農業の脱炭素化に向けて何をするべきか?

農業の脱炭素化に向けて何をするべきか?

今や農業は、脱炭素化の求められる業種の1つとしてみなされている状況です。さらに農林水産省では国の脱炭素目標に合わせて、農業分野における二酸化炭素排出量削減に関する取り組みや情報の提供を行なっています。

そこで今回は、農業の脱炭素化に向けた取り組み方法や必要性について詳しく解説します。農業を営んでいる個人の方や、農業における環境価値向上について関心を持っている方などは参考にしてみてください。

農業で脱炭素化が求められている理由

2020年、菅元首相は2050年までの脱炭素社会およびカーボンニュートラル実現を目指す宣言を行ない、国を挙げた環境対策が始まりました。脱炭素とは、二酸化炭素を含む温室効果ガスもしくは二酸化炭素の排出量実質ゼロを目指す取り組みです。

なぜなら、世界的な気候変動問題が深刻化していて、温室効果ガスを含むさまざまな対策を講じなければ、私たちの暮らしや事業活動にも大きな影響を与えるためです。

特に温室効果ガスは、地球の平均気温上昇につながる物質とされていて、早急に排出量を抑制させる必要があります。

また農業活動においては、家畜から排出される物質や土壌などからも温室効果ガスが排出されている状況です。そのため農林水産省では、国の農業部門の脱炭素化を求めたり、課題を調べたりしています。

農業で温室効果ガスが排出される原因とは

続いては、農業活動で温室効果ガスが排出される原因をわかりやすく解説します。

土壌から二酸化炭素や亜酸化窒素が排出

農地の土壌からは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが排出されています。

以下に、畑などの農地から排出されている物質を紹介します。

  • 二酸化炭素(CO2)
  • 一酸化二窒素(N2O)
  • メタンガス(一酸化二窒素)

農地の土壌有機物(地中に存在している有機物(微生物など))からは、微生物による分解作用によって二酸化炭素と一酸化二窒素が排出されています。ただし、微生物の分解作用を上回る有機物を土壌に投入した場合は、大気中の二酸化炭素を吸収してくれます。

他にも化学肥料・堆肥を農地に使用した場合、一酸化窒素が発生します。さらに畜産の場合は、反すう動物の消化時にメタンガスが発生するだけでなく、排せつ物などからメタンガスや一酸化二窒素も排出されています。

水田などからメタンガスが発生

水田の条件によってはメタン生成菌が活発化するため、メタンガスの発生につながります。

田んぼに水を張ると、土壌に含まれる酸素が減少します。メタン生成菌は、酸素の少ない環境でメタンガスを発生させる性質を持っているのが主な特徴です。

そのため、水を張った水田ではメタン生成菌の活発化に伴い、メタンガスが排出されるようになります。水田の中で発生したメタンガスは、水稲の空隙(くうげき)を通して大気中に放出される仕組みです。

農業の脱炭素化方法

農業活動における温室効果ガスの発生パターンを把握した後は、脱炭素の方法について確認していきましょう。

水田の中干し期間を延長させてメタンガスを削減

水田から発生するメタンガスは、中干し期間の調整によって抑制できる場合があります。

水田における中干しとは、稲の種まきから85日頃の夏場に行なわれる作業のことです。具体的には、水田に張った水を抜いて、ヒビが入るまで土壌を乾燥させます。

中干しは、根を強くさせる上で重要な作業です。また、土壌に含まれる硫化水素といった有害なガスやメタンガスも排出できるため、脱炭素化を進める際にも役立ちます。

経済産業省の資料「農業由来温室効果ガス排出削減技術の開発」によると、中干し期間を1週間程度延長させた場合では、メタンガスの排出量を平均30%程度削減できたケースもあるそうです。

そのため稲作を行なっている時は、中干し期間の調整を検討してみるのも大切です。

参考:経済産業省

バイオ炭を土壌へ活用

バイオ炭を土壌へ投入すれば、その分、二酸化炭素の排出量増加を抑制することが可能になります。経済産業省の資料「農業由来温室効果ガス排出削減技術の開発」では、これを土壌炭素貯留技術としています。

バイオ炭は生物資源を原材料として作られた炭で、炭素を排出しにくい性質を持っています。また土壌に投入すると、作物の生育改善効果などを期待できるのが特徴です。

通常の土壌からは、大気中の酸素と結合して二酸化炭素が排出されてしまいます。そこでバイオ炭を農地に活用すれば、炭素と酸素の結合を抑えられるため、作物の生育改善効果などだけでなく、二酸化炭素の排出量を削減することが可能になると考えられます。

参考:経済産業省

省エネ設備の導入

農業用の設備を省エネ性能の高い設備へ切り替えれば、温室効果ガスの削減効果を期待できます。

農林水産省の「省エネ設備で施設園芸の収益力向上を」という資料に記載されている「あかい菜園(株)」の事例では、ヒートポンプを複数台導入したり、栽培環境の最適化に向けたCO2発生装置などを設置したりした結果、暖房に必要な燃料を約140KL削減できたとのことです。

