グリーントランスフォーメーションを推進させるGXリーグでは、gx etsという排出権取引制度が始まる予定です。2023年4月から既に第1フェーズが始まっており、ルールなどに関する情報も公開されています。
そこで今回は、GXリーグのgx etsに関する特徴や第1フェーズの内容についてわかりやすく解説します。脱炭素家経営のためにGX関連の情報も調べている方などは、参考にしてみてください。
GXについておさらい
gx etsを理解するには、まずGX(グリーントランスフォーメーション)の仕組みやプロジェクト内容について把握しておく必要があります。
それでは、GXの意味や目的について確認していきましょう。
クリーンエネルギーを活用した社会を目指す
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、現在の化石燃料中心の産業や社会システムを、太陽光発電などといったクリーンエネルギー中心へ変革させる活動のことです。
天然ガスや石油といった化石燃料は、燃焼すると温室効果ガスが発生します。温室効果ガスは気候変動の原因とされていて、持続可能な社会を作る上で大きな問題になっています。
一方で、環境負荷を低減させるだけでは産業の成長につながらない可能性もあるため、社会の仕組みそのものをクリーンエネルギー中心に変えて、経済の成長や社会の発展を目指す必要があります。
そのため、政府ではGXを実現させるプロジェクトの立案や実行を進めています。
政府では2つのGXプロジェクトを進行中
政府で進められているGXに関するプロジェクトは、主に2つです。
1つは、GX実行会議です。
GX実行会議は文字どおりGXを実行するための会議で、ロードマップの策定やエネルギーに関する課題の解決に向けて、さまざまな計画を立案したり話し合いをしたりしています。
もう1つのプロジェクトはGXリーグです。
GXリーグは、クリーンエネルギーを主体とした経済・社会や脱炭素社会の実現を目的として、多くの企業と政府・自治体、大学や研究機関が共同で取り組む場所です。
同リーグで行なわれているのは、国が掲げている2050年のカーボンニュートラル達成に向けた対話、GX実現に必要な市場ルールの議論と形成、自主的な排出権取引の3点です。
より簡単にまとめると、GXの実現のために産官学連携で議論やルールの策定、テストを行なっているのがGXリーグの役割と言えます。
gx etsとは?
GXの目的や大まかな概要について把握した後は、gx etsの意味や特徴について確認していきましょう。
GXリーグにおける自主的な排出権取引制度
gx ets(Emission Trading Scheme)とは、GXリーグで構築された自主的な排出権取引制度および市場のことです。
クリーンエネルギーを中心とした社会および脱炭素を実現するには、温室効果ガスでもある二酸化炭素排出量を抑制する必要があります。自主的な排出権取引制度は、二酸化炭素の削減量や吸収量の売買を行なえる市場で、企業が自由に参加・取り組めることも大きな特長です。
例えば、二酸化炭素の排出削減目標を超える削減量を達成した企業は、超過削減枠として目標を超えた分をgx etsへ売却できるため、収益という点でメリットを得られます。
反対に削減目標を達成できなかった企業は、超過削減枠や適格カーボンクレジットを購入して、二酸化炭素削減目標に近づけたり未達成の理由を説明したりする必要があります。
第1フェーズから第3フェーズが設定されている
gx etsでは、第1フェーズから第3フェーズが設定されています。
第1フェーズは、いわゆる試験的な段階を指していて、2023年4月~2025年度まで実施される予定です。第2フェーズは本格的な稼働期間で、二酸化炭素の排出削減目標に関する第三者機関の認証、その他規制強化なども検討されています。
また第3フェーズでは、電力の脱炭素化に向けた発電部門の有償化などといった取り組みなども検討されている状況です。
GXリーグへの参画時期によってgx etsのルールや規制状況も変わるため、参画前に内容を確認しておく必要があります。
CO2排出量によってルールや規制が異なる
gx ets制度で注意すべき内容のひとつが、事業活動における二酸化炭素の排出量によって適用されるルールや規制なども変わるという点です。
