街中にある電柱には「高圧受電設備」が設置されています。受電設備は、電力会社から送電された高圧電流を、ご家庭や工場などで使用できるように低圧に変換する装置です。また、安全な送電を行なうためには、受電設備の高圧カットアウト(PC)が欠かせません。高圧カットアウトとはどのようなものなのでしょうか?今回は高圧カットアウトについてわかりやすく解説していきます。
高圧カットアウトの役割とは?
高圧カットアウトとは、小型の開閉器のことです。役割として、以下の2点があります。
- 電気を遮断する
- 変圧器やコンデンサの過負荷を保護する
高圧カットアウトを利用することで、感電事故が防げます。なぜなら、下流の機器が故障した際に、上流の機器に流れる事故電流を遮断する機能があるからです。次に高圧カットアウトの仕組みと寿命について解説します。
高圧カットアウトの仕組み
高圧カットアウト中でも、メジャーな型である箱型カットアウトは、基本的に3つのパーツで構成されています。
- 本体
- 蓋
- ヒューズ/ヒューズリンク
絶縁性の高い磁器で作られた蓋を開けることで、回路を開放します。
ヒューズ/ヒューズリンクは、下流配線が短絡した際に短絡電流を遮断するために組み込まれています。また素通し線を用いることで、アレスター(避雷器)の一次側断路器としても利用できます。
高圧カットアウトの寿命
JIS規格において、高圧カットアウトの寿命は15年とされています。
ただし、実用における耐用年数は20年前後です。法定耐用年数は、実用耐用年数と比べるとやや短めに設定されることが多いです。大きな事故電流もなく、正しく定期メンテナンスできれば、長期間使用できるでしょう。
高圧カットアウトの形状と種類
高圧カットアウトには、複数の形状と種類があります。それぞれ目的や用途が異なるので、使い分けが必要です。高圧カットアウトを使用する場所や接続する機器によって選択しましょう。
高圧カットアウトの形状
高圧カットアウトの形状は以下の2種類です。
- 箱型カットアウト
- 筒型カットアウト
それぞれ順番に解説します。
箱型カットアウト
箱型カットアウトは、磁器製の本体と蓋で構成されています。ヒューズは蓋の内側に取り付けられており、ヒューズから赤色の溶断表示が飛び出すことで溶断の有無を判断できます。需要家のキュービクルや電気室に使用されることが多く、また電力会社でも利用されているため、広く普及していると言えるでしょう。
屋内用や屋外用など幅広いタイプがあります。
筒状カットアウト
筒状カットアウトは、縦に長い円筒状です。屋外用に特化しており、筒型のため雪が乗らない、耐震性が高いというメリットがあります。このメリットを活かし、電柱や電鉄用給電線に多く利用されています。
また、ヒューズが溶断すると筒が下がる仕組みのため、夜間でも判断しやすいという特徴があります。
高圧カットアウトの種類
高圧カットアウトは以下の4種類です。
- ダブルヒューズ型
- 耐震型
- 耐塩型
- 円筒型
それぞれ順番に解説します。
ダブルヒューズ型
ダブルヒューズ型の高圧カットアウトは、内部に限流ヒューズ(短絡電流を遮断するヒューズ)が2つ取り付けられています。再閉路形ともいいます。
一段目のヒューズが溶断した場合に、二段目のヒューズが自動的に接続するのが特徴です。落雷などにより一時的に過電流が発生した場合でも、停電を防ぐ機能があります。
耐震型
耐震型の高圧カットアウトは、一般的なカットアウトよりもヒューズや蓋が強固に作られています。そのため振動に強く、振動に対して刃が外れないよう配慮された構造になっているのが特徴です。
多くの場合、クレーンの上や鉄道付近など、振動の影響を受けるおそれがある変電設備で使用されます。そのため、一般の需要家の場合では選定する必要はないと考えられており、ほとんど採用されていません。
耐塩型
耐塩型の高圧カットアウトは、一般的なカットアウトと同じ形状、操作性のままで、耐塩機能を高めています。
カットアウトの表面に塩分が付着した際の耐電圧値などを汚損特性と呼びますが、この汚損特性が高いのが耐塩型カットアウトの特徴です。内部の構造は一般的なカットアウトと同じです。唯一の違いは配線入線口や蓋の接合部に塩分侵入防止を目的としたパッキンが付いていることです。
海辺などの塩害発生地域で多く使用されています。
円筒型
円筒型の高圧カットアウトは、円筒ガラスの内部にヒューズが取り付けられているカットアウトで、円筒の下部から限流ヒューズを引き抜けるのが特徴です。視認性が高く、原因箇所を発見しやすいメリットがあります。
主に電車への給電や、柱上変圧器の保護に利用されています。
【高圧カットアウト】ヒューズとは?
