二国間クレジット制度をわかりやすく解説!

二国間クレジット制度をわかりやすく解説!

日本や世界では、気候変動対策としてさまざまな制度や取り組みを行っています。中でも二国間クレジット制度は、国同士で連携しながら温室効果ガス削減に関するプロジェクトを進められる新しい制度です。しかし、どのような意味やメリットがあるのか分かりにくいと感じている企業も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、二国間クレジット制度の意味や特徴、CDMとの違い、環境におけるメリットやデメリットについて分かりやすくご紹介します。海外向けに低炭素製品やサービスを提供していく方や国の環境制度を調べている方は、参考にしてみてください。

そもそもクレジットとは何?おさらい

そもそもクレジットとは何?おさらい

クレジットとは、他の国や企業と取引が可能なGHG排出削減量の証明のことをいいます。

先進国は地球温暖化防止対策に取り組むため「京都議定書」に基づきCO2の排出量上限を定めました。しかし、一国の努力のみでは達成が難しいため、CDM(クリーン開発メカニズム)と呼ばれるクレジット発行の仕組みをつくりました。

先進国が発展途上国のCO2排出量の低減に技術などを提供し達成した排出量の削減分を、「クレジット」として自国の達成すべき削減量に加えることができます。

二国間クレジット制度とは?

二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism:JCM )は、世界的な地球温暖化防止に尽力するべく日本の政府が提案・主導しています。制度の内容や、どのような取り組みが実際に行われてきたかをわかりやすく紹介します。

先進国の優れた低炭素技術を途上国へ提供

JCMでは、先進国が企業や自治体が今まで培ってきた高い脱炭素技術やインフラシステムなどを途上国に支援します。そうすることで、高い低炭素技術などの支援を受けた途上国はGHGガスの排出量が抑えられ、削減できたGHGガス排出量の成果を当事国の2国で分け合うことができます。

環境省手動で既に数か国と締結

日本政府は、2011年よりJCMについての話し合いを発展途上国と開始しています。2021年9月の時点で下記パートナー国の17カ国と締結し、環境省JCM資金支援事業は203件が採択されています。

パートナー国

モンゴル・バングラデシュ・エチオピア・ケニア・モルディブ・ベトナム・ラオス・インドネシア・コスタリカ・パラオ・カンボジア・メキシコ・サウジアラビア・チリ・ミャンマー・タイ・フィリピン

JCMとCDMの違い

JCMとCDMの違い

JCM・CDMは、環境対策についての高い技術や資金を支援し抑えることができたGHG排出量を、クレジットとして取得することで自国の掲げる削減達成に活かせる仕組みですが、管理方法やプロジェクトとして行える対象範囲など異なる点があります。

JCM・CDMを比較し異なる点を詳しく解説します。

メカニズム全体の管理

CDM:中央集権的構造で、京都議定書締約国・CDM理事会が一括管理
JCM:分権的構造で、2カ国で個別に管理

CDMでは全体での一括管理で、当事国同士での調整や管理・監視などが複雑化し時間が多くとられました。

JCMは、当事国の2国間の代表者である合同委員会が管理するため、調整・管理が簡単となりコストも抑えられます。

プロジェクトの対象範囲

CDM:対象範囲が限定的
JCM:対象範囲が広い

CDMでは、超々臨界圧石炭火力発電など特定のプロジェクトを行うことが困難であったり、対象の範囲が限定されていました。

JCMでは、CDMでは認められにくかった省エネ技術についても認められやすくなるなど対象範囲が広くなっています。

排出削減量の計算

CDM:複雑
JCM:簡易

CDMでは、複数の計算式から選択して事業者が排出量を算出したり、パラメーターの計測についての厳格な要件があるなど複雑化していました。

JCMでは、あらかじめ準備されたスプレッドシートを使うことで容易に計算ができ、モニタリングを行うパラメーターに制約がある場合でも、一時的な数値で算定ができます。

プロジェクトの妥当性確認(事前)

