太陽光発電のPPAモデルは、日本の企業でも導入が始まっています。中でもバーチャルPPAは、PPA業者の太陽光発電を導入することなく再生可能エネルギーを活用できるのが特長です。しかし、専門的な内容かつ新しい仕組みのため、よく分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、バーチャルPPAの仕組みやメリット・デメリットについて分かりやすくご紹介します。再生可能エネルギーを用いて自社の価値を高めたい事業者やPPAについて深く知りたい方などは、参考にしてみてください。
バーチャルPPAの仕組み
バーチャルPPAは、フィジカルPPAと異なり再生可能エネルギーを直接取引しないタイプのPPAモデルです。太陽光発電設備の運用よりも環境価値の取得を目指している企業には、特にメリットがあります。
まずは、バーチャルPPAの仕組みや特徴について確認していきます。
環境価値の取引を行う契約モデル
コーポレートPPAのバーチャルPPAは、PPA事業者(発電事業者)と需要家(PPAの利用者)の間で環境価値を直接取引で交わす契約方法を指しています。
バーチャルPPAは、Virtual Power Purchase Agreement(仮想電力購入契約)の略称です。
需要家であるPPA利用企業は、PPA事業者から太陽光発電を譲り受けません。その代わり、再生可能エネルギーの導入および利用を示す非化石証書(環境価値の一種)は、アグリゲーター経由で受け取ります。(アグリケーター:電力需給を含む仲介事業者)
環境価値の中でもグリーン電力証書など一部の証書は、需要家とPPA事業者の間で直接取引できます。
一方、PPA事業者は、太陽光発電から発電した電力を卸電力市場へ売電し、売電収入を得られる仕組みです。
なお、卸電力市場に流通している太陽光発電由来の電力は、小売電力事業者が購入します。また、需要家は、小売電力事業者経由で太陽光発電由来の電力を購入し、バーチャルPPAの固定料金と市場価格の差額をPPA事業者へ支払います。
フィジカルPPAとの違い
フィジカルPPAとは、電力の取引について大きな違いがあります。
フィジカルPPAは、PPA事業者所有の太陽光発電を自社の敷地内もしくは外に無償で設置してもらい、電力の自家消費を行える運用方法です。環境価値に関しては、バーチャルPPAと同じく受け取れます。
一方、バーチャルPPAの場合は、従来通り小売電気事業者から電力を購入し、固定料金と市場価格の差額をPPA事業者へ支払います。フィジカルPPAのような太陽光発電による自家消費および電気代削減効果は、難しい内容です。ただし、太陽光発電用の設置スペースを用意せずに済みます。
PPAモデルを検討する時は、バーチャルPPAとフィジカルPPAの違いをよく理解した上で判断するのが大切です。
経産省は海外の運用方法に近いバーチャルPPAスキームの実現を検討
経産省では、アメリカなど海外のバーチャルPPAスキームを実現するために有識者会議を開いたり制度設計を進めたりしています。
バーチャルPPAに関する日本と海外の大きな違いは、環境価値のやり取りに関する規制です。
海外のバーチャルPPAスキームは、発電事業者でもあるPPA事業者と需要家の間で環境価値を直接売買可能です。
一方、日本のバーチャルPPAスキームは、アグリゲーターという電力の需給を含めた調整などを行う事業者から非化石証書(環境価値)に関する取引が行われます。そのため、海外のスキームと異なり、PPA事業者と需要家の間で直接取引を進められない事情があります。
グリーン電力証書など一部の環境価値は直接売買できるものの、非化石証書と異なる規制で、分かりにくい状況です。
このようなスキームではバーチャルPPAの普及促進に影響が出るため、経産省で環境価値の直接取引について検討し始めました。
バーチャルPPAのメリット
続いては、バーチャルPPAのメリットについて、PPA事業者・需要家双方の視点から解説していきます。
電力の購入方法を変えずに環境価値を取得できる
バーチャルPPAを利用した場合は、電力の購入方法を変えずに再生可能エネルギーの導入を示す環境価値を取得できます。
フィジカルPPAやPPA以外の方法では、自社の敷地内もしくは外に太陽光発電設備を設置しなければいけません。太陽光発電を設置するための敷地面積を確保できないと、別途土地の取得が必要です。また、土地取得費用がかかります。
一方、バーチャルPPAを利用した太陽光発電の運用時は、土地の選定や取得費用を負担せずに済みますし、電力購入に関する変更手続きなども不要です。
