製造業の経営者にとってカーボンニュートラルは、事業を継続するために注力すべき内容です。ただし、生産設備の稼働に伴う温室効果ガスの排出を抑えることは難しく、対策について悩むところかと思います。
そこで今回は、製造業におけるカーボンニュートラルの概要や重要性、課題について詳しくご紹介します。製造業の脱炭素化に悩む方や製造業のカーボンニュートラルについてよくわからない方などは参考にしてみてください。
製造業におけるカーボンニュートラルとは?
製造業は、カーボンニュートラルの達成に欠かせない業種の1つとされています。2021年、菅元総理は2050年のカーボンニュートラル達成に向けた宣言を行い、国全体での環境政策の強化へ舵を切りました。
カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量が実質ゼロの状態を指す用語で、自治体・個人・企業の協力がなければ達成の難しい目標です。
ちなみに環境省の「2021年度温室効果ガス排出・吸収量(確報値)」によると、2021年度の温室効果ガス排出量は11億2,200万トンです。
中でも産業部門の電気・熱配分後の排出量は全体の35.1%(電気・熱配分後:エネルギー起源の二酸化炭素排出量を消費量に応じて消費者側の各部門に計上したもの)を占めていて、特に二酸化炭素排出量の多い部門と言えます。
このように製造業は、カーボンニュートラル達成において重要な役割を担う業種だと言えます。
出典:環境省ホームページ
製造業でカーボンニュートラルを始めるメリット
製造業がカーボンニュートラル達成に重要な役割を担っている点を理解した事業者の中には、「自社の利益低下につながるのではないか?」、「脱炭素化がよくわからないし、費用だけかかってメリットがなければ意味がない」など、疑問を抱いている方も多いかと思います。
ここからは、製造業でカーボンニュートラル・脱炭素化を目指して取り組みを始めるメリットについてわかりやすく解説していきます。
省エネや創エネで自社のコストを抑えられる
カーボンニュートラルにつながる活動を始めれば、自社のさまざまなコストを削減することが可能です。
カーボンニュートラルへ向けた活動は、オフィスや工場などの省エネや節電活動、創エネによる電気・ガスの自家消費といった内容で構成されています。また製造業の場合であれば、生産活動で生じるエネルギー消費量の削減もカーボンニュートラルにつながります。
このようなエネルギーの見直しに関する活動で得られるのは、電気やガス料金などといった固定費の削減、原材料や加工費のコストダウンといったメリットにつながるものばかりです。
2023年も物価高や電気・ガス料金の値上げが続いているので、この機会にカーボンニュートラルを通じたコスト削減策を目指してみるのもおすすめです。
企業価値アップにつながる
カーボンニュートラルへ向けたさまざまな取り組みは、企業価値や信頼性の向上につながります。
国連および各国では、気候変動問題の深刻化に合わせて環境に関するさまざまな政策や規制を行っています。また投資家や企業は、投資先や取引先を選ぶ際に脱炭素に取り組んでいるかという点も考慮し始めています。
さらに環境重視の社会へ変わっていけば、消費者の意識も変わる可能性があります。
そのため、自社の信頼性や環境価値を向上させるには、カーボンニュートラルに向けた取り組みも重要になってくると言えます。
事業の成長につながる
製造業でカーボンニュートラルに関する対策を始めれば、事業の成長につながりますし、新しい事業を見つけられる可能性があります。
脱炭素化に向けた取り組みは新しい分野ということもあり、費用や複雑さという点で負担のかかる部分もあります。ただし、まだ開拓されていない市場でもあるので、今から取り組めば新事業を確立できる可能性があります。
他にもカーボンニュートラルおよび環境に関する市場が拡大していけば、脱炭素関連事業のニーズも高まっていきます。
製造業におけるカーボンニュートラルへ向けた取り組みは、ビジネスチャンスという点でもメリットが多いと言えます。
製造業におけるカーボンニュートラルの課題
