工場内の省エネ対策は、企業に求められている脱炭素経営につながります。また、企業価値向上や電気代削減などさまざまなメリットが得られるため、工場を所有している企業にとって取り組むべき対策です。
そこで今回は、工場における省エネ対策や簡単にできる対策、アイデアについて詳しくご紹介します。工場の省エネ対策について悩んでいる工場長や事業者などは、参考にしてみてください。
工場の省エネ対策が必要な理由
工場では、主に電気や熱といったエネルギーを大量に消費しているため、エネルギー調達コストはもちろん、二酸化炭素の排出といった環境への負担も大きい状況です。
また、日本をはじめ世界的な脱炭素および環境へ配慮した経営への転換が始まっているので、工場のエネルギー消費や環境負荷という点も見直さなければいけない状況です。
そのため工場を稼働している企業は、この機会に省エネについて検討する必要があります。
省エネとは、限られたエネルギーを効率よく活用していく方法・対策のことです。工場の省エネ対策は複数あるので、自社に合った方法を見つけていきましょう。
工場の省エネ対策で得られるメリット
省エネ対策の必要性について把握した後は、対策を進めていくことで得られる具体的なメリットを確認していきましょう。
脱炭素経営につながり企業価値を向上させる
工場の省エネ対策を継続すれば脱炭素経営につながり、なおかつ自社の企業価値を向上させることが可能です。
脱炭素経営とは、主に気候変動対策を考慮した経営のことです。例えば、再生可能エネルギー設備を導入し、電力消費に伴う二酸化炭素の排出量を削減する取り組みは、脱炭素経営をベースにした事業活動と言えます。
また自社の脱炭素化は、取引先や投資家、消費者などからの信頼性向上につながるほか、企業価値向上といったメリットも得られます。特に近年は、SDGsや世界的な脱炭素化といった流れによって、脱炭素経営に取り組んでいるかどうかも注目されています。
そのため工場の省エネ対策は、自社の売上やブランド力を伸ばす上で欠かせない取り組みになってきています。
コスト削減効果を得られる
工場の省エネ対策は、電気代をはじめとした光熱費削減につながります。また、コストの削減効果を得られれば相対的に利益を改善できるため、自社の業績向上という点でも見逃せません。
さらに近年は物価や電気代・ガス代の高騰が続いており、コストを削減できる省エネ対策に取り組むメリットは大きいと言えます。
設備の負担を軽減させられる
省エネを重視した行動の意識付けや省エネ対策は、各種設備にかかる負担の軽減につながります。
例えば、使用していない会議室などの照明を消すよう従業員に意識付けできれば、LEDや蛍光灯などの照明設備にかかる負担を軽減させ、より長く使用できる可能性があります。
また、コンプレッサーやボイラーの定期メンテナンス、生産設備のこまめな清掃・メンテナンスといった活動は、エネルギー効率の向上だけでなく故障リスクの低下といったメリットも得られます。
事業の効率化につながる
省エネ対策は無駄なエネルギーを削減する取り組みなので、工場内の生産・加工工程、資材や部品・製品管理、品質管理業務など、各部門の課題を洗い出す作業につながります。
結果的に事業の効率化が実現でき、光熱費削減だけでなく売上アップや従業員の労働時間短縮、生産数増加などといったメリットを得られる可能性があります。
自社の生産効率について課題が残っている場合は、省エネ対策によって効率化を目指してみるのもおすすめです。
工場のシステムに関する省エネ対策
ここからは、工場のエネルギーシステムに関する省エネ対策を紹介します。
デマンドコントロールで電力使用量の調整
デマンドコントロールは、電力使用量の多い時間帯で各種設備の電力使用量を抑えるための施策を実施したり、電力使用量の少ない時間に電力を貯め、使用量の多い時間帯に自家消費したりといった、ピークカット・ピークシフトの考え方で実施します。
大量の電力を消費する工場では、高圧電力・特別高圧電力という方式で電力契約が交わされています。両契約方法の場合、基本料金の計算に必要な契約電力を実量制もしくは協議制という方式で決めます。また契約電力を決める際は、過去12ヵ月間のデマンド値を基準にするため、デマンド値を抑えながら工場内のシステムを管理していく必要があります。
なお、デマンド値は30分に1回計測される電力使用量のことです。
このようなデマンドコントロールの考え方でも電力使用量を調整し、工場内の電気代を削減することが可能です。
