EVシフトとは、ガソリン車からEV(電気自動車)への転換を目指す取り組み・動きのことです。脱炭素経営においても注目されており、太陽光発電などとも相性の良い取り組みです。今回は、国内外のEVシフトの現状や、メリット、課題、取り組み例について詳しくご紹介します。脱炭素経営に向けた情報収集を進めている方などは参考にしてみてください。
EVシフトとは?
EVシフトとは、ガソリン車など化石燃料を使用する車から、EVへ切り替える取り組みのことです。EV(Electric Vehicle:電気自動車)は、バッテリーに充電された電気で、モーターを駆動させることで走行できる車両を指します。
近年、世界的に脱炭素社会へ向けた流れが加速しており、やはりガソリン車・ディーゼル車から排出される二酸化炭素の削減に関する動きも多数あります。そこで注目されているのがEV(電気自動車)です。
EVは化石燃料を燃焼させなくとも走行できるため、ガソリン車やディーゼル車のように、二酸化炭素を含む温室効果ガスを直接排出しません。環境省の「2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(詳細)」によれば、部門別CO2排出量では自動車を含む「運輸部門」が18.5%を占めており、自動車へのアプローチは意義のある取り組みだといえるでしょう。
出典:環境省「2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(詳細)」
海外のEVシフトに関する現状
EUを中心とした欧州では、EVシフトに向けた政策の決定も目立ち、自動車メーカーや消費者の意識も強くなってきています
以下にEVシフトに関する発表を行っている国をいくつか紹介します。
国 | 方針 |
---|---|
ノルウェー | 2025年までにガソリン車・ディーゼル社の新車販売禁止の方針を掲げている |
スウェーデン | 2030年からのガソリン車に関する新車販売禁止を発表 首都のストックホルムは、2025年にガソリン車・ディーゼル車の通行が禁止する方針 |
イギリス | 2023年9月、2030年までのガソリン車・ディーゼル車の新車販売禁止を2035年に延期することを発表 |
フランス | 2040年までにガソリン車・ディーゼル車の新車販売禁止を行う |
ドイツ | 2030年までにBEV(バッテリー式電気自動車)を1,500万台普及させる方針 |
アメリカ | 一部の州では2035年までのガソリン車新車販売禁止を発表 |
中国 | 2035年までに新エネルギー車(EVやPHVなど)への転換を発表 |
しかし、2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻で電気料金が急騰したほか、電力供給量やEVの航続距離に課題も見えてきたことから、EVシフトの見直しに関する動きも起きています。スウェーデンなどEV車のシェアが高い国では、導入を促すための補助金政策が打ち切られたり、要件が変更されたりしてきています。
EV市場の伸び悩みから、欧州の自動車メーカーは戦略の見直しを迫られており、EVシフトへの影響も懸念されています。一時は急激に加速したEVシフトの波でしたが、現在は少し落ち着いてきているといえるでしょう。
国内のEVシフトに関する現状
国内の自動車に関する動きは、海外と比べて遅れているといわれています。しかし、国内にEVシフトの動きがまったくないわけではありません。ここからは国内のEVシフトに関する現状を解説します。
海外と比較すると遅れている傾向
EVの販売割合がおよそ9割であるノルウェーの積極的な取り組みと比較すると、日本のEVシフトは遅れているといわれています。
一般社団法人日本自動車販売協会連合会の『燃料別登録台数統計(2024年1月~9月)』によれば、2024年9月の日本のEV登録割合は、全体の1.6%(※乗用車)でした。対して、欧州自動車工業会(ACEA)の『New EU car registrations by power source』によると、同月のEUにおけるEV登録割合は17.3%(※乗用車)であり、やはりここでも無視できない差があります。
詳しい理由は後述しますが、充電設備の整備に時間がかかっていたり、車両価格が高かったりして、世界に比較すると思うようには進んでいないというのが現状です。
しかし、国としてはEV化を進めていく方針が決定されており、普及のための取り組みにも着手しています。2035年までに電気自動車(EV、PHV、HV含む)に関する新車販売100%(※乗用車)の方針が発表されており、充電設備30万口の整備目標なども設定されました。
補助金制度についても、車両に対するCEV補助金から、充電設備・V2H関連補助金も実施されています。
トヨタなどはEVだけでなく新たなエンジン開発に進む
自動車の脱炭素化に対する取り組みは欧州・中国のメーカーが目立っていますが、日本の自動車メーカーも動いています。2024年5月、自動車メーカートヨタとSUBARU、マツダは、エンジンとモーター駆動のPHVやHV向けのエンジン開発に着手することを発表しました。
EV用のモーター開発だけではなく、エンジンの小型化による燃費向上、カーボンニュートラル燃料の開発など、エンジンの改良による脱炭素化を目指す方向です。
