親から土地を相続したり元々土地を保有していたりしている方の中には、土地活用に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。特に郊外の遊休地は、空室リスクという点で建物を建てるメリットの少ない状況です。
そこで今回は、太陽光発電に適した土地の条件や土地貸しについて詳しくご紹介します。太陽光発電の運用を検討している方や土地貸しに関心を持っている方は、参考にしてみてください。
太陽光発電に関する土地活用
太陽光発電に関する土地活用は、主に2種類検討することが可能です。
まずは太陽光発電でどのように土地活用するのか、主な方法についてご紹介します。
自費で太陽光発電を設置および発電事業を始める
土地を取得・相続していてなおかつ資金調達を検討可能な場合は、太陽光発電設備の設置・売電も検討できます。
太陽光発電設備を設置するには、太陽光発電専門の施工会社や販売店へ相談し、現地調査および見積の作成を進めてもらい、契約手続きを進めます。
契約手続きを交わしたあとは、状況に応じ太陽光発電設備の安定性を保つための造成工事が行われます。その後は、架台の上に太陽光パネルを設置したりパワーコンディショナや配線など、周辺機器や部品を接続してもらい工事完了です。
設置後はFIT申請や電力会社へ系統連系の手続きなどを行い、送電・売電の準備を行えば発電することが可能です。
自身で太陽光発電を設置する場合、売電収入を得られるのが主な強みです。具体的な売電収入は、出力によって異なるものの、出力100kWで年間約110万円見込めます。(2021年度の固定化鳥価格)ただし、維持管理費用や初期費用(融資分)の負担が発生するため、全て手元に残すことはできません。
初期費用回収期間は、初期費用2,000万円のうち1,000万円を自己負担した場合、17年程度で完了します。前述の初期費用回収期間を考慮した20年間の利益は、200万円程度です。
土地を貸し出して賃料を得る
太陽光発電事業の中には、土地を第三者へ貸し出して太陽光発電を設置してもらい、賃料を毎月得る事業もあります。
仕組みとしては、マンションやアパート経営と同じです。土地の賃料を毎月得られるのが強みで、太陽光発電の売電事業と比較すると収入を予測しやすいのも特長です。
賃料は、1㎡単位で計算されています。土地によっては、1㎡あたり150円で設定されたり500円程度まで値上がりしたりしています。なお、100kWに必要な敷地面積は、1,800㎡程度で、20年間で400万円~500万円弱(税負担除く)の収入を期待できる場合もあります。
太陽光発電の設備・設置工事費用負担0円、維持管理費用0円で済みます。費用負担という点では、太陽光発電の売電事業と大きく異なります。
費用や手続きの負担を避けたい方などには、メリットのある活用方法です。ただし、土地の評価が良くなければ借主を集めにくいため、貸し出す前に土地の状況を確認してみてください。
次の項目では太陽光発電に適した土地を確認していきます。
太陽光発電に適した土地
太陽光発電の売電もしくは土地貸し、どちらを選択するにしても土地の状態を確認することは大切です。
続いては、太陽光発電に適した土地や立地条件について紹介します。
日当たりが良い場所
土地を調べる際は、まず日当たり良好か確認してみます。
太陽光発電の土地として活用するには、周囲に障害物や木々など光を遮るものがない状態であることも大切です。太陽光発電で発電するには、太陽光を太陽パネルで吸収しなければいけません。太陽光パネルに影ができると、その分発電量も低下してしまいます。
晴れの日が多い土地
日射量の多い土地という点は、太陽光発電において重要なポイントです。日射量が多ければ多いほど発電量も増えるため、売電収入を伸ばせるようになります。
日射量(太陽から注がれる光エネルギー)は場所によって大きく変わり、特に山梨県と長野県など内陸部や、徳島県など一部太平洋沿岸地域で多い傾向です。
年間の日射量を確認したい時は、NEDOの日射量データベースで確認できます。また、太陽光発電の販売店や仲介業者へ相談するのもおすすめです。
周辺に電柱が建てられている郊外の土地
電柱が建てられている郊外の土地は、太陽光発電に適しています。
土地付き太陽光発電で発電した電気を電力会社へ送電するには、電柱と配線接続する必要があります。電柱と配線の設置および接続工事費用は、事業者負担です。
つまり、電柱が設置されていない土地は、その分電柱の設置工事費用も負担しなければいけませんし、初期費用の増加につながります。
なお、郊外の土地という点については、以下のメリットがあります。
- 住宅やマンションなどの障害物の少ない土地があることが多い(発電損失を避けられる)
- 周辺に住居やオフィスが少ないため、太陽光パネルの反射光(光害)などのトラブルに関して配慮不要
初期費用を抑えるには、電柱の設置状況を確認してみるのも大切です。
地盤の強い土地
地盤の強い土地は、太陽光発電に適しています。
