カーボンニュートラル実現に向けて建築現場が取り組めることを紹介!

カーボンニュートラル実現に向けて建築現場が取り組めることを紹介!

カーボンニュートラルは、二酸化炭素の排出量を実質0へと目指すもので、建築業にも求められている取り組みです。しかし、建設業にとって温室効果ガスを排出する建設機械やトラックなどの稼働は欠かせません。どのように対策を施すか、工夫が求められるでしょう。今回は、カーボンニュートラル実現に向けて建築現場が取り組めることやポイントについて詳しくご紹介します。建設業の省エネや脱炭素の方法を知りたい方などは参考にしてみてください。

目次

建築業におけるカーボンニュートラルの課題

カーボンニュートラルは、CO2(二酸化炭素)を含む温室効果ガスの排出量を実質0にするための取り組みを指しています。カーボンニュートラルと似た用語である「脱炭素」とは、CO2の排出量実質0を目標とした取り組みを指しており、削減対象に違いがあります。

建築業におけるカーボンニュートラルは、二酸化炭素の排出量や測定方法、削減にかかるコストや技術など多くの課題を抱えています。多くの企業において、カーボンニュートラルや脱炭素のハードルは高く、悩みの種でもあります。

まずは、建設業におけるカーボンニュートラルの課題を1つずつ確認していきましょう。

CO2排出量が多い

建築業はその性質からCO2排出量が多く、環境負荷も高いです。国土交通省の資料によると建設機械のCO2排出量は、約571万トン(2018年度)です。産業部門の中では1.4%を占めています。

建築業では、住宅やビル・工場などの建設工事だけでなく、運用・解体工事の際にもCO2を排出してしまうため、排出量がかさみます。建設業におけるカーボンニュートラルは、まず建築現場の作業方法や建設機械から排出されるCO2に注目することが大切です。

出典:「建設現場における脱炭素化の加速に向けて」(中部地方整備局)

CO2排出量の正確な測定や検証が難しい

CO2排出量の正確な測定や検証が難しい点も、建設業のカーボンニュートラルにおける大きな課題です。CO2排出量の測定が難しいということは、削減量の検証も困難であり、施策の効果を確認し改善点を見つけることも困難です。

こうした課題を解決するため、排出量を測定するシステムを独自に開発している建設会社もあります。また国土交通省は2024年5月にライフサイクルカーボン算定ツールの試用版を公開しました。建築物におけるライフサイクル、すなわち資材の製造・運搬から解体までに生じるCO2排出量を算定するためのツールです。

こうした管理システムやツールを活用する動きが広まっています。

コストや技術面の負担が大きい

CO2排出量の多い建築業でカーボンニュートラルを達成するには、二酸化炭素排出量の少ない建設機械へ買い替えたり、環境負荷の低い作業方法へ切り替えたりといった対策が必要です。また、事務所の照明や空調、事務機器などを、省エネ性能の高い製品へ切り替えるといった選択肢もあります。

しかし、建設機械やその他機器類の変更には多額の費用がかかるため、予算との兼ね合いでハードルが高いとされています。自社にとって比較的導入ハードルが低い施策を探し、検討する必要があります。

建築業においてカーボンニュートラル関連の法整備や対策が進む

近年、建築業における環境関連の法整備や規制、対策が進んでいます。建築業者は、事業を継続するためにも法規制に対応した施工方法や対策を取り入れる必要があるでしょう。続いては、建築業に関係するカーボンニュートラル関連の法整備や対策を紹介します。

省エネ法・温対法による定期報告

省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)では、一定規模以上(原油換算1,500kl/年以上のエネルギー消費)の事業者に対してエネルギー使用状況の定期報告が義務付けられています。また定期報告以外にも、省エネに向けた計画策定と計画の提出、エネルギー削減に関する目標なども定められています。

温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)は、一定規模以上の事業者に対して温室効果ガス排出量の定期報告を義務付けた法律です。

省エネ適合性判定の導入

2017年、省エネ適合性判定と呼ばれる制度が導入されました。対象の新築建物を建築する際は、省エネ基準へ適合させる必要があります。

300㎡を超える中規模以上の新築住宅を建てる場合は、省エネ基準に適合した計画書の届出が求められます。(届出義務)また、300㎡を超える中規模以上の非住宅を建てる場合は、省エネ基準に適合した性能を持たせなければいけません。(適合義務)

2025年からは面積などの条件が撤廃される予定です。今後は、すべての住宅・非住宅で適合義務が適用されます。

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の推進

現在国ではZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を推進しており、ビル建設においてはZEB化への対応が求められます。ZEBは、快適に過ごせる室内環境を保ちながら、年間の一次エネルギー(※)収支0を目指した建物を指しています。

