商業施設の中でも複合型の商業施設はテナントごとに営業しているため、施設内で共通の電気代削減策を講じるのが難しいという側面があります。しかし太陽光発電を導入すれば、施設内での節電を無理に行わなくとも電気代を削減することが可能です。
そこで今回は、商業施設に太陽光発電を設置するメリットや注意点について詳しく解説します。商業施設を運営している企業などは、参考にしてみてください。
商業施設で太陽光発電を導入するメリット
まずは、商業施設で太陽光発電を導入する主なメリットについて紹介していきます。
消費電力量の無理な削減を行わずに電気代を削減
太陽光発電で発電した電気を自家消費・売電すれば、商業施設内で無理な節電を行わなくとも電気代負担を削減することが可能です。
商業施設における節電の場合、照明の明るさ調整、空調設備の使用時間削減や温度設定の調節などといった対策に取り組みます。しかし、このような方法はお客様の快適さを損なうリスクがあり、実行しにくい側面もあります。
太陽光発電の設置後、FIT制度を活用すれば20年間固定の単価で売電を継続できるため、一定の収益を電気代に充てやすいと言えます。
さらに自己託送方式(遠隔地から自社の施設へ電力を供給)や敷地内・屋上へ設置した後に自家消費を選択した場合では、買電量(電力会社からの電力購入量)を直接削減できます。買電量を直接削減できれば、電力使用量や再エネ賦課金、燃料費調整額の負担も大幅に減らせます。
CSR活動や脱炭素経営につながる
CSR活動や脱炭素経営に活かせるのが、自社の商業施設に太陽光発電を導入する主なメリットのひとつです。
CSR活動は社会貢献活動を含む活動を指し、自社の企業価値に関わります。また、投資家や消費者などは企業の脱炭素化も重視しており、脱炭素経営へシフトしなければ信頼性や事業の売上にも影響するかもしれません。
太陽光発電の場合は、火力発電と異なり発電時に二酸化炭素を含む温室効果ガスを排出しないため、脱炭素に貢献できます。また原子力発電のような放射能汚染リスクもなく、人や環境に配慮された電力だと言えます。
屋上や屋根設置なら屋上の防水シート保護につながる
商業施設の屋上・屋根に太陽光パネルを設置すると、防水シートを保護することも可能です。
シート防水の耐用年数は長くても15年程度で、ウレタン防水なら8~10年程度で劣化してしまいます。また屋上防水の劣化は、コンクリートのひび割れや雨漏りといった状態を引き起こします。
通常の太陽光発電の設置方法では、屋上防水の保護には直接つながりにくい傾向だと言えます。
ただし、フラットなタイプの架台(地面に対して平行に近い形状)を取り付ければ、紫外線から防水層を保護できる可能性があります。また、施工業者によっては防水層を傷つけることなく屋上に設置(アンカーを打ち込まない施工)しているので、このような方法であれば屋上防水の劣化を抑えながら導入できます。
商業施設で太陽光発電を導入する際の注意点
商業施設に太陽光発電設備を導入する際は、メリットだけでなく費用や維持管理負担といった点に関する注意点も把握した上で判断しましょう。それでは、商業施設に太陽光発電を導入する際の注意点をわかりやすく紹介します。
初期費用負担がかかる
太陽光発電の設置には初期費用がかかるため、予算の範囲内に抑えられるか綿密に計算しておく必要があります。
資源エネルギー庁の「令和5年度以降(2023年度以降)の調達価格等について」によると、屋根設置かつ出力10kW以上のシステム費用(2024年度)は、1kWhあたり15万円とされています。
出力100kW以上の太陽光発電を設置する場合、1,500万円前後の初期費用がかかる計算です。
しかし、太陽光発電の設置費用は年々安くなりつつあるので、以前と比較すれば購入しやすい価格帯だと言えます。また、一般的に太陽光発電の費用回収期間は10年程度で、自家消費や売電でカバーすることが可能です。
費用や利益、費用回収期間について気になる時は、まず太陽光発電の施工業者へ見積りを作成してもらいましょう。
和上ホールディングスでは、自家消費型太陽光発電の見積りから提案、設計、施工、保守運用まで総合的にサポートしています。費用を知りたい方も、お気軽にご相談ください。
出典:経済産業省ウェブサイト
