農地には、農地転用できない土地や条件付きで転用が認められている土地などが存在しています。自分の持っている農地が転用できるかわからない、転用できないのでどう活用していいかわからないといった方もいるのではないでしょうか。実は農地太陽光発電事業なら、農地転用できない土地でも活用できるケースがあります。
今回は、農地転用できない土地やできる土地の条件、農地で太陽光発電事業を始める方法について詳しくご紹介します。農業の経営安定化のために太陽光発電を始めたい方などは、ぜひ参考にしてみてください。
農地転用できない土地とは?わかりやすく解説
農地転用できない土地は、農振法にもとづいて市町村が指定した「農用地区域(青地)」に該当する土地です。この区分けは各市町村が行っており、原則変更できません。
農振法(農業振興地域の整備に関する法律)の区分では、農業を守るために確保すべきとされる土地(農業振興地域)と、そうではない土地(農業振興地域外)にわけられています。農業振興地域内は、さらに農用地区域(青地)と農用白地地域(白地)に区分されています。
農用地区域(青地)は、農業に必要な水を貯めておく農業用ダムや、大雨などによって増えた水を取り除くための排水路など農業になくてはならない施設のための土地、農地が一定の範囲で密集している区画、農地として生産性が高い土地などが指定されます。
このように農用地区域(青地)は、農業の運営に必要であると判断されて指定されているため、原則として農地転用できません。農地転用のためには、まずこの農用地区域(青地)から除外する必要があります。しかし、国民の食糧を守るために確保されている土地なので、除外要件は非常に厳しいです。
そのため農用地区域(青地)は、事実上農地転用できない土地であるとされています。区分の確認方法は、後述の「農地転用できるかどうかの判断方法」で紹介しているのであわせて参考にしてください。
農地転用は原則不可だが例外的に許可されるケースがある土地
農用白地地域(白地)、農業振興地域外の農地は、農地法によってさらに甲種農地、第1種農地、第2種農地、第3種農地に区分されます。紹介した順に農地としての優先度が高く、農地転用が認められにくいです。
甲種農地、第1種農地は、原則農地転用できません。農業にかかわる施設や、集落に接している農地で要件を満たしている住宅、非常に公共性の高い施設などは例外的に認められます。
第1種農地
第1種農地は、農用白地地域(白地)や以下の条件を満たした農地を指します。
- 10ha以上の農地
- 集団農地の対象
- 土地改良事業の対象
- 生産性が高い土地
甲種農地
甲種農地は、市街化調整区域内の土地で、以下の条件を満たした農地を指しています。
- 10ha以上の農地
- 農業公共投資を8年以内に実施
- 農業機械を使用した農業経営に適した農地
農地転用ができる土地
農地の中でも第2種農地や第3種農地に該当する農地は、いくつかの要件を満たしていれば農地転用が認められています。
第2種農地
第2種農地は、農用白地地域(白地)もしくは農業振興地域外の農地で、主に以下の条件を満たした農地を指しています。
- 10ha未満の農地(生産性の低い農地)
- 市街化が見込まれる土地
- 第3種農地に近接している土地
第3種の土地で替えがきかない状況であれば、第2種農地の農地転用が認められるとされています。
第3種農地
第3種農地は、農用白地地域(白地)もしくは農業振興地域外の農地で、主に以下の条件を満たした農地を指しています。
- 農地の接している道路に上下水道もしくはガス管、2種類が埋設されている、また500m以内に2種類以上の公共施設が建設されている状態
- 300m以内に駅や公共施設などがある
- 宅地面積割合が40%を超えている
- 用途地域が定められている
第3種農地においては、一般基準を満たしていれば農地転用が認められます。
※一般基準とは、農地転用の目的である事業が確実に実施できること、周辺農地の運営に支障が出ないこと、一時転用の場合は利用後の土地が農業に復帰できることを主軸とした、農地転用の基本となる基準のことです。
無許可で農地以外の用途で使用した場合は?
