | 50kW以上の太陽光発電を設置していて、なおかつ出力の15%以上縮小する場合、以下のうち最も小さい金額を積立費用から捻出可能 ・廃棄にかかった費用額 ・返金申請の時点で積み立てた金額 ・廃棄予定の太陽光パネルをもとに算出した金額 |
太陽光発電所の太陽光パネルを一部交換 |
固定買取期間終了後は、全ての太陽光発電設備を廃棄する場合に加えて、太陽光パネルの交換費用も積立金でカバーできるのが特徴です。
廃棄費用負担に備えるためにはパワーコンディショナの交換も重要
廃棄費用の負担に備えるには、パワーコンディショナの交換による売電収入アップを目指すのも重要です。パワーコンディショナは、太陽光パネルから発電された直流電力を交流電力へ変換し、売電もしくは自家消費用へ送電します。
経年劣化もしくは変換効率の低いパワーコンディショナを使用していると、売電量が減少してしまうため、定期的な点検や最新機種への交換をおすすめします。
廃棄費用を安くするには?
太陽光発電の廃棄費用を安くするには、相見積もりで相場より安い解体業者を探すのが大切です。相見積もりとは、複数の業者へ同時に見積依頼を行い、2つ以上の見積書を比較する方法のことです。1つずつ確認する場合と比較して、効率よく比較できるのが特徴です。
他には、撤去費用込みで太陽光発電の設置費用を計算および見積作成してくれる施工業者を探してみるのもおすすめです。撤去費用込みで設置契約を結ぶことができれば、廃棄の際に費用を負担せずに済みますし、安く提示してもらえる場合があります。
撤去費用をさらに抑えたい時は、リサイクル可能な部品をリサイクル業者へ回収してもらうのも大切です。
出力10kW以上の太陽光発電を始める時は廃棄費用積立制度を要確認!
出力10kW以上の太陽光発電は、2022年7月1日から開始される廃棄費用積立の対象です。また、廃棄費用の外部積立制度は、毎月の売電収入から廃棄費用分を差し引かれ、太陽光発電の廃棄や太陽光パネル交換工事の際に返金してもらえます。
2022年から太陽光発電事業を始める方や太陽光発電を手放すか悩んでいる方は、今回の記事を参考に今後の運用方針について検討してみてはいかがでしょうか。
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