有機薄膜太陽電池とは?実用化や寿命、メリットについて知ろう!

有機薄膜太陽電池とは?実用化や寿命、メリットについて知ろう!

近年、太陽電池の一種「有機薄膜太陽電池」の開発が進んでいます。実用化された場合は、自家消費型太陽光発電を検討する際の候補のひとつになるかもしれません。

そこで今回は、有機薄膜太陽電池の仕組みやメリット・デメリット、開発状況について詳しくご紹介します。全量自家消費型太陽光発電を検討している方や屋根設置型太陽光発電による自家消費を検討している方などは、参考にしてみてください。

有機薄膜太陽電池の仕組み

有機薄膜太陽電池(Organic Photovoltaics)は、半導体として加工された有機物を用いた太陽電池の総称です。有機物は生物の体内で生成される物質で、タンパク質や脂質などが代表的です。また半導体は、電気を通す導体と通さない絶縁体の機能を持つ素材や物質を指します。

結晶シリコンをはじめとした既存の太陽電池は無機物の半導体であるため、有機薄膜太陽電池と構造や性質は大きく異なります。

有機薄膜太陽電池は、電子供与材料(電子を与える素材)と電子受容材料(電子を受け取る素材)を用いて製造されています。具体的には、これらを薄い基盤に塗布していく印刷のような製造方法です。また薄型という点が、結晶シリコン系太陽電池とは違います。

有機薄膜太陽電池の特徴

続いては、有機薄膜太陽電池の特徴についてわかりやすく解説します。

薄型軽量素材で作られている

前段でも触れたように、有機薄膜太陽電池は、素材や製造方法の段階から薄型の性質を持っています。既存の太陽電池の厚みは30mm前後で、折り曲げられない構造です。そのため、曲面に貼り付けることはできません。

一方、有機薄膜太陽電池の厚さは約0.003mmと、従来の太陽電池の1,000分の1程度です。さらに曲げたり折ったりできるため、シールのように太陽電池を貼り付けることが可能です。

これまで設置の難しかった場所へ簡単に取り付けられるのは、革新的だといえます。

変換効率は15%前後

有機薄膜太陽電池の変換効率は15%前後で、結晶シリコン系太陽電池より3~5%程度低いものの、実用性のある数値です。

開発当初の変換効率は5%前後と非常に低い数値で、実用化には遠い状況でした。しかし、さまざまな大学や企業、研究機関が何度も研究を重ね、性能は少しずつ向上していき、2023年時点では15%前後にまで向上しました。研究開発は継続しているので、結晶シリコン系太陽電池と同じ20%台に突入する可能性があるかもしれません。

太陽光発電事業者にとって、変換効率は費用回収期間の短縮・電気代削減効果に関わるポイントです。有機薄膜太陽電池の変換効率は実用寸前のレベルなので、今後も要注目といえます。

有機薄膜太陽電池とペロブスカイトの違い

有機薄膜太陽電池とペロブスカイトは、どちらも有機化合物で製造された太陽電池です。ただし、材料や構造に違いがあります。

ペロブスカイト太陽電池はペロブスカイトという化合物を用いた太陽電池で、有機物と無機物を含んでいるのが特徴です。

主な強みは、有機薄膜太陽電池と同じく薄型軽量の太陽光パネルを作り出せるという点です。変換効率は10%台や20%台を超えているケースもあり、太陽光パネルとして販売可能なレベルといえます。

有機薄膜太陽電池は、2種類の素材を用いたPN接合型太陽電池なので、内部構造に関してはペロブスカイト太陽電池と異なります。一方、薄型軽量という点や製造コスト、製造方法に共通点があるので、ペロブスカイト太陽電池もチェックしておくべき製品といえます。

有機薄膜太陽電池のメリット

ここからは、有機薄膜太陽電池のメリットについて1つずつ確認していきましょう。

軽量なので荷重制限のある屋根でも運用できる

前段でも触れたように、有機薄膜太陽電池の厚さは0.003mm程度です。そのため、荷重制限のある屋根や既存の太陽光パネルの重さに耐えられない建物にも設置できるのが大きなメリットといえます。

結晶シリコン系太陽電池をはじめとした既存の太陽光パネルは、1枚あたり15kg前後で、1㎡の重量は約11~12kgです。

一方、Heliatek社で製造されている有機薄膜太陽電池の重量は1㎡あたり2kgと、一般的な太陽光パネルの約6分の1で、非常に軽量です。

そのため、既存の太陽光パネルを設置できない屋根には、有機薄膜太陽電池を活用することで複数枚の設置が可能になります。

薄型形状で立体的な形状の場所にも設置可能

曲面のある壁や屋根、立体形状の場所に設置できるのは、有機薄膜太陽電池ならではのメリットです。

一般的な太陽光パネルは架台に取り付ける必要があり、折り曲げられません。そのため設置場所に制約があり、曲面や立体形状の場所には適していません。

一方、有機薄膜太陽電池を導入した場合、球体や曲面、立体形状など、さまざまな場所に取り付けることが可能です。さらに研究開発が進めば、屋根瓦などに直接塗布して発電するという方法も実現するようになるかもしれません。

