2022年はさまざまな原因による燃料費高騰で、電気料金の値上げも相次ぎました。また新電力会社の中には、燃料費高騰の影響に耐え切れず事業撤退や縮小、倒産といった会社も出てきています。企業の多くは、新電力の倒産による影響や今後の固定費負担増加について不安を覚えているのではないでしょうか。
そこで今回は、新電力の倒産に関する状況や影響、エネルギー対策について詳しくご紹介します。新電力と契約している方や新電力の倒産に関する情報から電気料金負担について考えている方などは、参考にしてみてください。
新電力の倒産や撤退が相次いでいる
2021年頃から新電力の倒産および撤退が相次いでいて、2022年も同様の傾向です。はじめに、2022年に倒産、事業撤退、新規受付停止を行った新電力について確認していきましょう。
2021~2022年に倒産した新電力
帝国データバンクで公開されているデータによると、新電力の倒産は2021年度に増えています。2021年度の倒産件数は過去最高の14件で、初めて2ケタを記録しました。2014~2020年度の倒産件数は0~2件ほどなので、急激に増えていることがわかります。
以下に倒産した新電力の事例を紹介します。
- ホープエナジー
- あくび電気
- AGエナジー
ホープエナジーは、2021年の電力の取引価格高騰の影響を受けて2022年3月に、AGエナジーの場合は、売上低迷などの理由から2020年3月にそれぞれ倒産しました。
あくび電気の場合は、2019年12月に同サービスの契約者に対する前払い請求など、電気料金高騰以前から業績悪化およびコンプライアンス違反などが続き、2020年2月に破産手続きを行いました。また同社の創業者ら2名は、2021年5月に電子計算機使用詐欺で逮捕されるという事態に至っています。
このように新電力の倒産事例を見ていくと、燃料費高騰による影響以外にも、経営に行き詰っている企業や詐欺などの犯罪行為で事業を停止した企業などがあります。
新電力から電力の調達を検討する際は、電気料金だけでなく企業体質についても調べることをおすすめします。
2022年に撤退や新規受付停止を行った新電力
倒産だけでなく、電力事業からの撤退や契約の新規受付停止を行っている新電力は2022年から増えています。
事業撤退や廃業となった新電力は、2021年度に17件(倒産を含めると31件)と急激に増加している状況です。事業撤退の主な理由は、電力取引価格の高騰が関係しています。
以下に事業撤退や新規受付停止を行った新電力をいくつか紹介します。
- エルピオでんき
- ウエストでんき
- あしたでんき
- アンビットエナジージャパン
4社の事業撤退時期はいずれも2022年で、どの企業も電力取引価格の高騰による影響を受けていました。
楽天でんきやLooopでんきなどは、新規受付を停止しています。新電力の新規受付停止とは、新規契約を交わすことができない状態のことです。このような新電力は、新規受付停止を行うことでさらなる電力供給コストの負担を抑えようとしています。
なぜ新電力の倒産が続く?