再エネを活用している電気料金プランへの切り替え
省エネおよび脱炭素の視点から電気料金プランを切り替えることで、工場の省エネ対策につながる場合があります。
近年では、大手電力会社や新電力会社で再生可能エネルギー由来の電力を供給してくれるプランが提供されています。
火力発電では、発電時に二酸化炭素が排出されています。そのため、火力発電由来の電力の使用は、間接的に二酸化炭素を排出していることにつながります。
再生可能エネルギーは、発電時に二酸化炭素の排出ゼロもしくは低減されているので、間接的な二酸化炭素排出量の削減効果を得られます。また、現在契約しているプランより基本料金などが安ければ、電気代削減効果を見込めるのがメリットのひとつです。
エネルギーマネジメントシステムで設備状況の分析
特に工場内の設備数が多い場合は、エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
工場内に設置されている各種設備、ボイラーやコンプレッサー、照明などの機器は、それぞれ独立して稼働しています。そのため、工場全体でどの程度エネルギーを使用しているのか、どの時間帯にどれだけ使用しているのかといった細かいデータを確認するのが難しい状況です。
エネルギーマネジメントシステムは、各種設備機器のエネルギー使用量や使用時間帯などの細かなデータを一括管理・分析できるシステムなので、より具体的な省エネ対策案を導き出す上で役立ちます。
工場の設備に関する省エネ対策
続いては、工場の設備に関する省エネ対策を紹介します。
ポンプやコンプレッサーの消費電力削減
ポンプやコンプレッサーを導入している企業は、各設備の消費電力削減に向けた取り組みを検討してみましょう。
例えば、コンプレッサーに接続されている空気配管からの空気漏れは、見逃しやすく省エネという点でも改善すべきポイントです。そこで、工場内の稼働停止中にコンプレッサーを稼働および停止し、圧力の下がる時間の長さによって空気漏れしているかどうかを確認できます。
ほかにも以下のような省エネ対策があります。
- コンプレッサーの吐出圧力を下げて消費電力削減
- 清掃用のエアブローをパルスブロー(エアを小刻みに排出する仕組み)に切り替えて風量の削減
- インバータ制御による消費電力量削減
また、コンプレッサーやポンプなどを省エネ性能の高い製品へ切り替えることで、消費電力の削減、故障リスクの低減などが期待できます。
ボイラーの熱効率改善
ボイラーを導入している工場では、熱効率の改善をはじめとした省エネ対策を試みてみましょう。
例えば、高効率なボイラーと既存の設備を入れ替えるだけでも熱効率を改善できますし、無駄なエネルギー消費の削減効果を得られます。設置から数10年経過しているボイラーは経年劣化によるエネルギー効率の低下が懸念されるので、高効率なボイラーとの交換を検討してみましょう。
ほかには、以下のような省エネ対策を検討できます。
- 燃焼時の空気比を調整しガスの燃焼効率を向上させる
- 過剰な排水を抑えられるよう圧力調整などを施す
- ボイラーの蒸気圧力の測定と調整によるエネルギー効率改善
特にボイラーの圧力が高すぎると、蒸気の消費量を必要以上に増加させてしまいます。減圧による蒸気消費量の削減は、すぐに始められるだけでなく、さらに燃料の過剰消費を抑制することが可能です。
工場内の照明設備を見直す
工場内の照明設備を見直すのも省エネ対策としてメリットがあります。
蛍光灯・白熱灯を使用している場合は、少しずつLED照明へ切り替えることで明るさを変えずに消費電力量を削減できます。ほかには、人感センサーの導入によって照明の使いすぎを防ぐことが可能です。
また、従業員に対して休憩中の消灯を心がけるよう求めるだけでも、消費電力の削減につながります。
空調設備の調整や省エネ性能の高い設備へ切り替え
空調設備の省エネ対策を検討する場合は、主に使い方や高効率な空調への切り替えを実施してみましょう。
すぐに始められる省エネ対策は、温度設定と使用時間の調整です。冷房なら1℃高く、暖房なら1℃低く設定するだけで、消費電力量10%前後削減できます。また、2週間に1度のフィルター清掃を徹底することでも、目詰まりによるエネルギー効率低下および消費電力量増加を抑制できます。
さらに、空調の使用時間や頻度を抑えるために屋根の遮熱塗装、断熱材の充填といった建物の省エネ対策による熱エネルギーの消費量抑制を図るのも重要です。
工場の省エネに関する補助金制度