GXリーグへ参画している企業のうち、2021年度の二酸化炭素の直接排出量「10万t-CO2e」以上の企業は、Group Gへ区分されます。一方、「10万t-CO2e未満」の企業は、Group Xへ区分されるルールです。
GXにおける直接排出量とは、自社の生産設備などから排出されているスコープ1に相当する二酸化炭素のことです。
各カテゴリのルールや規制については、後半で解説します。
第1フェーズ未達の場合でも罰則なし
gx etsの第1フェーズを終了した段階で、過去3年間の二酸化炭素の排出削減量が当初の目標に達していなかったとしても、罰則規定などはありません。また、未達成の場合に求められているのは、主に二酸化炭素の排出削減目標未達成の理由に関する説明と内容の公開です。
GXリーグへの参画リスクは抑えられていると言え、また参画によって自社の脱炭素経営を加速させられる可能性があります。
gx ets第1フェーズの概要
脱炭素経営を目指す企業の中で、GXリーグへ参画している企業もしくは今後参画する企業は、gx etsの第1フェーズから概要を確認して二酸化炭素の排出削減目標設定から取り組み、算定報告を含めた一連のルールや流れについて確認しておくのが大切です。
ここからは、gx etsの第1フェーズに関する主な取り組みの流れやポイントについて解説します。
プレッジ
gx etsの第1フェーズへ取り組む場合は、まずプレッジと呼ばれる二酸化炭素の排出削減に関する目標設定が必要です。
具体的には、2025年度と2030年度の直接・間接的な二酸化炭素の排出削減目標と、2023~2025年度(3年間)の排出削減目標を設定します。間接的な排出量は、電気やガスといったエネルギーを他社から供給されて使用した際に排出された二酸化炭素を指します。
また排出削減目標の他には、二酸化炭素の排出量に関する基準(過去の排出量)を定める必要があります。基準年度のルールは、Group GとGroup Xによって異なります。
Group G | Group X | |
基準年度排出量 |
原則2013年度 例外として2014~2021年度を基準年度にできる また、上記を基準にする場合は、基準年度を含む連続した3ヵ年度の平均値を用いる |
原則2013年度 例外として2014~2021年度を基準年度にできる また、上記を基準にする場合は、基準年度単年もしくは、基準年度を含む連続した3ヵ年度の平均値を用いる |
削減目標を設定した後は、GXダッシュボードというGXリーグ参画企業の取り組みに関する情報基盤への公表が求められています。
実績報告
gx etsの第1フェーズで二酸化炭素の排出削減期間に入った場合は、実績報告の段階へ入ります。
実績報告では、二酸化炭素の国内直接・間接排出量算定と報告が必要です。算定に関する原則は、国際的な基準のGHGプロトコルなどをベースに定められています。
- 正確性
- 透明性
- 一貫性
- 完全性
- 適合性
つまり、二酸化炭素の直接・間接的な排出量を正確にモニタリングし、情報にミスや漏れのないよう記録および特定する必要があります。また、ガイドラインに沿って資料をまとめたり情報の透明性を保ったりするのも重要なポイントです。
二酸化炭素排出量の算定期間は、毎年度4月1日~3月31日です。Group Xに区分されている場合は、任意の12ヵ月間で設定することが可能です。
報告期限については毎年度の10月末までとされています。Group Xで算定期間を任意の期間に調整している時は、終了から7ヵ月を経過する日までに報告しなければいけません。
またGroup Xに該当している場合は、算定結果に対する第三者検証を任意で実施できます。ただしGroup Gは第三者検証が必須なので、混同しないよう気を付けましょう。
取引実施
二酸化炭素の排出削減に関する自主目標を達成できなかった場合は、適格カーボンクレジット(JクレジットやJCM(二国間クレジット制度))や超過削減枠を購入するか、未達成の理由を説明する必要があります。
超過削減枠の売買に関しては、Group GとGroup Xどちらも認められています。ただし、GXリーグにおいて超過削減枠を創出できるのは、Group Gに区分されている参画企業のみです。