CDM:(主体)少ない・(方法)厳しく限定的
JCM:(主体)多い・(方法)多い

CDMでは、指定運営機関(DOEs)だけがプロジェクトの妥当性を確認することが可能ですが、JCMでは指定運営機関(DOEs)だけでなく、ISO14065認証機関でも行うことができます。

また、CDMでは仮想のシナリオに対し提案された各プロジェクトとの追加性を評価しますが、JCMでは客観的に判断可能な「的確性要件」に合致していれば認められることがあり、効率的で柔軟になっています。

プロジェクトの検証(事後)

CDM:(主体)限定的・(時期)硬直的
JCM:(主体)広い・(時期)柔軟

CDMでは、基本的にプロジェクトの妥当性確認を行った機関は検証をすることは不可能で、事前の妥当性の確認と事後の検証は別々に行うことが必要です。

それに対し、JCMではプロジェクトの妥当性確認を行った機関も検証することができ、プロジェクトが進行しているときには、妥当性確認及び検証を同時に進めることで、コストを抑えることが可能です。

二国間クレジット制度のメリット

二国間クレジット制度のメリット

日本政府が主導している地球温暖化対策の一つである「二国間クレジット制度」のメリットについて詳しく紹介します。

先進国と途上国間で協力しながらCO2削減を目指せる

産業革命以降の人的要因により、GHGの排出量が増えたことで急激な地球温暖化が起こり、国際的に深刻な問題となっていますが、先進国だけが温暖化対策を行っていても解決が難しく、途上国とも連携して対策を行っていく必要があります。

しかし、環境問題への取り組みには高い技術力と大規模な投資が必要となるため、途上国が一つの国だけで取り組むことが困難となっています。

先進国が保有する優れた低炭素や脱炭素技術・製品・インフラサービスなどを途上国に支援できれば、途上国だけで行うことが困難であった環境対策を行えます。

官民の連携により、相手国のニーズを踏まえた分野横断的な支援ができ、先進国と途上国間で協力しながらCO2削減を目指せます。

途上国も低炭素技術を導入できる

高度な低炭素技術を用いてつくられた製品などの導入はコストが高く、投資する分の回収がすぐには行えないため、途上国では導入が困難となっています。

JCMにて先進国が資金支援を行い、省エネや再生エネルギー分野の高い技術力を保有する日本の企業が参加することにより、低炭素や脱炭素技術を途上国も導入が可能となります。

それにより、先進国は途上国の持続可能な開発に貢献できるのです。

海外向けに低炭素製品やサービスを提供しやすくなる

優れた低炭素製品やサービスは初期コストが高く、途上国では導入が困難なため環境対策が遅れていたが、JCMで官民が連携し資金支援・技術提供をすることで、途上国の温暖化対策に大きく貢献ができます。

その結果、日本の企業が保有する低炭素・脱炭素製品などの高い技術力を、世界的にアピールすることが可能です。

JCMでの日本政府の発展途上国への資金支援で、日本企業の国際的な競争力を高め、海外においての事業展開を行いやすくできるのです。

二国間クレジット制度のデメリットと問題点

二国間クレジット制度のデメリットと問題点

続いては、どのようなデメリット・問題があるのかを詳しく見ていきましょう。

そもそも国際合意のもとで認められた制度ではない

京都議定書で国際合意により定められたCDMと異なり、日本政府が提案・主導して行うJCMは、国際合意で認められていません。当事国の双方での合意は制約が設けられていないため可能だが、制度のルール自体が国際合意の枠外で独自で定められており、国際合意と内容が矛盾すれば、国際社会から認められないといった懸念もあります。

それゆえ、国際合意で定められるルールづくりに、日本政府は今後も積極的に関わっていく必要があります。

自国でCO2削減を行うための努力から逃げている

日本政府は2020年の国会において、2050年までにGHG排出実質ゼロを目指す「2050年カーボンニュートラル宣言」を行っており、中期的には2030年までに2013年度比46%削減を目標にしています。

