電力の供給や調達に関するルールは年々変わっていきます。近年では、これまで制限されていた低圧の逆潮流についても、一般送配電事業者で活用できるよう変化しています。そのため太陽光発電所を所有している需要家側・発電事業者側の企業も、逆潮流アグリゲーションについて注目する必要があります。
そこで今回は、逆潮流アグリゲーションの意味や2023年4月以降のルール、太陽光発電事業者への影響や選択肢について詳しくご紹介します。太陽光発電を活用した小売電気事業に関心を持っている方や、卒FIT後の住宅用太陽光発電で売電を行うべきか悩んでいる方などは、参考にしてみてください。
逆潮流についておさらい
逆潮流アグリゲーションを理解するには、まず逆潮流の意味や仕組みについて確認しておく必要があります。それでは、電力における逆潮流の仕組みや特徴をわかりやすく解説します。
需要家側から電気を流すこと
系統側(電力会社)は、火力発電所や原子力発電所などの発電設備で発電した電気を、需要家と呼ばれる個人や企業に供給する役割を担っています。
この系統側から需要家へ電力を供給していく流れを順潮流と呼びます。反対に、需要家から系統側へ電力を供給するのが逆潮流です。
なお逆潮流は、特定のケースにかぎり認められています。
売電型太陽光発電は逆潮流可能
太陽光発電を設置し、なおかつFIT認定などを交わしている場合は、逆潮流による売電を始めることが可能です。
FIT制度の認定を受けている場合は、10年間もしくは20年間は電力会社が固定買取価格で電力を買い取ってくれます。一方、FIP制度に対しては、電力の買取義務がありません。そのため、電力活用者(=需要家)を探し、電力市場の価格に沿って売電を進めていく必要があります。
なお、卒FITやFIT期間中に制度利用を辞めて売電を継続する場合は、FIP制度のように自社で電力活用者を探したり、インバランスリスクに備えたりしなければいけません。(インバランスリスク:事前の発電・需要予測が実際の値とずれていた場合、電力会社へ差額を支払う仕組み)
逆潮流アグリゲーションの特徴
逆潮流そのものは、再生可能エネルギーとFIT制度の誕生によってどの企業でも導入可能なシステムです。しかし前段で触れたように、FIT制度を利用せずに売電を行いたい時や卒FIT後も売電を継続したい時は、小売電気事業者として需要家の集客から始めなければいけません。
逆潮流アグリゲーションは、FIT制度などの支援制度を受けていない発電設備などを束ねるための仕組みで、エネルギーの効率的な活用方法として期待されています。それでは、逆潮流アグリゲーションの特徴について確認していきましょう。
複数の逆潮流された電力を束ねる
逆潮流アグリゲーションとは、電力市場で取引できない小規模な電力設備の電力を束ねて活用するために作られた制度や考え方のことです。
対象の設備には、産業用蓄電池や小規模な発電設備、家庭用蓄電池やエネファームといった住宅設備などが含まれます。
卸電力市場や容量市場へ電力供給および取引を行うには、1,000kW以上の容量・出力を持つ発電設備を持たなければいけません。そのため、中小型の発電設備や蓄電設備では、発電事業へ参入することが難しい状況です。
そこで国は、逆潮流アグリゲーションの解禁へ向けて少しずつ制度変更を進めています。
2023年4月から逆潮流アグリゲーションが運用開始
需給調整市場では、2023年4月から逆潮流アグリゲーションによる電力調整が始まっています。
需給調整市場は、電力需給バランスにかかわるトラブルが発生した際に活用される電力の取引市場です。たとえば、停電などによって電力不足が発生した際、需給調整市場で取引されている電力を調達することで電力供給量をカバーできます。
また、2023年4月からアグリゲーター(アグリゲーションビジネスを行っている事業者)は、1,000kW未満の発電設備についても調整用電力として市場で売電を進めることが可能になりました。
2023年4月から運用開始された逆潮流アグリゲーションで得られるメリット
逆潮流アグリゲーションにより、小型の発電設備を持つ企業はいくつかのメリットを得られる可能性があります。続いては、逆潮流アグリゲーションでメリットを得られる事業者や期待できることについて確認していきましょう。
