法人が太陽光発電事業を導入するメリット・デメリットを解説

法人が太陽光発電事業を導入するメリット・デメリットを解説

気候変動問題やSDGsへの注目による脱炭素化の流れは、世界的に進んでいます。電力調達コストの高騰といった影響もあり、太陽光発電を導入している法人企業が増えています。そこで今回は、法人企業が太陽光発電事業を始めるメリットやデメリットについて詳しくご紹介します。太陽光発電事業に関心を持っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

法人で導入が進む太陽光発電事業の種類

法人で太陽光発電を導入する場合、活用発電した電気を電力会社に売ることで収入を得る「売電事業」を目的とするケース、発電した電気を自社で使用する「自家消費」を目的とするケースに分かれます。それぞれ解説します。

FIT、FIP制度を活用した売電事業

投資の一環として太陽光発電を導入する場合、FIT・FIP制度を活用して売電を行うことが多いです。FIT・FIP制度は、どちらも再生可能エネルギー発電設備の普及を目的とした国の支援制度です。以下に各制度の特徴を紹介します。

制度 制度概要 期間 適用範囲
FIT制度 ・一定期間、固定の単価で電力を買い取ってもらえる制度
・FIT制度の認定を受けた年度に設定された単価で固定される
・固定買取価格は毎年度更新され、太陽光発電の出力に応じて異なる
10年もしくは20年間 ・出力10kW以上50kW未満は地域活用要件を満たす必要がある(余剰分だけ売電可能)
・50kW以上250kW未満
FIP制度 電力市場の価格変動に補助金が上乗せされた価格で買い取ってもらえる制度 20年間 ・出力10kW以上50kW未満は、指定の条件を満たした場合にのみFIP制度の選択が可能
・出力50kW以上250kW未満はFIT制度とFIP制度のいずれかを選択可能
・出力250W以上はFIP制度のみ選択可能

FIP制度の場合は、FIT制度と異なり事前に発電量の計画値を電力広域的運営推進機関へ報告する義務が生じます。また、事前の計画値と異なる実績値を記録した場合は、インバランスコストとして費用負担する必要があります。

そのため、アグリゲーターという電力の需給バランスなどをサポートしてくれるサービスを活用しなければ、効率的な売電が難しい方式です。

一方、FIT制度は、インバランスコストや事前の計画値提出といった義務が免除されているので、多くの法人に導入しやすい方式といえます。ただし、固定買取価格は年々下落しているので、以前ほどは売電収入を伸ばしにくい状況になっています。

非FIT型太陽光発電を活用した売電事業

非FIT型太陽光発電とは、前段で紹介したFIT制度の認定を受けずに発電事業を行う方式のことです。

電力会社による電力の買取義務は発生しないため、売電先を探す必要があります。また、電力需給バランスの分析や発電量の調整なども自社で対応しなければいけないため、アグリゲーターのサポートを検討するのが大切です。

一方、メリットとしては、FIT制度やFIP制度の規制に振り回されることなく運用できる点や、環境価値のある電力をアピールできる点などが挙げられます。

FIT制度を活用して発電した電力は、火力発電や原子力発電由来の電力が含まれている電力市場にて売電されます。そのため市場から供給されているFIT電力は、環境価値のある電力としてみなされていません。

非FIT型太陽光発電を活用した発電事業では、需要家へ直接電力を供給する(PPA方式など)ことも可能なため、環境価値を保った電力を活用できます。

発電した電気を自家消費

法人の太陽光発電事業で代表的な活用方法といえば、全量自家消費型太陽光発電です。全量自家消費型は、太陽光発電から発電された電気のすべてを自社で消費していくことを指します。

これまでの主流は、FIT型太陽光発電による売電事業でした。しかし、固定買取価格が年々下落方向で更新され、電気代の高騰も続いています。2024年時点での電力量料金単価は、固定買取価格を超える水準で、売電収入による電気代削減効果も限定的です。