建築業者は、省エネ性能の高い空調やボイラーの導入をはじめ、断熱性能の向上に努めたり再生可能エネルギー設備の活用したりして対応していく必要があります。

※ZEBにおける一次エネルギーとは、石油や天然ガスといった自然に存在しているエネルギーのことです。

建築業で取り組めるカーボンニュートラル

カーボンニュートラルの方法は多岐にわたります。建築業はCO2排出量が多いため、さまざまな方法を検討し、多角的に取り入れていく必要があるでしょう。ここからは、建築業で取り組める主なカーボンニュートラルについて解説します。

再生可能エネルギーの導入

建物の屋上や敷地内に再生可能エネルギー設備を導入できれば、二酸化炭素の排出量削減につながります。

再生可能エネルギーとは、太陽光や風、水、地熱といった自然界に存在する非化石エネルギーのことです。石油や石炭といった化石エネルギーと比較して枯渇のリスクが小さい上、CO2排出量少ないといったメリットがあります。

再生可能エネルギーで発電した電気を使えば、二酸化炭素の排出量を削減できるほか、電気料金の負担を軽減することも可能です。

建築現場での省エネ対策

建設業において比較的容易に取り組むことができるのが省エネによるCO2排出量削減です。

省エネ性能の高い建設機械へ切り替えることはもちろん、運転時の工夫でも省エネは可能です。シフトアップやシフトダウンを早めに行えば、エンジンの回転数を抑えられます。エンジンの回転数を抑えられれば、その分CO2排出量の削減につながります。

このように建築現場では、建設機械の交換だけでなく、作業の工夫によってCO2を削減できます。建築現場で取り入れやすい省エネ対策およびカーボンニュートラルにつながる取り組みは、後半で詳しく解説します。

カーボンニュートラルに沿った建物の建築

建設物の素材や、施工方法によるカーボンニュートラルは代表的な方法です。木材など、製造加工過程でCO2排出量が少なく、環境負荷の少ない建築材料に可能な範囲で変更していくことが求められます。

近年では、低炭素型コンクリートの活用も注目されています。低炭素型コンクリートは、セメントの一部に産業副産物(石炭火力発電所で排出されるフライアッシュなど)を使用したコンクリートで、製造過程のCO2排出量が抑えられています。

建築材料の選定以外には、ZEBに対応した施工方法を導入したり環境負荷の少ない内装をデザインしたりといった対策も検討できます。

建築現場のカーボンニュートラル10例

建築業でカーボンニュートラルを達成するためには、ZEBに対応した建築や事務所での省エネ対策に加えて、建築現場での対策も重要です。ここからは、建築現場で取り組めるカーボンニュートラルの具体的な取り組み例を10個紹介します。

アイドリングストップを従業員に呼びかける

従業員に向けてアイドリングストップを呼びかける運動は、低コストかつすぐに始められるカーボンニュートラル・省エネ対策のひとつです。

アイドリングストップとは、信号待ちなどで一時的にエンジンを停止し、二酸化炭素を含む温室効果ガスの排出を削減する取り組みのことです。目安としては、停車時間が20秒以上の場合にアイドリングストップを行うよう呼びかけてみましょう。

運転の工夫を呼びかける

トラックなどを運転する際は、エンジンの回転数を抑え、少しでも燃費を良くする乗り方を心がけるよう、従業員に呼びかけましょう。具体的には次のような工夫で、エンジンの回転数を抑えることができます。

早めのシフトアップ・遅めのシフトダウン

走行時には、信号待ち・坂道運転などさまざまな条件が重なるため、発進や加速の回数も増えます。低速のギア(1速や2速など)でアクセルペダルを長時間踏み込むと、エンジンの回転数が上がるため、その分燃料消費量も増えてしまいます。また、二酸化炭素の排出量が増加するため、エンジンの回転数を抑える運転を心がけましょう。

経済速度・一定速度での走行を心がける

一定速度で走行すれば燃料消費量の増加を抑えられるため、二酸化炭素の排出削減や燃料コスト削減につながります。

経済速度は、交通の流れを乱さない範囲でエンジンの回転数を低く抑えた走行を指しています。たとえば、一般道なら速度50km/h以下、高速道路なら80km/h以下が目安です。とはいえ、遅すぎる速度での走行は危険なため、安全運転を守りあくまでも目安として考慮してください。

急発進や急加速を抑えて運転する

急発進や急加速はエンジンの回転数を急激に上げてしまうため、燃料を消費し、二酸化炭素の排出量を増加させます。急発進などを抑えるためには、エンジンの回転数がグリーンゾーンの内にシフトアップを行い、緩やかにアクセルを踏み込むよう意識することが大切です。グリーンゾーンは、エンジンの回転計で緑色に示された部分です。一般的には、1,200~1,500回転を指しています。

坂道ではエンジンブレーキを活用する

下り坂などでの運転時は、エンジンブレーキを活用しながら早めに減速するよう心がけることが大切です。エンジンブレーキを使用すれば余計な燃料供給をカットできるため、二酸化炭素の排出量を削減することが可能です。なお減速の際は、停車位置より手前で失速しないよう注意してください

