製造業を展開している企業にとって工場の電気代は、大きな固定費の1つです。節電や電気料金プランの見直しを図りながら負担軽減を目指している企業もいるのではないでしょうか。自家消費型太陽光発電は工場との相性も良好で、固定費削減を目指す企業にとってメリットがあります。
そこで今回は、自家消費が太陽光発電を工場へ設置する方法とメリット、設置事例について詳しくご紹介します。工場の電気代に悩む企業などは、参考にしてみてください。
自家消費型太陽光発電の仕組み
自家消費型太陽光発電は、太陽光パネルから発電した電気を売電せず、工場や事業所内で全て消費できるのが特徴です。
一般的な太陽光発電と異なり売電収入を得られないものの、発電した電気を各種設備へ供給できるため、電気代削減やピークカットにつながります。
自家消費が太陽光発電を導入するには、自家消費型対応のパワーコンディショナや制御装置を購入したり逆潮流させない回路を設置したりする必要があります。(逆潮流:電力会社へ送電するための回路)
自家消費型太陽光発電で発電した電気を工場へ送電する方法
自家消費が太陽光発電の基礎を把握したあとは、自社工場への送電方法について確認していきます。
工場の屋根に取り付ける
工場の屋根へ太陽光パネルを取り付ける方法は、設置方法の中でシンプルかつ分かりやすい方法です。
工場の屋根に太陽光パネルを取り付けた場合は、工場内へ配線を引き込み、パワーコンディショナや制御装置などを設置します。遠隔監視装置は、事業所や工場へ設置することで、すぐに発電量や異常の有無を確認することが可能です。
屋根への設置時は、工場の耐荷重や設置可能な枚数を確認する必要があります。特に耐荷重に関しては、安全面において注意しなければいけないポイントなので、建物の耐震工事などを新たに施さなければいけない場合もあります。
他にも太陽光パネルが、全て屋根に設置できるか屋根の面積を含めて確認してみるのも大切です。
自社の敷地内に設置
太陽光パネルを自社の工場へ設置しきれない場合や耐荷重の関係で設置できない時は、自社の敷地内に設置することも検討してみてはいかがでしょうか。
敷地内の設置とは、架台(太陽光パネルを支える土台)を地面に直接設置する方式のことです。建物の上に設置しないため、建物への影響を考慮する必要がありません。
ただし、地盤が弱い土地で稼働させる場合は、地震などで架台ごと破損してしまう可能性もあります。また、設備が地面に近いため、浸水しやすいリスクもあります。
オフサイトPPAを導入
自社の工場や事業所、敷地内に太陽光発電を設置できない場合は、オフサイトPPAを検討してみるのもおすすめです。
オフサイトPPAとは、自社の敷地から離れた場所に太陽光発電を設置し、既存の送配電網を活用した自社の工場や事業所へ送電可能な仕組みのことです。
たとえば、自社から数10km離れた場所に土地を購入し、太陽光発電を設置します。あとは、大手電力会社の送配電網を活用することで、自社工場へ送電できます。
対象の太陽光発電は、出力50kW以上の太陽光発電です。低圧の太陽光発電は電力が弱いため、遠方から送電できません。そのため、出力50kW以上の設備のみオフサイトPPAが認められています。
送配電網を活用する際は、託送料金という手数料を大手電力会社へ支払う必要があります。
自家消費型太陽光発電の費用は設置面積によって変わる
自家消費が太陽光発電の費用は、設置面積や土地の購入状況、設置場所によって変わります。たとえば、出力100kWの太陽光発電は、設備本体と設置工事費用を合わせて1,500万円~2,000万円程度です。
自社の敷地内やオフサイトPPAを活用する場合は、土地の状態をチェックし、場合によって造成工事を施さなければいけません。造成工事は、500万円以上の費用がかかります。
まずは、太陽光発電の販売店や施工業者へ相見積もりを依頼し、複数の見積もりを比較するのが大切です。複数の見積もりを同時に比較することで、安い・高い業者を判別できますし、細かく費用項目を記載している業者かどうか見分けがつきます。
