太陽光発電に関する規制の中には、土地と設備の権利関係に関する規制もあります。2022年時点で分割案件は規制対象なので、太陽光発電所の設置方法などを把握しておくのも大切です。さらに今後は、非FIT型太陽光発電所も分割審査の対象に含まれるため、非FIT型を検討している事業者も確認しておく必要があります。
そこで今回は、太陽光発電の分割案件や禁止事項、非FITの審査厳格化について分かりやすくご紹介します。太陽光発電事業の経験が少ない方や非FITを含めた太陽光発電事業を検討している方などは、参考にしてみてください。
太陽光発電の分割案件とは?
太陽光発電投資を行う上で分割案件は、把握しておくべき規制の1つです。しかし、分かりにくい内容でもあるので、つい敬遠しがちかと思います。
それでは、太陽光発電の分割案件とはどのような要件なのか、基本について確認していきます。
地権者の同じ土地で出力50kW未満の太陽光発電を複数設置
太陽光発電の分割案件は、地権者の同じ土地で出力50kW未満のFIT認定済み太陽光発電が複数設置されている状況を指します。(地権者:土地の権利所有者)
分割案件の規制実施前は、出力50kW以上の太陽光発電を意図的に出力50kW未満へ分割しているケースもありました。さらに地権者の同じ土地へ出力50kW未満の太陽光発電を複数設置し、高圧設備に課されるさまざまな規則やコストから避けながら発電事業が行われていました。
しかし、分割案件は悪質な運用方法で、安全性という点でも危険です。そこで国は、分割案件に該当するFIT認定済み太陽光発電の認定取り消しなどといった措置を実施しています。
分割案件と判断されないケースもある
国が定めた分割案件の規制には、分割案件として判断されないケースも定められています。以下に分割案件と判断されないケースについていくつか紹介します。
- 公道や河川を挟んでいて分割せざるを得ない状況
- 分割しても特別高圧(出力2,000kW以上)
- 異なる種類の再生可能エネルギー設備を設置している
「再生可能エネルギー発電事業計画における再生可能エネルギー発電設備の設置場所について」(資源エネルギー庁)を加工して作成
なお、私道を意図的に整備した上で分割設置すると、分割案件としてみなされる場合があります。そのため、太陽光発電を始めるときは、同一の地権者の土地で1つの発電設備を基本としておくのが大切です。
地権者の同じ土地で太陽光発電を分割せざるを得ない状況の場合は、資源エネルギー庁へ相談したり資料を確認したりしてみてはいかがでしょうか。
分割案件の問題とは?
分割案件の特徴を把握したあとは、主な問題点について確認していきます。分割案件の問題点を把握しておくことは、太陽光発電業界全体の健全化につながります。
安全性の問題
太陽光発電の分割案件は、安全性に関して大きな問題があります。分割案件に該当する出力50kW未満の太陽光発電は、所定の届け出や電気主任技術者の選定、キュービクル(変圧器)の設置などさまざまな義務の対象外です。
出力50kW以上の太陽光発電を設置する場合は、管轄の消防署へ保安規程を定めた所定の書類を提出する必要があります。また、電気主任技術者、第一種工事士もしくは認定電気工事従事者の選定と配置、キュービクルの設置などが必要です。
さらに特別高圧の出力2,000kW以上では、上記の義務に加えて設置工事の30日前までに工事計画届出書を届け出なければいけません。
出力50kW以上の太陽光発電を設置する場合、保安に関するさまざまな手続きや設備の購入、技術者の配置といった手間と費用がかかります。そのため、分割案件で低圧の太陽光発電を多数設置する事業者も存在します。
しかし、分割案件は法的に定められた保安業務から逃れることを意味するため、感電や火災などといった事故につながる可能性があります。
電気料金コストの増加リスク
分割案件は、消費者の電気料金コストの増加につながり、社会全体にとってもリスクの大きな内容です。
出力50kW以上の太陽光発電を出力50kW未満の設備へ分割すると、その分電柱や電線・メーターなどを増設する必要があります。送配電にかかる設備コストの増加が電気料金へ上乗せされるため、消費者にとっても迷惑な設備方式です。
一般送配電事業者のコスト増加
分割案件の増加は、一般送配電事業者の費用負担増加につながり、大手電力会社にとってもデメリットのある状況です。一般送配電事業者とは、経済産業大臣から一般送配電事業の強化を受けた事業者のことで、大手電力会社10社を指します。
出力50kW以上の太陽光発電を設置する場合は、発電事業者側でキュービクルなど受変電設備の設置義務を負います。しかし、出力50kW未満の太陽光発電は、一般送配電事業者側で
分割案件に対してどのような措置が取られる?
