太陽光パネルは地球温暖化を食い止めるどころか、環境破壊をしているという「懐疑論」を見聞きしたことはないでしょうか。本来、太陽光発電は発電時に二酸化炭素を排出しないため、火力発電などの既存の発電技術と比べると圧倒的に環境性能が高いとされています。しかも、太陽光エネルギーは無尽蔵の再生可能エネルギーです。その太陽光発電に対して懐疑論があるのは、なぜでしょうか。そして、その懐疑論は本当なのでしょうか?
本記事では、太陽光発電の地球温暖化抑制効果に関する主な懐疑論を紹介し、科学的な知見に基づいて解説します。
最近ささやかれている太陽光発電の温暖化抑制懐疑論とは

最初に、まず、近年見聞きすることが増えた太陽光発電への懐疑論について、主な議論や主張を確認しましょう。さまざまな主張や言い分があるので、ここでは主なものを紹介します。
そもそも地球は温暖化していない?
地球温暖化が気候変動や生態系の破壊などをもたらしているというのは半ば常識になっていますが、「そもそも地球は温暖化などしていない」という意見があります。超長期の気温変化を見ると、日本は江戸時代から平均気温が1度程度しか上昇しておらず、これだけ気候変動が起きるのは考えにくい、というわけです。
地球の平均気温が上昇していることは、観測データによって確認されています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書によると、2011~2020年の世界平均気温は、1850~1900年の平均と比べて約1.1℃上昇しました。
このような気温上昇は、単に数字だけで影響の大小を判断できるものではありません。わずかな平均気温の変化であっても、極端な高温や大雨、海面水位の上昇など、さまざまな気候変動のリスクにつながります。
自然災害の増加と温暖化は無関係?
近年被害が大きくなっている集中豪雨や台風、線状降水帯などは、地球温暖化が原因だとする説があります。近年、豪雨や極端な高温などの気象現象と地球温暖化の関係が注目されています。個々の自然災害には、気圧配置や地形など複数の要因が関係するため、すべてを地球温暖化だけで説明することはできません。一方、IPCCは、人間活動による気候変動が世界各地の極端な高温や大雨などに影響していると評価しています。気象災害の発生状況を考える際には、自然変動などの要因も踏まえながら、地球温暖化がもたらす影響を科学的な知見に基づいて捉えることが重要です。
今の時代の人たちにとっては歴史上の災害になっていると思いますが、かつて「室戸台風」「ジェーン台風」といった巨大台風が甚大な被害をもたらしたことがありました。近年ではこれほどまでに被害の大きな台風は起きておらず、台風に対する脅威だけを見ると今のほうが低くなっているようにも感じます。
これは、台風そのものが弱くなったことを意味するわけではなく、治水や土木工事などによって減災をする技術が向上したというのが最大の理由です。台風自体が弱くなった、強くなったということよりも人間の努力による対策が功を奏していると考えるべきでしょう。
地球温暖化は太陽の活動による影響が大きい?
地球温暖化の懐疑派においても、地球の気温が上昇していることは共通の認識です。「江戸時代から1度しか上昇していない」という人であっても1度上昇していることは認めているのですから。確かに地球が100年以上前よりも温暖化していることは事実です。ただし、その原因が二酸化炭素などの温室効果ガスとは限らないというのが、懐疑論のひとつの根拠になっています。
というのも、地球は太陽の活動によって過去に何度も気候変動が起きており、その典型例が氷河期です。古代の地球に二酸化炭素を大量に排出するような存在はありませんでしたが、それでも地球は何度も氷河期と温暖化を繰り返してきました。地球の気候は、太陽活動や火山活動などの自然要因によっても変化してきました。しかし、過去に自然要因による気候変動が起きていたことと、現在の地球温暖化の主な原因が自然要因であることは、分けて考える必要があります。 IPCCは、産業革命前と比べた近年の世界平均気温の上昇について、人間活動の影響が主な原因であると評価しています。特に、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出が重要な要因です。太陽活動などの自然要因も考慮する必要がありますが、それだけでは近年の温暖化を説明できません。なお、政治家による気候変動に関する発言を取り上げる場合は、発言の時期や内容、出典を明記し、科学的な評価とは区別して紹介することが重要です。
日本の二酸化炭素排出量は世界の3%に過ぎない?
