太陽光発電の法定耐用年数とは?蓄電池やパワコンについても解説

太陽光発電の法定耐用年数とは?蓄電池やパワコンについても解説

再生可能エネルギーのひとつとして、太陽光発電の導入が推奨されている昨今。企業やご家庭共に、導入数は増加傾向にあります。一方で、税務上での太陽光発電設備における法定耐用年数を理解している方は少ないのではないでしょうか?この記事では太陽光発電における法定耐用年数についてわかりやすく解説していきます。

【太陽光発電】国税庁の「法定耐用年数」とは?

国税庁の「法定耐用年数」とは、通常の用途で対象資産を使用し続けることができると国が判断し、定めた期間のことです。そのため太陽光発電の法定耐用年数は、太陽光発電設備が通常的に問題なく使用できる期間のことを指しています。

太陽光発電などの固定資産は、時間の経過とともに価値が低下し、最終的には資産価値が失われます。

対象資産の使用開始から資産価値喪失までの期間を法定耐用年数として、年で分割して経費計上が可能です。例として法定耐用年数3年の場合、3年間に分割して減価償却費を経費計上できます。

法定耐用年数は対象資産によって年数が変化するため、取得資産の法定耐用年数を把握しておくことが大切です。

【法定耐用年数】と【耐用年数】の違い

法定耐用年数と耐用年数の違いについて解説します。

法定耐用年数とは、建物や機械、車両などの固定資産を通常使用できる期間として国が定めた年数のことで、「一定の期間により対象資産の価値が喪失する」年数を指します。

一方、耐用年数とはメーカーなどが公表している製品寿命のことです。データや計算などから推定した年数であり、法的な決まりはありません。

そのため資産を減価償却費として経費計上する際は、メーカーによる耐用年数ではなく、法定耐用年数に基づいて計算する必要があります。

法定耐用年数が定められている理由

法定耐用年数が定められている理由は、税金の公平性を保つためです。法定耐用年数を納税者が決めてしまうと、各納税者によって税額が変化してしまいます。

例えば年商1,000万円の企業が300万円の機械を法定耐用年数1年で減価償却した場合、課税される対象は700万円です。

一方、同様に年商1,000万円の企業が300万円の機械を法定耐用年数3年で定額法により減価償却した場合、課税される金額は1年目900万円、2年目800万円、3年目700万円となります。

使用できる期間を納税者が決めてしまうと、納税者の判断で課税額が変動してしまい、税金の公平性が保てません。法定耐用年数が定められることで、納税者全員の税負担が平等になるだけでなく、納税者の正しい決算書の作成やそれに伴う計算などの面倒さも軽減できます。

事業用なら確定申告で減価償却ができる

太陽光発電は、事業用と一般家庭用の2種類に分けられます。事業用の太陽光発電であれば、確定申告で減価償却ができます。

太陽光発電は減価償却資産の対象となるため、減価償却費として経費計上が可能です。太陽光発電で作った電気を売電している場合、売上から減価償却費として経費を差し引けます。

減価償却費で経費計上できれば節税金額も大きくなり、利益を大きく残すことが可能です。

一方、一般家庭用の太陽光発電は発電量も限られており、自家消費も行うため減価償却費として経費計上ができない場合があります。

確定申告は、所得が20万円を超える際に必要な申請です。一般家庭用の太陽光発電は発電量の少なさや自家消費する点から、確定申告が必要な20万円に達しない可能性があります。

太陽光発電を事業用として売電目的で使用している場合は、確定申告で減価償却費として経費計上しましょう。

【今さら聞けない】減価償却とは?

減価償却は「時間経過とともに価値が減っていく」という考えのもと、資産を毎年分割して経費計上する会計処理です。太陽光発電や建物、車両などは、時間経過とともに資産価値が低下します。

そのため購入時に一括で経費計上せず、対象資産の耐用年数に応じて毎年経費計上するルールとなっています。

減価償却による毎年の経費計上は、正しい経営状態を決算書に反映させることも可能です。

例えば、太陽光発電設備を購入した年に一括で経費計上すると、1年目だけ大きく赤字決算となり、2年目以降は黒字決算となります。

購入後も使用し続ける資産を購入した年だけに計上してしまうと、1年目だけ売上が大きく減ってしまい、決算書に正しい経営状態を表せません。経費計上を分割する減価償却は、正しい決算書作りにも役立ちます。

太陽光発電の法定耐用年数はどのくらい?

国税庁が定める太陽光発電の法定耐用年数は、9年または17年の2種類が示されています。「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によると、原則として太陽光発電設備は「電気業容設備 その他の設備 主として金属製のもの」に含まれ、法定耐用年数は17年です。

法定耐用年数17年が適用されるのは、「売買目的」で太陽光発電を使用する場合です。

売買目的を使用用途とする具体例は、太陽光発電事業者や副業サラリーマンなどです。一方、売買目的以外の太陽光発電は法定耐用年数が17年ではありません。売買目的以外の太陽光発電については、後ほど解説します。

【太陽光発電】蓄電池/パワコンの法定耐用年数

太陽光発電を使用する上で、減価償却の対象になる資産は太陽光発電設備のみではありません。太陽光発電設備以外にも、10万円以上の費用がかかるものは減価償却の対象となります。

減価償却費として経費計上する法定耐用年数は、対象資産ごとに分かれているため、太陽光発電以外の付随設備についても年数を確認しましょう。

こちらでは蓄電池とパワコンの法定耐用年数を解説します。

蓄電池の法定耐用年数は6年

国税庁によると、太陽光発電の蓄電池の法定耐用年数は6年です。実際のところ蓄電池の寿命は10〜15年程度で、法定耐用年数とは差があります。法定耐用年数はあくまでも減価償却する基準として定められていると認識しましょう。

