営農放牧型太陽光発電とは?特徴やメリット・注意点について解説

営農放牧型太陽光発電とは?特徴やメリット・注意点について解説

2024年7月26日、三菱UFJ銀行と大阪ガスは、営農放牧型太陽光発電発電所を活用した電力調達について発表しました。営農放牧型太陽光発電は、放牧した家畜で太陽光発電設備の周辺の植生を管理することを指し、放牧と太陽光発電の相性の良さで注目を集めています。

本記事では、営農放牧型太陽光発電の意味や特徴、メリット・課題について詳しくご紹介します。営農放牧型太陽光発電について関心を持ち始めた方などは、参考にしてみてください。

営農放牧型太陽光発電とは営農放牧型太陽光発電のこと

営農放牧型太陽光発電は、太陽光発電所と放牧地を一体化させ、羊などを放牧してグレージング(家畜が草を食べること)させることで、設備周辺の植生を管理する取り組みを指します。営農放牧型太陽光発電とも呼びます。アメリカでは太陽光発電事業者と地元の羊牧場が契約し、季節単位ごとに発電所敷地内で放牧するといった運用をしているところもあるようです。

ヤギや羊をレンタルして除草するサービスがありますが、これを太陽光発電のある放牧地で行うイメージです。太陽光発電は日射量の確保が発電量に直結するため、雑草が太陽光パネルを覆ってしまわないように定期的に除草する必要があります。営農放牧型太陽光発電は、この雑草問題を放牧で解決できるということで注目されています。

日本では、ソーラーシェアリングの制度を活用することで営農地(牧草地)に太陽光発電を設置し、敷地内に羊などの家畜を放牧しながら売電・自家消費しているところもあります。太陽光パネルによって部分的に日影が作られるので、日陰を利用して家畜が暑さをしのげるといった利点もある方法です。

運用中の放牧地だけでなく耕作放棄地などでも運用可能

営農放牧型太陽光発電は、現在運用している放牧地だけでなく、耕作放棄地から農地を再生しながら設備の設置・保守運用を行うケースもあります。

耕作放棄地は放置状態の農地のことですが、年々増加しており問題視されています。雑草の増加や害虫の発生などさまざまな問題につながるため、こうした土地は農地バンクのような取り組みで必要な人に貸し出されています。しかし、こうした土地を再生させて農業として収入を安定化させるには、時間や技術が必要です。

営農放牧型太陽光発電を取り入れれば、耕作放棄地を再生させるまで売電収入を活用しながら事業を継続できるため、耕作放棄地問題の解決を手助けする一手として注目されています。

営農放牧型太陽光発電のメリット

営農放牧型太陽光発電には売電収入の確保など、さまざまなメリットがあります。ここからは、主なメリット4つについて詳しく解説します。

農地で太陽光発電を始められる

農地(牧草地)で太陽光発電を始められるのは、営農放牧型太陽光発電最大のメリットといえます。

農地の活用方法は法律で定められており、本来は農業以外の用途で使用できません。たとえば、無許可で農業に関連のない事業設備を建設した場合(たとえば駐車場など)、無断転用とみなされ罰則を受けてしまいます。

農地を別の用途で活用するためには、地目変更に関する申請手続きを行い、農地以外の区分に変更する必要があります。しかし、手続きには審査があるほか、必ず変更できるわけではありません。

営農放牧型太陽光発電を含む営農型太陽光発電は、農地の一時転用許可を得ることで地目変更を行わずに、農業と並行して太陽光発電事業を進められます。さらに、荒廃農地の活用など指定の条件を満たせば、一時転用期間3年のところ10年に延長できます。

酪農にかかる電力を補える

酪農事業者にとって営農放牧型太陽光発電は、事業に必要な電力を補えるビジネスモデルの一つといえます。たとえば乳牛なら換気扇や搾乳機器、バルククーラー、糞尿処理関係の設備などで電気を必要とします。こうした設備は電力消費量も大きく、電気代の負荷は大きいでしょう。

営農放牧型太陽光発電で自家消費を行えば、無理な節電や省エネ設備の導入といった施策を行わなくとも電気代を大幅に削減することが可能です。蓄電池を併用すれば、余った電気を貯めておき、消費電力の増えた場面や発電量のない夜間などでも自家消費できるようになります。