不正による創業者逮捕といった事例を除けば、多くの新電力は電力の取引価格高騰の影響を受けています。電力の取引価格がなぜ高騰しているのか、わかりにくいという人も多いのではないでしょうか。
続いては、新電力の倒産原因でもある電力取引価格の高騰理由について確認していきましょう。
寒波による燃料費高騰
電力取引価格高騰には、寒波による燃料費の値上がりが関係しています
日本では、2020年12月中旬頃~2021年1月上旬頃まで大寒波の影響を受け、電力の急激な需要増加といった事象に見舞われました。また一部地域では、電力不足に陥ったケースもあるようです。
2020年まで卸電力市場の電力取引価格は、1kWhあたり10円未満と非常に安い単価でした。2021年12月~2022年1月の寒波の時期には、1kWhあたり100円を超える値段を記録してしまいます。
大寒波の始まった2020年12月時点では、九州電力の川内原子力発電2号機再稼働によって電力不足を免れました。しかし関西電力所有の火力発電所故障と、LNG(液化天然ガス)生産国の設備故障が重なり、電力の取引市場「JPEX」で電力の売り切れ状態および価格高騰といった状況へと変化します。
新電力の中でも自社発電設備を持たない新電力は、卸電力市場から電力を調達しなければ電力を供給できません。そのため、結果的に電力取引価格高騰の影響を強く受けてしまうのです。
ロシアによるウクライナ侵攻と経済制裁
電力取引価格の高騰につながる事象の1つは、ロシアによるウクライナ侵攻と経済制裁です。
2022年2月24日、ロシアはウクライナへ侵攻を開始し、欧米は強く非難するとともに物資や兵器の援助、経済制裁などを始めました。日本も欧米と同じく経済制裁を行っていますが、経済制裁の中にはロシアからの原油輸入停止といった内容も含まれていて、エネルギー輸入国の日本にとって厳しい状況といえるでしょう。
さらに原油の国際市場は、ウクライナ侵攻による供給不安などから価格高騰の傾向が2023年1月時点でも続いています。このような事象も日本の電力取引価格高騰につながるのです。
2022年3月に発生した地震による火力発電所の故障
電力取引価格の高騰は、ウクライナ侵攻や寒波だけではありません。
2022年3月16日、福島県沖に大きな地震が発生し、関東や東北エリアの火力発電所でも稼働を一時停止しました。中でも原町火力発電所1号機や広野火力発電所6号機、相馬合同火力の新地発電所1号機などは、破損していて復旧に時間のかかる状況でした。
火力発電所の故障は電力供給量の低下につながりますし、卸電力市場で取引されている電力価格が値上がりしてしまいます。
つまり、2022年3月の地震と2月のウクライナ侵攻、2021年の寒波による業績悪化など複合的な原因で、新電力の倒産が相次いでいるということです。
新電力の倒産で電力の供給はどうなる?
新電力の倒産や事業停止といった場合は、電力供給サービスもストップしてしまいます。そのため、すみやかに他の電力会社へ乗り換える必要があります。
電力の送配電を行っているのは、新電力ではなく送配電事業者でもある大手電力会社です。新電力の事業停止時は、サービスの停止に関する通知をメールや郵送にて行います。通知と同時期もしくはその後、送配電事業者から送電の停止日に関する連絡を受け取る流れです。
送電の停止に関する通知を受け取った場合は、期日までに他の電力会社へ切り替えなければ電気を使用できなくなります。
そのため、現在契約している新電力から事業停止の連絡を受け取った場合は、すぐに解約と他の会社への乗り換え手続きを進めましょう。
新電力の倒産で電気料金を切り替える際のポイント
新電力に関する倒産事例や原因を見ている方は、「より安定した大手電力会社へ乗り換えるか…」「業績のいい新電力へ乗り換えようか…」といった点について考え始めているのではないでしょうか。
しかし、2022年から電気料金の急激な高騰が続いているため、電力会社の乗り換えを行うと電気料金の負担増加につながる可能性もあります。次に、新電力の倒産により乗り換えを行う際、気を付けるポイントを紹介します。
自由料金プランの高騰に注意
自由料金プランから比較検討する際は、料金の高止まりに注意しましょう。
自由料金プラン(市場連動型プラン)とは、卸電力市場で取引されている電力価格の変動に合わせて料金も変化していくプランのことです。料金の設定、プランの内容などを自由に変更できるため、値下がり・値上がりしやすい側面もあります。
2020年までの電力価格が安い時期なら、自由料金プランで電気料金を安く抑えられました。しかし2022年からは、毎月値上がりしているプランも出てきています。
