日本は災害の多い国で、台風や豪雨災害による洪水被害も発生しています。地上設置型のソーラーパネルは洪水被害の影響を受けやすいため、さまざまな対策を施しておくのが大切です。
そこで今回は、ソーラーパネルおよび太陽光発電における洪水リスクや災害対策について詳しく解説します。メガソーラーを運用している方や浸水リスクのある地域でソーラーパネルを稼働させている方などは、参考にしてみてください。
ソーラーパネルが洪水被害に遭った場合のリスクとは?
地上設置型で太陽光発電を運用している場合は、豪雨や河川の氾濫による洪水・津波被害によってソーラーパネル(太陽光パネル)を含めた設備の水没リスクがあります。
まずは、ソーラーパネルが洪水や津波被害に遭った場合の具体的なリスクについて確認していきましょう。
発電が継続してしまうケースもある
ソーラーパネル(太陽光パネル)は、水没や浸水などによる被害を受けていても、発電を続けているケースがあります。
そのため、破損したソーラーパネルや周辺設備、周辺の水に触れた場合、感電の危険性があることに注意が必要です。
感電による影響は、電流の大きさと電気の流れる時間、通電経路(※電気が心臓を通るなど)でも変わります。例えば10mAの感電は、我慢できない・強い衝撃を受けるレベルです。
また、15~20mA程度では筋肉の硬直が起こり、自力で感電場所から離れられなくなります。さらに呼吸困難の状態に陥るため、長時間の感電に耐えられません。
電流が50mAまで上がると短時間の感電でも命にかかわり、100mA以上の感電では致命的な影響を受けます。
洪水被害に遭ったソーラーパネルに触れたり近付いたりしないようにすることは、自分の身を守るための重要な行動の1つです。
流木などとの衝突で有害物質の流出
洪水によって流木などがソーラーパネルに衝突すると、有害物質の流出を招く可能性もあります。
ソーラーパネル内部にはカドミウムや鉛、セレンといった、人体や環境にとって有害な物質も含まれています。そのため、ソーラーパネルの破損後、むやみに太陽光発電所周辺へ近付かないよう気を付けるのが大切です。
漏電による火災事故
洪水被害に遭った場合は、ソーラーパネルだけでなく周辺機器の破損による火災事故リスクにも注意が必要です。
例えば、ソーラーパネルやパワーコンディショナなどを接続している配線ケーブルが断線してしまうと、そこから漏電するおそれがあります。またパワーコンディショナの破損や、浸水などによる故障から火災につながる可能性もあるので、被害を受けた後はなるべく早く施工販売業者もしくは電気主任技術者へ連絡しましょう。
周辺に山がある場合は土砂災害に注意
太陽光発電所の設置場所周辺に山がある場合は、土砂災害に注意が必要です。
土砂災害とは、地すべりや土石流、がけ崩れといった災害の総称です。水没被害を免れたとしても、土砂災害に巻き込まれて架台ごと全損してしまう可能性があります。
洪水の発生している状況では、地面に大量の水が入り地盤の緩い状態へ変化します。すると、木々や岩などを巻き込みながら土壌ごと滑り落ち、土砂災害へ発展することも考えられます。
また、土砂災害による太陽光発電の流出で周辺に被害を与えてしまうと、賠償責任が発生する可能性もあるため、防災・保険で対策を講じておくことも大切です。
洪水が発生した場合の太陽光発電に関する対処法
続いては、洪水といった水害に太陽光発電所が巻き込まれた場合の対処法について詳しく解説していきます。
むやみに太陽光発電設備へ近付かない
太陽光発電所が洪水で破損したり水没したりした場合、設備に近付かないようにしましょう。
水没・破損したソーラーパネルや周辺機器の状況がわからない状態で近付いてしまうと、漏電による感電事故に遭ったり設備倒壊で怪我を負なったりする可能性があります。また洪水発生直後の場合では、木やがれきなどが流れて来るかもしれません。
そのため、まずは安全確保を優先することが重要です。
関係者以外が近寄らないようロープを張る
ある程度周辺の被害状況を把握できたり、土砂災害などのリスクが下がったりした場合は、太陽光発電所周辺にロープを張るのも被害拡大防止になります。
水没・破損したソーラーパネルや周辺機器を放置したままにしておくと、周辺に住んでいる方などが誤って近付いたり触れたりしてしまう可能性もあります。特にソーラーパネルの発電機能が残っていた場合は、このような状況であっても日中に発電してしまいます。