建設機械使用時は油圧リリーフを抑える

建設機械を操作する際は、油圧リリーフがかからないよう気を付けながら作業することで燃料の消費を抑えられます。

過度ポンプの破損や建設機械の故障を防ぐ油圧リリーフですが、かかればかかるほど無駄な燃料を使ってしまいます。社団法人日本建設業連合会の「省燃費運転マニュアル」によれば、油圧ショベルにおいて油圧リリーフのかかる時間を1日当たり1時間減らすことができれば、年間400リットルもの燃料を節約できるとされています。

掘削位置の工夫で掘削力の向上を図る

パワーショベルで作業を行う際は、掘削位置を工夫することで燃費を良くすることができます。

連結ピンとアームシリンダーの位置が直角であれば、最大掘削力で掘削を進めることが可能です。また2段掘削は無駄な動きを抑えられるため、その分燃料消費や二酸化炭素の排出量も削減できます。

積み込み作業における動きの最小化

バックホウ(油圧ショベルの中でもオペレーター側にショベルが設置されたタイプ)で積み込み作業を行う際は、効率的な動作を心がけましょう。

積み込みを行う際も、位置取りに気を付ければアームの旋回角度を小さく抑えることが可能です。旋回角度が小さくなれば、燃料消費の削減につながります。

低燃費の建設機械を導入する

建設機械の交換時期に差し掛かっている場合は、低燃費型やハイブリッド型の建設機械を探してみるのもおすすめです。

低燃費型の建設機械は、一般的な建設機械よりも燃費が向上しています。ハイブリッド型の建設機械はモーターを取り入れた構造で、燃料消費量と二酸化炭素の排出量を削減できるようになっています。

定期点検を心がける

建設機械の定期点検・修理交換は、燃料の無駄遣いや作業効率の低下を予防するため、カーボンニュートラルにも役立ちます。

たとえば、エンジンのフィルタエレメントが目詰まりしてしまうと、エンジンの出力低下を招くため、余計な燃料消費につながります。建設機械で用いられているバケット爪(アームの先端に取り付けられる部品)が摩耗すれば、掘削力の低下を引き起こします。

建築業では太陽光発電の導入もおすすめ

建設機械や自動車の運転を工夫することで削減できるCO2排出量には限りがあります。建築業でカーボンニュートラルには、建築現場だけでなく事務所内での実施も欠かせません。そこで注目したい方法のひとつが、太陽光発電設備の導入です。最後は、建築業で太陽光発電がおすすめの理由とメリットをわかりやすく解説します。

シンプルな構造で二酸化炭素の排出量を削減できる

自家消費型太陽光発電を導入すれば、事務所内での電力使用による間接的な二酸化炭素排出量を削減できます。(自家消費型太陽光発電:発電した電気を自社の建物内で消費していくこと)電力会社から供給されている電力は、主に火力発電由来の電力です。火力発電では化石燃料を燃焼しなければいけないため、電気を使えば使うほど間接的な二酸化炭素排出量の増加につながります。

他の省エネ対策と比較して簡単に二酸化炭素の排出量を削減できるのが、太陽光発電の導入メリットといえます。

通常、建築業におけるカーボンニュートラルは、建築材料の選定や施工方法の切り替え、建築現場での省エネ対策など、技術やコスト面で負担のかかる傾向にあります。一方、太陽光発電を導入し、発電した電気を使用すれば、その分二酸化炭素の排出量を削減できます。通常業務を継続しながらカーボンニュートラルへ向けた取り組みを進められるのは、大きな利点でしょう。

事務所内の電気代削減につながる

自家消費型太陽光発電を導入すれば、電力会社から購入する電力量を減らせるので、事務所内の電気代を大幅に削減することが可能です。

太陽光発電の場合は、設置工事後の運転操作や調整なども不要です。リソース不足で悩んでいる建築会社も、効率的に電気代の削減を行えるでしょう。

脱炭素経営につながり企業価値向上を期待できる

太陽光発電の導入は、脱炭素経営を進める上で役立つほか、企業価値を向上させる設備といいえます。(脱炭素経営:気候変動対策を取り入れた経営)脱炭素経営は、カーボンニュートラルとも関連しており、企業の信頼性や投資家・取引先からの評価などに関わります。

中でも太陽光発電は非化石エネルギーを活用した発電設備です。二酸化炭素の排出量を削減でき、環境負荷の軽減が見込まれるため、脱炭素経営の方法に悩んでいる多くの事業者が検討する方法の一つです。

建築業のカーボンニュートラルは重要な課題!

建築業はCO2排出量が多いため、カーボンニュートラル・脱炭素がとくに求められている業種の一つです。国は脱炭素を促進させるため、建築関連の法規制・省エネ対策などにも力を入れており、さらなる施策が必要になる可能性もあります。

建築業の成長および信頼性の向上を図るためには、建築現場でのカーボンニュートラルに関する取り組み、再生可能エネルギーの導入などが必要です。

建築業におけるカーボンニュートラルで悩んでいる方は、今回の記事を参考にしながら太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。

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