日本は、台風や地震、線状降水帯による豪雨や雷雨など、さまざまな災害が発生している土地です。
地盤の弱い土地に太陽光発電を設置してしまうと、地滑りに巻き込まれる可能性があります。また、地震の際には揺れやすく、配線の切断や周辺機器の故障につながります。
地盤の強い土地に設置できれば、災害時の故障リスクを少しでも下げられます。
土地の状況に関しては、災害ハザードマップで確認したり太陽光発電の販売店や施工業者へ相談および調査してもらったりすることで、事前に把握可能です。
自然災害のリスクが少ない土地
前述の内容と関連していますが、災害リスクの少ない土地かどうか確認するのも太陽光発電投資において重要なポイントです。
台風の多い土地に太陽光発電を設置した場合は、暴風で架台の破損、太陽光パネルが飛ぶ、飛来物による破損、土砂災害などによる機器破損といったリスクが考えられます。また、地震の多い土地では、揺れによるパワーコンディショナをはじめとした機器の故障、配線の切断といったリスクも想定できます。
さらに地震の規模によっては津波のリスクもあるため、設置場所の浸水および津波リスクについても考える必要があります。
災害リスク0の土地はないものの、少しでもリスクを抑える方向で土地の選定を進めてみてはいかがでしょうか。
塩害のない土地
太陽光パネルや架台、関連機器には、金属が用いられています。そのため、塩害による影響を受けやすい側面があります。
塩害とは、潮風による錆びや腐食といった被害のことです。海岸の近くに太陽光発電設備を設置している時は、塩害による影響を受ける場合もあります。
多くのメーカーは、海岸から数100m以内の設置不可としているため、施工会社と設置場所の塩害状況や一部製品を室内に設置など、細かく打ち合わせるのも大切です。
塩害による腐食やさび、故障を避けるには、なるべく内陸の土地から比較検討してみます。また、既に土地を取得している場合は、設置可能な状況か施工会社へ早めに相談するのも大切です。
一定の広さがある
産業用太陽光発電を設置するには、一定の敷地面積が必要です。
たとえば、出力10kWの太陽光発電を設置するには、少なくとも150㎡程度の敷地面積を必要とします。さらにメガソーラークラスでは、野球場やサッカー場と同程度の敷地面積を確保しなければ設備を設置できません。(目安:1ha以上の敷地面積)
土地の面積以外には、傾斜の有無も重要なポイントです。傾斜のある土地は、土地の造成工事や地盤の補強工事など、さまざまな費用がかかります。
平地の場合は大幅な造成工事不要ですし、太陽光パネルを設置しやすいといったメリットも得られます。
設備規模に合った土地、傾斜の有無などの点は、太陽光発電に適した土地を探す際に重要なポイントです。
遊休地で太陽光発電投資を行う際のポイント
太陽光発電に適した土地を把握できたあとは、遊休地で太陽光発電投資を始める際に押さえておきたいポイントを確認していきます。
事前の発電シミュレーションや利回りの計算など
太陽光発電投資を始める前には、発電のシミュレーション、収支や利回りの計算などを行うのが基本です。
どれだけの売電収入を得られるのか、いつ初期費用を回収できるかなどの点を確認せずに太陽光発電を設置してしまうと、思わぬミスにつながります。
- 発電量が少ないため赤字
- 初期費用がかさみ、売電収入でカバーできない
- 固定買取期間中に初期費用回収できない
事前に発電や売電収入のシミュレーションを行った場合は、年間の収支や初期費用回収期間を確認できます。
実績のある太陽光発電施工会社や仲介業者は、発電や収支のシミュレーションにも対応しているので、確認しておくのが大切です。
施工会社の選定方法に注意
施工会社は、実績やサポート範囲、施工品質などにばらつきがあります。
万が一悪質もしくは施工品質の低い施工会社へ依頼してしまうと、水増しされた発電・売電シミュレーションを提示されたり施工不良といった被害を受けたりする可能性もあります。
施工会社を比較検討する際は、以下のポイントにも注意が必要です。
- 過去にトラブルが発生していないか
- 実績の多い施工会社か
- 地盤調査、発電シミュレーションなども対応しているか
太陽光発電関連サービスの中には、施工実績などいくつかの条件を満たした施工会社のみ登録している一括見積サービスもあります。
一括見積サービスは、希望条件を入力すると条件に沿った施工会社を調べてくれますし、見積作成や打ち合わせなども代行しもらえます。
忙しい方や太陽光発電初心者などは、一括見積サービスを利用してみるのもいかがでしょうか。
害獣や防犯対策を施しておく
太陽光発電を設置する場合は、害獣や防犯対策を施すのも重要です。
太陽光発電の設置場所によっては、イノシシやサル、熊、ネズミなどによって配線を噛みちぎられたりパネルを壊されたりする可能性もあります。
そして、基本的に無人もしくは少数の管理者で運用するため、配線や太陽光パネルを盗難、破壊といった被害を受けやすい環境です。