税務上では、蓄電池は6年で資産価値がなくなると判断されていることを覚えておいてください。

パワコンの法定耐用年数は10~15年

国税庁によると、パワコン(パワーコンディショナー)の法定耐用年数は17年です。パワコンは太陽光発電設備と一体となって発電や送電する自家発電装置であることから、太陽光発電設備と同じ法定耐用年数である17年が適用されています。

一方、パワコンの寿命は10〜15年で、冷蔵庫や電子レンジなどの電化製品と同程度です。

【太陽光発電】フェンス/架台の法定耐用年数

太陽光発電は、蓄電池やパワコン以外にもフェンスや架台などの付随設備が必要です。フェンスや架台に10万円以上の費用が発生した場合は、減価償却資産の対象となります。

フェンスや架台の法定耐用年数は、太陽光発電と同様に17年または10年に分かれているため、詳しい法定耐用年数を見ていきましょう。

ソーラーフェンスの法定耐用年数10年

国税庁によると、ソーラーフェンスの法定耐用年数は10年です。太陽光発電周辺への侵入防止用としてFIT法で設置が定められているソーラーフェンスは、減価償却資産耐用年数表では「構築物 金属製のもの 塀」に該当します。

ソーラーフェンスは10年で資産価値が無くなると判断されていますが、実際の寿命は20〜25年程度です。

架台の法定耐用年数は17年

太陽光パネルを支える架台は、法定耐用年数17年です。パワコンと同じく、架台は太陽光発電と一体のため、太陽光発電設備と同様の法定耐用年数が適用されています。

架台、メーカーの10年保証が付いている場合が多く、寿命も25年程度と太陽光発電の使用中は壊れない可能性が高いと考えられます。

自家消費型太陽光発電の法定耐用年数

自家消費型太陽光発電の法定耐用年数を解説します。売買目的の太陽光発電と違い、作った電気を自家消費する太陽光発電は、法定耐用年数が17年ではありません。

売買目的以外の法定耐用年数は17年より短くなる場合があるため、目的別の事例を詳しく見ていきましょう。また、法定耐用年数と太陽光発電の寿命についても一例を交えて解説します。

自家消費用太陽光発電では目的によって異なる

自家消費用太陽光発電は、使用目的によって法定耐用年数が変化します。「売買目的」として太陽光発電を使用する場合、法定耐用年数は17年です。しかし売買目的以外で太陽光発電を使用する場合、17年より短くなることがあります。

国税庁が公表している事例では、自動車製造会社が自動車を製造するための設備として太陽光発電を稼働させている場合、法定耐用年数は9年という見解が示されました。

その理由として、太陽光発電の目的は「売電」ではなく「自動車製造」であり、太陽光発電が「輸送機械器具製造業用設備」に分類されたためです。これにより法定耐用年数9年が適用対象と判断されます。

別の事例で見てみると、農業者が自家消費用太陽光発電で発電した電気を農業設備に使用した場合、太陽光発電は「農業用設備」に含まれ、法定耐用年数は7年が適用されるということです。

自家消費用太陽光発電の法定耐用年数が判断できない場合は、税理士や税務署に相談しましょう。

太陽光発電自体の耐用年数は約20~30年

太陽光発電の耐用年数は、20〜30年程度とみなされています。なぜなら、太陽光発電は2009年の「余剰電力買取制度」が施行されてから普及し始めたため、20〜40年間にわたって使用されたデータがあまりないからです。

メーカーや太陽光発電事業所は、あくまでも計算上で耐用年数を20〜30年程度と判断しています。

一例として、京セラのソーラーパネルを使用している佐賀県の「佐賀ソーラーセンター」やシャープ製のソーラーパネルを使用している「壷阪寺」では、35年以上稼働を続けている実績があります。

長期の稼働を続けている住宅用太陽光発電では、大阪の「桑野太陽光発電所」が有名です。桑野太陽光発電所は、1992年に設置されてから30年以上も稼働し続けています。

太陽光発電は公式のデータが十分に揃っていませんが、このように30年以上使用されている例もあります。しかしこの数値は、あくまでも常日頃から保守点検やメンテナンスを実施していることが前提です。太陽光発電を長期運用させたい場合は、定期的な点検やメンテナンスを実施するようにしましょう。

太陽光発電の法定耐用年数に関するまとめ

太陽光発電は、国が定めた使用期間である法定耐用年数が決まっています。それぞれの資産は法定耐用年数が定められており、購入にかかった費用を減価償却費として毎年経費計上できます。

しかし法定耐用年数と耐用年数(寿命)は同じではなく、耐用年数はあくまでもメーカーなどが決めた使用可能期間を指します。

売買目的の太陽光発電の法定耐用年数は17年ですが、それ以外では法定耐用年数が変化します。国税庁が示した見解では、自動車製造目的に太陽光発電を使用した場合の法定耐用年数は9年です。このように使用用途によって法定耐用年数は異なるため、どの法定耐用年数が適用されるか分からない場合は税理士や税務署へ相談しましょう。

法定耐用年数が過ぎ、減価償却できなくなった場合には売却することも検討してみてはいかがでしょうか。

弊社とくとくファームでは、数多くの売却事例を取り扱っております。法定耐用年数が過ぎる前、過ぎた後でもご相談可能です。是非お問い合わせください。

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