太陽光発電事業を始める事業者や副業として太陽光発電の設置を検討している会社員の中には、インボイス制度への影響について気になっている方もいるのではないでしょうか?インボイス制度は仕入れ額控除の要件に関する制度で、太陽光発電事業を始める方も覚えておくべき項目の1つです。
そこで今回は、インボイス制度の基本と太陽光発電への影響について分かりやすくご紹介します。住宅用太陽光発電を設置している個人の方や事業用太陽光発電の運用を検討している方などは、参考にしてみてください。
インボイス制度とは
インボイス制度は、適格請求書保存方式という消費税に関わる制度で、太陽光発電事業者や電力会社をはじめ、あらゆる個人事業主や自営業者、副業を行う会社員、法人に関連しています。そのため、これから太陽光発電投資を始める会社員や個人事業主、企業は、インボイス制度を理解しておく必要があります。
まずは、インボイス制度の概要について1つずつ確認していきます。
仕入れ額控除を行うために必要な制度
インボイス制度(適格請求書保存方式)とは、インボイスの交付および保存、仕入れ税額控除に関する制度のことです。
インボイス(適格請求書)は、商品やサービスの売り手が買い手へ提出する書類やデータで、登録番号や税率、消費税額などを確認できます。
たとえば、売上に伴う消費税額100万円、仕入れの際に売り手へ支払った消費税額50万円の場合、仕入れ額控除を適用できれば「売上税額100万円-仕入れ税額50万円=50万円」の負担に押さえられます。
一方、インボイス制度に対応していない売り手から仕入れた際は、仕入れ税額控除できないため、売上税額100万円の消費税申告を行う必要があります。
仕入れ額控除の計算
仕入れ税額控除の計算は、以下の通りです。
- 売上税額:売上に伴って発生した消費税(100円の売上に10円の消費税を預かる)
- 仕入れ税額:仕入れの際に売り手へ支払った消費税額
- 計算:売上税額-仕入れ税額=控除後の消費税負担
消費税の納付額および負担を抑えるには、仕入れ税額控除の適用を受けられるかどうかも重要なポイントです。
太陽光発電業界の中で電力会社は、インボイス制度および仕入れ税額控除の影響を受けます。なぜなら電力を買い取る際、買取代金の消費税額を太陽光発電事業者へ支払う必要もあるためです。
インボイス制度はいつから始まる?
インボイス制度は2023年10月1日から始まる予定で、経過措置などが予定されています。
2029年までの経過措置では、インボイス制度に登録していない免税事業者から仕入れを行う場合でも一定の控除を受けられます。(免税事業者:消費税の課税事業者ではない事業者。)
経過措置の対象期間 | 内容 |
---|---|
2023年10月~2026年9月まで | 免税事業者からの仕入れ税額を80%控除可能 |
2026年10月~2029年9月まで | 免税事業者からの仕入れ税額を50%控除可能 |
上記の経過措置は、新制度施行による混乱を避けるための措置です。免税事業者からの仕入れ税額に対する控除額は、少しずつ減少し、2029年10月をもって控除対象外とされます。
インボイス制度の申請方法
インボイス制度の申請受付は、2022年2月時点で既に始まっています。
2023年10月1日までに適格請求書発行事業者の登録申請書を国税庁へ提出した場合は、2023年10月1日から仕入れ税額控除などを受けられます。
- 適格請求書発行事業者の登録申請書をダウンロード
- 必要事項の入力もしくは記述
- 書類を提出(電子申請or郵送を選択できる)
- 登録番号の交付を受ける
電子申請の場合は国税庁へ提出、紙書類で提出したい場合は管轄のインボイス登録センターへ提出します。インボイス登録センターは、国税庁HPの「適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)」というページから確認可能です。
登録申請書は、国税庁のHPからダウンロードできます。登録書には、以下の内容などを入力もしくは記述します。
- 住所
- 納税地
- 氏名
- 事業所区分(課税事業者or免税事業者ボックスにチェックを入れる)
個人事業主の場合は、マイナンバーを記述します。法人番号が指定されている法人は、法人番号の記述も必要です。
また、免税事業者は、2023年10月1日までに適格請求書発行事業者の登録申請書を提出できれば、消費税課税事業者届出書の提出が不要です。2023年10月1日以降に登録申請書を提出する場合は、消費税課税事業者届出書の提出も必要です。