アグリゲーターは小規模な電力を調達可能
電力の調整や、小売電気事業者と発電事業者間の調整を行っているアグリゲーターにとって、逆潮流アグリゲーションは新たな電力調達手段としてメリットの多い制度といえます。
アグリゲーターは、電力の調達と取引、発電事業者の電力制御などでビジネスを成り立たせています。少しでも電力調達手段が増えれば、その分電力供給量を安定させることができますし、電力を使用する立場の人にとってもメリットがあります。
低圧リソースも売電しやすい環境へ変わる
小規模な発電・蓄電設備を持つ事業者は、逆潮流アグリゲーションの発展によって売電収入を得られる機会が増えます。
前半で解説したように、これまで電力市場では、1,000kW以上の大規模な電力を供給できなければ参入が認められていない状況でした。しかし逆潮流アグリゲーションの運用開始によって、1,000kW未満の電力でもアグリゲーターへ供給すれば、売電収入につながる可能性があります。
再生可能エネルギーなどの予測誤差によるリスクを抑えられる
一般の需要家にとって、逆潮流アグリゲーションの運用開始は、電力供給面でメリットの多い動きだといえます。
逆潮流アグリゲーションによって束ねられた電力は、再生可能エネルギーの予測誤差や既存の発電所故障、突然の電力需要増加などによる停電リスクを抑えるために用いられます。つまり、電力の需給バランスが強化されることになり、夏や冬の急激な電力不足リスクをはじめ災害などによる停電リスクを抑えられることになります。
逆潮流アグリゲーションは太陽光発電事業者にとって必ずしもメリットではない
ここまでの逆潮流アグリゲーションに関する解説で、太陽光発電設備を持つ個人や企業もメリットを感じているかと思います。しかし、逆潮流アグリゲーションには課題も存在しています。
続いては、太陽光発電を持つ個人や企業にとって、逆潮流アグリゲーションが必ずしもメリットではない理由を解説します。
低圧リソースを束ねるアグリゲーションビジネスが確立していない
住宅用太陽光発電や小規模な産業用太陽光発電などの低圧リソースを束ねるアグリゲーションビジネスは、まだ確立していない状況です。低圧リソースの電力は極めて小規模なので、数100~数1,000単位で束ねなければ実用的ではありません。
しかし、数100~数1,000の需要家に対してスマートメーターや計測装置、電力ネットワークの構築を進めていくと、アグリゲーターに大きな費用負担がかかります。また、事業として成り立たない可能性があります。
そのため、逆潮流アグリゲーションを活用した売電事業は、2023年時点ではまだハードルが高いのが実情です。
ダブルカウントによる電力供給力の減少リスク
低圧リソースを活用した逆潮流アグリゲーションビジネスには、ダブルカウントリスクもあります。
電気事業者の間では、事前に電力供給量に関する計画を作成・共有し、同じ電力を調達しようとしていないか確認します。たとえば、2つの電気事業者がAという発電設備から電力を調達する予定の場合、どちらかの事業者は電力を調達できません。
そのため、各電気事業者は、計画段階で他の事業者と電力の調達先が重複しないよう、事前に情報を共有しています。
しかし、住宅に設置されている蓄電池や太陽光発電、非電気事業者の所有している太陽光発電などの低圧リソースでは、ダブルカウント防止に関する具体的な対策が整っていません。
逆潮流アグリゲーションが整備されるまでは太陽光発電の売却を含めて出口戦略を検討してみよう!
逆潮流アグリゲーションは、今後本格的に運用が進んでいく電力調達方法と考えられています。これまで活用されていなかった1,000kW未満の小規模な発電設備や蓄電設備、個人の太陽光発電や蓄電池などが、逆潮流アグリゲーションによって電力市場へ供給される可能性があります。
しかし、低圧リソースに関する逆潮流アグリゲーションビジネスは、コストや仕組みに関する課題があるため、参入が難しい状況なのです。
太陽光発電の維持管理費用に悩んでいる方や自家消費から逆潮流アグリゲーションへ切り替えようと考えているものの難しい状況と判断した方は、この機会に太陽光発電所の売却を検討してみてはいかがでしょうか。
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