オール電化は普及が始まってから時間が経っているため、今さら目新しさはないかもしれません。しかし今、ウクライナ戦争や中東情勢の緊迫による原油価格の高騰などさまざまな要因によって、電気代の高騰が止まりません。
オール電化には電気代を節約できるメリットがあるので、今再びオール電化やそれと親和性の高い太陽光発電が注目を集めています。
電気代高騰対策を軸に、オール電化のメリットと、導入するのであれば知っておくべきデメリットについてそれぞれ解説したいと思います。
オール電化の5大メリット
家庭内の電力に一本化、つまりオール電化にすると、実に多くのメリットがあります。最初にオール電化のメリットを5つの項目で解説します。
電気代を節約できる
オール電化のメリットとして最も注目したいのが、電気代(光熱費)の削減効果です。電力会社の立場で考えると、オール電化は売り上げの増加につながります。ガスで利用している光熱費の分も電力にシフトするため、電力会社とガス会社の陣取り合戦において優位に立つことができるからです。
それを促進するために、電力会社にはオール電化に特化した料金プランがあります。うまく活用すると電気代を削減できる仕組みになっているため、電気代高騰の昨今では最も魅力を感じやすいメリットです。
しかも、太陽光発電と併用するとさらに電気代を削減できます。これについては、後述します。
光熱費を一本化できるので管理が楽になる
通常、電気とガスの両方を使っている家庭では電力会社とガス会社の両方から請求が来ます。しかしオール電化にすると電力会社からの請求だけになるため、光熱費の管理が楽になります。
しかも、電力会社とガス会社のそれぞれから請求されていた基本料金が電力会社だけになるため、基本料金の分も光熱費の節約になります。基本料金は2,000円に満たない金額ですが、毎月の固定費です。オール電化にしてからの年数が経つごとにオトク感は大きくなっていきます。
火災リスクの軽減
ガスで調理をしたりお湯を沸かすためには、火を使います。これが火災の原因になるリスクをはらんでいるわけですが、オール電化ではIHクッキングヒーターで調理をして、エコキュートでお湯を沸かすため、火を使いません。もちろん漏電などによって火災のリスクが全くないわけではありませんが、火そのものを使うのと比べるとリスクは断然低くなります。
また、ガスだと火を使うため、一酸化炭素中毒を防ぐために定期的な換気が必要ですが、火を使わないオール電化では換気不要で、空調の効率を高めることもできます。
災害、停電対策
さまざまなライフラインのうち、災害時に電気は最も回復が早いことで知られています。水道やガスは漏れがないことが重要なので修理に時間を要しますが、電気の場合は比較的修理が簡単です。
阪神淡路大震災や東日本大震災などの大規模な災害時にも電気は真っ先に復旧した実績があります。
また、オール電化の家庭に設置されるエコキュートには貯水機能があるため、災害などで断水が発生してもしばらくは貯めているお湯(もしくは水)を利用できます。節約しながら使えば、復旧までエコキュートの貯水分でしのげるかもしれません。
ただし、タンク内のお湯(もしくは水)を利用する際には、注意点があります。これについては後述していますので、そちらもぜひお読みください。
キッチンの掃除が楽で衛生的
キッチンは食べ物を扱う場所だけに衛生面を気にする人は多いと思います。しかし、ガスコンロは形状が複雑なので掃除をしにくく、どうしても凹凸のある部分には汚れが残りがちです。
オール電化で導入するIHクッキングヒーターは平らなので拭き掃除をするだけでOK。とても簡単に掃除ができるため、常に清潔に保つことができます。
オール電化の3大デメリット
メリットの次には、オール電化で考えられる3つのデメリットについても解説します。しかしこれらのデメリットはすべて解決が可能なので、その解決方法については次章で解説します。
日中時間の電気代が割高になる
電力会社には、オール電化専用の料金プランがあります。おおむねどの電力が嫌でもオール電化専用の料金プランでは日中時間の電気料金を高めに設定して、その一方で夜間を安くしています。
こちらは、関西電力の「はぴeタイム」というオール電化向けの料金プランです。
引用元:はぴeタイム(関西電力)