日本には「もったいない精神」があるので、本質的にモノを大切にしますし、ゴミのポイ捨てをあまりしない国民性なので、そもそも環境意識が高い国です。その日本が排出している二酸化炭素の量は、世界の約3%にしか過ぎません。上位を占めているのはアメリカと中国で、これらの国が本腰を入れないことには脱炭素は実現しませんし、二酸化炭素が原因であるならば地球温暖化を止めることもできないでしょう。そんな一角であるアメリカはトランプ氏の意向によってパリ協定からの再離脱が現実味を帯びていますし、石油やシェールガスなどの開発を積極的に進めると明言しています。
日本の温室効果ガス排出量は世界全体の一部ですが、排出削減に取り組む意義が小さいわけではありません。気候変動への対策には、各国がそれぞれの状況に応じて排出量を削減し、国際的に協力することが求められます。また、企業や家庭による省エネルギーや再生可能エネルギーの導入は、温室効果ガスの排出削減に貢献するだけでなく、エネルギーの輸入依存度の低減にもつながる可能性があります。世界全体で温暖化を抑制するためには、各国の政策と、企業・個人による取り組みの両方が重要です。
太陽光パネルの製造過程で環境負荷が掛かる?
太陽光パネルは発電時に二酸化炭素を排出することはありませんが、製造過程では一定の二酸化炭素を排出します。この点に対して「エコではない」との指摘があります。
太陽光パネルは、発電時に燃料を燃焼させないため、発電時の二酸化炭素排出量が少ないという特徴があります。一方、原材料の採掘や製造、輸送、設置、廃棄・リサイクルの各段階では、エネルギーの使用などに伴う温室効果ガスの排出が発生します。そのため、太陽光発電の環境性能を評価する際には、発電時だけでなく、製造から廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体で考えることが重要です。一般に、ライフサイクル全体での温室効果ガス排出量は、化石燃料を用いる発電方式と比較して少ないとされていますが、実際の排出量は設備の種類や製造条件などによって異なります。
しかも近年では太陽光パネルの長寿命化やリサイクルの技術革新が進んでいるので、ますます太陽光パネルが環境負荷を増大させているという指摘は的外れになっていくことでしょう。
太陽光パネルの大量廃棄が有害物質の排出を伴う?
太陽光パネルには、寿命があります。寿命を過ぎた太陽光パネルは発電能力が弱くなり、やがて発電しなくなってしまいます。寿命を迎えた太陽光パネルは処分する必要があるわけですが、その際にパネルに含まれる鉛やカドミウムといった物質が自然界に流出することが環境汚染につながると懸念されています。
鉛やカドミウムはかつて日本の各地で公害病を引き起こした物質でもあるので、それが土壌や地下水などに混ざってしまうと新たな公害病の原因になりかねません。
また、普及が始まった頃の太陽光パネルが一斉に寿命を迎えることで適切に処理する能力を超えてしまい、一部の悪質な業者などが不法投棄をしたりすることで自然界に有害物質が排出されてしまうのでは、との懸念もあります。
悪質な業者による不法投棄は太陽光パネルに限らずさまざまな工業製品に共通する環境問題です。そのため太陽光パネルだけを標的に指摘するべきものではないと思いますが、やはり業者のモラルや順法意識に依存する部分が大きいため、太陽光パネルの長寿命化やリサイクルの推進は必須であると考えます。
メガソーラーの建設に伴う自然破壊が懸念されている
全国各地でメガソーラーの開発が進んでいます。もともと森林だったところをメガソーラーとして開発すると、かえって自然破壊になってしまっているとの指摘があります。
これについては、その指摘が当てはまるようなメガソーラーが残念ながら存在しています。乱開発によって森林を伐採し、そこに太陽光パネルが敷き詰められた光景に違和感や反感を覚える人も多く、「太陽光発電はけしからん」と考える人もいます。
