カーボンニュートラル達成に向けて国内企業の中には、インターナルカーボンプライシングというものを導入している企業が出てきました。しかし、一般的なメディアなどで取り上げられる機会が少なく、どのような制度なのか分からず悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、インターナルカーボンプライシングの意味や特徴、企業側のメリットやデメリットについて詳しくご紹介します。脱炭素経営へ着手し始めた方や脱炭素経営に役立つ制度を活用していきたい方は、参考にしてみてください。
インターナルカーボンプライシングとは何?
インターナルカーボンプライシング(ICP:Internal Carbon Pricing)は、カーボンプライシングの一部です。
そもそもカーボンプライシングとは、排出される炭素に価格を付け、排出事業者の行動を変容させる政策手法です。事業者は排出量に応じて費用を負担します。
カーボンプライシングは、以下の3つに分類されます。
- 政府によるカーボンプライシング
- 企業によるインターナルカーボンプライシング
- 民間企業同士の排出量取引であるクレジット取引
カーボンプライシングの一部であるインターナルカーボンプライシングについて、詳しく見ていきましょう。
自社でCO2の価格設定をして取引を行う
インターナルカーボンプライシングとは、自社でCO2の価格設定を行い取引することです。インターカーボンプライシングを導入する目的はさまざまですが、主な目的として次の3つが挙げられます。
- 低炭素投資を推進するため
- 省エネを推進するため
- 社内行動を変化させるため
設定した価格は後から変更でき、価格は企業として脱炭素経営をどれだけ意識しているかの一つの指標にもなり得ます。
たとえば、高い価格を設定すれば、それだけ脱炭素経営を重要視していることを意味します。
導入企業が増加傾向の制度
インターナルカーボンプライシングを導入している、もしくは導入予定の企業は、年々増加傾向にあります。
2015年に導入(予定)企業は約1000社でしたが、2020年には約2000社になり、今後も導入のさらなる増加が見込まれる状況です。
日本におけるインターナルカーボンプライシングの導入(予定)企業数は、アメリカに次ぐ2位で、2020年時点で約250社が導入(予定)しています。
インターナルカーボンプライシングの導入メリット
インターナルカーボンプライシングの意味を理解したところで、導入メリットについて確認していきましょう。
今後想定される低炭素規制に前もって対応できる
1つ目のメリットは、今後想定される低炭素規制に前もって対応できることです。パリ協定や京都議定書が締結されたことで、低炭素社会の実現を目指す動きが世界的に加速しています。その結果、低炭素・脱炭素を目指す規制も増えてきました。
規制の一つとして、排出量取引が挙げられます。これは、各事業者に対してCO2の排出枠が設定され、その余剰分を無償もしくは有償で取引する制度です。
排出量取引により、各事業者はCO2排出量の削減に取り組みつつ、削減しきれない部分はほかの企業から購入することで、社会全体のCO2排出量を減らせます。
2050年カーボンニュートラル宣言を受け、こうした低炭素規制は今後も増えていくことが想定されます。
インターナルカーボンプライシングの導入は、今後想定される低炭素規制への準備ともいえるのです。
情報開示の促進による信頼性アップ
2つ目のメリットは、企業の情報開示が促進され、信頼性がアップすることです。インターナルカーボンプライシングでは、CDP(Carbon Disclosure Project)が定める項目に回答する必要があります。
CDP(Carbon Disclosure Project)とは、ロンドンに本拠を置くNPO団体CDPが運営する、投資家や企業が環境への影響を管理するための国際的な情報開示システムです。
企業は情報開示を通して、自社が投資に値することを投資家にアピールしていく必要があります。
CDPに回答することで企業の情報開示を促進でき、信頼性がアップすれば投資評価につながります。
脱炭素経営を加速化できる
3つ目のメリットは、脱炭素経営を加速化できることです。インターナルカーボンプライシングでは、自社のCO2排出量が明確になり、環境や経済への影響が見える化できます。
これにより、企業を意識的に脱炭素にシフトしていくのに役立ちます。
インターナルカーボンプライシングのデメリット
インターナルカーボンプライシングにはメリットがある一方で、デメリットもあります。
情報が少ない
1つ目のデメリットは、インターナルカーボンプライシングの情報が少ないことです。不足している情報として挙げられるのが、インターナルカーボンプライシングを導入する際に社内で巻き込むべきステークホルダーや、価格設定の具体的な方法論、価格設定後の予算管理の方法などです。
