データセンターの消費電力が増加!理由や対策を解説

データセンターの消費電力が増加!理由や対策を解説

2020年に大流行した新型コロナウイルスによるリモートワークの普及、クラウドサービスの拡大などから、データセンターの消費電力が増加傾向で推移しています。そのため、データセンターを管理している企業によっては、再生可能エネルギーの導入を進めています。

そこで今回は、データセンターの消費電力増加に関する内訳や理由、削減策、再生可能エネルギーの活用事例について詳しくご紹介します。データセンターを所有している企業などは、参考にしてみてください。

データセンターの消費電力問題

まずは、データセンターにおける消費電力問題を確認していきましょう。

消費電力量が年々増加傾向

データセンターの消費電力量は、以下のような理由から年々増加傾向で推移しています。

  • インターネットの利用率増加
  • クラウドサービスの増加
  • 社会全体でデジタル化が普及
  • AI技術の発展

また、2020年頃から新型コロナウイルスの影響で働き方が大きく変わり、リモートワークを主体とした企業も増えました。リモートワークの普及は、データセンターの利用率および消費電力量の増加にもつながります。

データセンターにおける消費電力の内訳

データセンターで使用されている主な機器は、サーバ本体と電源装置、ストレージ、空調設備です。またデータセンターの消費電力は、各種機器の消費電力量を計算し、合計した数値で表します。

一般的な消費電力量の内訳は、サーバ本体が全体の約50%を占めており、次いで消費電力量の多い空調などの冷却設備や電源系統です。

また近年ではAI関連のサービスや技術開発が進み始めているため、さらにサーバの消費電力量は増加する傾向にあると言えます。なぜなら、AIを用いたシステムを稼働させるには膨大な処理を行なう必要があり、サーバ本体のCPUやGPU、メモリの消費電力量にも関係するためです。

データセンターの消費電力は世界でも問題に

データセンターの消費電力量増加に関しては、世界でも問題視されています。

国内と同様に、クラウドサービスやAI技術および関連サービスの増加、暗号資産の需要増加などが、データセンターの消費電力増加に関する主な理由です。

中でもAI技術に関する需要が高まるにつれ、関連サービスの普及に伴うCPUやGPUなどの処理能力増加および消費電力の急増といった可能性も想定されます。

また、国際エネルギー機関(IEA)のエグゼクティブサマリー内では、データセンターの消費電力量について以下のような予測を立てています。

Electricity consumption from data centres, artificial intelligence (AI) and the cryptocurrency sector could double by 2026. Data centres are significant drivers of growth in electricity demand in many regions. After globally consuming an estimated 460 terawatt-hours (TWh) in 2022, data centres’ total electricity consumption could reach more than 1 000 TWh in 2026. This demand is roughly equivalent to the electricity consumption of Japan. Updated regulations and technological improvements, including on efficiency, will be crucial to moderate the surge in energy consumption from data centres.

引用先:IEA (2024), Electricity 2024, IEA, パリhttps://www.iea.org/reports/electricity-2024, ライセンス:CC BY 4.0

簡単に説明すると、以下のような内容になります。

“データセンターの消費電力量は、2022年に約460TWhを記録しました。また、2026年までには1000TWh以上の消費電力量に達する可能性があるという予測で、日本の年間消費電力量に相当する膨大な数値です。

上記の計算では、2022年から3~4年程度で2倍程度に増加するため、急激な変化と言えます。このようなデータを見ても、データセンターを管理運用している企業は、今から電力需要の増加に対応するための電力調達先に関する模索、サーバの冷却設備増強といった対策が求められます。

データセンターの消費電力を削減するには

データセンターを管理運用している企業にとって、需要増加はメリットがある反面で消費電力量増加というデメリットにつながります。

そこでここからは、データセンターの消費電力を削減していくために押さえておくべきポイントを紹介します。

冷却設備を新しい設備に入れ替える

データセンターの消費電力量を少しでも削減するには、冷却設備を最新の設備に入れ替えるのもおすすめです。

サーバ内でのデータ処理量および消費電力量が増加すると、その分CPU、GPUなどへの負荷も増えていきます。すると各半導体の温度が上昇し、サーバ内部に熱がこもりやすくなります。