無許可で農地を農地以外の用途で使用した場合は、権利の移転や権利まわりの契約内容などが無効になります。農地の上に住宅や工場などを建てしまった場合、農業ができる状態にまで戻すよう原状回復を求められます。
さらに行政処分や罰則もあります。3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金刑が科され、原状回復に応じないと回復に必要な費用を徴収されることがあるなど、厳しい処分があります。(※法人の場合は1億円以下)農地転用に関する相談は各地域の農政局・各都道府県市町村の農業委員会事務局等で受けているため、わからないことは確認しながら取り組みましょう。
農地転用できるかどうかの判断方法
前述のように、土地の区分によって農地転用できるかどうかが変わるため、まずは所有している農地、あるいは借りたい・買いたい農地の区分を確認する必要があります。
農地の管轄となる市町村の農業委員会、もしくは農業担当部署に問い合わせることで、区分を確認できます。また農林水産省「eMAFF農地ナビ」を使えば、農振法区分(農用地区域:青地かどうか)を確認できます。
先述した区分ごとの農地転用可否をまとめると、次の通りになります。
区分 | 農地転用 |
---|---|
農用地区域(青地) | 原則不可(除外申請が必要) |
甲種農地・第1種農地 | 原則不可(例外あり) |
第2種農地 | 他の立地で代替が困難な場合に認められる可能性がある |
第3種農地 | 認められる可能性がある |
農地転用が不許可になる事例
立地基準(農地の区分)は問題ないのに、許可が下りないケースもあります。農地転用が不許可になる事例をわかりやすく紹介します。
無許可で別の用途に使用していた
無許可で農地を別の用途に使用していた場合は、農地転用を認められないだけでなく、先述の通り罰則を受ける可能性があります。
農地転用の申請は、当然ながら農地の状態のまま行う必要があります。転用許可が下りる前に住宅を建てたり別の用途で使用したりしていると、農業委員会から原状回復を行うよう求められてしまいます。
もしも、相続した土地が無断転用されていた場合は、農業委員会へ正直に内容を伝え、どのように手続き・原状回復などを進めていくべきかすみやかに確認をとりましょう。
農地法上の違反行為を行っていたことがある
過去に農地法上の違法行為があった場合は、正しい方法で農地転用の申請を進めていたとしても認められない可能性があります。
農業委員会は、農地法上の違反行為の履歴を管理しています。違反行為を繰り返していると、要注意リストで管理されることもあり、農地転用を申請しても許可が下りないことがあるのです。
農地転用の申請内容を偽装する、無許可で農地を宅地に変えるなどの行為は違反になります。
申請時に提出した事業計画通りに実行される見通しがない
農地転用の申請内容通りに事業が実施できる状態にないと判断された場合、許可は下りません。
目的なく農地転用を申請したり、事業を実施する資金繰りがうまくいっていなかったりすると、事業計画の実効性が乏しいと判断されます。また提出した事業計画が、法令による規制などで実現できない場合にも許可が下りません。
事業計画通りに実施できるという確実性が求められます。
隣接農地所有者からの承諾を得られていない
隣接農地所有者から承諾を得ていない、近隣の農家へ説明を行っていない、不十分な状態である場合、農地転用を認められない可能性があります。
農業委員会としては、農業を守る必要があるため、農業に支障が出るようなトラブルの懸念があれば許可を出すのは難しいです。近隣農家の理解が得られないなら、その区域全体の生産性に影響が出る可能性も考えられます。
農地転用手続きを進める際は、近隣の農家へ丁寧に説明し、隣接農地所有者から隣地同意書への署名を受けられるよう努力が必要です。
農地転用できない土地の主な活用方法
農地転用ができないときは、農地の売却や貸し出し、市民農園としての活用、農地集積バンクの利用といった3パターンの活用方法が考えられます。
農家に農地を売るもしくは貸す
近隣に農地を購入したい、もしくは借りたい法人や農家がいるなら、農地の貸し出しや売却を検討してみましょう。
農地を放置すると雑草などが生い茂り、荒れ果ててしまいます。再び農地として活用するためには時間と手間がかかります。農地を売却できれば、売却益を得られるほか、管理や固定資産税の負担などを負わずに済みます。
農地を売却・貸し出したいときは、まず管轄の農業委員会から許可を得る必要があります。管轄の役所に相談してみましょう。
市民農園として利用してもらう
農地の売却や貸し出しが難しい場合は、市民農園として管理運営する方法もあります。
市民農園は、市民の方が野菜や花などを栽培したり農業体験を行ったりできる施設です。農地を所有している方は、土地の状態を悪化させることなく管理運営できるほか、収益源としても役立ちます。
市民農園は、「市民農園整備促進法」「特定農地貸付法」による開設、「農園利用方式」の3パターンで開設できます。
以下にそれぞれの概要を簡単に紹介します。
市民農園整備促進法 | 市街化区域と市街化調整区域として指定されている農地が開設できる |
---|---|
特定農地貸付法 | 市民農園として開設する際、開設場所に関する制限などがない |
