自社に太陽光発電を設置して自家消費を行なったり発電コストの安い電気を購入したりできれば、電気料金の削減につながります。しかし発電コストが安いかどうかは、さまざまなデータから慎重に比較する必要もあります。
そこで今回は、電源別の発電コストやおすすめの電源について詳しく解説します。太陽光発電の発電コストが気になる方や発電コストから電源を比較検討したい方などは、参考にしてみてください。
電源別の発電コストを比較
まずは、電源別の発電コストについて比較します。
発電コストは、電気をつくる上で発生するさまざまな費用をまとめたものです。資源エネルギー庁では、発電コストの計算などにモデルプラント方式を採用しています。
モデルプラント方式は、実際に設置された発電所のデータをベースに費用を計算し、総発電電力量で割った数値を1kWhあたりの発電コストとして算出する方法です。費用には、人件費や建設費、運転維持費などが含まれています。
以下に、2020年の発電コストを紹介します。
【資源エネルギー庁試算、1kWhあたりの発電コスト】
火力発電 |
石炭火力発電:12.5円 LNG火力発電:10.7円 石油火力発電:26.7円 |
原子力発電 | 11.5円~ |
太陽光発電 |
住宅用太陽光発電:17.7円 産業用太陽光発電:12.9円 |
風力発電 |
陸上風力発電:19.8円 洋上風力発電:30.0円 |
水力発電 |
小水力発電:25.3円 中水力発電:10.9円 |
地熱発電 | 16.7円 |
バイオマス発電 |
混焼、5%:13.2円 専焼:29.8円 |
2020年の発電コストに関する試算では、石炭火力発電やLNG火力発電、原子力発電といったベースロード電源(常時一定量の電力を供給できる発電設備)の負担が抑えられている傾向があります。
また、再生可能エネルギーの中でも産業用太陽光発電や中水力発電、混焼型のバイオマス発電は、ベースロード電源に近いレベルまで発電コストが安くなりつつあります。
出典1:資源エネルギー庁ウェブサイト
出典2:資源エネルギー庁ウェブサイト
2030年の発電コスト試算
資源エネルギー庁の資料では、2030年の発電コストに関する試算も行なわれています。
続いては、2030年に発電所を建設した場合にかかる発電コストの予測を、電源別に紹介します
火力発電
火力発電は、石油・石炭・LNG火力発電に分かれています。
2030年の発電コストは以下のとおりです。(1kWhあたりの発電コスト)
石炭火力発電 | 13.6~22.4円 |
LNG火力発電 | 10.7~14.3円 |
石油火力発電 | 24.9~27.6円 |
化石燃料の価格は横ばいもしくは値上がりしていく見通しがあり、発電コストも同様の傾向で推移していく予測です。また、各メーカーでは水素発電など新たな火力発電の開発も進められていて、環境負荷の低減と発電の両立が行なわれる可能性もあります。
そのため火力発電所は、形が変わりつつ2030年以降も活用される見通しと言えます。
出典1:資源エネルギー庁ウェブサイト
出典2:資源エネルギー庁ウェブサイト
原子力発電
2030年の発電コストは、1kWhあたり11.7円以上とされています。2020年の試算と大きく変わらないため、発電コストの安価な方式です。試算に含まれている費用は、人件費や設置費用の他、放射性物質の拡散防止対策や格納容器や炉心の損壊防止といった、事故防止対策に関する項目も含まれているのが特徴です。
しかし、原子力発電には事故発生時のリスクが存在するため、発電コストだけでなく廃炉や除染、中間貯蔵、損害賠償などといった費用についても考慮しておかなければいけません。
そのため他の電源と比較すると、破損した場合の対処にかかる費用とリスクに関する課題が存在します。
出典1:資源エネルギー庁ウェブサイト
出典2:資源エネルギー庁ウェブサイト
太陽光発電
太陽光発電に関する2030年の発電コストは、以下のとおりです。
【1kWhあたりの発電コスト】
住宅用太陽光発電 | 8.7~14.9円 |
産業用太陽光発電 | 8.2~11.8円 |