設備周辺にロープを張っておけば、第三者へ被害を与えるリスクを少しでも抑えられるので、危険な状態でないことが確認できたら準備するようにしましょう。
復旧作業は販売施工業者もしくは電気主任技術者が対応
洪水被害でソーラーパネルなどが破損・流出した場合の復旧作業は、販売施工業者もしくは電気主任技術に対応してもらう必要があります。
出力50kW未満の太陽光発電所に関しては、販売施工業者側へ連絡すれば破損した部品などの整理や撤去、復旧作業まで対応してもらえます。
一方、出力50kW以上の太陽光発電所を運用する際は、電気主任技術者を選任しなければいけません。また電気主任技術者が管理義務を担うため、被害状況の連絡を技術者に入れ、復旧に向けた準備を進めてもらうようにしてください。
出力10kW以上の場合は事故報告義務が発生
2021年4月に電気関係報告規則が改正され、出力10kW以上の太陽光発電所で発生した事故に関しても報告する義務が課せられるようになりました。
事故報告制度とは、以下4種類の事故発生時に管轄の産業保安監督部へ事故原因などを報告しなければいけない制度のことです。
事故の種類 | 説明 |
---|---|
感電事故 | 感電によって死亡、入院した場合を指す |
電気火災 | 対象設備の破損などが原因の火災を指す |
他者への損害 | 太陽光パネルなど指定の部品落下などが原因で、他者へ損害を与えた場合を指す |
設備の破損 | 対象設備の破損による稼働停止時を指す |
出典:経済産業省ウェブサイト
事故報告制度は、元々出力50kW以上の太陽光発電・出力20kW以上の風力発電のみが対象でした。しかし小規模な設備の事故件数も多い傾向があることから、出力10kW以上50kW未満の太陽光発電所も報告義務の対象設備になりました。
そのため、洪水被害によって感電や電気火災などが発生した場合は、24時間以内に管轄の産業保安監督部へ報告し、事故発生から30日以内に被害状況や原因などを示した資料を提出しなければなりません。
水没・破損したソーラーパネルなどはどうする?
洪水被害などにより破損したソーラーパネルは、専門業者によって処理してもらう必要があります。
それでは、水没・破損したソーラーパネルを撤去する方法についてわかりやすく解説していきます。
解体撤去の専門業者へ連絡する
水害などで破損したソーラーパネルについては、施工販売業者もしくは電気主任技術者へ連絡し、解体撤去の専門業者を紹介してもらいましょう。
ソーラーパネルを含む周辺機器は、産業廃棄物としてみなされています。つまり、事業者側で勝手に処分してしまうと、罰則を受けることになります。
また、産業廃棄物の解体撤去や運搬、処分などにはそれぞれ資格が必要なため、資格を持つ専門業者へ依頼しなければいけません。
撤去費用の見積もりを確認し納得できれば契約
解体撤去業者へ相談した後は、現地調査の後に見積りを作成してもらいます。見積りには、撤去作業費用や産業廃棄物の処分費用、運搬費用、足場代、原状復帰といった項目が記されています。費用やサービス対応に関して納得できれば契約手続きへ進みます。
契約後は、指定日に破損したソーラーパネルや周辺機器・部材の片付けや解体撤去、廃棄物の運搬作業を実施してもらう流れです。
なお解体撤去は、大きく分けて撤去と運搬の2種類で構成されています。撤去は、文字どおり対象の設備を解体し、運搬できるように整理するための作業です。運搬は、解体された産業廃棄物を中間処理場へ輸送するための作業を指します。
中間処理場は、最終処分場で処理できるよう焼却したり細かく粉砕したりするための施設です。
太陽光発電事業者側で負担する費用は、解体撤去・運搬に関する項目です。中間処理以降の費用は、産業廃棄物の処理業者側で負担します。
廃棄物処理業者がソーラーパネルなどを処分
産業廃棄物の処理業者は中間処理を行った後、リサイクル可能な材料と最終処分場へ埋めなければいけない廃棄物を分けたりします。
ソーラーパネルに関してはリサイクルやリユースするための研究が進められており、状態によっては再び活用されることがあります。
水害によって破損した太陽光パネルの解体撤去費用
続いては、水害によって破損したソーラーパネルの解体撤去費用について確認していきましょう。
解体撤去の費用相場は1kWあたり1.5万円前後
経済産業省の「太陽光発電設備の廃棄等費用の積立てを担保する制度に関する詳細検討②」によると、太陽光発電の撤去費用相場は、コンクリート基礎で出力1kWあたり1.4万円、スクリュー基礎で1.0万円とされています。
