グリーンスチールとは何?国内の事例についても紹介

グリーンスチールとは何?国内の事例についても紹介

脱炭素社会へ向けて国や企業では、さまざまな取り組みを行っています。グリーンスチールも脱炭素関連の取り組みのひとつで、2008年頃から国内で始まっています。しかし、メディアなどで取り上げられる事例の少ない用語なので、どのような取り組みなのかよくわからないかと思います。

そこで今回は、グリーンスチールの特徴や必要性、事例について詳しくご紹介します。脱炭素社会に向けた取り組みに関心を持っている方や、自社で取り組めるCSR活動や脱炭素経営を知りたい方などは、参考にしてみてください。

グリーンスチールとは?

グリーンスチールは、製造過程で温室効果ガスを排出しない、もしくは排出量の少ない鉄を指しています。

温室効果ガスは、二酸化炭素やメタンガス、一酸化二窒素など大気中に含まれるガスで、太陽から降り注がれた光の中にある赤外線を吸収します。また温室効果ガスの排出量が増えると、地球温暖化などの気候変動につながるとされています。

そのため、グリーンスチールの製造および採用企業が増えれば、脱炭素および気候変動問題を改善できると考えられています。

なお、温室効果ガスの少ない・排出しない方法で製造された金属は、グリーンメタルと呼ばれています。またグリーンメタルは、グリーンスチールの他、グリーンアルミニウムやグリーンステンレスなど、さまざまな種類に分かれているのが特徴です。

グリーンスチールが必要な理由

グリーンスチールの意味を把握したあとは、なぜグリーンスチールを含むグリーンメタルが必要とされているのか、その理由を確認していきましょう。

温室効果ガスの削減に鉄鋼も大きく関係している

鉄鋼製品の製造方法は、温室効果ガスに関係しています。日本を含む世界では、地球温暖化や気候変動問題に向けてさまざまな政策や支援制度を進めています。

中でも温室効果ガスの削減は、地球温暖化対策において重要な取り組みです。温室効果ガスは、さまざまな場面で発生しています。特に鉄鋼は、土木だけでなく自動車や造船、工作機械などさまざまな業界で必要とされているため、大量製造と同時に二酸化炭素も大量に排出されていることになります。

鉄鋼の製造過程で排出される二酸化炭素を抑えることができれば、気候変動問題の改善につながります。そのため近年、グリーンスチールが重要視されているのです。

国内の二酸化炭素排出量は鉄鋼業が40%以上占める

国内における二酸化炭素排出量の40%以上を占めているのが鉄鋼業です。また日本は世界第3位の鉄鋼生産量でもあり、日々大量の二酸化炭素が排出されています。

日本の場合は2050年のカーボンニュートラル達成目標むけて、脱炭素化のためのさまざまな取組みを始めなければいけません。

そこで国内でもグリーンスチールを普及させることができれば、カーボンニュートラルを達成できる可能性があります。そのため鉄鋼産業では、グリーンスチールやグリーンメタルの取り組みを始めている状況です。

民間企業のグリーンスチール製造事例については、後半で紹介します。

グリーンスチールの製造方法

直接還元法(直接製鉄法)は、グリーンスチールの製造方法として注目されており、また国内で研究開発が進んでいる方法です。

鉄を製造するには、材料の鉄鉱石から不純物である酸素を取り除かなければいけません。

鉄鋼の一般的な製鉄方法は、間接還元法という方法です。鉄鉱石とコークスを高炉(鉄溶鉱炉)へ入れると、鉄鉱石に含まれる酸素が取り除かれます。しかし、コークスの燃焼時に大量の二酸化炭素と一酸化炭素が排出されてしまいます。

一方、直接還元法は、天然ガスを活用して鉄鉱石から酸素を取り除きます。あとは電気で加熱を行う電炉を使って鉄を製造する仕組みです。

コークスを使用しないため、二酸化炭素の排出量を抑えられるのが特長です。

なお国内では、天然ガスを用いた還元方法の他にも、電炉で酸素の除去(還元)までを行う方法や、高炉と水素を用いた方法についても研究開発が進んでいます。

世界のグリーンスチール事例

ここからは、世界のグリーンスチールに関する製造や研究事例を紹介します。

ヨーロッパ

大手鉄鋼メーカーのアルセロール・ミタルは、水素を用いた直接還元法で鉄の製造ができる製鉄所をドイツに建設しています。2025年末までに稼働する予定で、脱炭素化に向けた大きなプロジェクトといえます。

