燃料費調整額の上限撤廃でどのような影響を受ける?対策についても

燃料費調整額の上限撤廃でどのような影響を受ける?対策についても

2022年は、ロシアによるウクライナ侵攻などで原油・石炭・天然ガスの燃料が高騰し、国内の電気料金値上げや物価高につながっています。また、電力会社各社では電気料金の値上げを可能なかぎり抑えていましたが、負担増加に伴い燃料費調整額の上限撤廃といった事象も起きています。

そこで今回は、燃料費調整額の仕組みや上限撤廃の意味、影響や対策について詳しくご紹介します。電気料金の値上げについて詳しく知りたい方や電気料金がなぜ値上げしているか把握した上で対策を施したい方などは、参考にしてみてください。

燃料費調整額の仕組み

まずは、燃料費調整額の仕組みについてわかりやすく紹介していきます。

燃料の調達コストを電気料金へ反映させたもの

燃料費調整額は、発電に必要な燃料(原油、LNG、石炭)のコストを電気料金に反映させたものです。電力会社と契約しているすべての国民が毎月負担しています。

一般的に電気料金は、「基本料金+電力量料金+再エネ賦課金」で計算されています。中でも電力量料金は、「電力量料金単価×1ヵ月の電気使用量+燃料費調整単価×1ヵ月の電気使用量」という計算式で求められる仕組みです。

つまり、電気使用量が変わらなくとも、燃料費調整額の変動によって毎月の電気料金は変わります。

貿易統計額に沿って単価が算定される

燃料費調整額の燃料費調整単価は、貿易統計額に沿って算定されています。電力会社が独自に単価を設定しているのではなく、決められたルールに沿って自動的に算出されているのです。

貿易統計とは、税関に提出された品物の情報を集めたものです。

燃料費調整単価の算定方法は、まず貿易統計実績に示されている直近3ヵ月間の平均燃料価格から基準燃料価格を差し引きます。基準燃料価格は、国へ申請した時点の平均的な燃料価格で、平均燃料価格よりも直近の価格で求められています。

具体的には、以下のような計算方法です。

(平均燃料価格-基準燃料価格)×(基準単価÷100)

基準単価は、平均燃料価格1kl(キロリットル)あたり1,000円変動した際の価格を指しています。計算の結果0円の場合は、電気料金に上乗せされません。基準燃料価格より平均燃料価格の方が高い場合は、電気料金へ上乗せされてしまいます。また平均燃料価格が値上がりしていくと、燃料費調整額の値上げにつながります。

反対に基準燃料価格より平均燃料価格の方が安い場合は、電力量料金から差し引かれます。-5円/kWhの場合なら、1ヵ月あたりの電気使用量×-5.0円分だけ電気料金を削減できます。

燃料費調整額は上限が定められている場合も

燃料費調整額の上限は、電気料金プランによって異なります。とくに燃料費が高騰している時期は、燃料費調整額の上限を把握した上で対策を考えるのも大切です。続いては、燃料費調整額の上限とプランの関係性について確認していきましょう。

規制料金プランには上限が定められている

燃料費調整額の上限が定められているプランは、規制料金プランです。規制料金プランとは、2016年4月に施行された電力自由化以前より提供されている電気料金プランのことです。代表的なプランといえば、従量電灯制です。

規制料金プランのサービス内容変更、値上げなどは、国の認可が下りなければ実行されません。また燃料費調整額の上限撤廃は認められていないので、ある日突然上限が撤廃される心配もありません。

自由料金プランの多くは上限が定められていない

燃料費調整額の上限が定められていないプランは、一部の自由料金プランです。自由料金プランは、電力自由化以降に提供され始めた電気料金プランを指しています。規制料金プランとは異なり、サービス内容や値上げ、燃料費調整額の上限を電力会社の方針で自由に変更できます。