既存の契約体系で環境価値を取得し、取引先へのアピールや企業価値アップに用いたい場合には、導入メリットがあります。
太陽光発電設備の導入費用が不要
太陽光発電の設置工事は不要なので、設備本体や設置工事費用の負担を避けられます。また、太陽光発電を設置しないため、点検や修理、部品交換費用などの負担がかかりません。
太陽光発電の初期費用を抑えたい時は、特にメリットがあります。
PPA事業者にとっては安定した収入を確保できる
PPA事業者にとってバーチャルPPAは、需要家から長期間固定料金を得られるのが強みです。
バーチャルPPAは長期間の契約を前提としているので、需要家から毎月一定の固定料金を確保できます。また、FIT制度に頼らず電力を売却できるため、卒FIT後の運用方法としても検討しやすいのが特長です。
PPA事業者が所有している太陽光発電は、フィジカルPPAと異なり需要家の敷地への設置および契約期間満了後の譲渡も不要です。そのため、太陽光発電を自社の敷地で運用できますし、譲渡を前提にせずPPAサービスを提供できます。
バーチャルPPAのデメリット
ここからは、バーチャルPPA事業者および需要家にとってのデメリットを解説していきます。
太陽光発電設備を敷地内に設置できない
バーチャルPPA利用者である需要家は、太陽光発電設備を自社の敷地内へ設置したり契約期間満了後に設備を所有したりできません。
環境価値の取得よりも太陽光発電で発電した電力で自家消費したい方、契約期間満了後に太陽光発電設備を譲り受けたい方には、デメリットの1つです。
バーチャルPPAを導入する時は、太陽光発電設備の必要性や再生可能エネルギーの利用目的を明確にした上で、判断するのが大切です。
仕組み上電力を売ることができない
太陽光発電で発電した電力を売電したい企業にとってバーチャルPPAは、デメリットの多い運用方法です。
バーチャルPPAの利用者は、太陽光発電で発電された電力を直接活用できません。あくまで環境価値の取得が主な目的なので、売電収入を目的としている方に適していません。
太陽光発電で売電収入を得たい時は、中古太陽光発電の購入を検討してみるのもおすすめです。
弊社とくとくファームは、さまざまな年度にFIT認定を受けた中古太陽光発電物件を多数掲載しているので、ぜひ1度お問い合わせください。
PPA事業者は直接環境価値を提供できないケースがある
PPA事業者は、需要家へ環境価値を直接提供できないケースが多く、複雑かつ手間のかかる運用方式です。
バーチャルPPAの主な目的であり強みは、環境価値を取得および供給できるという点です。しかし、日本のバーチャルPPAは、さまざまな規制から複雑な仕組みで、本来の強みを活かせません。
日本の環境価値は複数発行されていて、非化石証書やグリーン電力証書、Jクレジットなどが代表的です。
PPA事業者と需要家の間で直接取引可能な環境価値は、グリーン電力証書とJクレジットという証書です。一方、流通量の多い非化石証書は、需要家と直接取引できず、小売電力事業者を間に入れなければいけません。
非化石証書の取得を目的としている場合や環境価値のスムーズな提供を求めているPPA事業者にとっては、課題の多い運用方法です。ただし、今後改善される可能性があるので、経産省などの新たな発表や有識者会議に関するニュースに要注目です。
シナネン株式会社のバーチャルPPA導入事例
総合燃料商社のシナネン株式会社は、2021年4月5日に再生可能エネルギー関連会社の株式会社クリーンエナジーコネクトと提携に関する発表を行いました。
シナネン株式会社は、小売電力事業者として非FIT型太陽光発電事業を手掛ける株式会社クリーンエナジーコネクトと需要家の間に入り、電力の調達と販売などのサービスを提供していきます。
今後もバーチャルPPAを活用した非FIT発電事業者、PPA対応の小売電力事業者などが出てくる可能性があり、将来性を期待できます。
バーチャルPPAは今後も注目の契約モデル!
バーチャルPPAは、卸電力市場や電力小売事業者を介在して、PPA事業者(発電事業者)と需要家の間で電力と環境価値の取引を交わすPPAモデルの一種です。太陽光発電事業者にとっては、非FIT型の運用で長期的に収益を得られるという点でメリットがあります。需要家にとっては、環境価値の取得および企業価値アップにつながります。
非化石証書などの環境価値を取得したい方や非FIT型の太陽光発電事業を検討している方は、今回の記事を参考にバーチャルPPAを検討してみてはいかがでしょうか。
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