住宅用太陽光発電は、出力10kW未満の太陽光発電を指しています。一方、産業用・事業用太陽光発電は、出力10kW以上の太陽光発電を指していて、主に法人や自営業の発電事業、個人の副業といった場面で用いられています。
資源エネルギー庁の資料によると、太陽光発電の発電コストは、これまで生産量の増加に伴い低下している傾向があります。そのため、2030年も同様の傾向で推移していくと予測されています。ただしパワーコンディショナ、架台、その他機器の費用は、太陽光パネルほど低価格化が進んでいないため、各種機器の価格変動も今後の発電コストにおいて重要なポイントと言えます。
出典1:資源エネルギー庁ウェブサイト
出典2:資源エネルギー庁ウェブサイト
風力発電
風力発電の発電コストは、以下のとおりです。
【1kWhあたりの発電コスト】
陸上風力発電 | 9.8~17.2円 |
洋上風力発電 | 25.9円 |
陸上風力発電は、文字どおり陸上に設置された風力発電設備を指します。一方、洋上風力発電は、湖や海上に設置されている風力発電設備で、洋上に浮かべる浮体式と海底に固定される着床式に分かれています。
資源エネルギー庁の資料によると、2030年の発電コストは2020年の試算と比較して2~10円程度低減される見通しです。国内の発電コストは海外よりも高い水準で、もし量産化などで生産コストなどが下がれば国際水準並みに落ち着く可能性もあります。また風車が大型化すれば、その分の発電コストを抑えられるものの、風力発電に適している国内の設置場所は限られています。
出典1:資源エネルギー庁ウェブサイト
出典2:資源エネルギー庁ウェブサイト
水力発電
水力発電の発電コストは、以下のとおりです。
【1kWhあたりの発電コスト】
小水力発電 | 25.2円 |
中水力発電 | 10.9円 |
小水力、中水力風力発電とは、ダムのような大型の建築物ではなく、ため池やプールといった小規模な設備、用水路の落差などを活用した水力発電のことです。比較的規模が小さく、大型の水力発電よりコスト面や施工管理といった点で導入しやすいと言えます。
資源エネルギー庁の試算では、2020年の発電コストとの差額は小水力発電0.1円、中水力発電0円と、ほとんど変わらない内容です。少なくとも建設費や運転維持費用などが上昇する見込みではないため、水力発電事業を検討している事業者にとっていい傾向と言えます。
出典1:資源エネルギー庁ウェブサイト
出典2:資源エネルギー庁ウェブサイト
地熱発電
地熱発電に関する発電コストの試算は、1kWhあたり16.7円です。2020年の試算と変わらないので、水力発電と同じく、設置費用の負担増加といったリスクは低い傾向にあります。
ただし、太陽光発電などより設置費用や設置場所などに関するハードルが高いため、導入の難しい再生可能エネルギー発電設備と言えます。
出典1:資源エネルギー庁ウェブサイト
出典2:資源エネルギー庁ウェブサイト
バイオマス発電
バイオマス発電の発電コストは、以下のとおりです。
【1kWhあたりの発電コスト】
混焼、5% | 14.1~22.6円 |
専焼 | 29.8円 |
バイオマス発電の混焼方式とは、微粉炭(石炭を粉砕したもの)と木質バイオマスを混ぜて燃焼させる発電方法のことです。既存の火力発電所を活用できるのが特長のひとつです。一方、専焼方式は、バイオマス燃料のみで燃焼させて、水蒸気から発電設備のタービンを回転させる方法です。
それぞれの発電コストは、中水力発電や地熱発電と同じく2020年の試算とほとんど変わりません。
出典1:資源エネルギー庁ウェブサイト
出典2:資源エネルギー庁ウェブサイト
電源別の発電コストからわかること
ここからは、電源別の発電コストからわかることを解説していきます。
再生可能エネルギーのコストは安くなる見通し
再生可能エネルギー発電設備の発電コストは、2030年にかけて横ばいもしくは安くなっていく見通しです。
そのため、再生可能エネルギーを活用した事業を展開したい企業には、メリットの多い環境と言えます。ただし、再生可能エネルギーの種類によって初期費用や運用方法、設置スペースなどに大きな違いがあるので、自社の予算や土地の所有状況、目的に応じて綿密に計画を立てていく必要があります。
