日本の電力供給システムは、これまで大手電力会社所有の火力発電所といった大型発電所から日々供給されるシステムでした。しかし、カーボンニュートラルやエネルギーミックス、東日本大震災などの災害といったさまざまな経験や環境の変化から、分散型電源システムという考え方が取り入れられています。特にこれから太陽光発電事業を行う事業者は、分散型電源の定義や仕組み、将来性について把握しておくのが大切です。
そこで今回は、分散型電源の意味や特徴、メリットやデメリットについて詳しくご紹介します。再エネ電源の導入を検討している方や分散型電源に関心を持っている方などは、参考にしてみてください。
分散型電源とは?
分散型電源とは、電力を使用している需要家の近辺に設置されている小規模な発電設備のことです。たとえば、企業のカーポートに設置されている太陽光発電は、電力会社所有の火力発電所や原子力発電所と比較して小規模な設備なので、分散型電源として分類されます。
東京電力など大手電力会社が所有・運用している大規模かつ中央管理型の発電設備は、既存の送配電網を通して各家庭や企業に常時送電されています。一方、分散型電源は、発電設備の所有者もしくは設置場所周辺の地域で消費されているのが特徴です。
分散型電源が求められるようになった主な理由は、災害対策と脱炭素化という2点が関係しています。
地震や台風による被害は大規模停電を招き、従来の一極集中型による発電および送配電に関して限界が生じてきています。また、国の政策でもある脱炭素化を進めるには、大規模な火力発電所や原子力発電所からの脱却を図る必要もあります。
そのため、分散型電源の導入が、これからの日本にとって重要だといえるのです。
分散型電源の種類
分散型電源というと再生可能エネルギーをイメージする方も多いかと思います。もちろん、再生可能エネルギー設備も含まれていますが、「分散型電源=再生可能エネルギー」ではありません。
そこでここからは、分散型電源の種類について1つずつ確認していきましょう。
再生可能エネルギー発電システム
再生可能エネルギーで発電可能な設備は、分散型電源に分類されています。再生可能エネルギーとは、以下のような非化石燃料でかつ資源の枯渇もないエネルギーのことです。
- 太陽光発電
- 風力発電
- 小水力発電
- 水力発電
- バイオマス発電
- 地熱発電
小水力発電は、水力発電と異なり、ダムを使用せずに水車を回して発電を行う設備です。一般河川や農業用水、上下水道などに流れている水を利用しているのが水力発電との主な違いです。
再生可能エネルギーは他の発電方式と異なり、CO2を排出しない・排出量が少ないという強みを持っています。その一方で、安定した発電が難しいという課題も残されています。
化石燃料を活用したシステム
化石燃料を活用した小規模な発電システムは、分散型電源に含まれます。
化石燃料は有機物から構成された燃料で、原油などが代表的です。また、日本の火力発電所では、原油の他にも石炭や天然ガス(LNG含む)を燃やした際に発生する蒸気や熱で、タービンを回転させて発電を行っています。
ただし火力発電所は大規模設備に該当するため、分散型電源に分類しません。
分散型電源に分類されている設備は、主に排熱回収冷凍機、ディーゼルやガスエンジン、ガスタービンといった発電や熱利用システムです。廃熱回収冷凍機とは、空調機器で排出される熱を回収し、給湯や冷水を作り出す機械のことです。
水素エネルギーを活用した発電システム
水素と酸素の化学反応により発電されるシステムも、再生可能エネルギーと同じく分散型電源に区分されます。
主な強みは、発電効率の高さとクリーンなエネルギーという点です。化学反応の際に発生する電気エネルギーを取り出せるため、発電効率35~60%という高効率を実現しています。
また、発電後に発生するのは熱と水なので、環境への負荷を抑えながら自社の設備を稼働させることが可能です。
電力貯蔵システム
電力貯蔵システムは、いわゆる蓄電システム・家庭用蓄電池・産業用蓄電池・電気自動車用の充電設備を指しています。