しかし、サーバに組み込まれている精密部品は熱や衝撃に弱く、温度上昇を放置していると誤作動や処理速度の低下、状況によって破損や発火といった事故につながるおそれがあります。

そのため、サーバには冷却設備が必要です。冷却設備は主に、冷却水を使用した「水冷式」と冷却ファンを用いた「空冷式」に分けられます。

最新の冷却設備は古いタイプよりも消費電力が抑えられていて、なおかつ効率的に冷却を行なう新技術も組み込まれています。つまり冷却設備の更新は、効率的な冷却という点だけでなく、サーバや冷却設備の消費電力量削減という点でもメリットがあるということです。

空調設備の運用方法を見直す

消費電力削減効果を高めるには、データセンター全体の冷却を行なう空調設備にも目を向けてみましょう。

サーバなどの機器は高性能化が進み、なおかつ小型化の傾向があります。そのため各部品や機器を密集させた設計であることが多く、熱のこもりやすい空間と言えます。また、排熱が滞るとサーバの処理速度低下・誤作動といった事象につながり、消費電力量増加を招くことも考えられます。

これらの理由により、空調設備で効率的に部屋全体の温度上昇を抑える必要があります。

例えば、サーバルームに温度センサーを設置し、温度上昇を検知した際に空調の温度設定を自動調整しながら冷却していく方法があります。ほかに、サーバラックの位置や隙間の調整、配線の整理などでも、空調の稼働率を抑えながら冷却効率を改善できる可能性もあります。

また古い空調設備を使用し続けている場合は、最新式に切り替えるだけでも空調の消費電力量を抑えながら効率的に温度管理することができます。

サーバおよび関連機器を最新化させる

サーバや周辺機器の切り替えは、消費電力量や排熱量を削減する上でメリットのある選択です。

例えば、処理能力や速度の高いサーバへ切り替えれば、設置台数を減らしてもデータ処理量を保つことが可能です。また設置台数が減ることで、サーバの消費電力量や発熱量を削減できる場合もあります。さらに温度上昇を少しでも抑えることができれば、空調や冷却設備の消費電力量削減効果も見込めるでしょう。

データセンター事業者は再エネの活用が求められる

データセンターを管理運用している事業者は、消費電力量だけでなく環境問題にも対応していく必要があります。

近年、環境問題の深刻化および世界的な脱炭素化の流れが加速しつつあり、どの企業も脱炭素や環境負荷低減に向けた対策を進めていかなければ、信頼性といった点でリスクを負うことが考えられます。

続いては、データセンター事業者も再生可能エネルギーの活用が求められている背景について詳しく解説します。

自社で電力を確保しなければ電力不足のリスクがある

データセンターの電力需要は、急激に増加していく可能性があります。

しかし、各データセンターの電力需要の増加に対して電力会社の電力供給量に関するバランスが取れなければ、停電リスクが起こり得ます。また電力会社からの買電に依存していると、災害などで停電した際に復旧に時間がかかるだけでなく、データ消失リスクなどもあります。

そこで、自社の再生可能エネルギー発電設備を導入しておけば、電力需給バランスの急変や災害などによる停電時でもデータセンターに電力を供給し続けることが可能です。また、電気料金の削減効果を得られるため、維持管理費用の負担を軽減できるのも強みです。

国がカーボンニュートラルな社会へ目指している

現在、国がカーボンニュートラル(脱炭素化)な社会を目指しているのに合わせ、データセンター事業者も再生可能エネルギーを導入することをおすすめします。

カーボンニュートラルとは、温室効果ガス排出量を実質ゼロにする取り組みや状態のことです。気候変動は年々深刻化しており、日本を含めさまざまな国でカーボンニュートラルを軸にした政策や規制が進められているのが現状です。

そのため、カーボンニュートラルに沿った事業を展開していかなければ、将来的に規制を受けたり自社の信頼性に影響を与えたりする可能性が出てくるかもしれません。そこで、再生可能エネルギー発電設備を導入することにより、温室効果ガスのCO2排出量削減につながるほか、カーボンニュートラルにも貢献することができます。