太陽光発電は特に安くなる可能性がある
再生可能エネルギー発電設備の中でも、特に発電コストの安い発電設備は太陽光発電です。
資源エネルギー庁による2030年の試算では、産業用太陽光発電の発電コスト1kWhあたり8.2~11.8円と、最大1ケタまで下がっていく見通しです。他の再生可能エネルギー発電設備は2ケタ台の発電コストなので、コストパフォーマンスという点でも導入しやすいと言えます。
独自に電源を導入したり調達したりした方がいい理由
発電コストを比較した後は、独自に電源の導入や調達を視野に入れた方がいい理由を確認していきましょう。
災害発生時に非常用電源として役立つ
日本は、台風や地震など災害の多い国なので、企業も防災や減災に向けた対策を進めていく必要があります。
太陽光発電を設置しておけば、大規模災害による長期停電といった場合でもすみやかに電力供給を再開できます。また、他の再生可能エネルギーよりも柔軟に設備規模を調整できるだけでなく、設置場所に合わせて設計できるのが強みです。
地上設置型はもちろん、屋根やカーポート、水上への設置などにも対応しています。また、自社の敷地内に設置できない時は、遠隔地に設置した後、配送電網設備を通じて自社設備へ供給することも可能です。
地政学リスクによる燃料価格高騰が懸念される
日本は資源を輸入に頼らなければいけないため、資源国で起こるさまざまな事象によってエネルギーに関する地政学リスクが上がりやすい状況です。
例えば、2022年に起きたロシアによるウクライナ侵攻後、世界的に化石燃料の価格が上昇した結果、国内の電気料金値上げや燃料費調整額高騰につながりました。
さらに、2023年10月にはイスラエルとハマスによる紛争で、再び燃料価格高騰リスクが高まっています。
自家消費型太陽光発電の設置は、このようなエネルギーリスクを少しでも抑える上で重要な選択肢で、自社の固定費の負担削減が可能になります。
脱炭素経営につながる
太陽光発電は、脱炭素経営という点でも役立つ発電設備です。
脱炭素経営は、今やどの企業にも求められている方針で、気候変動対策や環境負荷に考慮されたサービスや製品づくりなどを進めていく必要があります。
しかし企業によっては、すぐに脱炭素経営へ転換できない事情もあります。
太陽光発電の場合は、自社のサービスや事業を大きく変更させなくとも設置運用でき、また発電した電気の自家消費で二酸化炭素の排出削減効果を得られます。
太陽光発電は発電コストの安さだけでなく電気料金削減効果も魅力
全量自家消費型太陽光発電を導入すれば、節電などよりも大幅な電気料金削減効果を図れます。
太陽光パネルの設置枚数や設置場所の日照時間などによって発電量は変わりますが、年間数10%の電気料金を削減することも可能です。
また節電とは異なり、自社の消費電力量を削減することなく負担を軽減できるため、通常どおり事業を継続できるのも嬉しいポイントです。
初期費用の回収期間は設置年から約10~15年で、補助金制度を活用すれば費用負担を軽減できます。例えば、「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」という国の補助金事業では、自家消費型太陽光発電を対象としています。
補助金額は1kWあたり4万円で、設備費用だけでなく施工費用なども補助の対象です。(オンサイトPPAモデルもしくはリースモデルで定置用蓄電池を導入する場合は1kWあたり5万円)
発電コストを抑えながら自社設備を導入するなら太陽光発電がおすすめ!
資源エネルギー庁から公開されている各電源の発電コストは、2030年にかけて横ばいもしくは安くなっていくケースも見られます。中でも太陽光発電は、1kWhあたり1ケタの発電コストまで低下していく見通しです。
発電コストを抑えられる発電設備を活用したい方や電気料金負担に悩んでいる方は、今回の記事を参考にしながら全量自家消費型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
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