自家消費型太陽光発電で発電した電気を工場へ送電するメリット
ここからは、自家消費型太陽光発電で発電した電気を工場へ送電するメリットについて解説します。
電気代を大幅に削減できる可能性
自家消費型太陽光発電で発電した電気を工場内の照明や各種設備へ供給した場合は、電気代を大幅に削減できる可能性があります。
工場内では照明や工作機械など多数の設備を稼働させているため、消費電力量もオフィスなどと比較して多い傾向です。さらに電気料金は年々上昇しており、工場を所有している事業者にとって負担の大きな状況です。
そこで自家消費型太陽光発電を設置し、工場内の消費電力量を抑制できれば毎月の電気代を削減できます。
また、高圧や特別電力契約を結んでいる場合は、自家消費型太陽光発電と蓄電との併用で、デマンド値の上昇を抑えられる点にも注目です。(デマンド値:30分間ごとの消費電力量)
高圧電力や特別電力契約の基本料金は、過去12か月の中で最も高いデマンド値を基準とされています。デマンド値の上昇を抑えられれば、電気料金削減につながります。
屋根に設置すると遮熱効果を見込める
自家消費型太陽光発電を工場の屋根に設置した場合は、遮熱効果を見込めるのも導入メリットの1つです。
工場の屋根は夏場に60度以上の高温となるため、工場内の室温も上昇します。工場内の工作機械や製品の品質を保つには、室温を一定に保つ必要があります。そこで、冷房の温度設定を調整し、消費電力の増加につながってしまいます。
太陽光パネルを工場の屋根に設置した場合は、環境によって10度~30度程度下げられる可能性があります。工場内の温度変化に悩んでいる時は、太陽光パネルを屋根に設置してみてはいかがでしょうか。
非常時でも工場を最低限稼働し続けられる
自家消費型太陽光発電の設置は、BCP対策につながるのも大きなメリットです。(BCP対策:有事の際に早期復旧、最低限の事業活動を続けるための対策)
地震や台風などで停電してしまうと送配電網や発電所、変電所が復旧されるまで、事業活動を停止せざるを得ません。
自家消費型太陽光発電および蓄電池を設置している場合は、晴れの日や日中に電気を蓄えながら工場内へ送電できますし、夜間も稼働し続けられます。
災害対策や停電中の事業活動について悩んでいる事業者は、自家消費型太陽光発電と蓄電池の設置を検討してみることをおすすめします。
自家消費型太陽光発電を工場へ設置する際の注意点
続いては、自家消費型太陽光発電を工場や敷地内などへ設置し、工場へ電力供給する際の注意点を解説します。
建物の耐荷重を確認
工場の屋根に架台と太陽光パネルを設置すると、建物への負担が増えます。さらに建物の重心が変化するため、耐震性にも影響を与えます。
太陽光発電設備を工場の屋根に設置したい場合は、太陽光発電の販売店や施工業者へ相談し、設置可能かどうか検討するのも大切です。
建物の耐震基準や築年数などの関係から屋根に設置できない時は、太陽光発電の設置前に屋根の改修工事や耐震工事などを行う必要があります。建物の改修工事を行う時は、太陽光発電の予算に改修工事費用も組み込みます。
また、敷地内の空いた土地やカーポートへの設置を検討してみるのがおすすめです。
初期費用の回収を見込める状況か
自家消費型太陽光発電を設置する時は、初期費用を回収できるか事前にシミュレーションしておくのも重要です。
太陽光発電の初期費用回収期間は、一般的に8年~12年です。しかし、相場よりも高い初期費用やシミュレーションを下回る発電量など、さまざまな要因から初期費用回収期間が、15年や20年程度へ延びる可能性もあります。
自家消費型太陽光発電の設置を検討する時は、適切な価格で見積もりを取ってもらえる業者を選ぶことも大切です。その他には、発電量や電気代削減額の算出、部品の交換や修理用に予備資金を確保しておきます。
設備導入時に電源を止めなければいけない