このような害獣などの被害を防ぐには、設備周辺に柵や防犯カメラを設置し、なおかつ遠隔監視装置で設備の異常をチェックできるよう準備しておくのもおすすめです。
太陽光発電の土地貸しを行うメリット
遊休地などの土地を保有している場合は、太陽光発電を行いたい方へ土地を貸し出す事業も検討できます。
そこで続いては、太陽光発電の土地貸しを行うメリットについて解説していきます。
一定期間収入を得られる
太陽光発電の土地貸しは、売電と異なり一定の収入を長期間見込めるのが特長です。
売電事業の場合は、発電量に応じて変動してしまいます。そのため、収益の安定性という点でデメリットがあります。一方太陽光発電の土地貸しは、あらかじめ設定した賃料を得られます。
さらに太陽光発電の運用期間は、固定買取期間に沿って設定することがほとんどのため、20年間一定の賃料を見込めます。
収益性よりも収入の安定性を重視している方にとっては、検討しやすい事業です。
需要の少ない土地を有効活用できる
周辺に交通機関のない場所や郊外、山林といった一般的に需要の少ない土地の方が、太陽光発電向けに貸し出ししやすい特長もあります。
周辺に交通機関や建物の少ない土地は、マンションやアパート経営に適していません。一方、太陽光発電は、周辺に遮蔽物や建物のない土地に適した投資です。
太陽光発電設備の周辺に住居があったり人通りが多かったりすると、反射光による光害や騒音などのトラブルに発展する可能性もあります。そのため、一般的に需要の少ない山林や郊外の土地は、太陽光発電に向いていますし有効活用できます。
遊休地の活用方法で悩んでいる方は、太陽光発電事業者に向けて貸し出してみてはいかがでしょうか。
維持管理を含めて対応してくれる
太陽光発電事業者へ土地を貸し出す場合は、維持管理費用を含めて対応してくれるため、手続きや費用負担を軽減できます。
太陽光発電には、数100万円以上の初期費用と毎年数10万円単位の維持管理費用がかかります。土地を貸し出すのみであれば、このような費用負担を避けながら収入を得られます。
費用負担以外には、雑草処理や定期的な巡回といった維持管理作業も避けられます。
費用負担を抑えながら土地活用したい方や体力面もしくは忙しいといった理由で維持管理を避けたい方にも、利用メリットがあります。
太陽光発電の土地貸しを行うデメリット
続いては、太陽光発電の土地貸しを行うデメリットについて紹介します。
マンション投資などと比較すると収益は少ない傾向
太陽光発電向けに土地を貸し出す場合は、一定の賃料を見込める一方大きな収益を期待できません。
マンションやアパート経営の場合は、多数の借主から賃料を得られます。一方、太陽光発電で複数の賃料を得るには、土地も複数確保しておく必要があります。
ただし、遊休地の多くは、マンションや駐車場経営などに活用するのが難しい環境です。太陽光発電への土地貸しは、収益性を高めにくいものの有効活用できる貴重な手段でもあります。
長期間太陽光発電用に貸し出す必要がある
長期間土地を自由に活用できない点は、デメリットの1つです。
産業用太陽光発電の場合は、20年間売電事業を行います。そのため、太陽光発電事業者へ土地を貸し出す場合は、一般的に20年の契約期間です。また、土地を貸し出しあとは、契約期間満了まで別の用途に用いることはできません。
太陽光発電の土地貸しを行う際は、慎重に計画や目標を立てるのが大切です。また、他の用途も検討している場合は、太陽光発電の土地貸しを一旦保留した方がいい場合もあります。
農地の場合は別途許可手続きが必要
農地を相続したり保有したりしている場合は、さまざまな手続きを済ませなければ太陽光発電向けに土地を貸し出すことができません。
農地を他の用途へ用いるには、農地転用許可手続きを行う必要があります。農地転用許可手続きは、土地利用計画書や工事計画書などさまざまな書類を用意し、必要事項を記入した上で農業委員会へ提出します。
書類提出後は審査を受け、通過できれば他の用途に土地を活用可能です。
農地を取得もしくは保有している方は、太陽光発電投資や土地貸しの前に農地転用許可について確認、準備することをおすすめします。
郊外に土地を保有している時は太陽光発電がおすすめ
郊外に遊休地を保有もしくは相続している時は、太陽光発電投資を検討してみるのもおすすめです。また、設置費用や維持管理の手間に悩む方は、土地貸しの方がいい場合もあります。
郊外の土地は、交通の利便性や住みやすさという点でマンションやアパート経営に適していません。しかし、太陽光発電事業においては、発電しやすさという点で需要のある土地です。
弊社とくとくファームでは、中古発電所の仲介だけでなく太陽光発電の基礎に関する説明や相談を受け付けています。太陽光発電投資や太陽光発電に適した土地について分からない方も、お気軽にお問い合わせください。
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