EVシフトという観点から見ると、海外メーカーと方向性が大きく異なる内容ですが、目指すところは同様です。このように国内の自動車メーカーでも、独自路線で脱炭素化・環境負荷へ向けた取り組みに着手しています。
ホンダはEVシフトに向けた新モデルを発表
2024年5月16日、自動車メーカーのホンダは、「2024 ビジネスアップデート」の会見でEVシフトに向けた約10兆円もの投資や新モデルに関する発表を行いました。
トヨタやマツダなどとは異なり、EVに関する投資や技術開発の強化に力を入れる方向性です。たとえば、EVの新モデル「ホンダ0」シリーズに関しては、2030年までに7車種販売される予定で、開発製造に力が入っています。また、2025年度中には超小型モデルが販売されます。
国内のEVシフトが進んでいない理由
前述のように、各自動車メーカーはEVシフト・脱炭素化に向けて動いていますが、消費者サイドでのEV需要はそれほど増加しておらず、ディーラーも積極的ではないというのが国内の現状です。こうした現状には充電設備の整備状況やEVそのものの魅力、寒冷地での走行などに課題があることも関係しています。
ここからは、国内のEVシフトが海外と比較して進んでいない理由を詳しく解説します。
充電設備の整備が遅れている
EV向け充電設備の設置が遅れていることが、国内のEVシフトを遅らせている理由のひとつとされています。
EVで走行するためには専用の充電設備で、車載バッテリーへ充電する必要があります。バッテリーはスマホの充電と同様、消耗すれば減りも早くなりますし、航続距離(走行距離)に対して充電設備の数はそれほど充実しているとはいえないのが現状です。生活圏の走行なら問題なくとも、遠乗りでは不安があります。
こうした現状に対し政府は、充電設備(充電スタンド)の設置台数を2030年までに30万基(公共用含む)に増やすことを宣言しています。2024年時点の設置台数は増加傾向にありますが、約4万基しかありません。
都市部の幹線道路では、需要がひっ迫する週末・連休等で充電渋滞が生じています。また北海道や山間部等で充電器がない空白地帯もあるなど、あきらかに整備が追い付いていません。EVを気軽に利用できる環境へ変えるためには、充電設備の設置台数をさらに増やす必要があるのです。
ガソリン車を超える魅力を打ち出しきれていない
EVシフトが進まない理由には、車両本体の魅力を打ち出しきれていないところも関係しています。消費者の需要が増えなければ、いくら販売台数が増えてもEVシフトは進みません。
EVの人気が低い理由のひとつは、車両価格の高さです。EVはガソリン車よりも車両価格が高いです。たとえば、トヨタのEV、bZ4Xシリーズの「Z」は、600万円(税込)で販売されていますが、同社のハリアーは、ガソリン車で約300万円台から400万円台の価格帯です。欧州や中国はこうした価格の高さを多額の補助金でカバーし、普及を後押ししてきました。
また充電時間の長さも課題です。EVの充電時間は、普通充電器で数時間かかります。旅行や営業時など、すぐに出発したい場合には不便に感じられるポイントでしょう。急速充電器を利用すれば1回30分で充電できるものの、ガソリン車の給油時間よりは長くかかってしまいます。
寒冷地における走行に課題がある
寒冷地では暖房の使用が欠かせません。しかし、暖房をかけるとEVの消費電力も増加するため、その分走行できる距離が減ってしまいます。ガソリン車の暖房は排熱を利用しているため、暖房機能を使用することで追加の燃料消費が必要になることはなく、走行可能距離も影響を受けません。
しかし、よく指摘される寒冷地における立ち往生問題については、EV車もガソリン車もリスクは変わりません。万が一積雪によって立ち往生した場合、体温を守るために暖房をつけ続けて救助を待つことになります。暖房をつけっぱなしにした場合、ガソリン車も電気自動車も、エネルギー残量が同程度であれば、いずれもおよそ1日でエネルギー不足になるからです。
一方でEVシフトが失敗といわれる理由
充電インフラ不足などいくつかの課題が見えてきたことで、EVシフトの動きにも変化が起きています。
EVシフトに積極的なヨーロッパでは、2022年頃よりEVの方針に関する軌道修正が相次いでいます。たとえば、メルセデス・ベンツは、2030年までの全車EV(BEV)化を撤回し、エンジン開発を進めていく方針に変わっています。
Appleでは、EV開発および新規参入の取りやめを発表しています。自動車メーカーのフォード・モーター・カンパニーは、EVの生産縮小およびHV(ハイブリッド車)への注力を発表するなど、いずれもEVシフトからの大幅な方針転換です。
EVシフトの失速感が見られる理由には、電気料金の値上げと再生可能エネルギー由来電力の供給量不足、EVの需要と供給のズレ、充電インフラ不足といった課題が関係しています。
EVシフトに関する今後の取り組みと展望
2021年1月18日、日本政府は、新車販売の電気自動車100%実現に関する方針を発表しました。EVだけでなくHV(ハイブリッド車)やPHV(プラグインハイブリッド車)なども含まれていますが、EVシフトに近づく取り組みといえます。