スウェーデンの鉄鋼メーカーSSABでは、鉄鋼メーカーのLKAB、Vattenfall(バッテンフォール)と共同でHYBRIT パイロットプラントを立ち上げ、水素ガスから鉄鉱石の還元および製鉄に関する研究を進めています。

このようにヨーロッパの各鉄鋼メーカーは、直接還元法に関する研究開発に取り組んでいる状況です。また、2025年前後の商用生産を目指しています。

出典:経済産業省ウェブサイト

アメリカ

アメリカの大手鉄鋼メーカーであるU.S. Steelは、直接還元法に必要な電炉工場を建設しており、2024年に稼働予定です。

また2021年には、グリーンスチール製造に向けてアーカンソー州のスタートアップ企業Big River Steelを買収しました。同企業は電炉などの設備を所有しています。これによりU.S. Steelは、設備投資の負担を抑えながらグリーンスチールを効率よく製造することが可能になります。

出典:経済産業省ウェブサイト

アジア

中国の粗鋼生産量大手の宝武鋼鉄集団は、水素還元の研究開発を始めています。また精華大学や中国核工業集団公司と共同で、水素還元の研究も行っている状況です。

今後は、年間の鉄鋼生産能力100万トンクラスの直接還元可能なプラントを建設し、2024年に稼働を始める予定です。また15年以内にグリーンスチールの商用生産を目指し、ヨーロッパやアメリカと同じく積極的に水素還元・直接還元法に関する投資を行っています。

出典:経済産業省ウェブサイト

国内のグリーンスチール動向

続いては、国内のグリーンスチールに関する動向をわかりやすく紹介していきます。

グリーンスチールの調達を検討する企業

国内企業の中には、グリーンスチールの調達を検討し始めている企業も出てきています。

トヨタでは、自社工場における二酸化炭素排出量を、2035年までにゼロにする目標を定めています。また2022年6月には神戸製鋼所で製造されているグリーンスチールを採用し、水素エンジンカローラへ用いる予定です。

他にも日産は、神戸製鋼所のグリーンアルミニウムやグリーンスチールを自動車部品として用いることを2022年12月に発表しました。

トヨタなどの大手メーカーがグリーンスチールを採用したことで、他の企業も導入し始める可能性があります。

金属製品を扱う企業は、グリーンスチールやグリーンメタルについて情報を集めておくことが大切です。

グリーンスチールの製造方法に関する開発

日本製鉄株式会社や株式会社神戸製鋼所、JFEスチール株式会社では、2030年までに水素を用いた還元方法で、二酸化炭素排出量の30%以上の削減を目指しています。

同方法は、高炉にコークス、水素ガスと鉄鉱石を投入し還元します。その際に発生した高炉ガスは、専用の設備で二酸化炭素と分離および回収する仕組みです。

他にも日本製鉄株式会社、JFEスチール株式会社、一般財団法人金属系材料研究開発センターは、水素のみを用いて鉄鉱石から酸素還元を行う技術を研究しています。また2030年までに、間接還元法と比較して、二酸化炭素排出量の50%以上の削減を目標としているのが特徴です。

このように国内企業では、水素による還元や、水素と高炉による還元技術を実用化させるための研究開発を進めています。

グリーンスチールの課題

グリーンスチールは環境に配慮された鉄ですが、さまざまな課題も残されています。

直接還元法は、二酸化炭素排出量を抑えられるものの、間接還元法(高炉製鋼法)よりも不純物の除去が難しい加工方法です。またエネルギー効率が低いため、製造コストという点で課題もあります。

水素を用いた還元方法の場合は、グリーン水素を用いなければ脱炭素化できません。既存の水素は、化石燃料を蒸気メタン改質させて水素と二酸化炭素に分離させます。二酸化炭素は空気中に放出されるので、水素を製造すればするほど環境負荷も増えることになります。

そこで水素を製造する際は、二酸化炭素の吸収・回収技術を導入、もしくは再生可能エネルギーを使用して水を電気分解することが重要になります。

グリーンスチールは鉄鋼を活用・製造する企業にとって重要!

グリーンスチールは、鉄鋼の製造および調達している企業にとって注目すべき技術です。鉄を製造する際、二酸化炭素の排出量ゼロもしくは削減できます。

ただし、脱炭素経営を検討している企業の中には、鉄をはじめとした金属を活用しない、脱炭素化のハードルが低い方法もないか模索中の企業も多いかと思います。

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