化石燃料を燃焼させると二酸化炭素の排出につながるため、使用量削減によるメリットは大きいと言えます。

他にも、断熱材の活用や温度の自動管理システムなどの導入により冷暖房の使い過ぎを防ぐことができ、燃料の使用量削減効果も見込めます。

出典:農林水産省

農業と再生可能エネルギーの連携による対策

農業における脱炭素化を目指す際は、再生可能エネルギーとの連携を検討してみるのも大切です。それでは、再生可能エネルギーとの連携による脱炭素化の方法について紹介します。

バイオマス発電で有機物を燃料へ活用

農業と相性のいい再生可能エネルギーの1つは、バイオマス発電です。

バイオマス発電とは、生物資源(動植物)の燃焼、もしくはガス化による燃焼による発電方式のことです。生物資源には、光合成によって二酸化炭素を吸収する植物も含まれています。燃焼時に二酸化炭素が排出されるものの、光合成による吸収分もあるため、排出量は実質ゼロとみなされています。

また、生物資源として用いられるのは、稲わらやとうもろこしの他、家畜の排せつ物などです。農業なら生物資源が多数確保できるため、発電用の燃料として活用できます。

ソーラーシェアリングで二酸化炭素排出量を削減

農地の上で太陽光発電を稼働させるソーラーシェアリングの場合は、二酸化炭素の排出量を直接削減することが可能です。

一般的な太陽光発電と異なり、ソーラーシェアリングは農地の上に専用の支柱や太陽光パネルを固定させる部品を取り付けます。またパネル同士にすき間を空け、土壌に日光が当たるように設置していきます。

農業を継続しながら農業用機械や設備に必要な電力を太陽光発電でカバーできるのが、ソーラーシェアリングの強みです。さらに自家消費によって電力会社からの買電量を削減できるため、電気料金を削減できるだけでなく、火力発電由来の電力消費量削減による二酸化炭素排出量削減効果を見込めます。

個人や企業に導入しやすい方法は非FIT型太陽光発電

個人農家や農業企業が脱炭素を目指す場合は、非FIT型太陽光発電の導入を検討してみるのがおすすめです。続いて、非FIT型太陽光発電の強みについて解説します。

環境価値のある電力で脱炭素経営の費用負担をカバー

脱炭素化による省エネ設備の導入などを行なう場合は、費用負担がかかります。非FIT型太陽光発電を活用した環境価値の売買で収益を得れば、脱炭素経営の費用負担を少しでも軽減できます。

FIT制度は、国による再生可能エネルギーの導入支援制度です。認定を受けた場合は、固定単価で一定期間売電を継続できます。

ただし、FIT型太陽光発電で発電された電力には環境価値がありません。FIT制度による電力コストの一部は再エネ賦課金でカバーされていて、国民の電気料金に上乗せされています。また、再エネ賦課金による買取コストの負担によって、FIT電力は環境価値ゼロとみなされています。

非FIT型太陽光発電を運用すれば、発電した電力に環境価値が含まれているため、カーボンクレジットによる収益を見込めます。カーボンクレジットは、二酸化炭素排出削減実績(環境価値)を取引できる制度で、売却益を得られます。

自家消費による電気料金削減効果と合わせれば、固定費の削減および脱炭素経営に関する予算の確保を効率的に進められます。

バイオマス発電より費用を抑えられる

非FIT型太陽光発電は、バイオマス発電より初期費用を抑えられるのが特長です。

バイオマス発電の初期費用は、燃料の種類や設備規模によって変わるものの、出力1kWあたり30万円台から200万円程度です。一方、太陽光発電の初期費用は1kWあたり23.6万円とバイオマス発電より安く、なおかつ燃料の調達や管理が不要です。

また運転維持費に関しては、バイオマス発電でkWあたり年間3~5万円程度、太陽光発電なら1kWあたり5,000円と大きく異なります。

費用負担という点でも、非FIT型太陽光発電の方が導入しやすい設備だと言えます。

参考:経済産業省

農業の規模に合わせて柔軟に設計可能

農地の面積や形状に合わせて設計しやすいのが、非FIT型太陽光発電の強みと言えます。

非FIT型太陽光発電の場合は、電力会社の送配電網と接続しなくとも運用できます。そのため、電柱や電線の設置工事に伴う工事費を負担せずに済みます。

設備規模に関しては、出力10kW未満の小規模な設備から出力1,000kW以上のメガソーラークラスまであり、予算や設置場所の面積などに応じて検討できます。

さらに、ソーラーシェアリングを選択すれば、農地の上で太陽光発電を稼働できるため、新たに土地を探す必要もありません。

農業の脱炭素化には再エネの活用も重要!

水田の中干し期間延長といった土壌からの温室効果ガス削減を目指したり、省エネ設備の導入で二酸化炭素排出量を削減したりといった方法が、農業における脱炭素方法です。また、非FIT型太陽光発電は二酸化炭素排出量の大幅な削減効果を見込める他、電気料金削減効果も得られるのがメリットと言えます。

農業の脱炭素化の方法に悩んでいる方や農業活動から脱炭素を行うのが難しい方などは、今回の記事を参考にしながら非FIT型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。

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