メガソーラー自体は決して有害なものではなく、むしろ休耕地や遊休地の活用方法として高い評価を得ています。そもそも太陽光発電に適していないような場所に無茶な開発をすることが「悪」なので、メガソーラー自体を悪者にしてしまうのは早計でしょう。
今後もこうした問題は続くと思われるため、太陽光発電への懐疑論を加速させてしまう恐れがあります。
ここで改めて太陽光発電の地球温暖化抑制効果を解説

前章では太陽光発電への懐疑論について、さまざまな言い分や主張について紹介しました。なかには「トンデモ理論」もありますが、誤解によって真実が伝わっていないばかりに拡散してしまっている懐疑論もあるように思います。
さて、ここからは太陽光発電がもつ地球温暖化抑制効果について、改めて真実をお伝えしたいと思います。ここで解説する内容はすでに科学的根拠があり、エヴィデンスも整っているものばかりなので、太陽光発電を理解するのに値するものだと思います。
地球温暖化の仕組みと現状
地球温暖化とは、文字通り地球の平均気温が上昇することです。二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが大気中に排出されて濃度が高まると太陽によって温められた地球の熱が宇宙空間に排出されにくくなり、地球にたまり続けます。それが積み重ねると平均気温が上昇し、温暖化を進めています。
温室効果ガスには二酸化炭素以外にもメタンなどがありますが、これらの物質は人間の活動によって排出されたものが大半で、この傾向が進行すると地球はますます温暖化してしまい、気象変動や人の住めない地域を生み出してしまうなどの問題につながっています。
二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスは、地球の気温を生命が存在できる水準に保つうえで重要な役割を果たしています。温室効果ガスがなければ、地球の平均気温は現在より大幅に低くなると考えられています。一方、人間活動によって温室効果ガスの濃度が過度に上昇すると、地球から宇宙へ放出される熱のバランスが変化し、地球温暖化が進みます。問題なのは温室効果ガスが存在すること自体ではなく、人間活動によってその濃度が増加し、気候システムに変化をもたらしていることです。問題なのは、温室効果ガスの濃度が高すぎることであり、その適切なバランスに戻そうというのが脱炭素や環境保護の取り組みです。
このまま地球温暖化が進むと、どうなる?
このまま地球温暖化が進行すると、地球の気温はますます上昇します。気温だけでなく海水温も上昇するため、台風が強くなり、頻発する恐れがあります。また、地球上の生態系に変化が生じるため、農林水産業への影響が生じます。すでに一部の魚が激減しているといった現象が起きていますし、農業への影響から野菜の高騰が頻繁に起きているのはご存知だと思います。
南極などの氷が溶けることによって海面上昇も起きています。このまま海面上昇が進むと海抜の低い地域が水没する恐れがあるため、ツバルやモルディブといった国々が存亡の危機に瀕してしまいます。海抜が低い国以外でも海岸線の後退が起きており、筆者は以前にベトナムの海岸で「以前はここまで陸地だった」というところが海になっている風景を目にしたことがあります。そのまま海岸線の後退が進むと現在の海岸沿いの集落が水没し、陸地ではなくなってしまう可能性があるとのことでした。
これらの影響はいずれも人類に甚大なダメージをもたらします。すべてが温室効果ガスのせいではないと考えますが、その原因の一端である温室効果ガスの排出は食い止める努力をするべきでしょう。
二酸化炭素を排出しない脱炭素が持つ効果
二酸化炭素を排出しない社会モデルを構築すると、そこにやってくるのは持続可能性のある循環型の社会です。本来、自然には持続可能な循環システムがあります。だからこそ何億年にもわたって地球では命が栄えてきたわけで、今もそのシステムは成り立ち続けています。
大自然のスケールから見ると、現在起きている環境問題はその一部にすぎません。今なら脱炭素社会を実現することで自然へのダメージを最小限に食い止めることができるでしょうし、自然にはそれを修復する力があります。全世界が脱炭素社会への歩みを進めることができれば自然は豊かさを取り戻し、人類に多大なメリットをもたらしてくれるようになります。