電力貯蔵システムは、電力会社などで開発・運用されている大規模なシステムだけでなく、家庭用の小規模なタイプや一般企業向けの中規模タイプも製造されています。そのため、分散型電源の補助もしくはメインユニットとして活用しやすく、なおかつ非常用電源としても役立ちます。
さらに太陽光発電や風力発電などによる不安定な電源から、安定的な電力供給を実現するには、蓄電ユニットとの連携も欠かすことができません。
分散型電源のメリット
ここからは、分散型電源を導入することで得られるメリットについて1つずつ確認していきましょう。
需要家の近くで発電できるため送電ロスが小さい
自社の敷地内や敷地外であったとしても、需要家の周辺に設備を設置することが可能なので、送電時のロスを軽減できます。
電力会社の電力供給を中心としたインフラの場合、大型発電や変電所から遠い場所まで送電するために、多数の送配電網を活用しなければいけません。しかし、電力は距離に比例して損失してしまうため、送電効率の低下につながります。
一方、企業や自治体が分散型電源を導入すれば、設備の周辺で電力を供給できます。また、送電効率の低下を防ぎながら、効率よくインフラを維持することが可能です。
家庭や小規模事業所でも設置運用できる
各家庭や小規模事業所、その他企業や自治体といった電力会社以外でも運用できるのは、分散型電源の大きなメリットであり画期的なところです。
前半でも触れましたが、従来の社会インフラは、大手電力会社や系列会社で大規模な火力発電所や原子力発電所をベースに電力を作り出し、一般住宅や商業施設、ビルや工場などに供給されるシステムでした。
しかし、日本は地震や台風といった災害の多い環境であり、なおかつ持続可能な社会の構築という目標もあるため、一極集中型の発電システムだけでは対応しきれません。
そこで、分散型電源が家庭やビル、工場、倉庫、商業施設などに設置されれば、非常時でも最低限の電源を確保することが可能になります。
再生可能エネルギーには小規模なタイプもあるので、分散型電源の普及による設備設置数の増加とCO2排出量削減効果も期待できます。
自家消費によって固定費削減
特に再生可能エネルギー発電設備は、自家消費による電気料金削減効果を伸ばしやすいという特長を持っています。
たとえば太陽光発電は、日光の降り注ぐ晴れの日に発電します。また太陽は半永久的に存在し続けるため、化石燃料や燃料電池などよりも長期間エネルギーを取り出せるという側面もあります。
さらに、太陽光発電で発電した電気は自社の各種設備に供給できるため、年間の電気料金を数10%程度削減できるのです。
2022年は電気料金の高騰が続いていて、企業にとっても厳しい状況といえます。分散型電源の導入は、固定費削減という大きなメリットも得ることができます。
コージェネレーションシステムで廃熱を活用可能
分散型電源の中でもコージェネレーションシステムは、今まで活用されてこなかった廃熱をさまざまな場面で活用できます。
コージェネレーションシステムとは、化石燃料や燃料電池などさまざまな方法で発電を行う設備から排出された熱を回収および活用していくシステムのことです。
分散型電源のデメリット
続いては、分散型電源のデメリットについて1つずつ確認していきましょう。
初期費用がかかる
分散型電源を活用していくには、数100万円以上の初期費用を負担する必要があります。
エネルギー関連企業以外の場合は、自社の本業に対して設備投資を行わなければいけないため、分散型電源の設備投資でさらに費用を負担することになります。また自治体の場合では、予算に余裕のない状態で日々業務を継続しているケースもあります。
そのため、数100万円・数1,000万円単位の費用負担のかかる分散型電源は、小規模事業者や予算に余裕のない自治体や企業にとって導入の難しい設備といえます。
ただし、設備によっては補助金を受けられるケースもあるので、まず補助金制度を調べてみるのがおすすめです。
弊社和上ホールディングスでは、自家消費型太陽光発電に関する補助金制度の調査と申請代行も含めて一括サポートしています。費用面で悩んでいる時は、太陽光発電設備を検討してみてはいかがでしょうか。
