近年、アメリカなどで注目されている太陽光発電に関する建材に、BIPVというものがあります。これまでの太陽光発電とは異なり、より効率的な設置を進められるのが特徴です。また、研究開発が国内でも進んでいるので、今後導入の可能性もあります。
そこで今回は、BIPVの意味と特徴、研究開発の状況やメリット、課題について詳しくご紹介します。自家消費型太陽光発電で効率的に電気料金を削減したい方や太陽光発電の種類について確認したい方などは、参考にしてみてください。
BIPVとは?
まずは、BIPVがどのような素材・部材なのかわかりやすく紹介していきます。
外壁などと一体化された太陽光パネル建材
BIPV(Building-integrated photovoltaics)とは、外壁などと一体化した新しい建材および太陽光発電のことです。
既存の太陽光発電は、パネルに太陽電池が搭載されていて、架台という土台に取り付けます。
一方のBIPVは、屋根や外壁、天窓などに使用されている建材と一体化されていて、なおかつ以下のような性能も持ち合わせています。
- 耐風性能
- 耐火性能
- 防水、防漏水
- 断熱性能
- 遮光
建物を建てる際、建材を組み込むだけで太陽光発電機能を持たせることができ、屋根や野立て以外の場所でも発電を進められます。太陽光パネルの設置面積の少ない敷地しか所有していない企業や、屋根設置だけでは発電量の不十分な企業にとっては、特に導入の価値があります。
世界的に成長中の分野
BIPVは世界的に成長中の分野で、今後さまざまなビルや工場、倉庫、商業施設などで導入される可能性があります。
日本や海外の企業では、持続可能な社会・脱炭素社会を実現するためにBIPVの研究開発を続けている状況です。
また、海外の調査会社REPORTOCEANでは、2021年12月にBIPVの世界市場に関するデータを発表しました。同社のデータによると、2027年までにBIPV市場の成長率は20%に達するという予測を立てており、金額に直すと5兆円規模の市場へ発展していくという内容です。
また、市場をコントロールしているのはヨーロッパですが、シェアの大きな地域は北米地域です。北米地域は、BIPVに関する売上が伸びています。
BIPVが成長している主な理由は、各国で脱炭素政策やグリーンエネルギーを推進しており、また民間でも環境に関する意識が高まっているためです。
BIPVの研究開発状況
BIPVの市場や特徴を把握したあとは、主な研究開発企業や団体について確認していきましょう。2022年時点でBIPVの研究開発を進めているのは、主にアメリカと中国です。
米テスラグループが製品化
アメリカのテスラグループでは、太陽光パネルと屋根用パネルが一体化された「ソーラールーフ・タイル」という商品を既に製造販売しており、2019年には第3世代タイプが発表および販売されました。
第2世代までは、屋根用タイルと雨どいの接合部分を接続するのに職人の技が必要だったため、施工件数は想定を下回る状況でした。
そこでテスラグループは、より簡単に施工可能なBIPVの開発を進め、材質の変更と大型化、部品点数を削減した第3世代のソーラールーフ・タイルを完成させました。
ただし太陽光発電事業に関しては、ウォルマートとの訴訟問題などといった問題も抱えており、今後の動向が注目されています。
中国のヘリオス・ニュー・エネルギーも研究開発中
中国企業のヘリオス・ニュー・エネルギー(ヘリオス新能源科技有限公司)は、BIPVの本格的な技術開発へ取り組み、設置運用時の課題解決も終えています。
これまで製品化および研究開発されたBIPVは、耐久性という点で問題がありました。そこでヘリオス・ニュー・エネルギーは、ガラスや有機材料といった耐久性に問題のある材料ではなく、耐候性(太陽光や雨などの影響に対する耐久性)の高い外壁用材料をBIPVに用いています。
また、太陽光発電を建築材料の1つとして捉え、発電効率などの前に耐久性やメンテナンス性を重視させた製品作りを心がけているのが、同社の強みです。BIPVに用いられている太陽電池はハーフカットセルで、他社製品を組み合わせています。
さらにメンテナンス時にパネルの上を歩きながら作業を行えるよう、パネルやフレームなどの耐荷重についても強化されているのが特徴です。
その他BIPVを手がけているメーカー
日本でもBIPVの開発および販売まで手掛けているメーカーがあり、2004年にシャープが販売しています。
また、大手化学メーカーのカネカと大成建設株式会社が共同開発で、壁面設置型太陽光発電「T-Green Multi Solar」を実用化させました。一般的なBIPVとは異なり、窓と一体型の太陽光発電を作り出すことが可能です。またシースルータイプなので、通常の窓と同様に光を室内へ取り込めます。
他にも国内メーカーのスフェラーパワー株式会社は、太陽光発電システムの開発や製造を進めていて、BIPVに関する販売も行っています。同社の製品は垂直設置も可能なタイプで、ガラスや防音壁などと一体化された太陽光発電システムにも対応しているのが強みです。
BIPVのメリット
ここからは、BIPVのメリットについてわかりやすく紹介していきます。
建物の景観を損ねることなく設置運用可能
従来の太陽光発電設備と比較して、BIPVは建物の景観を損ねることなく設置、稼働できます。
従来の屋根設置型太陽光発電や野立て太陽光発電は、発電性能という点で問題はありません。しかし、多くの場合で風景や建物の景観、デザインを損ねています。