現段階で太陽光発電は脱炭素の切り札
とても重要な脱炭素社会への歩みを進めるために、人類は何をするべきなのでしょうか。二酸化炭素を排出しないエネルギーとして、やはり本命となるのは再生可能エネルギーです。再生可能エネルギーは自然から生まれるエネルギーであり、それを利用するだけなので資源量は無限です。自然がバランスを保ち続ける限り、無尽蔵に利用できます。しかも、化石燃料を使用するわけではないので二酸化炭素も排出しません。
再生可能エネルギーには、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電など、さまざまな種類があります。その中でも太陽光発電は、建物の屋根や駐車場、適切に選定された遊休地などを活用できることから、脱炭素化に向けた重要な選択肢の一つです。
一方、発電量が天候や時間帯に左右されることや、設備の製造・廃棄に伴う環境負荷、設置場所の選定など、考慮すべき課題もあります。こうしたメリットと課題を踏まえ、地域の特性や電力需要に応じて適切に導入することが重要です。
太陽光発電が温暖化抑制に活躍するための課題
再生可能エネルギーの大本命として普及が進んでいる太陽光発電。地球温暖化抑制の切り札としても期待されているわけですが、もちろん太陽光発電も万能ではありません。さらなる温暖化対策の本命として活躍するためには、解決するべき課題もあります。
蓄電技術の発展と普及
太陽光発電の最大の弱点は、夜間や晴れていない日に発電ができないことです。天候は季節やその日によって異なるため不確定要素といえますが、夜間は毎日必ずやってきます。太陽光発電は、日射がある時間帯を中心に発電するため、夜間には発電できません。また、日中でも天候や季節、設置場所などによって発電量が変動します。そのため、発電した電力を効率よく活用するには、電力需要とのバランスを考慮し、蓄電池や電力系統などを組み合わせることが重要です。
家庭用の太陽光発電を導入している場合、夜間は電力会社からの供給に依存しなければならず、「100%の電力自給」は達成できません。
そこで役立つのが蓄電池です。日中に太陽光発電で生み出した余剰電力を蓄電池に貯めておけば、夜間や発電量が少ない時間帯にも活用できます。ただし、電力を自給できる割合は、太陽光発電設備の容量や蓄電池の容量、季節ごとの日射量、家庭の電力使用量などによって異なります。電力会社からの購入電力をどの程度減らせるか、導入前に試算することが大切です。
このモデルが多くの家庭に普及し、また同時に大規模な蓄電設備が整備されていけば、社会全体で太陽光発電の弱点を克服することができます。
太陽光パネルの価格低下
太陽光発電が普及し始めた当時は、太陽光パネルは今よりも高価でした。それゆえに導入できる人が限られてしまっていたのですが、国の補助金が付いたことによって太陽光発電は急速に普及し、今に至っています。
その後、太陽光パネルの価格低下によって補助金の制度は終了しました。しかしながら太陽光パネルの価格低下が進んだとはいえ、ポケットマネーで買えるような価格になったわけではありません。
ここまで太陽光パネルの価格が安くなったのは、世界的な普及によってスケールメリットをいかしやすくなり、生産の効率化が進んだからです。今後もこの傾向が進み、太陽光パネルの価格が安くなることによって普及が進みやすくなることを期待します。
太陽光パネルの寿命延長
発電のコストダウンや環境負荷の軽減という観点から、太陽光パネルの長寿命化は急務です。現在設置されている太陽光パネルの寿命は、おおむね20年程度といわれています。とはいえ、20年が経過したら突然発電しなくなるというわけではなく、徐々に発電能力が低下していってやがて発電しなくなるようになります。太陽光パネルの機種や性能にもよりますが、実際には30年使用できるとの説もあり、まだ太陽光パネルの寿命については本格的に寿命を迎えた製品が少ないため、確定的なことはいえません。