工場の屋根に自家消費型太陽光発電を設置する時は、一時的に工場内の電源を停止しなければいけません。事業者にとって事業活動の一時停止は、大きな損失です。
自家消費型太陽光発電を設置する時は、技術者と自社の従業員立会いのもと停電作業と電力供給などの確認を行います。そのため、設置工事を依頼する時は、繁忙期以外の時期や年末年始など休業日に工事してもらえるよう相談してみます。
また、自社の従業員にも太陽光発電の設置時期や停電作業を説明し、トラブルが発生しないよう気を付ける必要もあります。
トラブルのリスクに注意
自家消費型太陽光発電を工場の屋根に設置した時は、感電事故などといった点に注意が必要です。
太陽光発電は、配線やパワーコンディショナの破損などによって漏電してしまう可能性があります。漏電を放置してしまうと工場内で感電してしまうかもしれません。さらに発電した電気の漏電から火災事故へつながるリスクがあり、定期的な点検も重要です。
太陽光発電の販売店や施工業者は、点検パックや損害保険などを提供しています。
他には経年劣化や施工不良によって、太陽光パネルの落下事故にも注意が必要です。太陽光パネルの重量は、1枚あたり15kg前後です。さらに架台や複数の太陽光パネルを含めると、数100kg単位の重量がかかります。
自家消費型太陽光発電の工場設置事例
最後に自家消費型発電を自社や自社の工場へ設置している企業をいくつか紹介します。
トーホー・北関東
株式会社トーホーの子会社「トーホー・北関東」では、自家消費型太陽光発電を本社と宇都宮支店の屋上、本社駐車場へ設置しました。
初期費用は約7,600万円で、2017年に11月30日より稼働を始めました。太陽光パネルの設置枚数は合計1,036枚で、設置面積に直すと約 1,700 ㎡です。
トーホー・北関東では、年間の発電量約2.4MWhを見込んでいます。いわゆるメガソーラークラスの発電量なので、電気代の大幅な削減を期待できます。
なお、トーホーグループの資料では、自社の消費電力量のうち20%の削減につながるとのことです。
SUBARU大泉工場
大手自動車メーカーのSUBARUでは、群馬製作所の大泉工場内にある遊水地へ国内最大級の自家消費型太陽光発電を設置しました。(遊水地:河川の堤防を低くし、一時的に水を貯蓄する池)
大泉工場内に設置されている自家消費型太陽光発電は、年間発電量5,000MkWhを見込んでいるのが特徴です。一般的なメガソーラーは数10MWhや数100MWhといった発電量なので、SUBARUの設備規模と大きく異なることが分かります。
SUBARUの資料によると、電気代削減よりもCO2削減を主な目標として掲げています。なお、2030年度には、CO2の30%削減を目標としています。(2016年度と比較した総量ベース)
マンダムの新工場へ設置
大手化粧品メーカーマンダムは、2021年9月に兵庫県福崎町の福崎工場敷地内に自家消費型太陽光発電を設置しました。
福崎工場内の生産棟には、合計1728枚もの太陽光パネルが屋上に設置されています。出力は500kWなので、年間5MWh程度の発電量を期待できます。自家消費型太陽光発電の設置目的は環境負荷の低減とのことで、工場内へ電力供給するようです。
工場を所有している事業者は自家消費型太陽光発電を検討してみよう!
工場内では、工作機械やその他生産設備、照明などの稼働で大量の電力が消費されています。しかし、電気料金は年々値上げしていて、事業活動に大きな負担がかかるものです。
自社工場の屋上や屋根に自家消費型太陽光発電を設置した場合は、工場内の各種設備へ電力を供給し、電気代削減につながります。さらにBCP対策や企業価値アップなどといったメリットもあるので、導入検討の価値があります。
工場の電気代削減について悩んでいる事業者などは、今回の記事を参考に自家消費型太陽光発電の設置を検討してみてはいかがでしょうか。
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