アモルファスシリコン太陽光電池とは?特徴やメリット・デメリットを解説

アモルファスシリコン太陽光電池とは?特徴やメリット・デメリットを解説

アモルファスシリコン太陽光電池をご存じでしょうか?実は太陽光電池にはさまざまな種類が存在します。その中の代表的なひとつがアモルファスシリコンです。この記事では、アモルファスシリコン太陽光電池の特徴やメリット・デメリットを分かりやすくまとめてあります。導入前にぜひ参考にして頂けますと幸いです。

アモルファスシリコン太陽光電池とは?

アモルファスシリコン太陽光電池とは、シリコン系太陽光電池の1種です。シリコン系太陽光電池には次のものがあります。

  • 単結晶シリコン太陽光電池
  • 多結晶シリコン太陽光電池
  • アモルファスシリコン太陽光電池(薄膜シリコン太陽光電池)
  • 多接合太陽光電池(ヘテロ接合太陽光電池)

アモルファスシリコン太陽光電池は、非結晶シリコンでできた太陽光電池です。ほかのシリコン系太陽光電池と異なる特徴や発電原理を詳しく見ていきましょう。

アモルファスシリコン太陽光電池の特徴

アモルファスシリコン太陽光電池は、加工しやすい柔軟性と非常に薄いことが主な特徴です。

シリコン膜の厚さが1μm以下でも生産できるアモルファスシリコン太陽光電池は加工がしやすく、フレキシブルな製品を作れます。太陽光電池を取り付ける基板は硬い素材である必要がなく、プラスチックなどの柔軟性を持つ素材でも生産可能です。

非常に薄いアモルファスシリコン太陽光電池は、多くの原料を必要としません。そのため、1個あたりに生産する費用が抑えられ、大量生産できる太陽光電池です。

アモルファスシリコン太陽光電池は柔軟性やコスト面だけでなく、温度特性も優れています。夏場は太陽光パネル上の温度が約70℃に達するため、結晶シリコンの性質上、発電効率が約20%減少してしまいます。しかしアモルファスシリコン太陽光電池の場合は、同じ条件であっても約10%多く発電できる高い温度特性を持っています。

アモルファスシリコンとは?

アモルファスとは「非結晶」のことで、アモルファスシリコンは「非結晶シリコン」とも表される、原子が結晶構造を持たないシリコンです。

シリコンを含む個体には、原子が規則正しく並んだ「結晶」と、原子が不規則に並んだ「非結晶」の2種類があります。

結晶シリコンは原子構造が規則正しくダイヤモンド型に並んでいます。反対に非結晶シリコンは原子構造がランダムに配置されており、規則性はありません。

化学的に結晶シリコンと比較して不安定な状態のアモルファスシリコンですが、水素を結合させることで安定した個体となります。アモルファスシリコンは、結晶シリコンと比較して対象物に薄い膜を付ける成膜が簡単であり、非結晶の原料や高温に弱い原料などにも可能です。

アモルファスシリコンは太陽光電池以外にも、液晶パネルの薄膜トランジスタやレーザープリンターなどに利用されています。

アモルファスシリコン太陽光電池の原理

アモルファスシリコン太陽光電池は、内部に電気的性質の異なるP型半導体・N型半導体・真性半導体の3種類を貼り合わせた構造を持っています。太陽光パネルに光が照射されると、真性半導体内で電子(−)と正孔(+)が発生します。正孔(+)はP型半導体に移動し、電子(−)はN型半導体に移動する原理です。

P型半導体とP型半導体のそれぞれに設置した電極に電球などの負荷を接続すると、N型からP型への電子(−)の移動またはP型からN型への正孔(+)の移動が発生して、そこに電気が流れます。

単結晶または多結晶シリコン太陽光電池の構造は、P型半導体とN型半導体が接合したPN接合を利用する発電方法です。

アモルファスシリコン太陽光電池は、変換効率を高めるためにP型半導体とN型半導体の間に真性半導体(I)を挟んだPIN接合で発電しています。そのため、真性半導体の有無が結晶系シリコン太陽光電池との違いです。

シリコン系太陽光電池の寿命

それぞれのシリコン系太陽光電池は、経年劣化します。シリコン系太陽光電池の5年間で減少する経年劣化率は次のとおりです。

  • アモルファスシリコン太陽光電池:5.7%
  • 単結晶シリコン太陽光電池:3.2〜3.9%
  • 多結晶シリコン太陽光電池:2.3〜2.8%
  • 最も劣化が早いのは、アモルファスシリコン太陽光電池です。多結晶シリコン太陽光電池は、単結晶シリコン太陽光電池より経年劣化が抑えられています。そのため、ほかの素材と比較して多結晶シリコン太陽光電池は耐久性が高いのが長所です。
  • アモルファスシリコン太陽光電池のメリット

    アモルファスシリコン太陽光電池は、結晶系シリコン太陽光電池にはない利点があります。それは生産コストの低さや加工のしやすさ、優れた光吸収性の高さなどです。

    製造方法とともに、アモルファスシリコン太陽光電池のメリットを詳しくみていきましょう。

    生産コストが良い

    アモルファスシリコン太陽光電池は、生産時の費用を抑えられることからコストパフォーマンスに優れています。アモルファスシリコン電池は結晶系シリコン太陽光電池と比較して10分の1〜100分の1の厚さで生産可能です。

    厚さが1μm以下で生産できるアモルファスシリコンは、1個あたりに使用する原料も少ないため、量産型パネルとして期待されています。結晶系シリコン太陽光電池より生産費用が抑えられ、コストパフォーマンスの高い太陽光電池だと言えます。