太陽光パネルの長寿命化は、発電コストの低減や環境負荷の軽減につながる重要な課題です。太陽光パネルは、使用年数の経過に伴って出力が徐々に低下するのが一般的ですが、実際の耐用年数や発電性能の推移は、製品の種類、設置環境、保守状況などによって異なります。メーカーによる製品開発や性能評価が進むことで、長期間にわたって安定的に発電できる設備の普及が期待されます。導入時には、製品保証の期間や保証条件、想定される出力低下率なども確認するとよいでしょう。
この技術革新が進むことによって、太陽光パネルが温暖化抑制どころか環境破壊をしているとの指摘は昔話になっていくことでしょう。
太陽光パネルのリサイクル
太陽光パネルが一斉に寿命を迎えて廃棄されると環境負荷が高くなるとの指摘は、以前からあります。それを受けて太陽光パネルのリサイクル技術も開発が進められてきました。
太陽光パネルの大量廃棄に備え、日本でも適正な廃棄やリサイクルに向けた制度整備が進められています。2026年4月には、事業用太陽電池の廃棄抑制や再資源化などを推進するための法律案が閣議決定されました。太陽光パネルの適正な処理と再資源化を進めることは、環境負荷の低減や資源の有効活用につながります。制度の適用対象や具体的な手続きについては、今後の法令や関係省庁の公表情報を確認することが重要です。
主にリサイクルされるのは、太陽光パネルの表面やモジュール部分に使用されているガラスやシリコンで、これらをリサイクルするとまた太陽光パネルの製造に使うことができます。環境保護に最も関心が高いEUではすでに太陽光パネルのリサイクルは義務化されており、アメリカでも州によっては義務化が始まっています。日本でも大量の太陽光パネルが寿命を迎えるため、リサイクルを推進することは太陽光発電のさらなる発展に寄与するでしょう。
家庭でできる地球温暖化抑制

太陽光発電当初、家庭用で普及が進みました。環境に優しい自家発電技術であることが受け入れられたわけですが、それよりも光熱費を削減できることが魅力に見えた部分もあると思います。それを補助金が後押しして今も普及が進みつづけています。
家庭でできる地球温暖化抑制ということで、まずは家庭用太陽光発電のあるべき方向性について解説したいと思います。
屋根の上を太陽光発電所に
住宅の屋根は、太陽光発電設備の設置場所として活用できるスペースの一つです。屋根の形状や方角、日射条件などが適していれば、屋根上に太陽光パネルを設置し、発電した電力を家庭で利用できます。ただし、すべての住宅に適しているわけではありません。屋根の耐荷重や防水性能、周辺の建物や樹木による影、将来のメンテナンスなどを考慮して、設置の可否を判断することが重要です。
以前と比べると屋根に太陽光パネルがついた家を見ることは多くなりましたが、まだまだ半数にも満たない状況です。このデッドスペースをいかして太陽光発電が普及すれば、発電能力が増していくことでしょう。
蓄電池でさらなる省エネ、脱炭素
家庭用の太陽光発電は蓄電池との相性が良く、電力の完全自給自足も可能です。家庭用太陽光発電と蓄電池を活用することで、電力会社から購入する電力量を減らせる可能性があります。こうした取り組みが広がれば、電力需要の一部を国内の再生可能エネルギーで賄えるようになり、化石燃料の輸入依存度の低減にもつながると考えられます。ただし、電力の自給率は、住宅ごとの発電条件や消費電力量、蓄電池の容量などによって異なります。安定した電力供給を実現するには、電力系統や他の発電方式との組み合わせも重要です。
蓄電池にはその可能性が秘められているので、これから太陽光発電を導入する方は蓄電池とセットで導入することをおすすめします。
EVとの併用でも脱炭素は実現できる
先ほど紹介した太陽光発電と蓄電池のモデルですが、この蓄電池の代わりにEV(電気自動車)を用いることもできます。EVには大きなバッテリーが搭載されているので、それを家庭用の蓄電池代わりに利用できるわけです。