維持管理の手間がかかる
分散型電源を正常に稼働し続けるには、定期的なメンテナンスや改修、日々の維持管理も欠かせません。自社のリソースを分散型電源の管理に回すことが難しい時は、特にデメリットおよび課題といえるポイントです。
分散型電源の維持管理に関する手間を軽減したい場合は、管理方法や保守点検サービスの充実した電源設備から検討してみるのがおすすめです。
再生可能エネルギー設備は、他の電源設備と比較して維持管理しやすく、日々の管理業務も比較的少ない傾向です。特に太陽光発電設備は、発電量の監視や週に何回かの除草や洗浄作業といった管理で済みます。また、太陽光発電関連サービスは充実しているので、施工から保守点検までサポートしてもらいやすい環境なのです。
分散型電源用の送電容量不足の可能性
既存の送配電網を活用して分散型電源の電力供給を行うと、送電容量不足に陥る可能性があります。
既存の送配電網(電気を送るための配線設備、電柱など)は、火力発電所や原子力発電所といった大規模発電所で発電された電力が常時送電されています。そこで分散型電源の電気を送配電設備で送ってしまうと、送電容量の上限を超える電力が流れてしまい、送電不可や故障につながってしまいます。
分散型電源を自社だけでなく地域の建物へ供給するには、送配電設備の増設なども必要です。
周波数調整力不足による電力品質の不安定化
分散型電源の普及と積極的な活用は、電力品質の不安定化につながる可能性もあります。電力の安定的な供給を維持するためには、電力の需要と供給の一致と周波数の調整力が必要です。しかし、分散型電源が普及すると、電力需要を上回る電力を供給してしまう場合も想定されるため、電力供給の不安定化というリスクにつながってしまいます。
電力供給の不安定化は、社会インフラに大きな影響を与える事象です。分散型電源の急速な普及に関しては、デメリットの方が大きいといえます。
分散型電源はマイクログリッドとしても役立つ
分散型電源は、マイクログリッド実現に役立つ重要な設備です。
マイクログリッドとは、小規模な発電設備を組み合わせていき、地域ごとに小規模な電力ネットワークを構築していく考え方のことです。まさに分散型電源のメリットを活かせるシステムといえます。
アメリカのLO3 Energyという企業では、ニューヨーク州ブルックリンでブルックリン・マイクログリッドという小規模電力ネットワークプロジェクトを2016年から始めました。
プロジェクトの内容は、太陽光発電システムで余った電力を、ブロックチェーン技術を駆使しながら、住民と企業間で電力取引できるというものです。
分散型電源は事業規模にかかわらず導入しやすい設備!
分散型電源は、再生可能エネルギー設備だけでなく化石燃料の熱を活用した設備、水素エネルギーシステム、蓄電ユニットなどを指しています。中でも再生可能エネルギー設備は、導入および維持管理しやすく、なおかつ補助金制度によって初期費用を抑えられます。
分散型電源を活用した事業を検討している方や分散型電源で自家消費を試みたい方は、今回の内容を参考にしながら自家消費型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
自家消費型太陽光発電は、国や自治体の補助金制度を受けられる設備で、太陽光という半永久的に得られるエネルギーを用いながら全ての電力を自家消費に回せます。
また、自家消費型太陽光発電は、脱炭素経営という点でもアピールしやすいのが強みです。
弊社和上ホールディングスでは、企業向けの全量自家消費型太陽光発電の企画作成から土地選定、設備の設計と施工、設置後の保守管理まで対応しています。
また、遠方の自社敷地から自社の事業所へ送電する自己託送プラン、初期投資ゼロのPPAプランなどもご検討可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
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