特に免税事業者は、提出時期について気を付けるのが大切です。
インボイス制度が太陽光発電事業者へ与える影響
インボイス制度の基本を把握したあとは、太陽光発電投資家や発電事業者への影響について確認します。
どの太陽光発電事業者にとっても関連している制度なので、事前に確認しておくことをおすすめします。
他の業種と違い影響は限定的の可能性
太陽光発電投資家や太陽光発電事業を展開している法人は、限定的な影響ですむ可能性があります。
太陽光発電所を設置している個人や法人は、電力会社へ電力を売電する立場です。そのため、発電および売電に関しては、仕入れ税額控除に関する影響を受ける場面などありません。
さらに電力会社側は、FIT制度の認定を受けている発電所からの電力を買い取る義務を負っています。
このような点から太陽光発電を所有している投資家や法人は、現時点で大きな影響を受けにくい環境です。
課税事業者へ移行すると事務負担の増加
太陽光発電で売電を行っている免税事業者は、インボイス制度の登録によって事務や経理処理に関する負担増加といった影響を受ける場合もあります。
免税事業者は、消費税の納付を免除される事業者です。年間の課税売上高1,000万円以下であれば、インボイス制度開始後も免税事業者として事業を継続することが可能です。
免税事業者からインボイス制度の登録および課税事業者へ移行した場合は、太陽光発電の売電収入にかかる消費税の納付や仕訳、計算などを行います。さらに仕入れ税額控除を受けたい場合は、メンテナンス業者や施工業者などからインボイス登録の確認を行い、なおかつインボイスの保存や仕入れ税額控除の計算や仕訳なども必要です。
今後何らかのルールが設けられる可能性に注意
資源エネルギー庁や電力会社などは、インボイス制度の開始に合わせて新たなルール作りや動きを始める可能性もあります。そのため、太陽光発電投資家などは、太陽光発電とインボイスに関する情報収集を続けるのも大切です。
インボイス制度は電力会社にとって負担増加の可能性
太陽光発電業界でインボイス制度の影響を受けやすいのは、主に電力会社です。
FIT認定を受けているインボイス制度未対応の発電事業者から買い取った電力は、仕入れ税額控除の適用から外されます。しかし、電力の買取義務があり、消費税負担増加の影響を免れにくい環境です。
インボイス制度への対応方法
免税事業者として太陽光発電を運用している時は、今後以下の対応方法を検討するのも大切です。
- 免税事業者として売電を継続
- 免税事業者として運用し、卒FIT後は自家消費型へ転換
- 初期費用回収完了できた段階で自家消費型へ転換
- 課税事業者およびインボイス制度の登録
買い手が、免税事業者の売り手から仕入れを行うと仕入れ税額控除を受けられません。買い手側としては、免税事業者との取引を検討し直す可能性もあります。
ただし、太陽光発電業界は、現時点で他の業種と異なる事情です。少なくとも固定買取期間中であれば電力買取の拒否や契約解除といった対応はされないため、制度の動向を見極めながら検討を進められます。
課税事業者として太陽光発電を運用している時は、インボイス制度へ登録します。消費税の仕訳や納付を既に行っているため、免税事業者と異なり新たに覚えるポイントが少ないメリットもあります。
また、売電収入の消費税額が、初期費用などの消費税負担より少なければ差額分の消費税還付を受けられます。
太陽光発電を始める方もインボイス制度に気を付けよう!
太陽光発電事業者や個人にとってインボイス制度は、現時点で影響の少ない制度です。ただし、今後新しいルールなどが設けられる可能性もあり、インボイス制度の登録を検討したり経済産業省の新しい情報を確認したりするのも大切です。
太陽光発電を検討している方や売電型太陽光発電を設置している方は、今回の記事を参考にインボイス制度への対応や自家消費への転換などを検討してみてはいかがでしょうか。
弊社とくとくファームは、中古太陽光発電所の売買仲介サービスを提供しています。太陽光発電所を売却したい時は、まず30秒で完了可能なかんたん査定や30項目のしっかり査定などで査定金額を確認いただけます。また、専任アドバイザーによる売却サポートや無料の税務サポートなどあらゆる負担を軽減できるので、インボイス制度などの影響から売却を検討している方もぜひ1度ご相談ください。