他にも経済産業省の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、商用車や乗用車における新車販売の電動車率に関する目標が定められています。乗用車については、2030年までの電動車100%という目標です。商用車は、2035年までに電動車20~30%、2040年までに100%とされています。
こうした取り組みによって、新車のラインナップにEVを始めとした電気自動車が並ぶようになれば、消費者の選択肢にも自然と電気自動車が挙がるようになることが期待できます。普及台数が増え、開発が進めば価格低下が進むため、多くの人にとっても手の届きやすいものになるでしょう。
EVシフトすることで得られるメリット
それでは企業がEVシフトへ取り組む場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは企業にとってのEVシフトについて解説します。
二酸化炭素の排出削減効果を得られる
二酸化炭素の排出削減は、企業にとって急務ともいえる課題です。気候変動問題の深刻化によって日本や世界では、脱炭素に向けた動きが加速しています。脱炭素とは、二酸化炭素の排出量0を目指す取り組みもしくは状態のことですが、信頼性や企業価値を高める上でも重要なポイントとなります。
具体的な削減目標を求められたり、脱炭素化が融資等の基準になったりしており、脱炭素化は企業としても決して無視できません。
企業として使用する営業車や運搬車両は、ガソリン車やディーゼル車が多いのが現状です。EVシフトによって社用車をEVへ切り替えれば、二酸化炭素を排出せずに走行できるため、脱炭素経営の手段の一つとして導入する企業が増えています。
振動や騒音が少ない
EVは振動や騒音を抑えられるため、運転手や乗車する人にとってもメリットになります。
EVには、ガソリン車やディーゼル車のようなエンジンが搭載されていません。あくまでモーターとバッテリーによってタイヤを回転させているため、エンジン特有の振動や音などが発生しないのです。
振動や騒音が減ることで、運転手のストレスを減らせるほか、お客様の送迎等に使用しても雰囲気を壊しません。
V2Hとの併用で蓄電池代わりになる
V2Hを併用すれば、EVを蓄電池としても活用することが可能です。V2H(Vehicle to Home)とは、交流・直流変換機能を持つ充電設備のことです。
EVに充電された電気は直流のため、交流の電力を使用する事務所や工場などへは供給できません。しかしV2Hを使用すれば直流の電気を交流へ変換でき、建物内のコンセントやその他設備へ供給することが可能です。災害時や停電時に活用できるようになります。
脱炭素経営には非FIT型太陽光発電の導入が重要
脱炭素経営およびEVの有効活用には、非FIT型太陽光発電の導入も重要です。非FIT型太陽光発電はFIT認定を受けておらず、電力を自分で消費することを目的とした太陽光発電を指しています。
ここでは、なぜ非FIT型太陽光発電がEVに必要なのか、EVとの併用によるメリットをわかりやすく解説していきます。
EVの充電による間接的な二酸化炭素排出も削減
EVと非FIT型太陽光発電を併用すれば、間接的な二酸化炭素排出量を削減できます。
通常EVの充電は、電力会社から供給されている電力を活用します。現在の日本の電力会社は火力発電を主としており、燃料を燃焼する過程で二酸化炭素を排出しています。火力発電由来の電力を消費すればするほど、二酸化炭素の間接的な排出量増加につながってしまうのです。
非FIT型太陽光発電は自然エネルギーを使用するため、発電時に二酸化炭素を排出しません。EVの充電に太陽光発電の電気を活用すれば、間接的な二酸化炭素排出さえも削減でき、より実体のともなった脱炭素経営が可能となります。
EVシフトの流れに関係なく運用できる
非FIT型太陽光発電は、EVシフトの流れに関係なく運用し続けられる設備でもあります。
EVシフトの社会的な動きは2022年頃から変化しつつあり、今後どのような流れへ変わるのか予測が難しいです。海外のようにEVへの補助金がなくなる可能性ないとはいえず、充電設備のために大がかりな投資をしてまでEVを導入するか悩む企業もいらっしゃるでしょう。
非FIT型太陽光発電は、EVを導入するか否かにかかわらず、脱炭素化に有効活用できる設備です。EVシフトに関する大きな変化が生じたとしても、無駄になりません。
非常時でもEVや蓄電池に充電できる
非常時でもEVや蓄電池へ充電できるのは、非FIT型太陽光発電の大きな強みです。
V2Hもあれば、車両に貯めた電気を自社の建物へ給電することも可能です。非FIT型太陽光発電には、停電時でも発電を行う自立運転モードが備わっており、天候条件さえそろえば、EV+V2Hや産業用蓄電池への給電や自家消費を続けられます
日本は地震などの災害が多い環境でもあるため、非常用電源装置として太陽光発電の導入を検討してみるのもおすすめです。
EVシフトの流れは過渡期にある!脱炭素経営には太陽光発電がおすすめ
EVシフトは、化石燃料を使用する車からEVへ切り替える取り組みを指しています。とくにヨーロッパでは、急速なEVシフトが起こっていたものの、2022年頃より慎重な動きも出てきています。
脱炭素経営に向けた取り組みを始める方や、EVの導入を検討している方は、E非FIT型太陽光発電についても検討してみてはいかがでしょうか。
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