これから電力会社を乗り換える場合は、規制料金プランの方がいい場合もあります。規制料金プランは、値上げに上限があります。また、国の許可がなければ上限の変更ができません。自由料金プランと比較して変動の少ないプランといえます。
自社の電力使用量に合ったプランを選択する
電気料金プランは、自社の電力使用量に合ったプランを比較していきましょう。とくに新電力や大手電力会社の自由料金プランは、電気使用量や使用時間帯に応じて電力量単価を変更しています。
電気使用量が多ければ多いほど電力量料金を安くしてもらえるプランもありますし、電気使用量の少ない状況であれば安いプランもあります。
ただし高圧電力の場合は、過去12ヵ月(当月含む)の電力使用量から最も高い値を基準に料金が設定されます。電気料金負担の削減について検討している時は、省エネや再生可能エネルギー電源による自家消費などで、電力使用量の減少を目指しましょう。
新電力の倒産による影響を抑えるには自家消費型太陽光発電がおすすめ
新電力の倒産や電気料金の高騰による固定費増加といったリスクを抑えるには、自家消費型太陽光発電の設置がおすすめです。
自家消費型太陽光発電は、発電した電気を自社で消費でき、買電量を一定程度削減できます。また高圧電力の契約している場合は、デマンドピーク(30分ごとの電力使用量のうち最も高い値)をカットできるため、電気料金負担の削減につながります。
電力会社の動きに左右されず電力を調達できる
電力会社の倒産や事業停止、電気料金の値上げといったさまざまな動きに左右されず電力を調達できるのが、自家消費型太陽光発電の強みです。
自家消費型太陽光発電は、太陽光パネルで発電された電気を自社の工場や倉庫、ビル、事業所で自家消費していくための再エネ電源です。
万が一新電力が倒産したとしても、電力使用量のうち数10%程度の電力を自社でカバーしながら別の電力会社へ切り替えられます。電気料金が値上げしたとしても買電量を抑えられるので、電気料金負担を軽減することが可能です。
燃料費調整額や再エネ賦課金の負担を削減
自家消費型太陽光発電を導入した場合、燃料費調整額や再エネ賦課金の負担を減らすことが可能です。燃料費調整額は燃料調達コストの一部で、電気料金プランに含まれています。
再エネ賦課金は、FIT制度の電力買取にかかるコストの一部で、燃料費調整額と同じく電気料金プランに含まれています。
燃料費調整額と再エネ賦課金は、ウクライナ侵攻などによる燃料費価格値上げ、再エネ電源の増設による電力買取コスト負担増加で高騰しています。
そこで自家消費型太陽光発電で発電した電気を活用すれば、買電量の減少および燃料費調整額と再エネ賦課金の負担軽減につながります。
非常用電源としても活用可能
自家消費型太陽光発電は、経済効果だけでなく非常用電源としても役立つ設備です。非常用のガソリンもしくはガス式発電機は、事前に用意しておいた燃料を使い切ると発電できません。
一方の自家消費型太陽光発電は、日中に晴れていれば継続的に発電できますし、蓄電池との併用で夜間でも継続的に自家消費できます。太陽光発電設備の出力によっては、生産設備や照明などを複数稼働することが可能です。
大規模災害の際は、数日間~1ヵ月程度停電することがあります。防災対策の一環としても、自家消費型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
初期費用は補助金制度でカバーできる可能性も
自家消費型太陽光発電の初期費用は、数1,000万円~億単位のため、設置をためらう企業も多いのではないでしょうか。国の補助金制度には、再エネ電源を導入する企業向けに提供されている制度もあります。
たとえば、「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」なら、自家消費型太陽光発電の導入費用を最大50%程度まで補助してもらえます。
新電力の倒産や撤退は2023年も続く可能性あり
新電力は、主にウクライナ侵攻による燃料費高騰、寒波と発電所の故障による国内の電力取引価格高騰といった影響を受けて倒産もしくは撤退しています。また、燃料費の高騰は2023年も続くため、倒産や撤退、新規受付停止といった事象も引き続き発生する可能性があります。
新電力の倒産や事業停止に備えたい方や災害対策や電気料金高騰に対処したい方は、今回の記事を参考にしながら自家消費型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
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