「省エネ設備への更新支援(省エネ補助金)」という国の補助金制度には、工場向けの補助金事業が組み込まれています。
省エネ設備への更新支援(省エネ補助金)内にある工場・事業場型は、生産ラインの更新といった大規模な省エネに対して補助金を交付してもらえる可能性があります。
補助対象経費は、省エネ対策によって発生した設計費と設備導入費用、施工費の3種類があり、中小企業の場合は補助率2分の1以内、大企業なら3分の1以内です。
なお、2023年度の公募期間は2024年3月27日~4月22日と比較的短期間なので、早めに申請手続きの準備を進める必要があります。また、翌年度に向けて準備を進める場合は、定期的に経済産業省の資源エネルギー庁HPや一般社団法人環境共創イニシアチブの最新情報をチェックしましょう。
工場の省エネ対策には全量自家消費型太陽光発電がおすすめ
工場の省エネ対策を進めていく上で注目すべき方法のひとつが、全量自家消費型太陽光発電です。既存設備をそのまま運用しつつ省エネ対策を進められるため、ほかの方法より負担が少ないと言えます。
それでは、工場の省エネ対策に全量自家消費型太陽光発電がおすすめの理由を解説します。
発電した電気を全て自社工場に供給可能
全量自家消費型太陽光発電を設置した場合、発電した電気を全て自社工場や建物に供給することが可能で、大幅な電気代削減効果を見込めます。
全量自家消費型とは、系統側へ連系しない状態で発電を行う方式のことです。系統側は、一般送配電事業者の管理している送配電網を指しています。売電を行う場合は、系統連系(系統側と接続)した上で電力会社へ電気を売却します。
全量自家消費型太陽光発電の場合は売電を行なわない運用方式なので、自家消費率を高められるのが強みです。また工場へ電力を供給すれば、照明から生産設備まであらゆる設備機器の電力需要をカバーできます。
電気代削減率は、太陽光パネルの設置枚数やパネルおよびパワーコンディショナの変換効率、日照時間などによって異なるものの、年間10%以上の削減効果を見込めます。
二酸化炭素排出量の削減効果
全量自家消費型太陽光発電の場合は、電気代削減と同時に二酸化炭素の排出量も削減できます。
太陽光発電の発電時は、火力発電と異なり二酸化炭素を排出しません。そのため、電力使用に伴う環境負荷を低減できますし、二酸化炭素排出量削減実績を活用した脱炭素経営を展開できます。
地上や工場の屋根などさまざまな場所に設置可能
全量自家消費型太陽光発電は、再生可能エネルギーの中でも設置場所を柔軟に検討できる再生可能エネルギーと言えます。
風力発電は変換効率が高いものの、一定以上の風速が得られる場所でなければ設置できません。また水力発電は、河川などをはじめとした水の落差や流れを利用した発電方法なので、水源の近くで行う必要があります。
全量自家消費型太陽光発電の場合は、自社の空いたスペースや駐車場のカーポート、工場・倉庫の屋根などに設置できます。また敷地内に空きスペースがない場合は、遠隔地に設置し、送配電網を経由して自社の建物へ送電する自己託送方を検討することもできます。
さらに、産業用蓄電池と併用すれば余った電力を貯めておき、夜間や電力使用量の多い時間帯に自家消費することが可能です。太陽光発電に適した産業用蓄電池は既に実用化されているので、導入しやすさという点でもおすすめだと言えます。
工場の省エネ対策には太陽光発電の活用も大切!
工場の省エネ対策は、自社の光熱費削減というメリットだけでなく、脱炭素経営にもつながる重要な取り組みです。また省エネ対策はさまざまで、エネルギーマネジメントシステムを活用した工場全体のエネルギー管理、コンプレッサーや生産設備ごとのメンテナンス・改修、使い方の工夫といった方法まであります。
中でも全量自家消費型太陽光発電は、工場内を改修する必要がなく、電気代削減だけでなく二酸化炭素排出量削減効果も得られるメリットの多い省エネ対策です。
自社の光熱費負担に悩む方や設備改修をすぐに進められず悩んでいる方は、今回の記事を参考にしながら全量自家消費型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
弊社和上ホールディングスは、全量自家消費型太陽光発電の提案から設計、施工、保守運用まで一括サポートしているのが特長です。そのため、短納期・低価格・高品質を実現することができます。
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