このモデルはV2H(Vehicle to Home)と呼ばれるもので、EVだけでなくPHEV(プラグインハイブリッド車)でも導入可能です。EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)は、対応するV2H機器などを活用することで、車両のバッテリーに蓄えた電力を家庭で利用できる場合があります。太陽光発電と組み合わせれば、発電した電力を家庭での利用や車両の充電に活用でき、エネルギーを効率よく利用することにつながります。なお、導入費用や補助金の対象・条件は、制度や年度によって異なります。導入を検討する際は、最新の公的情報や自治体の制度を確認しましょう。
V2Hではクルマを走らせるための電力を太陽光発電からも供給できるため、クルマを維持するためのコストも削減できます。しかも脱炭素に大きく前進できるモデルなので、V2Hも今後普及が期待されています。
自家消費による持続可能な太陽光発電モデル
家庭でできる持続可能な太陽光発電モデルとして期待されているのが、自家消費モデルです。太陽光パネルで発電をして家庭内ですべて消費するモデルで、そのためには太陽光発電と蓄電池の組み合わせが必要です。
自家消費型の太陽光発電で得られるメリットは、主に3つあります。
①持続可能である
太陽光が降り注ぎ続ける限り、自家消費モデルには持続可能性があります。もちろん太陽光パネルやパワーコンディショナー、蓄電池などが寿命を迎えるため機器の更新といったメンテナンスは必要になりますが、このシステム全体が稼働し続ける限り電力会社にほとんど依存しない電力供給モデルを維持することができます。
②電気代高騰への生活防衛
エネルギー価格の高騰や円安のせいで、電気代の高騰が止まりません。関西地区など原発の再稼働が進んでいる地域では高騰が止まりつつありますが、まだまだそれが全国的な動きにはなっていないのが現状です。
太陽光発電はシステムの導入時に費用が発生するものの、その後のエネルギー源である太陽光は無料です。これが大きなポイントで、無料で手に入るエネルギーで電力をまかなうことができるので、電気代高騰への生活防衛策になります。
すでに解説した自家消費モデルを構築すれば電力会社から購入する電力量は大幅に少なくなる、もしくはゼロにできるため、今後さらに電気代が高騰しても受ける影響は軽微です。
③災害時の自立運転
近年では太陽光発電の普及が進んでいるおかげで、災害の被災地で太陽光発電が活躍しているニュースを見聞きすることが多くなりました。蓄電池が普及していなかった東日本大震災の当時であっても自立運転モードで昼間に携帯電話の充電をしたり最低限の家電を使えたといったことが話題になりましたが、蓄電池が普及し始めている今ではさらに太陽光発電が災害被災地で活躍することでしょう。
企業が取り組める地球温暖化抑制

企業にとっても、太陽光発電を導入することが大きなメリットになります。このメリットをいかして多くの企業が太陽光発電を導入していけば、さらなる地球温暖化抑制効果が期待できます。
屋上や遊休地を太陽光発電所に
家庭では屋根の上がデッドスペースになっていたため、そこに太陽光パネルを設置することにメリットがあるわけですが、企業にもデッドスペースはたくさんあります。
社屋や工場などの屋上は同じくデッドスペースですし、企業の敷地内や所有地に活用できていないスペースはまだまだあります。こうしたスペースに太陽光パネルを設置すれば、「何も生み出さないスペース」が発電所になります。
家庭用の場合は屋根に設置することが大半ですが、地面に直接設置できる「野立て」も可能なので、工場の跡地や郊外にある活用の難しい所有地などを発電所として利益を生み出すスペースに変えることができます。
自家消費モデルで電気料金高騰に備える
電気代による影響は、企業にとっても同じです。工場などがあって電力消費量の多い企業だと、なおさらでしょう。先ほど自家消費型の太陽光発電は電気代高騰に強いと述べましたが、企業にとっては電気代の問題がより大きいため、自家消費モデルを導入する事例が急速に増えています。