    シリコンの製造方法

    アモルファスシリコン太陽光電池の製造方法は、単結晶シリコン太陽光電池を生産する場合と大きく異なります。製造方法として、スパッタリング法という真空蒸着法を利用します。

    真空蒸着とは、真空状態で金属物を加熱して溶解・蒸発・昇華させ、基板の表面にその原子や分子などを付着させた薄膜を形成する技術です。この方法で、電極の役割となる金属(アルミニウム)の薄膜を基板に作り、これをプラズマCVD法のチャンバーという反応室に送ります。

    CVD法とは、原料となるガスをヒーターで熱した基板の表面で熱分解し、化学反応により薄膜を作る方法です。高周波のグロー放電中に熱分解を起こすと、200℃ほどの低温で優れた膜質が生成できます。

    プラズマCVD法を使ってn型・i型・p型と呼ばれる3種類の層からなるアモルファスシリコン半導体の薄膜が作られた後に、再度スパッタリング法で透明電極の薄膜を形成します。

    上記で説明した一連の流れがアモルファスシリコン太陽光電池の製造方法です。基板にプラスチックを使用した柔軟性のあるアモルファスシリコン太陽光電池は、世界で初めて株式会社TDK(東京電機化学)によって開発されています。

    加工しやすい(フレキシブルな製造)

    アモルファスシリコン太陽光電池は、加工しやすく薄膜であることからフレキシブルな製品も作られています。ステンレスなどの基板にシランガスを吹き付けるアモルファスシリコンは、極めて薄いミクロン(μ)単位で生産できます。

    吹付けは200℃以下の条件で実施でき、プラスチックなどの柔軟性のある素材上に半導体を作ることが可能です。またフィルム状のアモルファスシリコンは、ガラスやステンレスなどに貼るだけで発電できます。

    軽量で加工のしやすいアモルファスシリコン太陽光電池は、比較的強度の弱い建造物や多種多様な形にも対応できる太陽光電池です。

    光吸収率が高い

    アモルファスシリコン太陽光電池は、光吸収率が高いという性質を持っています。結晶系シリコン太陽光電池と比較して、アモルファスシリコン太陽光電池は「薄さ」が大きな特徴です。

    アモルファスシリコン太陽光電池は、被膜の厚さが約1μm以下で発電できます。反対に結晶系シリコン太陽光電池は約150〜200μmの厚さが必要です。約1μmで発電可能なアモルファスシリコン太陽光電池は、光吸収率が高いと言えます。

    従来の多結晶シリコンでは、太陽に対してある一定の角度に設置しなければ大幅に発電効率が減少してしまいます。また雨や曇りの日にも、発電量は大きく低下します。

    一方、アモルファスシリコン太陽光電池は光吸収率が高いため、設置する角度の影響を大きく受けません。太陽の方角に向けた場合の発電量が100%とすると、太陽の方角に向けなかった場合であっても70%の発電量を維持できます。また、雨や曇りの日の発電も可能です。

    弱光でも発電可能なアモルファスシリコン太陽光電池は、室内で使用する電卓や時計などに利用されています。

    アモルファスシリコン太陽光電池のデメリット

    生産コストや素材の柔軟性、光吸収性などが良いアモルファスシリコン太陽光電池ですが、デメリットも存在します。アモルファスシリコン太陽光電池の欠点は、変換効率の低さと初期劣化による出力の減少です。詳しいデメリットの詳細を解説していきます。

    変換効率が低い

    アモルファスシリコン太陽光電池は、単結晶型や多結晶型などの太陽光電池と比較してエネルギー変換効率が低いというデメリットがあります。

    エネルギー変換効率は単結晶型シリコン太陽光電池の場合約15〜20%、多結晶型シリコン太陽光電池の場合は約15〜18%です。一方、アモルファスシリコン太陽光電池は約変換効率9%と、ほかのシリコンより劣ります。

    アモルファスシリコンは費用面で大きな利点を持っていますが、変換効率はそれほど高くありません。

    エネルギー変換効率を高める研究が重ねられており、微結晶シリコンを使った微結晶タンデム型アモルファスシリコン太陽光電池も開発されています。しかし変換効率は約10%と、大幅な改善には至っていないのが現状です。

    初期劣化による出力の低下

    アモルファスシリコン太陽光電池は、初期劣化により約10%出力が減少します。出力が減少する理由は、太陽光などの強い光が原因です。アモルファスシリコン内では、強い光により水素との結合が切れます。水素との結合が切れた結果、太陽光電池の出力が減少する原理です。

    初期劣化は、導入時から約10%の出力が減少したところで安定するため、その後は急激に機能が下がることはありません。劣化スピードはシリコン系太陽光電池の中で1番早いため、耐久性には優れていない太陽光電池と言えます。

    導入後から出力が減少する一連の状態は、別名「光劣化現象」または「ステブラー・ロンスキー効果」とも呼ばれます。

    アモルファスシリコン太陽光電池についてのまとめ

    アモルファスシリコン太陽光電池とは、原子が結晶構造を持たない非結晶シリコンで作られる太陽光電池です。

    アモルファスシリコン太陽光電池は1μm以下で生産できるため、プラスチックなどの柔軟性のある基板上でも発電できます。また結晶系シリコン太陽光電池と比較して、光吸収率が高いことも特徴です。

    今後アモルファスシリコン太陽光電池は、大量に生産されることが期待できます。しかし、電気エネルギーの変換効率が低い点や初期劣化による出力の減少が発生する欠点もあるため、メリットばかりではありません。

    アモルファスシリコン太陽光電池は結晶系シリコン太陽光電池よりローコストで導入できる機械です。しかし、売電や自家消費などの目的に変換効率は重要な指標となります。変換効率の高い太陽光電池に買い換える場合、アモルファスシリコン太陽光電池の売却を検討しましょう。

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