ヒューズとは、配電設備や一般高圧需要家受電設備などに使われる機器で、変圧器の過負荷保護や短絡保護を行うのが目的です。下流配線が短絡した際にヒューズ自体が溶断することで、回路を遮断するよう働きます。
家庭や工場などにおける電力需要量は増大の傾向にあり、電力供給の信頼度の必要性も高まっています。そのため、ヒューズについても性能の信頼性が重要です。機器に合わせてしっかりヒューズを選定し、正しく取り扱ってください。
【高圧カットアウト】ヒューズの違い
高圧カットアウトに内蔵されているヒューズには、以下の2種類があります。
- 限流形
- 非限流形
それぞれ順番に解説します。
限流形
限流形は、主にコンデンサの保護に使用されるヒューズです。回路に流れる故障電流を限流遮断することから、限流形と名付けられています。ヒューズ溶断時にアーク抵抗を発生させ、短絡電流の立ち上がりを半サイクルで遮断する仕組みです。短絡電流が最大値になる前に回路を遮断する機能があるため、電路の保護用に最適です。
非限流形
非限流形のヒューズは、アーク放電を消滅させるための消弧ガスを吹き付け、アークエネルギーが最小になる電流零点の極間絶縁耐力を再起電圧(短絡解除後にコンデンサ端子に再度電圧が発生すること)以上に高めて遮断を行います。ただし、限流形ヒューズと比べて遮断容量は大きくありません。
なお非限流形には2つのタイプがあり、それぞれに用途が異なります。
- 速動ヒューズ
- 遅動ヒューズ
速動ヒューズ
速動ヒューズは、主に変圧器の短絡保護として一般的に使用されているヒューズです。溶断が早いのが特徴で、多くの場合でコンデンサや変圧器二次側の短絡保護に用いられています。過電流に対して迅速に働くため、過電流発生と同時に退路遮断が完了することから、高い安全性が期待できるでしょう。テンションヒューズとも呼ばれます。
遅動ヒューズ
遅動ヒューズは主に過負荷保護に利用されます。ヒューズエレメントに即時溶断しない合金を組み合わせて溶断時間にタイムラグを持たせており、突入電流(電源を入れた際に流れる定常電流値を超えた電流)や始動電流で溶断しないのが特徴です。そのため、長時間にわたる過電流に対する保護に適したヒューズと言えます。変圧器の二次側の短絡保護や、電動機の保護に用いられます。タイムラグヒューズとも呼ばれます。
電力会社側の高圧カットアウトが発電を止めることがある
電力会社側の高圧カットアウトが発電を止めることがあります。ここでは、太陽光発電で発生したトラブル例を紹介します。
いくつかの低圧太陽光発電所が隣接している中で、2つの区画で遠隔監視システムが異常を検知しました。
担当者が現場に駆け付けたところ、連系点の電力量計が停止していました。また、系統の電圧も極端に低い状態でした。状況からすると、低圧太陽光発電所は送電だけでなく受電も止まってしまっていたようです。
異常が発生した2つの区画では、パワーコンディショナーも全て停止していました。系統側に異常が生じれば、パワーコンディショナーの安全機能が働いて稼働がストップする仕組みです。
つまり、異常が発生したのは「電力系統側」ということが考えられます。改めて担当者が周囲の状況を確認したところ、連系先の電柱に取りつけられている高圧カットアウトのヒューズが溶断していました。
電柱には高圧カットアウトが2つ取り付けられていましたが、ヒューズが溶断していたのは1つでした。高圧カットアウトは高圧配電路や変圧器の一次側の開閉のほか、過負荷の保護に利用されています。短絡防止や過負荷の保護のため、高圧カットアウトの中のヒューズが溶断すると筒が下に落ちる仕組みとなっています。今回は筒が下に落ちていたことから、電力系統側に原因があることが発覚しました。
ヒューズ溶断の発覚後、担当者は連系先の一般送配電事業者に連絡を取り、復旧を依頼しました。電力会社側の復旧を待ち、太陽光発電所のパワーコンディショナーを再連系したのち、最終的に遠隔監視システム上で発電の再開を確認し、トラブル対応は完了となりました。
【まとめ】高圧カットアウトは和上O&Mサービスへ
本記事では、高圧カットアウトについて解説しました。高圧カットアウトには複数の形状や種類があり、それぞれの機能が異なります。また、ヒューズについてもいくつかの種類を紹介しました。高圧カットアウトの役割についてご理解いただけたでしょうか。
なお、前項で紹介したトラブルに対応した会社は、太陽光発電の施工実績もある電気設備工事会社です。
O&Mサービスは原因分析だけでなく、その場で不具合の原因を解消する対応も可能です。
今回のトラブルは遠隔監視システムの導入や日々の監視により発見できた事例となります。O&Mサービスがしっかり監視していないと、電力会社から状況が指摘されるまで発覚が遅れる可能性があります。最長1ヵ月間程度、発電をロスする可能性も出てきてしまうので、信頼できる業者にO&Mサービスを依頼することが大切です。
良いO&Mサービス業者であれば、遠隔監視で即座に原因を発見し、速やかなトラブル対応が期待できるでしょう。
創業30年の和上ホールディングスでは、多数の全量自家消費型太陽光発電に関する企画から設計、設置工事、運用保守までトータルサポートしています。
お客様のご要望やご予算に応じて、設置方法(地上設置、屋根設置など)や太陽光パネルの枚数、メーカー、太陽光パネルの設置角度など、さまざまな点から提案させていただきます。
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