また、自家消費モデルを導入すると「うちの会社は再生可能エネルギーで製品を作っています」とアナウンスすることができるため、企業イメージの向上や後で解説する投資適格を得られることにもつながります。
今後、企業にとっての太陽光発電は自家消費モデルが主流になっていくことが確実です。
自己託送でも自家消費モデルを実現可能
企業が太陽光発電に取り組む場合、電力消費地(社屋や工場など)と同じ敷地内に太陽光パネルを設置する必要がありました。そうでないと太陽光パネルからの送電ができないからです。これだと遠隔地にある所有地などを有効利用しにくいため、現在では自己託送というモデルが確立しています。
自己託送とは、発電地と消費地が離れている場合であっても同じ企業であれば公共の送電網を使って送電が可能で、それを自家消費と見なすことができる仕組みです。この自己託送があるおかげで、遠隔地にある発電施設を自社の発電施設と見なすことができるため、企業にとっての太陽光発電導入の選択肢がぐっと広がりました。
PPAモデルなら初期費用不要
企業にとってとてもメリットが大きい太陽光発電ですが、やはりネックになるのが導入費用です。太陽光パネルの価格が安くなったとはいえ、企業が導入する場合は規模が大きいため、初期費用だけでも相当な金額になります。中小企業こそ太陽光発電導入のメリットが大きいのに、これだと導入できる企業が限られてしまいます。
そこで知っておきたいのが、PPAモデルです。PPA事業者と呼ばれる太陽光発電の設置業者が費用を負担し、活用したいスペースがある中小企業などに対して機器を設置し、保守や運用をする仕組みです。
この仕組みを利用すればデッドスペースを発電所にしたい企業は費用負担の必要がなく、無料で太陽光発電を導入できます。PPA事業者にとっては発電事業をするためのスペースが得られるため、双方にメリットがあります。
ESG投資、SDGsの時代にふさわしい企業価値を創出
SDGsは広く一般にも知られるようになった第三者評価基準です。「持続可能であること」が評価基準となり、SDGsに資する取り組みをしている企業は企業価値が高いと評価される時代になりました。
これをさらに掘り下げたのが、ESG投資の概念です。E(環境)、S(社会貢献)、G(企業統治)の3要素を組み合わせたもので、1つめにあるEの環境への取り組みにはもちろん太陽光発電の活用も含まれています。欧米ではこのESGそれぞれの取り組みに積極的ではない企業は投資不適格であると見なされ株主が離れてしまうといったことが起きています。つまり、太陽光発電の導入は企業の生き残りにも不可欠になってきているということです。
「企業のイメージアップになる」という漠然とした価値ではなく、生き残りに直接的なメリットをもたらす太陽光発電は、今後企業にとって必須の事業となっていくかもしれません。
税制優遇メリットも活かせる
太陽光発電の導入には税金面でのメリットもあります。太陽光発電に関連する設備は減価償却の対象なので、減価償却費を経費として計上可能です。利益を生むための機器を購入して、その費用は節税に資するのですから、企業にとっては一石二鳥のメリットがあります。
しかも、一般的には数年もしくは十数年をかけて減価償却費を計上できるのですが、条件を満たせば即時償却といって全額を1年で計上できる可能性があるため、利益が上がりすぎた中小企業が年末に太陽光発電を導入して課税所得を大幅に圧縮するといったことも可能です。
まとめ
太陽光パネルは地球温暖化の抑制に効果があるのか?というテーマに対して、懐疑論から真実まで解説してきました。以前であればそこまで懐疑論が拡散することはなかったのですが、これも太陽光発電の普及が進んで「社会の一員」になったことの証左かもしれません。
今後も懐疑論はトンデモ理論も含めて登場してくることと思いますが、太陽光発電を含む再生可能エネルギーが脱炭素や環境保護に資することは間違いありません。正しい情報と知識をもって判断し、地球温暖化を食い止めるために何ができるかを考えていきたいものです。