続いては、製造業におけるカーボンニュートラルへ向けた取り組みに関する主な課題を説明していきます。
設備投資に費用がかかる
生産設備や事務所内での二酸化炭素排出量を削減するには、節電やエネルギー消費の抑制だけでなく、省エネ設備を導入したりDX化を検討したりするなど、何かと設備投資が求められます。
特に生産工程や輸送手段といった事業全体の省エネに取り組もうとすると、莫大な費用がかかる可能性もあります。
中小企業や予算に余裕がない製造業者にとって、カーボンニュートラルおよび脱炭素経営は費用面で大きな負担ですし、実行の難しい取り組みです。
そこで費用面の負担を抑えながら二酸化炭素排出量を効率よく削減していくには、後半でも紹介する非FIT型太陽光発電を検討してみるのがおすすめです。
非FIT型太陽光発電は、省エネ設備と異なりエネルギーを創出してくれますし、再生可能エネルギーの中でも初期費用負担を抑えられます。
結果がわかりにくくモチベーションの維持が難しい
カーボンニュートラルに向けた取り組みおよび分析には、リソースと費用・時間がかかります。また、二酸化炭素という目に見えないものを扱うため、効果を実感しにくい状況です。
そのため、全社を挙げて省エネや節電といった活動を始めたとしても、現場レベルでは効果がわからず、モチベーションの低下につながりやすいと言えます。
これから脱炭素経営を始める場合は、次の項目で紹介するPDCAを基準に数値で比較するようにするといいでしょう。
製造業でカーボンニュートラルを始める方法
製造業で脱炭素経営を始めるには、PDCAをベースに計画を立てるのが大切です。続いては、製造業におけるカーボンニュートラルに向けた具体的な取り組みと流れについて解説していきます。
二酸化炭素の見える化に取り組む
まずは、工場や事務所内のエネルギー消費量や使用状況を、Scopeという概念を用いながら把握しましょう。
Scopeとは、上流・自社・下流に分けて温室効果ガスの排出量を把握する考え方のことです。
- Scope1 自社の事業活動で発生した温室効果ガス
- Scope2 他社から供給されている電気や熱といったエネルギーから排出される温室効果ガス
- Scope3 間接的な温室効果ガス排出量(原材料の輸送、製品の使用や消費、廃棄といった場面)
脱炭素化へ向けてとりあえず節電や省エネを始めてしまうと、実施前と比較してどれくらい二酸化炭素やその他エネルギーの排出・消費量削減ができたのか分析できません。また生産設備の中には、簡単に省エネ化できない設備もあります。
そのため、無理のない範囲でカーボンニュートラルを目指すためには、二酸化炭素排出量の測定と省エネ化可能な部門・設備を整理する必要があります。
カーボンニュートラルにつながる施策の検討
脱炭素経営に向けた体制の準備を進めたあとは、温室効果ガス・二酸化炭素排出量の削減目標や具体的な施策についてまとめていきます。
- 空調設備や照明の使用方法を見直す
- 省エネタイプのボイラーや空調、LEDへ交換
- 省エネ、脱炭素につながる製品や部品の開発
- 再生可能エネルギーの導入
- 再生可能エネルギー由来の電力を調達
各対策を実行する際は、二酸化炭素排出・削減量の見える化も重要です。たとえば、生産設備などに二酸化炭素排出量を測定できるセンサーを導入し、取り組みの前後でどの程度の削減効果を得られたかデータを収集します。
他にも、カーボンフットプリントを導入することで、消費者に対して脱炭素化をアピールするのも大切です。カーボンフットプリントとは、自社の事業活動によって排出された二酸化炭素排出量を製品に記載する取り組みのことです。
実施後は効果を測定
さまざまな施策を実施したあとは、効果を測定・記録していきます。
カーボンニュートラルの担当者や責任者は、特に現場レベルの声を拾うのが重要なポイントです。たとえば、省エネのために導入した設備の生産効率が悪い、二酸化炭素排出量の削減効果と同時に電気料金負担が増加しているなど、問題点を洗い出すには現場の状況を把握しなければいけません。