維持管理に費用がかかる
太陽光発電の設置後は、維持管理の負担がかかるようになります。
太陽光パネルは一般に30年以上稼働可能なものの、定期的なメンテナンスや修繕が欠かせません。さらにパワーコンディショナなどの一部機器は、8~10年程度で交換しなければいけないこともあります。
ただし、出力50kW以上ならFIT認定されていなくとも法的に保守点検の義務化対象であり、また設備の放置は事故や発電量低下につながります。
そのため費用負担がかかったとしても、必要経費として専門業者へ保守点検の依頼を行いましょう。なお、メンテナンス作業そのものは専門業者で全て対応してくれるので、オーナー側は保守点検の作業負担について考慮する必要はありません。
売電では効率的に電気代負担を削減できない可能性も
太陽光発電の運用方式を考える際は、売電より自家消費の方がいい場合もあります。
前段でも触れたFIT制度は、一定期間中であれば固定単価で売電を行なえる国の支援制度で、太陽光発電のオーナーにとってメリットのある内容です。しかし、固定買取価格は年々下落していて、2024年度にFIT認定を受けると1kWhにつき12円です。(固定買取価格:出力50kW以上および屋根設置に適用される場合)
例えば東京電力の従量電灯Bは、120kWhまでは1kWhにつき30円と、固定買取価格より高い設定です。また、ほかの電気料金プランも1kWhにつき30円以上かかる傾向なので、売電による経済的メリットを得るのが難しい状況と言えます。
しかし自家消費であれば買電量を直接削減できるため、売電よりも大幅に電気代負担を軽減することが可能になります。
太陽光発電と同時に行なうべき商業施設の節電対策
ここからは、太陽光発電と並行して行なうべき商業施設における節電対策を紹介します。
氷蓄熱空調で工夫
商業施設の空調設備は日中に長時間稼働するため、電気代負担につながっています。
しかし、空調の稼働時間短縮や設定温度の過度な調整は、従業員やお客様の体調にも影響を与える可能性があります。
氷蓄熱空調の場合、夜間の電力で氷を作り、日中に冷水や氷を使用して電力使用量を抑えながら冷房を稼働できます。また、暖房を使用したい時は夜間に温水を作り、日中に電力使用量を抑えながら施設内を暖めることが可能です。
空調の電気代を削減したい時は、熱効率の高い氷蓄熱空調を検討してみるのもいいかもしれません。
消費電力の少ない照明へ切り替える
長年、照明を取り換えていないのであれば、照明設備を省エネタイプに交換したり、LED照明に買い替えたりしてみましょう。
特にLED照明は熱を発生させず、なおかつ白熱電球や蛍光灯より耐用年数が長く、消費電力量も抑えられます。さらに消費電力量の削減は環境負荷の軽減につながるので、脱炭素経営という点でもメリットがあります。
太陽光発電以外にも省エネ設備に注目してみるのが、自社の企業価値を向上させる上でも重要なポイントです。
移動設備の稼働率を抑える
商業施設の電気代負担軽減には、いかに移動設備の稼働率を抑えられるかもポイントになります。
商業施設の各階には、エスカレーターやエレベーターが稼働しています。しかし、エレベーターに関しては稼働率の低い時間帯であっても待機電力が必要であり、電気代の増加につながっています。
エレベーターの稼働率が低い場合はフル稼働させず、利用者数に合わせて稼働時間などを調整するのも節電方法のひとつです。
エスカレーターについては、事故防止という点も考慮してなるべく速度を落として稼働させるのが大切です。
商業施設に太陽光発電を導入する際は全量自家消費がおすすめ
前半でも軽く触れたように、商業施設で太陽光発電を導入する際は、売電ではなく全量自家消費で運用するのがおすすめです。
売電型の場合は、あくまで売電によって得た収益を毎月の基本料金・電力量料金・再エネ賦課金・燃料費調整額といった費用に充てるため、買取単価が高くなければ効率的に電気代を削減できません。
一方、全量自家消費なら電力使用量を維持したまま買電量を直接削減できますし、買取単価の変動による影響を受けずに済みます。そのため、売電型より効率的に電気代負担を削減することが可能です。
全量自家消費型太陽光発電を運用する際のポイント