このため最近では、投資活動というよりも脱炭素経営の一環として、全量自家消費型太陽光発電を導入する法人が増えています。

法人の太陽光発電導入が進んでいる理由

続いては、法人の太陽光発電導入が進んでいる理由について、他の再生可能エネルギーと比較しながらわかりやすく解説します。

二酸化炭素排出量削減効果を得られる

事業用太陽光発電で発電された電気を活用すればするほど、二酸化炭素排出量を削減することが可能です。二酸化炭素排出量の削減は、企業価値や信頼性を高めていく上で欠かせないポイントでもあります。

しかし、二酸化炭素を含む温室効果ガスの排出を削減するためには、生産設備や作業工程、輸送方法など、さまざまな部門や取り組みを見直さなければなりません。

事業活動の見直しは時間とコストのかかる作業で、すぐに取り掛かれない法人も多いでしょう。太陽光発電事業は、自社の事業活動に関する方針変更や取り組みを変更しなくとも、脱炭素経営を進められるのが強みです。とくにリソース不足などで省エネ設備の導入や脱炭素につながる新規事業への転換が難しい法人企業にとっては、魅力的といえます。

電力会社から供給されている電力を使用しながら、少しずつ太陽光発電による発電量を増やしていけば、段階的に事業に使用する電気を再生可能エネルギーに置き換えることも目指せるでしょう。

他の再生可能エネルギーより導入コストを抑えられる

再生可能エネルギー発電設備の中でも、太陽光発電はとくに導入費用を抑えられる発電設備です。

実は太陽光発電は、他の再生可能エネルギーよりも大量生産が進み、広く普及しており、製造コストも低くなってきています。

経済産業省の「令和6年度以降の調達価格等に関する意見」によると、2023年における10kW以上の事業用太陽光発電の導入費用は、1kWあたり23.9万円(平均値)です。導入費用は年々低下傾向にあり、昨年比で3.3%低下しています。一方、風力発電、地熱発電、バイマス発電などは、1kWあたり30万円~100万円以上の費用がかかります。

このように太陽光発電は再生可能エネルギーの中でも、とくに導入コストの抑えられており、導入ハードルが低い発電設備といえます。

出典:https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/20240207_1.pdf

地上・屋根設置など設置場所を柔軟に検討できる

太陽光発電は、地上設置(野立て)だけでなく建物やカーポートの屋根、水上設置、ソーラーシェアリング(農地の上に設置)など、さまざまな場所に設置できます。

また、自社の敷地内に設置できない場合は土地を別途取得し、遠隔地に設置した太陽光発電の電力を自社へ送電および自家消費することも可能です。さらに太陽光発電の設備規模については、出力100kW未満の小規模な設備も設計・設置できます。

風力発電の場合は風の強い陸地もしくは海上でなければ発電できませんし、地熱発電ならマグマ溜まりのある場所でなければ設置・発電できません。設置場所の自由度が高いという意味でも、挑戦しやすい再生可能エネルギーです。

太陽光発電の施工販売業者が多い

国内導入量が多い太陽光発電は、メーカーや施工販売業者、O&Mサービス(メンテナンス専門)が多数存在していて、実績豊富な業者も多いです。そのため、他の再生可能エネルギー事業と比較した場合、導入しやすいでしょう。

太陽光発電事業には、事前のシミュレーションや太陽光パネルの設置角度・向き、設置後の運用管理など、専門技術や知識が求められます。しっかりと実績を積み上げてきた業者に依頼できる環境は、非常に重要です。

また業者の選択肢が多ければ、業者がサポート事業から撤退したり、トラブルがあったりした場合にも移行しやすいです。

法人が産業用太陽光発電を導入するメリット

ここまで再生可能エネルギーの中で太陽光発電が選ばれる理由をお伝えしました。続いては、法人が産業用太陽光発電を導入する具体的なメリットを経営・費用の2点から解説していきます。

費用面におけるメリット

太陽光発電事業の費用面におけるメリットは、以下の通りです。

  • 電気代を大幅に削減可能
  • 売電事業なら収益を得られる
  • 税制優遇措置を受けられる

太陽光発電事業を始めた場合、中小企業経営強化税制や中小企業投資促進税制といった税制優遇措置を受けられる可能性があります。たとえば、取得価額に対して10%もしくは7%の税額控除、設備費用の即時償却などといった優遇措置を受けられます。