そのため、値上げ・値下げ、燃料費調整額の上限に関するルールなどが、状況に応じて変更されやすいという特徴があります。

燃料費調整額の上限が撤廃された主な電力会社

2022年から燃料費高騰が続いているため、大手電力会社や新電力では、燃料費調整額の撤廃に方針を変更し始めています。ここからは、燃料費調整額の上限撤廃を発表した電力会社と主な電気料金プランについて紹介していきます。

大手電力会社の自由料金プラン

大手電力会社では、自由料金プランの燃料費調整額について変更などの措置を行っています。以下に大手電力会社の燃料費調整額に関する対応状況を紹介します。

電力会社 自由料金プランに関する対応状況
北海道電力 2022年12月分の電気料金から燃料費調整額の上限を撤廃
東北電力 2022年11月分の電気料金から燃料費調整額の上限を撤廃
東京電力 自由料金プランに関する燃料費調整額の上限は設定されていない
関西電力 ・深夜電力、第2深夜電力、低圧季時別電力、融雪用電力プランの燃料費調整額では上限が撤廃される
・上記以外の自由料金プランは、燃料費調整額の上限あり
中部電力 2022年12月分の電気料金から燃料費調整額の上限を撤廃
北陸電力 自由料金プランに関する燃料費調整額の上限は設定されていない
四国電力 2022年11月に一部プランで燃料費調整額の上限撤廃
さらにすべての自由料金プランで2023年5月から燃料費調整額の上限撤廃
中国電力 自由料金プランに関する燃料費調整額の上限は設定されていない
九州電力 2022年10月分の電気料金から燃料費調整額の上限を撤廃
沖縄電力 自由料金プランに関する燃料費調整額の上限は設定されていない

2023年5月を過ぎると、大手電力会社の全自由料金プランで燃料費調整額の上限が撤廃される予定です。燃料費調整額の上限が撤廃された場合、電気使用量を抑えていても燃料費調整額の値上げにより家計負担の増加につながる場合もあります。

ただし、政府による補助金事業によって、2023年2~9月まで電気使用量×7円の値引きを進めてくれます。また2023年10月の電気料金は、電気使用量×3.5円の値引きを行ってもらえます。

そのため、急激な負担増加は一時的に抑えられる見込みです。

大手電力会社の規制料金プラン

規制料金プランの燃料費調整額は、2023年2月時点で撤廃されていません。冒頭でも解説したように、規制料金の基本料金、電力量料金、燃料費調整額の上限については、国の認可がなければ変更できません。

しかし大手電力会社10社中7社は、基本料金や電力量料金の値上げ申請を行い、なおかつ国の認可が下りている状況です。

  • 北海道電力
  • 東北電力
  • 東京電力
  • 北陸電力
  • 中国電力
  • 四国電力
  • 沖縄電力

電気料金の値上げについては、2023年4月1日に行われる予定です。値上げ率は20~30%程度と高い水準で、多くの方にとって負担の大きなものといえます。

一方、前述で紹介した政府による補助金事業を受けられるので、急激な家計負担増加は一時的に抑えられます。値引額は、自由料金プランのケースと同じ内容です。

補助金は期間限定なので、早めに節電活動や省エネ製品の導入、太陽光発電の導入などを検討してみてはいかがでしょうか。

高圧電力や特別高圧プランも見直しの流れ

高圧電力や特別高圧プランに燃料費調整額の上限は設定されていないため、値上げ方向で推移している状況です。

また、電気料金の値上げや燃料費調整単価の見直しなども行われることから、さらに負担が増加してしまう可能性もあります。

一方、高圧電力については政府による補助金事業の対象なので、2023年2~9月分まで電気使用量×3.5円、10月分は電気使用量×1.8円の値引きを受けられます。

特別高圧電力は補助金の対象外なので、太陽光発電による自家消費などで積極的に対策をとるのが大切です。

新電力は2022年3月から11月にかけて上限を撤廃

新電力の多くは、2022年3月から11月にかけて燃料費調整額の上限を撤廃したり、電気料金の値上げを行ったりしています。

以下に燃料費調整額の上限撤廃を行った主な新電力を紹介します。

  • ENEOSでんき
  • ソフトバンクでんき
  • Looopでんき
  • auでんき
  • ドコモでんき

燃料費高騰以前は、新電力へ乗り換えることで電気料金の負担を軽減することも可能でした。しかし、各新電力は燃料費調整額の上限撤廃や電気料金の値上げへ踏み切っているため、大手電力会社の規制料金プランより割高な料金構成に変化しています。

燃料費調整額の上限撤廃でどうなる?