課題を整理したら、改善案の提案および問題点とされる設備や管理方法の見直しを実行し、再度測定と分析を進めていきます。
製造業におけるカーボンニュートラルは、生産活動と同じく「計画~改善」の繰り返しです。
製造業のカーボンニュートラル事例
大手自動車メーカーの本田技研工業では環境負荷ゼロを掲げ、Scopeを活用した温室効果ガス排出量の測定や情報の公開、さまざまな環境負荷低減に向けた取り組みを継続しています。
たとえば、電気自動車の販売台数増加やリユースやリサイクル材料の研究開発、カーボンフリーエネルギーの活用率100%へ向けた取り組みといった環境活動を行っています。
このように製造業の場合は、単に節電といった施策だけでなく、製品の製造にかかる環境負荷低減へ向けた取り組みや研究なども目指せるのが強みです。
製造業におけるカーボンニュートラルの第一歩に太陽光発電がおすすめ
前半で軽く触れたように、予算やリソースの関係からカーボンニュートラルへ向けた取り組みを始められないといった場合は、第一歩として非FIT型太陽光発電を導入してみるのがおすすめです。
非FIT型太陽光発電は、FIT制度の認定を受けていない太陽光発電で、売電や自家消費などさまざまな運用方法を選択できるのが特長です。
最後は、非FIT型太陽光発電の強みについてわかりやすく解説していきます。
二酸化炭素排出量の削減効果を得やすい
非FIT型太陽光発電で発電した電気を自家消費もしくは調達した場合、二酸化炭素の排出削減量を得られます。節電活動や省エネ設備の導入時は、エネルギー消費量の削減を見込めるものの、二酸化炭素排出量の削減量を測定するのが難しい側面もあります。
一方、太陽光発電の場合は、発電量および自家消費量から二酸化炭素排出量の削減率を比較的簡単に計算できます。
具体的には、火力発電と太陽光発電の二酸化炭素排出量の差分を計算した場合、太陽光発電の自家消費によって1kWhあたり650~680gの二酸化炭素を削減することが可能です。
生産設備の交換やシステム全体の入れ替えなどが不要
既存の生産設備の交換や工場のシステムの総入れ替えなどをしなくても脱炭素経営を始められるのは、非FIT型太陽光発電の大きなメリットです。
本格的に脱炭素経営へ向けて動くには、ボイラーや空調設備、生産設備などのシステム全体の省エネ化を目指す必要があります。またシステムの入れ替えや生産設備の交換には大きな費用がかかるため、予算に余裕のない企業にとっては難しい判断になります。
一方、非FIT型太陽光発電であれば、自社工場や倉庫の屋根もしくは自社の敷地内・外に設置するだけなので、自社設備の交換や改修などは不要です。
電気料金削減効果を得られる
非FIT型太陽光発電の電力を活用すれば、環境対策に加えて電気料金削減効果も得られます。
太陽光発電で発電した電力は、自社の事務所や工場・倉庫などへ供給および自家消費することが可能です。また、自家消費分の電力を電力会社から購入せずに済むため、電気料金を削減できます。さらに電気料金に含まれる再エネ賦課金・燃料費調整額も削減でき、大幅な負担軽減につながります。
製造業は、生産設備はもちろんのこと、照明や空調、事務用機器などでも電力を消費します。電気料金の値上げが続く2023年に非FIT型太陽光発電を導入することは、固定費削減という点でもメリットのある選択肢と言えるでしょう。
製造業のカーボンニュートラルには非FIT型太陽光発電を要検討!
日本では、特に製造業の温室効果ガス排出量が多い傾向にあります。また、カーボンニュートラルを目指す際に取り組みやすい方法の1つが、非FIT型太陽光発電です。非FIT型太陽光発電を導入すれば、二酸化炭素排出量の削減効果を計算しやすく、既存の設備を改修しなくとも環境経営へシフトできます。
カーボンニュートラルへ向けて製造業の脱炭素化を進めたい方や環境経営の方法がわからない製造業者は、今回の記事を参考にしながら非FIT型太陽光発電の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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