また、とくにメリットの大きなポイントは、電気代削減効果です。

電気代の値上げは続いており、個人だけでなく法人にとっても大きな負担となっています。自家消費型太陽光発電を導入すれば、電力会社からの買電量を直接削減できるでしょう。電気代を押し上げている再エネ賦課金や燃料費調整額も負担の必要がなくなるため、長い目で見れば時勢に左右されない安定した電力を得られるようになります。

経営面におけるメリット

太陽光発電事業の経営面における主なメリットは、以下の通りです。

  • 脱炭素経営による企業価値アップ
  • 脱炭素経営で資金調達を有利にできる場合も
  • 太陽光発電を活用した新たな事業につながる
  • 停電時は非常用電源として活用

世界的な脱炭素の流れによって国内の法人企業も、脱炭素経営が求められています。企業が負う社会的責任を果たしているかどうかは、消費者や投資家などからも厳しく評価されています。太陽光発電による脱炭素化を推進させることで、責任感があり、信頼できる企業イメージにつながるでしょう。

また脱炭素化は企業単体のみならず、サプライチェーン全体で進められます。取引先と継続的な関係を維持するためにも、脱炭素化は無視できなくなってきています。

また一部の金融機関では、脱炭素経営に取り組んでいる企業を対象にした融資を扱っているところもあります。脱炭素化を進めることで資金調達が有利になるのです。

災害などで停電した場合の対策としても有効です。日本は、地震や台風といった災害の多い環境なので、防災や災害発生後の事業再開へ向けた対策まで見据えておく必要があります。太陽光発電の自立運転モードによって電力を確保できるため、サーバやPCなどに電力を供給してデータ復旧や保護が可能になります。生鮮食品を扱う企業では、鮮度維持の心配もなくなるでしょう。また、一定規模以上の太陽光発電なら、自社の生産設備や各種機器へ電力を供給し、事業活動を一部再開できる可能性があります。

法人が産業用太陽光発電を導入するデメリット

産業用太陽光発電を導入する主なデメリットは、以下の通りです。

  • 天候によって発電量が変動する
  • 導入時に初期費用がかかる
  • 設置後はメンテナンスや運用管理コストがかかる
  • 建物の状況によっては屋根設置ができない場合もある

導入時の初期費用はどうしても高額になります。補助金制度の活用や施工業者の相見積もりなどによって、抑えることも可能ためよくリサーチして検討するとよいでしょう。また自家消費や売電によって得た収益を活用すれば10~15年前後で費用回収できます。

メンテナンスコストは負担になりますが、電気料金の支払いなど本来発生するコストを考慮すれば、それほど大きな金額ではありません。経済産業省の「令和6年度以降の調達価格等に関する意見」によると、太陽光発電の運転維持費は全体の平均で1kWあたり5,200円です。

またオフィスや工場など、設置したい建物の耐震性や状態によっては、屋根に設置できないことがあります。地上やカーポートへの設置も視野に入れて検討すると良いでしょう。

気を付けるべきデメリットは、発電量の変動という点です。日射量は時間や天候によって変動するため、その分発電量も常に変わります。

とくに自家消費型太陽光発電では、電力需要の高い時間帯に自家消費しなければ電気代削減効果を伸ばせません。しかし夜間や雨の日など、発電量がなかったり、低下したりしている場面が続くと、自家消費率を高めることが難しいです。

こうした状況に陥ることを防ぐため、太陽光発電事業を始める際は、産業用蓄電池の併用を検討するのがおすすめです。産業用蓄電池は、太陽光発電から発電された電気を貯められるので、電力使用量の高い時間帯や発電ができなくなる夜間などでも自家消費を継続できます。

産業用太陽光発電の設置費用相場

ここからは、法人が主に導入する産業用太陽光発電の設置費用相場を紹介します。

1kWあたり14.7~25.1万円

経済産業省の「令和6年度以降の調達価格等に関する意見」によると事業用太陽光発電の設置費用は、1kWあたり14.7~25.1万円です。

以下に出力ごとの平均的な導入費用を紹介します。

出力10kW以上50kW未満 1kWあたり25.1万円
出力50kW以上250kW未満 1kWあたり19万円
出力250kW以上500kW未満 1kWあたり16.7万円
出力500kW以上1,000kW未満 1kWあたり14.7万円
出力1,000kw以上 1kWあたり19.2万円