スクリュー基礎は、野立て太陽光発電にスクリュー杭(大きな杭)を打ち込むタイプの基礎です。一方、コンクリート基礎は、コンクリートブロックを地面に埋め込む基礎を指しています。
またその他を加えると、初期費用に対して5%程度の費用がかかる計算です。
出典:経済産業省ウェブサイト
費用の一部は廃棄費用積立制度の積立金でカバーできる
FIT制度の認定を受けながら太陽光発電事業を展開している場合は、廃棄費用積立制度によって、解体撤去費用の一部を積立金でカバーすることが可能です。
廃棄費用積立制度は、2022年7月の再エネ特措法改正によって新設されたFIT認定事業者向けの積立金に関する制度です。
簡単に説明すると、固定買取期間の終了年から10年前の年より毎月積立をします。積立金については、毎月の売電収入から差し引かれる仕組みです。
FIT認定を受けていない場合は、事業者側で撤去費用を捻出する必要があります。
太陽光発電を水害から守るには
水害からソーラーパネルおよび周辺機器を守ったり被害を軽減させたりするには、平時からさまざまな対策を講じなければいけません。
最後は、太陽光発電を水害から守る上で押さえておくべきポイントを紹介します。
ハザードマップなどで設置場所付近の災害リスクを知る
まずは、国や自治体などが公開しているハザードマップから、太陽光発電所および周辺地域の災害リスクを把握しておきましょう。
ハザードマップとは、洪水を含めたさまざまな災害リスクを地図に示したものです。文章による資料よりも被害の範囲やその他リスクを一目で理解しやすいため、防災対策を講じる上で欠かせないデータと言えます。
また、ハザードマップで洪水を含めた災害リスクについて把握しておけば、どのような被害を受ける可能性があるのか、事前に何をすべきか列挙することができます。
土のうなどの浸水対策を進める
河川の氾濫・豪雨など水から太陽光発電所を守るには、土のうなどで浸水被害を軽減できるよう対策を施したり、水害リスクの少ない高台などへ移設したりするのが大切です。
設備全体の移設が難しい場合は、パワーコンディショナや集電箱などを少しでも地面から高い場所に固定させるなどといった対策を検討してみましょう。
自然災害補償へ加入
メーカー保証に自然災害補償が含まれていない場合は、別途、自然災害に関する補償プランへの加入を検討するのも大切なポイントです。
自然災害補償では、主に台風や地震、水災や風災による損害を補償してもらえます。そのため、万が一ソーラーパネルやパワーコンディショナの撤去・交換が必要になった場合、各費用を保険でカバーすることができます。
O&M業者による定期的なメンテナンスと災害対策を依頼
洪水をはじめとした災害から太陽光発電の破損リスクを少しでも抑えるには、O&M業者に定期的なメンテナンスおよび災害対策に関するサポートを行なってもらうのも重要です。
O&M業者は、産業用太陽光発電専門の保守点検サービスを提供しています。
電気的な点検だけでなく、ネジのゆるみや接続部分・被覆などの破損を定期的にチェックしてもらえば、台風などによって架台やパネルが外れたり漏電リスクが発生したりするのを抑えることができます。
また業者によっては、災害対策や災害発生後の復旧作業まで対応しているケースもあるので、災害対策・復旧対応という点でも大きなメリットがあります。
ソーラーパネル設置後は洪水被害にも注意!O&Mで対策を進めよう!
太陽光発電をこれから導入する場合は、まずハザードマップを確認し、なるべく水害リスクの少ない場所へ設置するのが大切です。既に導入している時は、ハザードマップの確認に加えて、浸水対策や自然災害補償への加入、O&M業者の利用で被害や損害の軽減を図りましょう。
太陽光パネルを水害から守る具体的な方法を知りたい方や、太陽光発電設備の運用にかかるさまざまなサポートも含めて悩んでいる方は、O&M業者に相談してみてはいかがでしょうか?
とくとくサービスでは、産業用太陽光発電向けに設備の洗浄や定期点検、遠隔監視、修理交換といったプランを提供しています。また、防災対策・災害復旧に関するサポートも行なっています。
防災対策では、漏電チェックや発電所周辺の水路チェック、ネジのゆるみなどに関する点検や対策を進めます。また災害発生後の復旧作業は、水害だけでなく積雪や落雷によるパネル破損、土砂災害による設備全体の損壊から復旧させる作業もサポートいたします。
メンテナンスを含めたサポートサービスに少しでも関心をお持ちの場合は、お電話やメールでお気軽にご相談ください。