続いては、全量自家消費型太陽光発電を運用する際に押さえておきたいポイントを解説します。
電気使用量に合わせた制御方法を定める
全量自家消費型太陽光発電を効率的に稼働させるには、電気使用量の多い時間帯に合わせて制御できるよう設計する必要があります。
特に商業施設の場合は、特定の時間帯に電力使用量が増える傾向があります。そのため、なるべく発電した電気を活用できるよう、蓄電池や出力制御機器で調整しましょう。
例えば、電力使用量を超える発電量を記録しそうな場合は、出力制御機器で発電を抑制することで太陽光発電の一時的な稼働停止を防げます。また蓄電池で余剰電力を貯めておけば、電力使用量の増加時に自家消費率を高めることが可能です。
高精度な制御機能を持ったパワーコンディショナを選ぶ
太陽光発電の自家消費で電気代を削減するには、高精度な制御機能を持ったパワーコンディショナを導入する必要があります。
パワーコンディショナは、直流・交流変換のほか、発電した電気の制御なども担っています。また前段でも解説したように、完全自家消費型太陽光発電の場合は電力使用量を上回る発電量を記録してしまうと、RPRという逆潮流防止回路が作動して一時的に発電を止めてしまいます。
そのため、パワーコンディショナを比較検討する際は、リアルタイムで電気使用量を検出し、なおかつスピーディに発電量を電気使用量に合わせて制御可能な高精度タイプにしなければいけません。
自社設置とPPAどちらにすべきか比較検討する
全量自家消費型太陽光発電の導入方法を検討する際は、自社設置とPPAのどちらにすべきか比較するのも大切です。
自社設置は、初期費用を自社で負担し、自社名義で所有・運用していく導入方法です。一方、PPAとは、PPA事業者所有の太陽光発電設備を自社の敷地内もしくは遠隔地に無償で設置してもらう方法のことです。
自社設置の場合は初期費用負担がかかる反面で、他社へ使用料を支払う必要はありません。さらに設備の改修や太陽光パネルの追加、パワーコンディショナの交換といった判断は、自社で行なえます。
PPAモデルは、PPA事業者へ一定期間契約料もしくは自家消費分の電気代を支払わなければいけないものの、初期費用や維持管理費用0円で運用できます。また、PPA側で設定されている電力量料金単価は電力会社の電気料金よりも安いので、自社設置と比較すると電気代削減率という点では低いですが、一定の電気代削減効果を得ることができます。
商業施設への太陽光発電導入事例
商業施設へ太陽光発電を導入している事例のひとつに、イオンモールでがあります。
2022年、全国にあるイオンモールのうち31の店舗で、自己託送制度を活用した自家消費型太陽光発電の運用が始まりました。屋上や屋根などに設置スペースがなくとも、自家消費による電気代削減効果を得られる仕組みです。
太陽光発電の設計から保守運用、O&Mなどは、太陽光発電事業者のエコスタイルが担っています。
ほかにも、2021年にアークランドサカモト運営のホームセンタームサシ名取店にオンサイトPPA型の自家消費型太陽光発電が設置され、年間電気使用量の約32%を削減できる見込みです。
このように全国各地で商業施設への太陽光発電設置事例が増えているので、脱炭素経営や電気代負担などに悩む事業者も1度検討してみるのがおすすめです。
商業施設への太陽光発電設置は電気代削減を含めたメリットにつながる!
全量自家消費型太陽光発電の商業施設への設置は、年間30%以上もの電気使用量削減効果を見込めます。また電気代削減のほかにも、二酸化炭素排出量削減による脱炭素経営と企業価値アップ、シート防水の劣化リスク軽減といったメリットを期待できます。
商業施設の電気代負担に悩む事業者は、今回の記事を参考にしながら全量自家消費型太陽光発電の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
太陽光発電の施工事例和上ホールディングスでは、全量自家消費型太陽光発電の設計・施工・保守運用まで一括サポートしています。また地上設置だけでなく、屋上や屋根設置、ソーラーシェアリング、水上設置、さらにPPAモデルといった多様な設置方法にも対応しています。
全量自家消費型太陽光発電に少しでも関心をお持ちの方は、お電話やメールからぜひお気軽にご相談ください。