また建物のデザインも自社のブランドイメージとして認識している事業者にとっては、太陽光パネルや配線、周辺機器の設置をためらってしまうのではないでしょうか。
BIPVは、屋根や外壁、窓との親和性が高く、外から見ても太陽光パネルと分からないデザインです。景観を損ねずにビルやマンションなどに太陽光発電を設置したい事業者は、野立て太陽光発電だけでなくBIPVを検討した方がいいかもしれません。
環境に配慮されたエネルギーで発電および自家消費
BIPVは「建材+太陽光発電機能」を備えているので、環境負荷に配慮したエネルギーで自家消費が実現できます。
太陽光発電の自家消費とは、発電した電気を自社の照明設備や自動ドア、空調設備、コンセント、生産設備などへ供給および使用する運用方法のことです。つまり電力会社からの電力購入量を抑えられるため、電気料金の削減効果が得られます。
そのため、BIPVを自社ビルや工場へ設置した場合は、建物内で自家消費できます。
ZEBとの相性が良い
BIPVはZEBと相性のいい設備なので、ビルやマンションなどを所有している事業者にとってもメリットがあります。
ZEBとは、消費エネルギーを省エネや創エネで相殺し、年間のエネルギー消費量実質ゼロを実現できるシステムやビルのことです。
ZEBを実現するためには、省エネ設備の導入だけでなくエネルギーを創り出す設備も必要です。そこで太陽光発電があれば、電力会社からの電力購入量を抑えながら事業に必要なエネルギーをまかなえます。
またBIPVは、一般的な太陽光発電と異なり屋根だけでなく壁面、窓などに設置可能なので、発電量を増やしやすく、ZEB達成の足がかりとして役立ちます。
BIPVの課題
続いては、BIPVの課題について1つずつ確認していきましょう。
研究段階の側面もあり普及していない
BIPVは製品化されているケースもありますが、耐候性などの建材としての機能には課題が残っています。そのため、2022年時点でも課題解決に向けた研究開発が進められていて、実用性という点ではまだ厳しい状況です。
BIPVを本格的に導入したい場合は各メーカーの製品を比較し、強みだけでなく弱点も理解し、運用時の注意点を正確に把握しておく必要があります。
建材より短寿命
太陽光発電システムが搭載されたBIPVは、通常の建材と比較しては短寿命の傾向があります。
そのため定期的に発電ユニットの交換のほか、BIPVに搭載された基盤や太陽電池などの改修を専門業者へ依頼しなければいけません。設備の設置状況によっては、維持管理コストの負担が増えてしまう可能性もあります。
またメンテナンス性の低い構造の製品では、発電ユニットを交換できず、建材ごと交換しなければいけない場合もあります。
BIPVメーカーには、耐久性だけでなくメンテナンスしやすさという点も求められます。
国内の技術者はBIPVの技術について学ぶ余裕がない
国内の建設・太陽光発電設計技術者の多くは、年齢的な問題や多忙といった点からBIPVの技術について学ぶ時間が十分にないことがあります。
BIPVの技術が発展していくには、設計技術者の数を増やすこととBIPV技術に関する研修や講座を簡単に受けられる環境づくりも必要です。
鉛直の設置ではホットスポットが発生しやすい
BIPVを鉛直方向に設置した場合、通常の太陽光発電設備と比較してホットスポットの発生リスクが上がります。
太陽光パネルは、天候の他、建物や葉っぱなどの影響で影ができる部分もあります。影ができた部分と日光の当たっている部分では、発電量に大きな差が生じます。
ホットスポットは、太陽光パネル内で生じた発電量の差によって発生する熱を指します。
例
- 太陽光パネルの左半分だけ影ができる
- 右半分で発電される
- 発電された電力が影のできた部分で消費される
- 影のできた太陽電池で発電が起きる
- 劣化、故障の原因につながる
鉛直方向、つまり壁面にBIPVを設置した場合、周辺の建物や木々によって影の影響を受けやすく、ホットスポットによる劣化や故障リスクも高まりやすいということです。
BIPVは課題も多く通常の太陽光発電による自家消費がおすすめ!
BIPVは、外壁や窓などさまざまな場所に設置可能で、画期的な太陽光発電ユニットです。しかしホットスポットのリスクが高いことや耐久性の問題、技術者不足など、さまざまな課題も残されています。
自社の消費電力量を効率よく減らしたい方や太陽光発電の種類に悩んでいる方は、今回の記事を参考にしながら全量自家消費型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
全量自家消費型太陽光発電は、自社の敷地内や外、自社ビルや工場、倉庫、商業施設などの屋根や屋上に太陽光パネルを設置し、発電された電気を全て自社で消費可能な設備を指しています。
弊社和上ホールディングスでは、創業から30年、15,000棟もの施工実績を誇る全量自家消費型太陽光発電の総合サポートサービスです。
全量自家消費型太陽光発電を設置するには、施工担当者による企画作成から始まり、設置予定場所へ安全かつ効率よく設置するための設計なども欠かせません。
また、和上ホールディングスは、企画提案から設計に加え、部材調達から設備の設置工事、融資に関するサポート、保守運用まで総合的に対応しています。
さらに弊社で対応した全量自家消費型太陽光発電は、初期費用回収まで10年以内に完了しています。費用回収期間が短ければ短いほど、固定費削減効果を伸ばせます。
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