国内の太陽光発電設置率は年々増加傾向にあります。導入増加に伴い懸念されているのが「害虫被害」です。この記事では具体的にどんなことが起こるのか?また原因や放置することでのリスク、対策の取り方について分かりやすく解説していきます。
太陽光発電の害虫被害とは?
近年、太陽光発電の普及に伴い、害虫被害も増加しています。害虫が直接太陽光パネルに影響を与えることはありません。しかし、太陽光発電の周辺に生息する害虫を狙う鳥や小動物などの害獣が、発電設備に悪影響を与えるのです。
また、外敵や雨風から身を守るのに最適な太陽光パネルは、害虫の巣作り環境に適した場所でもあります。具体的にどのような害虫被害が起こり得るのか、詳しくみていきましょう。
害虫を狙うカラスによる太陽光パネル被害が多い
太陽光発電のパネルは、害虫を狙うカラスにより数多くの被害がもたらされています。害虫が直接太陽光パネルに影響を与えるわけではなく、害虫の存在により副次的にカラスの被害が発生します。
たとえば、定期的に管理されていない太陽光発電の周辺は雑草が成長しやすく、幼虫や蛇が住みやすい環境です。そのため、これらの獲物を狙ってカラスが太陽光パネルの上に着地し、その際、爪や足が太陽光パネルを損傷してしまうことがあるのです。パネルの損傷は、発電効率や耐用寿命などを低下させる原因につながります。
また、カラスが太陽光発電に直接ぶつかった場合はセルが壊れることもあり、これにより設備が故障する可能性があります。
ハチの巣がパネル下に作られることも
太陽光発電のパネル下にハチが巣を作る被害も報告されています。住宅の軒下や屋根裏と同じく、日陰で人の出入りが少ない太陽光パネル下は、ミツバチやスズメバチの巣作りに最適な環境です。
とくにハチの巣は春から秋にかけて作られることが多く、太陽光パネルの管理や点検を妨げる原因となります。
春先はハチの巣づくりから大きく時間が経過していないため、比較的小さな巣であることが多いですが、夏から秋にかけてハチの巣は10cm前後と非常に大きくなります。スズメバチは強い毒を持っており、人が刺されると最悪の場合は死に至ることもあるため、現地での管理や点検が難しくなります。
太陽光発電の敷地内でハチの巣が作られている場合は、専門の業者へ駆除依頼が必須です。ハチの巣の駆除後に太陽光発電の点検を実施するようにしましょう。
太陽光発電の害虫が発生する原因
太陽光発電に害虫や害獣が発生する理由には、次のものがあります。
- 雑草による2次被害
- パネル下は巣を作るのに安全
- 動作熱による温暖な環境
それぞれ詳しくみていきましょう。
雑草による2次被害
太陽光発電に害虫が発生する原因として、雑草の存在があります。太陽光発電の周辺管理を怠っている場合、大量の雑草を成長させて害虫の住みやすい環境を整えてしまうことになります。
害虫の住み着いた場所には蛇やネズミなどの小動物が引き寄せられるだけでなく、太陽光発電をショートさせる2次被害をもたらす原因にもなりかねません。
さらに、太陽光発電のトラブルで雑草に引火する可能性も少なくないなど、雑草はさまざまな問題につながることを覚えておきましょう。
パネル下は巣を作るのに安全
太陽光発電に害虫被害が発生しやすい理由として、巣作りに安全な場所であることが挙げられます。虫や鳥などの卵は常に外敵に狙われやすいため、目立ちやすい環境には巣を作りません。しかし太陽光パネルの下は害虫や鳥にとって雨風から身を守ることができ、また外敵から狙われにくいなどの条件が揃っています。
とくに鳩は、外部の敵から卵を守ることができる狭い隙間を好むため、太陽光パネルの下は巣作りの条件に適していると言えます。
動作熱による温暖な環境
太陽光発電の作動中に発する熱も、害虫や害獣が住みやすい環境の理由のひとつだといえます。太陽光パネル動作中の温度は60℃前後です。そのため、暖かい場所を好む害虫や猫、鳥にとって集まりやすい場所となります。
とくに鳩による巣作りの事例が多く、これによる被害も報告されています。
鳩は巣を作った場所に強い執着性を持っているほか、鳥獣保護法という法律により駆除が禁止されています。そのため、鳩対策は専門業者に依頼しなければなりません。
太陽光発電の害虫によるリスク
害虫や害獣は太陽光発電の事故や故障などのリスクをもたらします。太陽光発電に発生する害虫や害獣が引き起こすリスクは次のとおりです。
- ケーブル損傷などによる短絡・地絡被害
- 鳥の糞や死骸による火災事故
- 設備故障の原因
具体的なリスクの詳細について詳しく見ていきましょう。
ケーブル損傷などによる短絡・地絡被害
太陽光発電設備に生息する害虫を捕食するネズミやイタチは、ケーブル損傷による地絡や地絡被害を起こす原因です。
