世界的なカーボンニュートラルへの取り組みにともなう温室効果ガス削減の流れに沿って、企業は脱炭素経営や環境経営へシフトしていく必要があります。さらに2022年3月に温対法が改正され、一定の条件に合致する企業に対してCO2排出量のデータ公開などが義務化されることになりました。そのため、企業は自社の事業活動で排出されるCO2量を計算し、正確に把握する必要があります。
そこで今回は、CO2排出量の計算方法と取り組むべき理由、法律との関連性について分かりやすくご紹介します。温対法の改正内容を詳しく知りたい方や環境経営の取り組みを進めたい企業ご担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
企業にとって影響のあるCO2関連の法律
企業の省エネやCO2削減への取り組みを評価する制度として「省エネ法」と「温対法」があります。
エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法)
「エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法)」は1973年のオイルショックを契機に制定された法律で、企業活動での電気やガス、ガソリンなどの燃料によるエネルギー使用量を原油換算量で表し、合理的なエネルギー利用を促す制度です。
算出や報告は原則として努力義務ですが、以下の業態および事業規模の事業者は毎年報告義務があります。
- 特定事業者(エネルギー使用量原油換算1,500kL/年以上)
- 特定貨物/旅客輸送事業者(保有車両トラック200台以上)
- 特定荷主(年間輸送量3,000万トン以上)
地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)
「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」は、一定規模以上の事業者に「温室効果ガス」の排出量の報告義務を課し、排出の抑制を促す制度です。1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択された「京都議定書」を契機に、地球温暖化防止の抑止を目的として1998年に制定されました。
「温室効果ガス」として法律で定義されているものは、次の7つになります。
- 二酸化炭素(CO2)…「エネルギー起源CO2」と「非エネルギー起源CO2」の2種あり
- メタン(CH4)
- 一酸化二窒素(N2O)
- ハイドロフルオロカーボン(HFC)
- パーフルオロカーボン(PFC)
- 六フッ化硫黄(SF6)
- 三フッ化窒素(NF3)
このうち、④〜⑦はフロンの生産禁止措置に伴って冷媒に使用されている、いわゆる「代替フロン」です。
対象となる事業者は、省エネ法と一部重なりますが下記のとおりです。
・エネルギー起源CO2…省エネ法の「特定事業者」「特定貨物/旅客輸送事業者」「特定荷主」 ・その他の温室効果ガス…温室効果ガスの種類ごとに全ての事業所の排出量合計がCO2換算で3,000t以上あり、事業者全体で常時使用する従業員の数が21人以上の事業者
なお、エネルギー起源CO2の排出のみの事業者は、省エネ法の定期報告をもって温対法の報告とすることができます。
参考:環境省 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度 制度概要
企業がCO2排出量の計算を行うべき理由
今後の企業活動において、自社の事業活動によるCO2排出量を計算し把握すべき理由について解説します。
世界的な脱炭素化の流れに合わせて変化していく必要がある
企業のCO2削減への取り組みを示すRE100、SBTなどの指標の導入が、大企業を中心に進んでいます。ESG投資の観点から、企業価値を維持するために避けて通れないものとなっています。
一般消費者の間にもSDGsなどの環境キーワードの認知が進んでおり、環境に優しい商品を選択する「エシカル消費」の流れも進んでいます。
省エネ法でエネルギーの使用状況についてデータ化する必要がある
省エネ法の報告義務がない企業規模であっても、エネルギーの使用状況について把握しデータ化することには大きな意味があります。
エネルギー使用の増加=経費の増加です。目標数値を定めてモニタリングすることにより営業利益を確保し、健全な経営に結びつける必要があります。
温対法の改正でCO2排出量の情報開示
2022年の改正により、温対法の定期報告は原則として電子申請となりました。これにより、開示請求なしで企業の取り組み状況が閲覧できるようになります。
CO2排出量削減への取り組みはESG評価の上で重要な要素であり、投資家からの評価を獲得し企業価値の向上につなげることができます。
サプライチェーン全体での排出量算定の要請
自社が省エネ法・温対法の報告義務に満たない規模であっても、大手企業のサプライチェーン内にある企業は、CO2排出量の算定を求められるようになる可能性があります。大企業には、自社が排出するCO2の削減のみならず、サプライチェーン全体でのCO2削減に取り組むことが求められているからです。