このように、有機薄膜太陽電池は太陽光発電の固定概念を覆せる可能性があり、今後の発展が期待されています。

安価で大量生産可能

有機薄膜太陽電池は、製造コストを抑えやすい太陽電池でもあります。印刷のように塗布することで製造でき、また結晶シリコン系太陽電池と異なり高温や真空状態での加工が不要なので、設備コストを抑えられます。

費用負担を抑えながら導入できるのは、太陽光発電事業者にとって大きなメリットです。

さらにさまざまな有機材料を用いて製造できる可能性があるので、量産化しやすい側面もあります。

有機薄膜太陽電池のデメリット

続いては、有機薄膜太陽電池のデメリットや課題についてわかりやすく解説します。

実用化にこぎつけたメーカーもあるが実績は少ない

2023年時点では、有機薄膜太陽電池の実用例はあるものの、実績はほとんどありません。また取り扱っているメーカーも少ないため、導入ハードルの高い製品といえます。

実績の少ない製品は、リスクの高さ、費用回収期間や想定されるトラブルなど、さまざまな点で予測の難しい状況といえます。さらに発電効率は結晶シリコン系太陽電池より少しだけ低い程度なので、初期費用の回収期間を大幅に短縮することが厳しい可能性もあります。

そのため現状では、結晶シリコン系太陽光パネルを用いて全量自家消費していくのが、現実的な選択肢といえるでしょう。ただし既存の太陽光パネルと比較した場合、コストや設置しやすさといった点で優れているので、今後も検討すべき製品であることに間違いありません。

耐久性に課題がある

有機薄膜太陽電池には、耐久性や寿命といった点で課題があります。既存の太陽光パネルは、光や熱、湿度に一定程度耐えられる構造で、なおかつ30年ほど稼働し続けることができます。

一方、有機薄膜太陽電池は、酸素や水分、熱や光といった影響を受けやすく、劣化しやすいといった課題を抱えています。特に光の影響を受けやすいという点は、太陽光発電において大きなデメリットです。

そこで企業や大学、研究機関では、有機薄膜太陽電池の耐久性に関する研究開発を続けています。たとえば、理化学研究所の創発物性科学研究センターは、耐久性や変換効率を向上させた半導体を開発し、高温環境下で1,000時間以上経過しても変換効率を90%以上維持することに成功しています。そのため耐久性や変換効率に関しては、今後も改善・強化される見込みがあります。

有機薄膜太陽電池の実用例は?

2023年時点で、有機薄膜太陽電池は一部の企業で既に取り扱われています。そこで最後は、有機薄膜太陽電池の主な実用例を2つ紹介していきます。

Looopが2022年に導入を発表

2022年8月、再生可能エネルギー事業者および新電力サービスのLooopは、有機薄膜太陽電池の研究開発・製造を行うドイツ企業Heliatek(ヘリアテック)との独占販売契約について発表しました。

Heliatek(ヘリアテック)の有機薄膜太陽電池Heliasol(ヘリアソル)は、厚さ1.8mmと薄く、折り曲げたり丸めたりできます。また背面に接着剤が塗布されているので、壁面や曲面に直接貼り付けることが可能です。

そのため、既存の太陽光パネルのように架台への設置が不要で、設置工事の費用負担も軽減できます。なお2023年5月の時点では、Looopでの販売状況に関する情報は出ていません。導入検討している場合は、改めて取り扱い状況を確認する必要があります。

MORESCOが産業用向けに製造

化学品関連事業を展開している国内企業のMORESCOでは、MORESCO-OPV Flexiという有機薄膜太陽電池の施工販売を行っています。

MORESCO-OPV Flexiのサイズは、幅300~600mm、長さ300 mmや1,000mmなど、設置状況や要望に合わせて変更してもらえます。また、葉っぱ状などをはじめとした特殊形状に加工してくれるので、景観に合わせて設置できるのが強みです。

有機薄膜太陽電池は全量自家消費型太陽光発電にも役立つ将来性の高い太陽電池!

有機薄膜太陽電池は、有機化合物を活用して作られた太陽電池で、変換効率15%前後と実用化もしくは実用寸前の性能を実現しています。また厚さ1mm以下の薄型軽量タイプなので、折り曲げたり曲面・立体形状の壁や屋根に設置したりできます。

実用化された場合は全量自家消費型太陽光発電にも活用できるので、要注目の太陽電池といえます。

脱炭素経営を目指している方や自社の電気料金削減方法について悩んでいる方などは、有機薄膜太陽電池に注目しつつ、全量自家消費型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。

全量自家消費型太陽光発電は、太陽光パネルで発電した電気を自社の建物内で消費していく運用方式を指します。今後、有機薄膜太陽電池が普及した場合、既存の太陽光発電と組み合わせながら運用していくことも可能ですし、既存の太陽光発電設備でも年間数10%以上の電気料金を削減できます。さらに二酸化炭素排出量を大幅に削減できるため、脱炭素経営をアピールすることが可能です。

和上ホールディングスは、全量自家消費型太陽光発電の企画から設計、部材調達、施工、保守運用まで総合的にサポートしています。

弊社で設置いただいた企業様は、設置から6~9年程度で費用回収されていて、なおかつ年間100万円単位で電気料金削減を達成しています。

屋根設置や地上設置、カーポートなど、さまざまな設置方法から検討可能ですので、お電話やメールからお気軽にご相談ください。

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