消費者および社会全体に多くのリスクやデメリットのある分割案件は、規制の対象として定められています。
そこでここからは、分割案件の規制措置に関する過去の経緯と現在の規制状況について解説します。
2014年に規制が始まる
分割案件に関する規制は、2014年に始まります。
FIT制度のスタートした2012年度より、FIT認定を受けた太陽光発電事業者の一部では、分割案件による保安業務に関する手抜きを行っていました。そこで国は、分割案件に該当する太陽光発電事業者のFIT認定取り消し、新規認定を認めないといった規制措置を実施します。
2017年と2019年に規制強化
2017年、総務省のFIT認定に関する調査により大きな問題が発覚します。それは、2014年度に始まった分割案件の規制から逃れて、低圧太陽発電の分割およびFIT認定を受けているというケースが、多数見つかったという内容です。
そこで国は、さらなる規制措置が必要と認識し、2017年2月に新たな規制を実行します。
新規制では、分割案件に該当するか設置状況などの情報を全てチェックできるシステムが導入されました。FIT認定の申請を受けている太陽光発電設備や認定済みの設備所有者が分割案件に向けて動いているか、より迅速にチェックされる環境へ変わります。
2019年には、まだ法規制から逃げている事業者が存在するということで、FIT認定の審査が厳格化されました。
分割案件に非FITの太陽光発電所も対象に含められる
分割案件の規制対象は、これまでFIT認定済みとFIT申請中の太陽光発電に限られていました。しかし、非FIT太陽光発電が分割案件の原因ではないかといった考え方も出てきたため、規制対象に含まれる方向です。
それでは、非FITの太陽光発電が、どのように規制されるのか解説していきます。
非FIT太陽光発電所が低圧分割の抜け道となっている
非FIT太陽光発電案件の法規制については、FIT認定済み太陽光発電と比較して未整備な状況です。そのため、分割案件を狙う悪質業者の抜け道として悪用されている側面がありました。
国は、非FIT太陽光発電と分割案件の影響や関連性について着目し、非FIT太陽光発電の分割案件についても規制の方向で検討を始めました。
経済産業省が非FITも分割禁止の対象とする意向
経済産業省は、2021年に電力・ガス基本政策小委員会を開き、同年6月末に242年の分割案件が2か月後の8月末時点で713件に増えていることを指摘しました。
具体的には、太陽光発電が分割されているように見せるために柵を設置したり設備を意図的に分割したりしているケースがあるようです。
非FIT太陽光発電の分割は、FIT認定済みの太陽光発電と同じく以下のリスクが懸念されます。
- 保安業務・規制逃れによる不公平性
- 一般送配電事業者の管理コスト増大による電気料金コストの上乗せリスク
- 本来不要な電柱やメーターの追加によるコスト増大
「発電設備の分割対策に関するQ&A」(資源エネルギー庁)を加工して作成
そこで経済産業省は、電気事業法の施行規則を見直し、なおかつ特段の理由がなければ非FIT太陽光発電の分割についても禁止の方向で対応していく方針という趣旨の内容を発表しました。
対象の設備は、出力にかぎらず非FIT太陽光発電です。なお、新たな規制は、2022年4月1日の電気事業法施行規則改正の際に追加されます。
除外規定が設けられている
非FIT太陽光発電の分割案件の対象については、除外規定が設けられています。以下にいくつかの除外規定例を紹介します。
- 公道や河川があるため、分割せざるを得ない環境
- 農地が含まれていて、法規制などから太陽光発電をまとめられない
- 分割後も全ての太陽光発電が出力2,000kW以上の特別高圧であること
非FIT太陽光発電の設置を検討している方や卒FITなどにより非FITへ切り替える方は、早めに分割案件に該当しないか施工業者へ相談してみるのも大切です。
また、これから中古太陽光発電を購入する時は、分割案件に該当しない物件のみ取り扱っている業者へ相談することをおすすめします。
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太陽光発電を始めるときは分割案件に触れないよう注意が必要!
太陽光発電の分割案件に関する規制措置は、FIT認定済みや申請中の太陽光発電だけでなく非FITの案件も含まれます。また、非FIT太陽光発電は出力50kW以上の設備も規制対象なので、分割せざるを得ない状況であれば早期に資源エネルギー庁へ相談するのが大切です。
法規制に対応した業者から太陽光発電を購入したい方や太陽光発電の各種規制に対応しきれないために売却を検討している方は、今回の記事を参考に太陽光発電の購入や売却を検討してみてはいかがでしょうか。
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