また、早期にCO2排出量の削減や算定に取り組むことで、大手企業のパートナー企業として選ばれる可能性も高くなり、ビジネスチャンスの拡大と企業の発展にもつながります。
CO2排出量の基本的な計算方法
CO2排出量の計算方法は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が定めたガイドラインが基本となっており、下記の式で表されます。
CO2換算排出量=活動量×排出係数×地球温暖化係数(GWP)
3つのデータで計算
基本となるのは3つの数字データの組み合わせです。
- 活動量
- 排出係数
- 地球温暖化係数(CO2の場合は1)
企業の活動量からCO2の排出量を計算
活動量とは、企業の事業活動により使用した電気、直接燃焼したガス・石油・ガソリンなどの使用量のことを言います。CO2以外の温室効果ガスを発生する事業活動も対象となります。
電力の使用による活動量が一番大きくなるのが通常ですが、太陽光発電などから調達した再生可能エネルギーは使用量に含まず、結果としてCO2排出量を削減できることがポイントです。
排出係数と地球温暖化係数は資料で確認する
排出係数とは、活動量に対して発生する単位当たり温室効果ガス発生量のことです。
電気であれば、購入先電力会社の電源構成が石炭・LNG火力発電が中心だと高くなり、水力などの再生可能エネルギーが多いと低くなる傾向があります。
地球温暖化係数(GWP)はCO2を1としたときの温暖化に与える影響度のことを言います。
例えばメタンのGWPは25ですが、これは地球温暖化に対して同じ量であればメタンはCO2の25倍の悪影響があることを示します。
詳細な数値は、下記のサイトに掲載されていますので参考にしてください。
参考:環境省 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度 算定方法・排出係数一覧
参考:全国地球温暖化防止活動推進センター 温室効果ガスの特徴
CO2排出量の具体的な算出方法
多くの企業では、温対法で報告が必要な温室効果ガスのうち「エネルギー起源CO2」の排出量の算定のみで済むでしょう。
その場合のCO2排出量の具体的な算出方法について説明します。
燃料の使用によるCO2の排出量を計算
CO2排出量=燃料使用量×単位使用量当たりの発熱量×単位発熱量当たりの炭素排出量×44/12
年間でガソリンを10,000L、都市ガスを10,000㎥使用した場合
ガソリン
10,000(L)×34.6(GJ/kL)×0.0183(t-C/GJ)×44/12=23.2(t-CO2)…①
都市ガス
10,000(N㎥)×44.8(GJ/1000N㎥)×0.0136(t-C/GJ)×44/12=22.3(t-CO2)…②
調達した電気の使用によるCO2の排出量を計算
CO2排出量=電気使用量×単位使用量当たりの排出量
東京電力と契約し年間で10,000kWh使用した場合
10,000(kWh)×0.000441(t-CO2/kWh)=4.4(t-CO2)…③
合計してCO2の排出量を算定
①+②+③=49.9(t-CO2)
この企業の年間CO2排出量は、計算により49.9トンとなります。
CO2排出量の計算はツールで求めることも可能
CO2排出量の計算は、企業担当者が労力を掛けてひとつひとつのエネルギー使用量から算出しなくても、各種の支援ツールやアウトソーシングの方法があります。
使用量を入力するだけでCO2換算できる算出支援サイトや、毎月の使用量明細を渡すだけでデータベース化し専用サイトで自社の現状が把握できるアウトソーシングサービスもありますので、積極的に活用しましょう。
CO2排出量の計算を行いながら脱炭素経営へ進んでいこう!
今回は省エネ法・温対法の概要と、CO2排出量の計算方法を解説しました。
大企業の脱炭素化への取り組みが年々進んでおり、今後はサプライチェーン全体での脱炭素経営が求められる流れとなります。そのため、これからの企業経営には自社の消費エネルギーとCO2排出量を正確に把握していることが必須です。
CO2排出量を削減するための取り組みとして即効性が高いのが、太陽光発電を利用した再生可能エネルギーの導入です。
太陽光発電設備の導入には、和上ホールディングスの「とくとくファームZERO」をおすすめします。
近年増加しているのは、太陽光発電で得られた電力を売電するのではなく、自家消費電源(Non-FIT電源)として活用する方法です。「とくとくファームZERO」は、既存の太陽光発電設備の売却、あるいは遊休地を活用して太陽光発電設備の新設を検討している事業者様と、環境経営のため再生可能エネルギーの導入を検討する企業様をマッチングするシステムです。
再生可能エネルギー導入にスピード感を求めておられる企業様には特におすすめです。また、基礎からサービス概要などあらゆる疑問にお応えする無料の個別セミナーにも随時対応いたしますので、ぜひご活用ください。