洋上風力発電は今注目されている再生可能エネルギーの一つですが、それほど普及が進んでいません。普及率が低い理由には、洋上風力発電の抱えるデメリットが深くかかわっています。今回は、洋上風力発電のデメリットや注意点、脱炭素経営におすすめの再生可能エネルギーについて詳しくご紹介します。再生可能エネルギーの導入を検討し始めた方や洋上風力発電に関心を持っている方などは参考にしてみてください。
洋上風力発電についておさらい
洋上風力発電は、海に吹く風で風車を回転させて発電を行う風力発電の一種です。陸上風力発電と同じく化石燃料を使用しないため、環境に配慮された発電設備という点が強みといえます。
設置場所は海の上で、着床式洋上風力発電と浮体式洋上風力発電の2種類にわかれています。
着床式洋上風力発電は、タワー(風車、発電機を支える支柱)を水深50mより浅い海底に埋め込み、設備を固定させる方式です。一方、浮体式洋上風力発電は、タワーを含めた設備全体を浮体構造物で海上に浮かせる方式です。浮体構造物は、アンカー(コンクリート製の構造物)によって海底と接続されており、波や風の影響で流されないよう固定されます。
浮体式洋上風力発電は、水深による制限を受けにくく、さまざまな場所で設置・運用できます。しかし、技術的難易度が高いため、現状では主流の方式ではありません。
洋上風力発電のデメリット
洋上風力発電には、コストや環境・景観への影響など、さまざまなデメリットが存在しています。脱炭素経営のための再生可能エネルギーとしては現状導入が難しい企業が多いでしょう。ここからは洋上風力発電の主なデメリットを解説します。
初期費用の負担が大きい
洋上風力発電は、設備機器の購入や設置工事だけでなく基礎工事や海底ケーブルの敷設工事なども必要なため、初期費用の負担が大きいです。
経済産業省の「令和6年度以降の調達価格等に関する意見」によると、幼女風力発電の資本費は、1kWあたり137万円で、陸上風力発電の27.3~34.7万円に対して4~5倍とされています。
基礎工事とケーブル敷設工事が、コスト面の負担を大きくしている要因のひとつです。とくに着床式洋上風力発電の場合は発電設備の倒壊を防ぐため、海底に基礎を設置し、固定しなければなりません。
また、洋上風力発電を設置しただけでは、発電した電気を送電できません。設置工事の際は、電力ケーブルを海底に敷設する工事も行う必要があります。
このように大掛かりな工事が含まれるため、全体の費用が大きくなりやすいのです。
出典:令和6年度以降の調達価格等に関する意見」(経済産業省)
維持管理費用がかかる
維持管理にかかる費用負担が大きい点も、デメリットのひとつです。
洋上風力発電は、他の再生可能エネルギー設備と同じく定期的なメンテナンスや発電量のチェックなどが必要です。潮風による腐食などのリスクもあり、定期的に部品交換や修理を行わなければならない可能性もあります。
部品を交換したり設備を廃棄したりする際は、陸上まで船で輸送する必要があり、輸送費用も大きくなりやすいです。
環境や漁業への影響を考慮する必要がある
洋上風力発電事業を計画する際は、環境や周辺の生態系、漁業への影響を考慮する必要があります。
洋上風力発電を設置するために基礎を造る場合、海底の環境を変えてしまいます。周辺の生態系や漁業にも影響を与えてしまうリスクがあり、慎重に受け止めなければならない課題です。さらに、風車の回転に伴う振動音や構造物が、渡り鳥や魚類など周辺の生態系へ影響を与えることもあります。
環境アセスメントを通じた評価・分析、漁業関係者への配慮などが欠かせない発電事業なのです。(環境アセスメント:開発事業による環境への影響を分析したもの)
景観が変化してしまう
洋上風力発電を設置してしまうと景観が変化するため、地元住民や漁業関係者からの反発やトラブルにつながる可能性もあります。
沿岸部に住んでいる方や漁業関係者の方などにとって、洋上風力発電が乱立し、景観が損なわれればよい気はしません。海沿いは観光業がにぎわっていることも多く、景観の悪化は大変な問題となり得ます。
スムーズに事業を進めるためには、あらかじめ地元住民や漁業関係者などと話し合い、理解を求める必要があります。
計画作成から設置までに時間がかかる
国内で洋上風力発電事業を実施する場合、ヨーロッパなど他の地域に比べると、計画作成から設置までに必要とする時間が長いといわれています。
洋上風力発電事業を始めるためには、まず周辺環境への影響を調査・分析し、許認可を受けなければ部材調達などを進められません。この手続き関連に多くの時間が必要となるのです。
また、前段でも触れたように発電設備を設置するための基礎工事、電力ケーブルの敷設と接続なども必要のため、工事そのものにも時間がかかります。