農園利用方式 | 法的手続きや開設場所の制限などがない |
これから市民農園の開設を検討する際は、どの方法で開設できるのかといった点をはじめ、開設の流れや必要書類・設備などについても確認しておきましょう。
農地集積バンクへ登録する
農地の売却や貸し出し、市民農園の運営も難しい場合は、農地集積バンクを検討してみるのがおすすめです。
農地集積バンクは、農地を貸したい人・借りたい人もしくは法人をつなぐサービスで、自治体によって管理運営されています。自治体が条件交渉などを行っているため、貸し手と借り手の間で交渉せずに済みます。
農地の所有者にとっては、賃料収入を得られるほか、交渉にかかる手間を省略したり借り手を見つけたりしやすいのがメリットです。
農家の場合はソーラーシェアリングがおすすめ
農地を所有している農家の場合は、農地転用ではなくソーラーシェアリングについても検討してみてはいかがでしょうか。
ソーラーシェアリングとは農業と太陽光発電を同時に実施する事業のことで、農地の上に太陽光発電の設備を設置します。農家にとっては本格的な農地転用せずに(※)収入を上げることができ、さまざまなメリットを得られます。
※設置個所の一時転用は必要です
農地転用の難しい土地でも始められる
農地転用の難しい土地でも始められるのが、ソーラーシェアリングを検討する大きなメリットです。
ソーラーシェアリングは一時転用の要件を満たせば、農用地区域(青地)などでも始められます。一時転用には、認定農業者など指定の事業者であることや遊休農地の再利用など、さまざまな要件が定められています。もちろん農業を継続することが前提であるため、ソーラーシェアリングには、通常の農地転用の許可要件も含まれています。
許可要件を満たせた場合は、農地にソーラーシェアリング用の支柱を固定し、支柱の上に架台や太陽光パネル・ケーブルなどを固定することが可能です。農業を続けながら別の方法で収入源を確保したい方などが導入を検討することが多いです。
作物を育てながら太陽光発電を行える
ソーラーシェアリングの場合は、一般的な太陽光発電事業と異なり、作物を育てながら売電・自家消費できます。
太陽光発電設備は多くの場合、地上もしくは建物の屋根に架台(土台)を固定し、架台の上に太陽光パネルを敷き詰めて設置します。一方、ソーラーシェアリングは、作物を育てるスペースを確保するために、農地に支柱を固定して、カーポートのような状態の架台の上に設置します。
太陽光パネルによって作物に当たる日照が遮られてしまうため、陰生植物(日照が少ない環境でも育つ作物)に向いています。たとえば、きのこやにら、みょうが、ふきなどが、陰生植物に該当します。
半陰生植物や陽生植物(一定の日照が必要な作物)は一定の日照が必要のため、太陽光パネル同士の隙間を空ける必要があります。半陰生植物である稲や大根、キャベツなどは陽生植物、レタスやじゃがいもなどが向いています。
売電で収入をカバーできる
ソーラーシェアリングを活用すれば、売電で収入をカバーすることが可能です。売電とは、発電した電気を電力会社へ買い取ってもらえる仕組みのことです。
農業は外的要因で左右される部分も多く、収入も変動しやすいです。ソーラーシェアリングを導入しておけば、日中に発電した電気を売電できるため、毎月数万円以上の収益を確保できる可能性があります。また、FIT制度の認定を受ければ、一定期間固定の単価で電気を買い取ってもらえます。FIT制度は、再生可能エネルギーの導入支援に関する国の制度です。
もちろん、発電した電力を自分で消費して、残った分だけ売電することも可能です。農業経営および収入面で悩んでいる方などは、ソーラーシェアリングを調べてみてはいかがでしょうか。
全量自家消費なら大幅な電気代削減効果を期待できる
電気料金負担に悩んでいる方は、ソーラーシェアリングを導入するメリットが大きいでしょう。
ソーラーシェアリングで発電した電気は、自社・自宅の設備へ供給することが可能です。十分な発電量を確保できれば、電気料金を年間数10%削減できます。また産業用蓄電池と連携すれば余った電気を貯めておき、夜間や消費電力の多い時間帯に自家消費することも可能です。
近年、電気料金の値上げが続いていますが、節電にも限界があります。ソーラーシェアリングで効率的に電気料金の削減を目指してみるもおすすめです。
農地転用できない土地でソーラーシェアリングは始めやすい!
農地転用できない土地・難しい土地は、農用地区域(青地)です。また、第1種農地や甲種農地の農地転用も原則認められていません。
農業を継続しながら農地をより効率的に活用したいときは、農業と太陽光発電を両立できるソーラーシェアリングを検討してみてください。
和上ホールディングスでは、全量自家消費型太陽光発電のご提案から設計、部材・機器調達、施工、保守運用まで一括サポートいたします。また、運用方法に関しては、地上設置型をはじめ、屋根設置型やソーラーカーポート、水上設置、ソーラーシェアリングなどさまざまな方式に対応しているのが強みのひとつです。
また弊社のグループ会社である「株式会社和上の郷」では、ソーラーシェアリングの包括的なサポートを行っています。農地転用できない土地で太陽光発電を検討している方や農業の固定費で悩んでいる方などは、少しでも気になった方は、ぜひお電話やメールよりお気軽にご相談ください。