クリーンな電力や環境価値を得られる

国内のCO2排出量からみれば農業・畜産業が占める排出量は多くありませんが、気候変動による産業への影響を考えると、やはり脱炭素化に向けた取り組みは無視できません。営農放牧型太陽光発電を活用すれば、家畜管理に必要な電力を再生エネルギーに置き換えられ、CO2を削減できます。

また、非FIT型の営農放牧型太陽光発電には環境価値があるため、非化石証書を活用した取引を行い、収益を得ることも可能です。

営農放牧型太陽光発電の注意点

ここからは、営農放牧型太陽光発電の注意点についてわかりやすく解説します。

土壌管理やインフラ整備が必要

営農放牧型太陽光発電を始めるためには、太陽光発電の保守管理だけでなく、土壌管理やインフラ整備なども必要です。すでに放牧酪農を行っている上での導入なら問題ありませんが、放牧酪農に移行したい場合や、耕作放棄地の開発で活用したい場合は、土台を整えるのに苦労する可能性があります。

たとえば、放牧酪農を成立させるためには、土壌の性質や家畜の生育環境などを整えなければならず、導入にかかる手間やコストはかなりものである点には注意が必要です。

国内の実績が少ない運用方法

営農放牧型太陽光発電は、まだ日本で広まっておらず、海外での運用が目立つ方法です。国内の実績は少ないため、ノウハウや具体的な導入費用など、情報収集が難しいでしょう。

なお、営農型太陽光発電に関しては、和上ホールディングスでも対応しております。営農放牧型太陽光発電を含む営農型太陽光発電の設計や運用まで総合的にサポートを受けたい場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

一時転用の更新時に審査が行われる

営農放牧型太陽光発電を含む営農型太陽光発電では、農地の一時転用に関する許可が必要です。また、定期的に更新が必要なほか、審査に通過しなければ事業を継続できません。

一時転用の更新時期については、通常3年に1回とされています。ただし、荒廃農地の再生利用、第2種農地・第3種農地の利用など、指定の条件を満たせば更新時期を10年に1回に伸ばしてもらえます。

営農放牧型太陽光発電の事例

2024年7月26日、三菱UFJ銀行と大阪ガスは、営農放牧型太陽光発電を運営する株式会社町おこしエネルギーと電力購入に関する基本合意を締結しました。

株式会社町おこしエネルギーは、北海道白糠町の放牧地に白糠営農放牧型太陽光発電発電所を設立しました。放牧可能な土地の一部を農地転用し、羊よりも若干高い位置にソーラパネルを設置しています。営農放牧型太陽光発電を実現させるビジネスモデルとして、特許も取得しています。

大阪ガスは、白糠営農放牧型太陽光発電発電所から太陽光発電由来の電力と環境価値を購入し、三菱UFJ銀行へ環境価値を販売しています。三菱UFJ銀行はこの環境価値を活用して、貸借ビルで使用されている電力のCO2削減を進めています。

営農放牧型太陽光発電で発生した売電収入の一部は、北海道白糠町の畜産業へ還元されており、農業の発展に貢献しているのも注目すべきポイントです。また、町おこしエネルギーは、伐採や盛土といった造成工事を行わずに太陽光発電を設置することで、環境への負荷を抑制しています。

放牧酪農での電気代削減には全量自家消費型太陽光発電がおすすめ

営農放牧型太陽光発電は新しい太陽光発電事業で、使用されなくなった放牧地や耕作放棄地の再生にも寄与します。太陽光発電の活用に興味が出てきた方の中には、そもそも売電型や自家消費型、どちらを選べばいいのか悩んでいる方も多いかと思います。

電気代の負担や環境への負荷軽減を重視している方は、現在の売電価格と電気料金を考慮すると、全量自家消費型太陽光発電の方がおすすめです。耕作放棄地の再生から検討している場合は、売電を前提とするのも良いでしょう。

弊社和上ホールディングスは、太陽光発電の導入支援も行っています。本記事で少しでも太陽光発電事業に関心を持ち始めた方は、お電話やメールよりお気軽にご相談ください。

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