デイタイムというのは平日午前10時から17時までで、その時間帯の電気料金が割高です。その一方でリビングタイムとナイトタイムは安くなっており、メリハリのある料金体系になっています。
おおむねどの電力会社も同様の料金体系になっているため、日中時間の電気代はオール電化以外の料金プランよりも割高になります。日中時間に在宅している人が多く、電力消費も多い場合はオール電化にすることでかえって電気代が高くなる可能性があります。
導入時に費用がかかる
オール電化を導入するには、IHクッキングヒーターやエコキュートを購入する必要があります。これらの本体価格と工事費用などを考慮すると、100万円前後の出費になります。
ガスコンロを買い替えることと比べるとIHクッキングヒーターは数十万円になるため割高ですし、エコキュートについては100万円近くかかる場合もあります。
停電時にはとても不便
オール電化は電力に依存したエネルギーシステムなので、いざ停電になってしまうと家庭内のすべての機器が使えなくなります。家電が使えないのはもちろんですが、キッチンやお風呂を使えなくなるのは、とても不便です。
オール電化のデメリットはいずれも解決できる
先ほど解説したオール電化の3大デメリットについては、すでにそれを解決する方法が確立されています。それでは1つずつデメリットへの対策を解説していきましょう。
日中時間の電気代は太陽光発電の導入で解決
電気代を安くしたいとの目的でオール電化の導入を検討している人にとって、使い方によっては電気代が割高になるというのは聞き捨てならないことでしょう。
先ほど紹介した料金プランを見ると、日中時間に電力を使わなければ高い電力を買わずに済みます。そこで注目したいのが、太陽光発電です。太陽光発電は日中時間の太陽が出ている時間帯に発電をするため、オール電化と太陽光発電を併用すると「高い電力は買わず、安い電力だけを買う」という使い方が可能になります。
実は、電力会社のこうした料金プランは最初から太陽光発電を想定しており、電気代が高い時間帯を設定しているものの、その時間帯に電力を買ってほしいとは思っていません。
また、太陽光発電以外にもオール電化住宅に設置されるエコキュートは、電気代が安くなる深夜の時間帯にお湯を沸かす仕組みになっています。
このようにオール電化では時間帯によって電気代にメリハリをつけることによって安い時間帯に電力を使えるように出来ています。
太陽光発電やエコキュートの活用により、オール電化の電気代節約メリットは最大化されます。
導入コストの問題は補助金、電気代節約メリットで解決
100万円前後になるといわれる、オール電化の導入費用。決して安い金額ではないので、コスト面で躊躇してしまう人も多いと思いますが、その問題は補助金で解決できるかもしれません。
国や自治体の制度を合わせると多くの補助金がありますが、その中のひとつとして経済産業省が設けている「急騰省エネ2024事業」を紹介しましょう。この制度を利用するとエコキュートの購入費用が最大で13万円補助されます。
これ以外にも自治体の補助金制度などを併用すると、さらに導入コストを抑えることができます。
国としてはオール電化も環境保護に資するシステムだと認識しているため、今後もオール電化や太陽光発電などに関連する補助金制度は継続、もしくは新設される可能性が高いでしょう。
停電時の問題は蓄電池、V2Hの導入で解決
停電になってしまうと電力に依存しているオール電化は最も痛いのでは、と考える人は多いと思います。その問題は、蓄電池やV2Hで解決可能です。
蓄電池を家庭に内に設置しておくと、停電が発生しても蓄電池からの供給で電力を使い続けることができます。もちろん蓄電池は無限ではないので使用できるのはバッテリー切れまでですが、それでも急場をしのぐには十分な能力があります。
さらに、EV(電気自動車)を導入することで、EVに内蔵されているバッテリーを蓄電池代わりに使うこともできます。この仕組みはV2Hと呼ばれ、補助金の対象にもなっているので災害や停電の対策として導入を検討してみてはいかがでしょうか。
オール電化のメリットが大きくなるケース
オール電化のメリットとデメリットを踏まえて、どんなケースが最もメリットが大きくなるのでしょうか。ここではオール電化のメリットが最も大きくなるケースとして、2つの家庭を想定しました。