目標達成を目指し、政府・地方自治体・企業が一体となり自国で排出されるGHGの削減に努めなければなりませんが、現在自国内で達成する割合を明確にしていません。

そんな中、JCMにて国の財源を使い他国を支援し、すでに持っている日本企業の技術力を支援することで生まれる他国のGHG削減の成果を自国の目標達成へ追加することは、本来努力するべき純粋な自国の排出量削減にはなっていません。

自国に都合の良いルールを設ける可能性

CDMには、「追加性」に対して厳しい審査があります。「追加性」とは今まであった枠組みの転用・流用ではなく、上乗せをしなければならないということです。

たとえば、途上国が自国のみで再生可能エネルギー設備の導入する決定をしていたところに、後から先進国が支援をした場合、本来は支援をしなくてもGHGの削減が可能だったことになり、これは「追加性」がないことになります。

このような非追加的プロジェクトが問題視され、CDMでは厳しい審査が設けられています。しかし、JCMの場合は当事国のみでルールを設定するため、自国に都合の良いルールを設ける可能性があり、そうなると適正なクレジットの創出ではなくなる恐れがあります。

環境重視の社会で企業ができることとは?

環境重視の社会で企業ができることとは?

急激な地球温暖化への対策は、国際社会全体で積極的に解決していかなければならない重要課題です。このような環境重視の社会では企業も環境経営に積極的に取り組んでいく必要があります。

実際にどのような取り組みを実施できるのかをご紹介します。

非FIT型太陽光発電の電力を購入

FIT制度(固定価格買取制度)では、太陽光発電で発電された電気を国が定めた固定価格で一定期間電力会社が買い取ることを義務付けされています。

電力会社が買い取るときに発生する費用を国民が一部再エネ賦課金として負担をしているため、国民に環境価値が付与されることで、100%再生可能エネルギーとして認められていません。

FIT制度が2019年11月以降順次終了している中、注目されているのがFIT制度に頼らない非FIT電気です。非FIT型で発電された電力は100%再生可能エネルギーとして認められており、買い取り先も義務付けられていません。

企業は非FIT型太陽光発電で発電された電力を購入することで、CO2削減に貢献することができます。

全量自家消費型太陽光発電の導入

企業が全量自家消費型太陽光発電の導入をすることで、CO2削減に貢献することができる上に、発電した電力の全てを自家消費することで電気の購入量を抑えることができ、大幅なコスト削減になります。

企業の節税の対策にもなり、導入に補助金がでる場合もあるなど、環境に貢献している企業として社会的責任を果たせるだけでなく、メリットが多い全量自家消費型太陽光発電の導入が環境経営を考えている企業から注目されています。

二国間クレジット制度は海外向けに低炭素製品を輸出する企業にとってメリットのある制度!

二国間クレジット制度は海外向けに低炭素製品を輸出する企業にとってメリットのある制度!

二国間クレジット制度は、官民が連携し資金支援・技術提供を行うことで、途上国の温暖化対策に大きく貢献することができる上に、日本の企業の持つ低炭素・脱炭素製品などの高い技術力を、世界的にアピールすることができます。

そのため、低炭素製品を海外向けに輸出したい企業にとって大変メリットのある制度となっています。

今回の記事を読み環境経営に興味を持たれた方には、社会的責任を果たせるだけでなく、メリットが多い全量自家消費型太陽光発電の導入がおすすめです。

弊社とくとくファームZEROでは、自家消費型太陽光発電の売買仲介および購入後の保守点検までサポートをしています。

自家消費型太陽光発電の導入に少しでも興味を持たれた方は、ぜひお気軽にメールや電話にてお問合せください。

より詳細な導入メリットを知りたい方のために、無料の個別セミナーも開催しています。

太陽光発電事業の基礎から自家消費型太陽光発電の運用方法まで丁寧にご説明いたします。

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