さらに、2点の要件を満たす必要があります。第1フェーズの二酸化炭素直接排出量が、NDC相当排出量(GXリーグ事務局で判定される値)よりも少ない状態でなければいけません。また、直接・間接排出量の合計排出量が、gx ets開始前の排出実績(GXリーグ事務局で定められている3ヵ年度の平均値)以下を保つ必要もあります。
レビューおよび第1フェーズ終了
目標達成や取引状況などの各種情報は、情報開示プラットフォームのGXダッシュボード上で適宜公開・更新していきます。
第1フェーズが終了した後は、GXリーグ事務局側で各企業の二酸化炭素排出量を算定および確認し、前段で解説した要件を満たす企業なら超過削減枠を創出できます。また、超過削減枠が付与されるケースもあります。
第2フェーズ以降の要件や取り組み、詳細な流れに関しては、今後国から提示される最新情報から確認しましょう。
超過削減枠の取り扱いに関する注意点
gx etsの超過削減枠は売買されるものなので、会計上の取り扱いなどに関しても細かく取り決めなければいけません。そのため、今後同制度の会計処理や税務的な取り扱いに関する取り決めが行なわれた際は、各ルールに沿って処理していく必要があります。
なお、JクレジットやJCMクレジットなど既存のカーボンクレジット制度に関しては、法的な規定、税務処理に関する基準や取り決めなどが行なわれているので、既存制度の規定や取り扱いから確認するようにしてください。
排出権取引にも役立つ非FIT型太陽光発電の特徴
gx etsとGXリーグ、排出権取引に関する今後の動きについて把握した方の中には、「今後同制度へ参画する際に温室効果ガスをどのように削減していくべきか」といった悩みを抱えている方も多いかと思います。
すぐに自社の生産設備や事業内容などを転換させるのが難しい場合は、先に非FIT型太陽光発電の導入を検討してみるのがおすすめです。
最後は、非FIT型太陽光発電の特徴とメリットを紹介します。
二酸化炭素排出量の削減を見込める
非FIT型太陽光発電を運用すれば、自社の二酸化炭素排出量を削減することが可能です。
電力会社から供給されている電力には、火力発電由来の電力も含まれています。そのため、電力を消費すればするほど二酸化炭素排出量の増加を招いています。
非FIT型太陽光発電はFIT認定を受けていない設備を指しており、発電した電気を売電しなくても問題ありません。(FIT制度:一定期間再生可能エネルギー発電設備の電気を電力会社が買い取る制度)
そのため、自社の生産設備や照明など各種設備や機器に電力を供給できるだけでなく、電力会社からの買電量と二酸化炭素排出量の削減を見込めます。
gx etsへの参画を検討する企業にとってもメリットが多いと言えます。
カーボンクレジットの取引にも活用可能
非FIT型太陽光発電の自家消費によって削減した二酸化炭素は、カーボンクレジットとして取引に活用することが可能です。
前半でも紹介したように、カーボンクレジットとは二酸化炭素排出削減実績を証明書にしたもので、国内のJ-クレジット制度などで売買できます。
購入した企業は自社の二酸化炭素削減実績に追加できるため、脱炭素経営やGXなどで役立ちます。一方、カーボンクレジットを創出している企業は、J-クレジット制度などでの取引で売却益を得られます。
より柔軟な運用法を求めている企業は、FIT制度の規制による影響を受けない非FIT型太陽光発電を検討してみるのがおすすめです。
gx etsへの参画を目指す場合は太陽光発電の活用も重要
gx etsはGXリーグ内の自主的な排出権取引制度で、2023年4月から始まっています。二酸化炭素の排出削減目標を達成したGroup Gの中で要件を満たした企業は、超過削減枠をGXリーグ内で創出し、二酸化炭素排出削減目標未達成の企業へ売却できます。
gx etsは第1~第3フェーズまで予定されていて、今後ルールや規制などが追加・明確化されていきます。
脱炭素経営へ切り替えたいもののどうすればいいかわからない方などは、この機会に非FIT型太陽光発電を導入してみてはいかがでしょうか。
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