この課題を解決するために環境省は、モデル事業「インターナルカーボンプライシング(ICP)を用いた投資決定モデル事業」への参加企業を募集するなど、対策を行っています。
同事業で環境省は、インターナルカーボンプライシングにおいて企業が陥りやすい課題を解説し、企業の脱炭素投資を推進するためにインターナルカーボンプライシングを活用するノウハウを習得してもらうことを目指しています。
専門部署を配置しなければ対応が難しい
2つ目のデメリットは、社内に専門部署を配置しなければ対応が難しいことです。インターナルカーボンプライシングの価格は、市場・社会動向を分析したうえで設定する必要があります。
一度価格を設定した後も、定期的に価格の見直しを議論する必要があり、規制や環境投資の実績などをもとに検討することが求められます。
このように、価格の設定や見直しには分析・議論が不可欠であり、専門部署を配置しなければ対応が難しいです。
実施まで時間がかかる
3つ目のデメリットは、インターナルカーボンプライシングの実施までに時間がかかることです。日本はほかの国に比べて導入が進んでいるとはいえ、まだ本格化しているとは言えません。
インターナルカーボンプライシングは環境だけでなく経済も関連しているので、環境省と経済産業省が連携して検討していく必要があり、本格化されるまでにはまだ時間がかかる状況です。
インターナルカーボンプライシング導入に重要なポイント
インターナルカーボンプライシングのメリットとデメリットを理解したあとは、導入に重要なポイントを解説します。
なぜインターナルカーボンプライシングを行うのか目的を明確に
まず、インターナルカーボンプライシングを行う目的を明確にすることが重要です。定めた目的によって、その後の価格設定や活用方法が変わってくるからです。目的は、「取り組みの要因(内的・外的要因)」と「投資行動の緊急度」の2軸から決定されます。
取り組みの要因の例として、自社内で定めた低炭素目標の達成や、低炭素規制への対応・準備などが挙げられます。
複数ある要因のうち緊急度の高いものが、インターナルカーボンプライシングを行う目的といえます。
インターナルカーボンプライシングの価格設定について慎重に検討する
目的を定めたら、インターナルカーボンプライシングの価格設定について慎重に検討することが大切です。
価格設定の方法として、主に次の4種類があります。
- 外部価格の活用(排出権価格など)
- 同業他社価格のベンチマーク
- 低炭素投資を促す価格に向けた社内協議
- CO2削減目標による数理的な分析
1では国際エネルギー機関(IEA)の数値などを参照して決定し、2ではCDPレポートに記載されている金額などを参照します。
3では過去の意思決定に影響を与えたであろうインターナルカーボンプライシングレベルから算出し、4ではCO2削減目標と限界費用曲線をもとに算出します。
価格決定の難易度や、温暖化対策の実効性などを踏まえて、自社に合った方法を選択することが大切です。
なお、この4種類のなかで最も多く使われているのは、1の「外部価格の活用」です。
インターナルカーボンプライシングの導入事例
最後に、インターナルカーボンプライシングの導入事例を解説します。導入による脱炭素経営の推進を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
Microsoftの導入事例
Microsoftは、低炭素目標の推進を目的としてインターナルカーボンプライシングを導入しています。CO2 1トン当たり1,575円のインターナルカーボンプライシングを設定し、CO2削減に取り組んでいます。
各部門のCO2排出量を割り出し、排出量に応じた資金を収集しています。収集した資金は、脱炭素の促進や、イノベーション創出に活用するとのことです。
明治の導入事例
明治では、省エネ設備投資などを対象としてインターナルカーボンプライシング制度を導入しています。CO2 1トン当たり5,000円のインターナルカーボンプライシングを設定しました。
CO2排出量の増減を伴う設備投資計画の際に、設定した炭素価格を適用して仮想的な費用に換算することで、投資判断の一つとして活用するとのことです。
インターナルカーボンプライシングで脱炭素経営を加速化させよう!
インターナルカーボンプライシングとは、カーボンプライシングの一部です。インターナルカーボンプライシングは、自社でCO2の価格設定を行い取引することを指します。低炭素投資の推進・省エネの推進・社内行動の変化などを目的として導入されています。
脱炭素経営に着手し始めた方や、インターナルカーボンプライシングの導入に合わせて脱炭素経営へシフトしようとお考えの方は、今回の記事を参考にしながら太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか?
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