なお国や自治体では、再生可能エネルギーを活用したデータセンターの誘致および助成を行なっています。

このタイミングで再生可能エネルギー発電設備を導入すれば、助成金をはじめとした補助制度によって、負担を抑えながら運用することが可能です。

投資家や顧客がGHG排出量を重視し始めている

前段で触れたカーボンニュートラルをはじめとした環境負荷低減に関する世界的な流れ、国や自治体の動きに合わせて、投資家や企業などは投資先および取引先のGHG排出量(温室効果ガス)についても重視し始めています。

つまり、環境対策に力を入れている企業や脱炭素経営を進めている企業は、投資先としてみなされる可能性が上がることになります。また、顧客や取引先から信頼性の高い企業として見られるのも大きな特徴です。

再生可能エネルギーによるCO2排出量削減は、企業価値を上げる上でメリットの多い対策と言えます。

データセンター事業者の再エネ設置事例

2023年3月1日、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)では、松江データセンターパーク(松江DCP)の屋根に太陽光発電を設置しました。

年間の発電量は約340MWhで、松江データセンターパーク(松江DCP)の約7.0%相当とされています。また株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)は、自社のデータセンターに太陽光発電の設置を追加していく予定です。

データセンターの消費電力削減には太陽光発電がおすすめ

データセンターの消費電力削減には、再生可能エネルギーの太陽光発電をおすすめします。

最後は、データセンターに太陽光発電がおすすめの理由を紹介していきます。

ほかの再エネより初期費用が抑えられる

太陽光発電は、ほかの再生可能エネルギーより初期費用を抑えられる発電設備です。

経済産業省の「令和5年度以降の調達価格等に関する意見」によると、事業用太陽光発電の初期費用は1kWあたり16.2~24.7万円です。

一方、陸上風力発電の資本費に関する中央値は1kWあたり34.7 万円、200kW未満の中小水力発電なら1kWあたり225 万円です。ほかにも地熱発電の資本費に関する中央値は1kWあたり168 万円、木質等バイオマス発電は1kWあたり42.0

万円と、いずれも太陽光発電より負担が大きい傾向にあります。

初期費用負担を抑えながら再生可能エネルギーを導入したい場合は、太陽光発電から検討するのがいいでしょう。

出典:経済産業省ウェブサイト

屋根や地上設置など設置場所を柔軟に設定できる

太陽光発電の場合は、建物の屋根や地上など設置場所を柔軟に選択できます。

風力発電の設備は、風の強い地上もしくは水上に設置します。また水力発電の場合は、水路のある場所でなければ発電できず、地熱発電は地下に高温の蒸気が蓄積されていなければ発電事業を始められません。

バイオマス発電は設置場所に関する制約が少ないものの、バイオマス燃料の調達にかかる手間とコストを考慮しなければいけません。

その点、太陽光発電であれば燃料の調達が不要であり、光の当たりやすい場所なら地上でも屋根設置でも問題ありません。

蓄電池との併用で夜間も自家消費可能

太陽光発電は日中の晴れの日のみ発電可能な設備ですが、産業用蓄電池との併用によって長時間電力供給を続けることができます。

産業用蓄電池は事業用に開発された大型の蓄電池で、太陽光発電の回路と接続・連携します。例えば、太陽光発電で発電した電気を産業用蓄電池で貯めておき、夜間や消費電力量の多い時間帯に放電・自家消費できます。

太陽光発電や関連製品に関する開発は日々進んでいるので、発電量の安定性に関する課題も少しずつ改善しています。

このように太陽光発電は、常時稼働しなければいけないデータセンターにとっても相性の良い再生可能エネルギーだと言えます。

データセンターの消費電力増加に備えるなら太陽光発電の導入を!

データセンターの消費電力量増加は、国内でも大きな問題として扱われています。企業は脱炭素化・環境負荷低減が求められているので、空調や冷却設備の効率化や更新だけでなく、再生可能エネルギーを用いた電力の確保に加えて脱炭素経営を目指すことも大切です。

データセンターの電力調達方法に悩んでいる方などは、今回の記事を参考にしながら全量自家消費型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。

和上ホールディングスでは、さまざまな業種の企業様に向けて全量自家消費型太陽光発電の設計・提案、部材調達や施工、補助金制度の申請サポート、運用などに対応しています。

また、データセンターへの設置などにも対応しているので、発電量や設置場所、初期費用などさまざまな点で悩んでいる方は、お電話、Webフォームからお気軽にご相談ください。

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