太陽光発電投資を行う際は、さまざまなリスクによる劣化に備える必要があります。中でも塩害は、太陽光発電設備に大きな影響を与えてしまいます。しかし、「塩害って何?」「塩害による具体的な影響がわからない」などの疑問を抱いている方も多いかと思います。
そこで今回は、塩害の意味やリスク、塩害の太陽光発電への影響や対策について詳しくご紹介します。塩害リスクについてよくわからない方や太陽光発電と塩害の関係について把握しておきたい方などは、参考にしてみてください。
塩害とは何?
日本は海に囲まれた島国のため、海岸からの距離が近い場所も多くあります。そのような場所では、海の水の塩分を含んだ潮風などの影響により、さまざまな塩害が発生しているのです。
塩害は何にどのような影響を与えるのかを説明します。
水中に含まれる塩が風に乗って物や建物に付着
塩害とはその名のとおり、海の水に含まれている塩による被害のことです。沿岸部などでは直接海水が当たることでも影響が出ますが、潮風など海水の塩分を含んだ風が、物や建物に付着することでも被害をもたらします。
塩分の影響により、植物などの農作物は水分が奪われ枯れてしまったり、建築物や設備などは腐食や劣化が早まったりする可能性もあります。
また塩分を含んだ土壌が原因で、同様の被害が発生することもあります。太陽光発電の設備も例外ではありません。
沿岸からの距離で塩害の度合いが変わる
太陽光発電において、潮風などによる塩害を受ける地域は「塩害地域」と呼ばれています。地域や海岸からの距離により塩害の度合いは異なり、「岩礁隣接地域」「重塩害地域」「塩害地域」の3段階に分けられています。
岩礁隣接地域
- 全ての地域において、海水などの波しぶきが直接当たる場所
重塩害地域
- 全ての地域において、海岸から500m以内の場所
塩害地域
- 北海道・東北日本海側:海岸から500m〜7km以内
- 瀬戸内海:海岸から500m〜1km以内
- 沖縄・離島:海岸から500m〜7km以上
- その他の地域:海岸から500m〜2km以内
塩害による太陽光発電への影響
太陽光発電の設備も塩害による影響を受けることがあります。各設備の塩害による影響は以下のとおりです。
太陽光パネル
太陽光パネルについては、現在各メーカーで開発が進んでいます。塩害地域に設置できる製品も多数販売されており、このような製品ではパネル部分の素材が塩分の影響を受ける心配は低いでしょう。
しかし長期にわたり潮風などにさらされた場合、樹脂部分が劣化したり、わずかな隙間から塩分が内部に入ったりすることで、配線や金属部分が錆びるなどの塩害を受けるおそれがあります。
目視ではすぐに判別できない内部の配線が塩による影響を受けると、発電量の低下にもつながります。
また、塩害地域に設置が可能な太陽光発電設備であっても、メーカーにより保証内容は異なります。場合によっては、塩害による被害の場合には保証対象にならないケースもあるため、太陽光発電の導入時には事前にしっかりと確認をしておくことが重要です。
パワーコンディショナ
パワーコンディショナは、太陽光発電で発電した直流電流を、家の中で使用できる交流電流に変換・調整を行います。太陽光パネルと同様に、太陽光発電では欠かすことのできない重要な設備です。
外箱やネジ・配線など、スチール素材の金属部分は塩害による影響を受けやすく、腐食・錆などによる劣化が起こりやすくなります。
パワーコンディショナは精密機械であり、正常に作動しないと太陽光で発電した電気を使用することができません。そのため塩害地域では、被害にあわないように屋内への設置の検討も必要です。
架台
架台とは、太陽光パネルなどの設備を取り付けるための構造物のことを言います。太陽光発電を長年にわたって使用するには、重量のあるパネルを支える架台の耐久性もとても重要です。
架台には、アルミニウム、スチール、ステンレスなどなどの金属が使用されており、塩害による錆や腐食の影響を受ける可能性が高いと言えます。
さらに錆や腐食が原因となって太陽光パネルに歪みなどが生じると、発電量が低下したり、パネルが破損・落下したりするなど、重大な被害をもたらす場合もあります。
その他周辺機器
太陽光発電の設備には、太陽光パネルやパワーコンディショナだけでなく、機器を繋ぐケーブルやコネクタなど、さまざまな周辺機器があります。これらの機器も、潮風などによる湿気や塩害の影響を受ける可能性が十分にあります。
太陽光発電を塩害から守るには?