ネズミやイタチはケーブルをかじる習性があり、これによりケーブル内の配線が直接触れ合う短絡、または電気ショートが起こることがあります。抵抗が低い状態で直接触れ合う短絡やショートが発生すると、大量の電気が流れるため危険な状態といえます。
また、むき出しになった配線が地面に接触し、大地に電気を流す地絡被害を引き起こすこともあります。地絡が起きた設備の周辺は感電の可能性もあり、安易に近づけません。
害虫は直接ケーブルに影響を与えませんが、結果的に短絡や地絡被害を引き起こす要因のひとつになっています。
鳥の糞や死骸による火災事故
鳥の糞や死骸は、パネルに「ホットスポット」と呼ばれる箇所を作ることがあり、これが原因で発熱を引き起こし、火災事故につながることがあります。
ホットスポットは、パネルの表面に長時間汚れが付着することで発生します。長時間発電できない状態が続くことで電気抵抗が大きくなり、発熱が起こるからです。太陽光パネルのホットスポットが100℃以上になると、最悪の場合は火災が起きる可能性があります。
鳥の糞や死骸は雨で落ちづらく、ホットスポットを発生させる原因です。定期的な洗浄やメンテナンスで、常に太陽光パネルを最善の状態にしておきましょう。
設備故障の原因
害虫や害獣が太陽光発電に与える影響は、設備故障の原因となります。昆虫を好むネズミや蛇がケーブルを傷つけるだけではありません。ネズミやイタチはケーブルをかじって断線させ、また蛇は設備の中に入り込み、電気ショートを引き起こすことがあります。
さらに、イノシシやシカなどの害獣が太陽光パネルを踏み潰して破壊する可能性も高いでしょう。太陽光発電の設置で発生する害虫や害獣は、配線のショートやパネル破壊など、修理が必要な設備故障を引き起こす原因のひとつです。
太陽光発電の害虫対策
太陽光発電の害虫や害獣の被害を防ぐためには対策が必要です。被害が発生する前に対策を行うことで、火災や電気ショート、太陽光パネルの破壊を防止できます。太陽光発電の被害対策は次のとおりです。
- 草刈りで周辺環境の定期メンテナンス
- 太陽光パネルの定期洗浄
- フェンスの設置義務の遂行
それぞれ解説します。
草刈りで周辺環境の定期メンテナンス
太陽光発電の害虫対策には、定期的な草刈りが有効です。夏にかけて太陽光発電周辺は雑草が大量に発生しやすくなります。これらの雑草は虫にとって住みやすい環境となるため、草を除去する対策が必要です。
また雑草の影による発電効率低下や、草のツルが機材に絡まることで故障の原因になることも考えられます。定期的な草刈りは、害虫対策や太陽光発電の管理には欠かせない手段です。
太陽光パネルの定期洗浄
太陽光パネルは、虫の死骸や鳥の糞、ホコリや花粉などを除去する定期的な洗浄が必要です。太陽光パネルの汚れはある程度雨で流れるように設計されていますが、流れない汚れは発電効率低下を招きます。また汚れの付着が長時間続くことは、セルの損傷を引き起こすホットスポット発生の原因にもなりかねません。
太陽光パネルの洗浄は自分で行う方法と専門業者に依頼する方法があります。しかしメーカーでは、自力での洗浄は推奨していません。洗浄方法次第では、パネルの損傷や機能低下を招く可能性があるからです。
太陽光発電の定期洗浄は、知識とノウハウをもった専門業者への依頼をオススメします。
フェンスの設置義務の遂行
太陽光発電の害虫対策として、改正FIT法に基づくフェンスの設置が必要です。2017年の改正FITにより、太陽光発電の周辺にはフェンスの設置が義務化されています。
フェンス設置の条件は、敷地内への侵入を許さない高さであることや、外部から機材に接触できない場所であることなどです。
また、フェンスの代わりにロープなどの使用は禁止されているほか、出入り口の施錠や、立入禁止などの標識を外部から認識しやすい位置に表示する必要があります。
フェンスの設置義務化は、太陽光発電の感電トラブルや安定稼働を目的としています。害虫を狙う小動物の侵入を防ぐためにも、フェンスは必ず設置してください。
太陽光発電の害虫に関するまとめ
太陽光発電の設置率増加に伴い、害虫や害獣の被害も増加中です。雑草の中にいる害虫を目当てにカラスやネズミ、蛇などが引き寄せられます。加えてこれらの害獣は、太陽光発電設備の破損や電気ショートを起こす原因にもなるため、被害を防ぐために雑草除去などの定期メンテナンスが必要です。
また、太陽光パネルの下は外敵や雨風から身を守りやすいこともあり、ハチや鳩などが巣を作りやすい環境が整っています。万が一、巣を作られてしまった場合は自力で駆除せず、専門の駆除業者への依頼するようにしましょう。