2023年時点で燃料費調整額の上限撤廃は、電気料金の負担増加につながりやすい状況といえます。

燃料費調整額の上限が撤廃されるということは、燃料費価格の高騰に伴い毎月の電気料金負担も増加するということです。2023年2月時点では、LNG(液化天然ガス)や原油、石炭の価格高騰などで燃料費調整額の値上げが続いています。

政府の補助金によるサポートもありますが、ロシア・ウクライナ戦争の停戦、原子力発電の稼働再開や再エネの普及および安定的な電力供給体制の確立といったステップへ進まなければ、電気料金の高騰状態は抑えられません。

燃料費調整額の負担を抑える方法

規制料金の値上げ、燃料費調整額の上限撤廃による電気料金負担増加を抑えるには、節電や省エネ製品の導入もオススメです。しかし、省エネ製品の導入や節電による電気料金削減には限界があります。

そこで最後は、燃料費調整額の負担を抑える方法について紹介します。

個人の場合は住宅用太陽光発電で自家消費

個人の場合は、住宅用太陽光発電と家庭用蓄電池で自家消費もしくはFIT制度を活用しながら、自家消費するのがいいでしょう。

住宅用太陽光発電で発電した電気を自家消費すると、毎月の電気料金を数1,000円単位で削減できます。またFIT認定を受ける場合は、自家消費後に余った電力を売電に充てられます。売電単価は、FIT認定を受けた年によって変わります。なお2023年にFIT認定を受けると、16円/kWhで10年間売電収入を得られます。

夜間に電気を使用している・消費電力量の多い時間帯と発電量のピーク時間が異なる場合は、家庭用蓄電池との併用も重要です。太陽光発電で発電した電気の一部を蓄電池へ貯めておくことで、夜間や消費電力の多い時間帯に自家消費することが可能です。

法人の場合は全量自家消費型太陽光発電で固定費を削減

法人の場合は、全量自家消費型太陽光発電で年間の電気料金を大幅に削減できます。

法人向けの全量自家消費型太陽光発電は、住宅用太陽光発電より大きな設備規模です。出力100kWや1,000kW以上の太陽光発電を設置できるので、オフィスビルや工場、商業施設で消費されている電力の30%や50%程度をカバーできます。また、産業用蓄電池を用いたり太陽光パネルの枚数を増やしたりすれば、自家消費量をさらに向上させることが可能です。

さらに全量自家消費型太陽光発電は、脱炭素経営において評価されやすい設備の1つです。脱炭素経営で企業価値を向上させたい方は、メリットの多い選択肢といえます。

燃料費調整額の上限撤廃は個人や法人にとって大きな影響を与える措置

燃料費調整額の上限撤廃は、低圧電力を契約している個人や自営業者にとって負担のかかる変更点です。また、燃料費調整額の上限撤廃だけでなく電気料金の値上げも続いているので、高圧電力や特別高圧電力を契約している法人にとっても他人事ではありません。

固定費を削減するための方法を模索している事業者などは、全量自家消費型太陽光発電の導入について検討してみてはいかがでしょうか。

創業30年、和上ホールディングスでは、全量自家消費型太陽光発電の企画提案から設計、施工、保守まで一括サポートしています。システム容量150kW前後なら年間で250万円前後の電気料金削減効果を見込めますし、50t以上の二酸化炭素の排出量削減効果も期待できます。

少しでも太陽光発電について関心を持っている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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