太陽光発電の設備を可能な限り良好な状態に保ち、長期間にわたって発電を継続できるようにするには、塩害対策を行うことが必要です。
太陽光発電の設備における塩害対策について詳しく説明します。
塩害地域から離れた場所で太陽光発電を設置
当然のことながら、海岸から離れれば離れるほど、潮風などの影響を受けにくくなります。そのため太陽光発電の設備を塩害から守るには、塩気を含んだ潮風などが届かない場所に設置することが最良の対策です。
これから太陽光発電への投資を検討している方は、海岸付近などの塩害地域から離れた場所に設置することをおすすめします。
絶縁部分を強化して劣化対策を施す
物質には、金属のように電気を通しやすいものと、ゴムやプラスチックのように電気を通しにくいものがあります。この性質を利用し、電気を通しにくい物質で電気の流れを遮るのが絶縁です。
太陽光発電の設備では、本来電気が流れるべき場所以外に漏れるのを防ぐため、絶縁を施している部分が多くあります。
このような部分は塩害の影響も受けやすいため、シリコーンコンパウンドの塗布や耐塩ガラスの使用などで対応することがあります。絶縁部分を強化することで、劣化だけでなく塩害への対策としての効果も期待できます。
防錆対策を施す
太陽光パネルをはじめ、パワーコンディショナの配線や外箱、架台や周辺機器のフレームや接続部分のナットやネジなど、太陽光発電設備のさまざまな部分でアルミニウムやスチールなどの金属が使われています。
金属は潮風などによる塩の被害を受けやすいため、このような部分は腐食や錆などによる劣化が早まる可能性が高いと言えます。
それを防ぐためには、金属を塩分や水分に直接触れないようにすることが重要です。それぞれの金属の特性に合わせた的確な塗料を塗るだけでも、防錆対策になります。
定期的に設備点検や塩の取り除き作業を行う
塩害により、太陽光パネルの発電量が低下することがあります。さらに、腐食や錆などの劣化が架台に生じて耐久性が下がると、パネルの破損や落下といった重大な事故に繋がるおそれもあります。
太陽光発電を長期間良好な状態で継続させるためには、設備を定期的に点検することがとても重要です。
また、塩が蓄積して設備に影響が出る前に、純水などを使って定期的に塩分を洗い流すなど、塩を取り除く作業も必要となります。
塩害地域で太陽光発電を始めるメリットはある?
沿岸部での太陽光発電は、潮風などによる被害を受けやすい環境です。しかしその一方で、日光を妨げる建築物や木々が少ないなど、太陽光発電にとって重要な日照条件が比較的良好だと言えます。
日照条件が良いということは、他の地域よりも高い効率で太陽光発電が可能であるため、その点においてはメリットとなるでしょう。
ただし、劣化や故障につながる塩害への対策が不可欠だということを覚えておいてください。
太陽光パネルや周辺機器メーカーの塩害対策
日本は島国のため沿岸部がとても多く、塩害の影響を受ける地域も多くなっています。そのため太陽光パネルや周辺機器のメーカーも、新しい技術を用いるなど、塩害対策に力を注いでいます。
メーカーではどのような塩害対策が行われているのかを紹介します。
太陽光パネルメーカーでは塩害対策パネルも製造
太陽光パネルを製造しているメーカーは数多くありますが、そのほとんどで塩害を受けにくい太陽光パネルも製造しています。
たとえば耐候性や耐湿性、密封性に優れた3層構造パックフィルムや、白板熱処理ガラスと呼ばれる強化ガラスを採用している製品もあります。
このほか、通常の製品が既に塩害地域でも対応可能であったり、塩害地域専用のパネルや架台が別に用意されていたりするなど、メーカーによってさまざまです。
オムロンなどではパワーコンディショナに塩害対策
太陽光パネルと同様に、パワーコンディショナへの塩害対策を行なっているメーカーも多数あります。
オムロンでは、配線部分のジョイントの美観を保ちながらも防水性を確保するなど、防塵・防水の高い保護構造となっていたり、取付金具には高性能塗料を使用したりするなど、防錆性の高いパワーコンディショナを販売しています。
太陽光発電では塩害対策が重要!
太陽光発電を長期にわたり良好な状態で発電を続けていくためには、太陽光パネルやパワーコンディショナ、周辺機器などさまざまな設備に塩害対策を行うことが重要です。
また、塩害による腐食や錆などでの発電量の低下や、設備劣化による故障や破損・落下などの重大な事故が発生しないよう、定期的な点検や塩を取り除くなどのメンテナンス作業が大切となります。
既に塩害地域に太陽光発電を設置している場合、想定していたよりも点検やメンテナンスなどの塩害対策に労力や費用を割かれ、対応に苦慮している方がいるかもしれません。
太陽光発電を設置したものの塩害対策などでお悩みの場合には、太陽光発電の売却を検討することも可能です。
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