浮体式風力発電の設置難易度が高い
洋上風力発電の中でも浮体式風力発電は、技術的難易度の高い設置方式で、導入の難しい再生可能エネルギー設備です。
浮体式風力発電の基礎部分は洋上に浮いているため、風や波の影響を受けやすく、安定性を高めるための対策が必要です。基礎部分の製造および輸送、固定方法に関する技術的難易度も高く、用意に導入できるような設備ではありません。
現状、再生可能エネルギー設備を導入したい場合は、普及の進んでいる太陽光発電設備が手軽といえるでしょう。
洋上風力発電の課題
続いては、洋上風力発電の課題をわかりやすく解説していきます。
大型風車など関連設備の国内メーカーがない
大型風車など、洋上風力発電設備に必要な部品等は国内メーカーがないため、海外から輸入する必要があります。これが、設備導入の時間や、コストの増加につながっています。
また、為替相場の変動や関税によって費用が増加してしまう可能性もあり、国内の洋上風力発電市場が育っていないことは、導入企業にとっても大きな課題です。
浮体式洋上風力発電の設置
とくに浮体式洋上風力発電の場合は、基礎部分を含めてさまざまな課題が残されています。
浮体式風力発電設備の法令やガイドラインの整備が追い付いていないほか、設備製造や輸送、設置も効率化も進んでいません。安全対策も課題が多い状況です。
設備の耐久性向上や軽量化、塩害対策など、設備の機能面についても、いまだ開発が必要とされています。すでに一般化の進んだ太陽光発電などと異なり、導入には試行錯誤が必要となる事業であるというのも、洋上風力発電市場の課題です。
再生可能エネルギーで導入しやすいのは風力発電より太陽光発電
現状、再生可能エネルギーの中で導入しやすい設備は太陽光発電です。ここからは太陽光発電の方が導入しやすい理由について解説します。
洋上風力発電より初期費用を抑えられる
太陽光発電は、洋上風力発電よりも初期費用を抑えられる再生可能エネルギー設備です。
産業用太陽光発電の初期費用は、経済産業省の「令和6年度以降の調達価格等に関する意見」によると1kWあたり14.7~25.1万円です。洋上風力発電と比較すると6分の1~10分の1に抑えられるため、初期費用の負担を大幅に軽減できます。
太陽光発電の初期費用は、安価な太陽光パネルの参入などによって年々下落しており、さらに負担を抑えられる可能性もあります。再生可能エネルギーのコストを重視している企業は、太陽光発電を検討する価値があるでしょう。
出典:「令和6年度以降の調達価格等に関する意見」(経済産業省)
さまざまな場所で設置運用できる
洋上風力発電と異なりさまざまな場所で設置・運用できるのは、太陽光発電の大きなメリットといえます。
太陽光発電には、地上設置型だけでなく屋根設置型、水上設置型、ソーラーシェアリングなど、さまざまな設置方式があります。
地上設置型は、地面に基礎と架台を固定し、架台の上に太陽光パネルを設置します。屋根設置型は、建物などの屋根や屋上に太陽光パネルを固定させる方式で、カーポートの屋根に設置するソーラーカーポートという設備もあります。
水上設置型は、水上に浮体架台(水面に浮く架台)を設置する方式で、ため池などで運用しやすい方式です。ソーラーシェアリングは、農地の上に支柱を固定し、支柱の先端部分に架台と太陽光パネルを設置する方式で、農業と太陽光発電を両立できます。
また、自社の敷地や建物の屋上にスペースがあれば、敷地内に太陽光発電を設置できるため、土地を別途取得せずに済みます。
洋上風力発電はコストの高い設備!脱炭素化には太陽光発電がおすすめ
洋上風力発電は、初期費用や維持管理費用の負担が大きな発電設備です。また、技術的な難易度も高いため、導入や運用に関する専門的な知識や技術も求められます。
よりスムーズに脱炭素経営を進めたいときは、太陽光発電の導入がおすすめです。太陽光発電は洋上風力発電よりコストを抑えられるほか、さまざまな場所で運用できます。国内の運用実績も豊富で、過去の事例を参考にしながら運用計画を立てやすい点も心強いです。
弊社とくとくファーム0では、非FIT型太陽光発電の導入支援から物件情報のご紹介まで一括サポートしております。非FIT型太陽光発電はFIT制度の影響を受けないため、より柔軟に運用できる再生可能エネルギー設備です。
当サービスは一級建築士による高度な設計・技術ノウハウ、15,000件を超える実績があり、さまざまな種類の太陽光発電事業に対応できます。少しでも気になった方は、お電話やメール、無料の個別セミナーよりお気軽にご相談ください。
無料の個別セミナーでは、脱炭素経営や太陽光発電事業を基本から学べるほか、疑問点などをその場で確認いただけます。