たとえば、20kWの太陽光発電なら設置費用は、20kW×25.1万円=502万円程度といえます。一般的に設備規模の大きな太陽光発電は、1kWあたりの導入費用が抑えられる傾向にあり、出力50kW以上なら1kWあたり20万円以下の単価で導入可能な場合もあります。

出典:経済産業省ウェブサイト

運転維持費は1kWあたり年間5,000円程度

運転維持費とは、太陽光発電の定期メンテナンスや運用管理などといった維持管理に必要な作業コストのことです。

先述したとおり、法人の運用する事業用太陽光発電を維持する費用は、1kWあたりおよそ5,000円程度です。たとえば出力20kWの太陽光発電を設置した場合は、年間10万円程度の運転維持費がかかります。

出典:経済産業省ウェブサイト

法人向け太陽光発電は補助金制度の対象

法人向け太陽光発電の費用に関しては、国の補助金制度で軽減できる可能性があります。

「需要家主導による太陽光発電導入加速化補助金」は、一定規模以上の非FIT・FIP型太陽光発電および蓄電池を導入した場合に補助金を受けられる制度です。補助率は、自治体連携型なら最大3分の2、前述以外の方式なら最大2分の1とされています。

2024年度の「需要家主導による太陽光発電導入加速化補助金」に関しては、2024年4月時点で発表されていません。前回は6月頃に発表されているので、今後の情報に注目していきましょう。

また、「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」は、2024年度も実施予定の補助金制度で、自家消費型太陽光発電と蓄電池の同時導入で補助金を受けられる可能性があります。補助金額は、PPAやリースなら1kWにつき5万円、購入(通常の導入方法)なら1kWにつき4万円です。また、上限額は、補助対象経費に対して3分の1までとされています。

法人向け太陽光発電で節税対策

前段でも触れたように法人向けの事業用太陽光発電を導入した場合は、税制優遇措置を活用できる可能性があります。

主な税制優遇措置は、中小企業経営強化税制と中小企業投資促進税制です。また、両制度は、適用期限の延長により2025年3月31日まで活用できます。

以下にそれぞれの概要を解説します。

制度 概要
中小企業経営強化税制 即時償却もしくは税額控除(7%、10%)のいずれかを受けられる
・対象:個人事業主、法人
・税額控除に関しては、事業規模によって控除率が変わる
資本金3,000万円以下の法人、個人事業主なら税額控除7%
資本金3000万を超えて1億円以下の法人は税額控除7%
中小企業投資促進税制 特別償却30%もしくは税額控除(7%)のいずれかを受けられる
・税額控除を受けられるのは、資本金3,000万円以下の法人、個人事業主

中小企業経営強化税制の即時償却は対象経費を購入年度に全額計上できる優遇措置で、設備導入年度の課税所得を抑えられます。

中小企業投資促進税制の特別償却は、通常の減価償却に30%分の償却を上乗せできる優遇措置で、即時償却と同様に課税所得の削減を図れます。

なお、即時償却と特別償却は、設備導入年度の課税所得を一時的に抑えられるものの、通常の償却期間における全体の法人税額を削減できません。あくまで、設備導入年度の資金繰りを改善できる可能性のある優遇措置です。

一方、両制度に用意されている税額控除は、取得価額の7%もしくは10%を法人税から差し引ける仕組みで、特別償却や即時償却と異なり節税効果があります。

2024年から法人向け太陽光発電を導入するなら自家消費がおすすめ

2024年から事業用太陽光発電を導入する場合は、自家消費型で運用するのがおすすめです。全量自家消費型太陽光発電は、発電した電気を自社で消費するというシンプルな方式で、FIT・FIP制度に必要な複雑な手続きなどがありません。太陽光発電事業のノウハウが少ない企業やリソース不足の企業にも導入しやすいといえます。

もちろん、自家消費による二酸化炭素排出削減実績を活用して、脱炭素経営をアピールすることも可能です。売電価格が下落傾向にあるいま、売電収入を得るというよりは、自家消費型として導入する方が金銭的メリットも大きいです。法人向け太陽光発電に関心を持ち始めた方は、今回の記事を参考にしながら全量自家消費型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。

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