日中時間、家にあまり人がいない家庭
オール電化の電気料金プランでは、日中時間の電気代が高くなります。太陽光発電を併用すればこの問題を解決できますが、雨の日は発電量が少なくなるため、高い電力を買わざるを得ないこともあります。
そもそも日中時間に仕事や学校などであまり人がいない家庭であれば、太陽光発電が発電をしていない日であっても高い電力を購入することが少なくなるためあ、電気代への影響を抑えられます。
太陽光発電システムがある家庭
太陽光発電はオール電化との相性がとても良いため、一緒に導入している家庭はオール電化のメリットを最大化できます。さらに蓄電池を導入すると電力の完全自給自足も実現可能になるため、電力会社から一切電力を買わずに生活をできるかもしれません。
一切買わなければ、どれだけ電気代が高くなっても生活への影響はありません。
オール電化で知っておきたい注意点
とてもメリットの多いオール電化ですが、ここでは導入時や運用時の注意点について解説します。デメリットを解消し、メリットを最大化するためにもこれらの注意点をしっかり理解して臨みましょう。
使用人数に合わせた機器を選択しよう
オール電化で導入するエコキュートには機種やサイズの種類があります。このタンク容量を適切に選ぶことが意外に重要なので、使用人数(家族の人数)に合わせたものを選ぶことをおすすめします。
以下は、家族の人数ごとのタンク容量目安です。
使用人数(家族の人数) | エコキュートのタンク容量目安 |
---|---|
2~3人 | 320リットル |
3~5人 | 370リットル |
4~7人 | 460リットル |
もちろんタンク容量が大きくなるほどエコキュートの本体価格が高くなるため、「大は小を兼ねる」とばかりに人数に合わない大きなものを買ったとしても、オーバースペックになるだけです。
逆に使用人数に合わずエコキュートのタンク容量が小さすぎると、湯切れといってタンク内のお湯がなくなってしまうことがあります。エコキュートは安い深夜電力を使ってお湯を沸かしているため、日中時間に湯切れが起きると高い電力を使ってお湯を沸かすことになるため、オール電化にしたメリットが薄れてしまいます。
タンク容量は販売店・施工店としっかり相談して決めるようにしましょう。
エコキュートの設置スペースを事前に考慮しよう
実際に設置してみると分かりますが、エコキュートは意外に大きな機械です。一般的なエコキュートを設置する場合、ヒートポンプユニットが横幅1メートル弱、奥行き40センチメートル前後です。そして高さが70センチメートルほどになります。
庭のある戸建て住宅であればあまり気にならないサイズ感かもしれませんが、庭がない家や集合住宅だと最初からエコキュートを設置するためのスペースを設計しておかないと設置場所に困ることがよくあります。
マンションなどでエコキュートの設置をするのが難しいといわれるのも、このスペースの問題が関係しています。そのためマンションの場合は最初からオール電化マンションとして建築されているケースが大半です。
災害時にお湯を取り出すには火傷に注意
通常時にはあまり考えなくても良いことですが、災害時など断水が発生した際にはエコキュートの「熱」に注意してください。災害時に断水が発生してもタンク内の水を利用できるのはエコキュートのメリットのひとつですが、タンク内の水がしっかりと保温されていて熱湯の状態である可能性があります。
非常用取水栓から水(お湯)を取り出すことができるのですが、その際には熱湯が出てくるかもしれないことを留意して操作するようにしましょう。
災害時には医療機関もひっ迫状態になっている可能性が高く、火傷をしてしまうと十分な治療を受けられないことも考えられます。
せっかくエコキュートがあるおかげで災害時にも水やお湯が使えるめりっとがあるのに怪我をしてしまっては元も子もありません。
まとめ
オール電化のメリットとデメリットについて、「今さら聞けない」とお感じの方に向けて解説しました。当記事は2024年時点に作成しましたが、オール電化のメリットは依然として大きなものがあります。特に電気代の高騰が止まらない昨今、オール電化と太陽光発電を導入することによる生活防衛効果はより大きくなっているので、そのメリットだけで導入しても大いに価値はあると思います。